「白薔薇と黒剣士」
第1話「出会い」
ガタンゴトン、ガタンゴトン、、、、、
「あと十五分程で到着か。」
駅で買った「月刊 盆栽の友」読んでいた恭也は時計を確認してそう呟いた。
「それにしても、かあさんやティオレさんにも困ったものだ。この時期に転校だなんて。」
少し疲れたような表情をしながら二時間程前の母・桃子とのやりとりを思い出していた。
〜二時間前・高町家〜
「はい、じゃあ残りのコンサートも頑張って下さいね。」
そう言って桃子は電話を切った。
「随分と長かったが誰と話してたんだ?」
今まで縁側で盆栽を眺めていた恭也がそう尋ねた。
「ティオレさんとよ。今日は香港の方でこれからコンサートらしいわよ。」
「そうか。」
それを聞いた恭也は微笑を浮べながら嬉しそうにそう言った。
「で、早速だけど恭也、貴方転校することになったから今から三十分以内に必要最低限の荷物と風芽丘の制服を用意しなさい。」
「は?今何と言った?」
「だから転校だってば。本当だったら今夜話して明日行かせるつもりだったんだけど、ティオレさんが善は急げって言うし今すぐ
行かせたほうがいいって言うから。」
「まさかさっきの電話はその事について話してたのか?」
「よく分かったわね。ちなみに逃げようなんて思わないでね。手続きはもう全部済んでるんだから、風芽丘に通い続けても卒業できないわよ♪
大学は受かってても高校卒業しないと無効になっちゃうからね♪」
「し、しかしだな、かあさん、、、」
満面の笑みで脅しをかける桃子に対して、なんとか抵抗しようとする恭也だったが、
「上から二段目、左から三番目のアンタのお気に入りの盆栽や、盆栽愛好会の入会記念に頂いた湯飲みがどうなってもいいのかなぁ♪」
「くっ、し、しかたがない荷物をまとめてこよう。」
そう言い恭也は悔しそうに部屋へ荷物を取りに行った。
「これも盆栽と湯飲みの安全のため、卒業までの辛抱だ。」
部屋でそう呟きながら恭也は荷物をまとめていった。
「はあ〜、少しボーっとし過ぎたか。」
雪の降る中、駅前をうろつきながら聖はそう呟いた。
(しかし試験休みにいきなり蓉子に呼び出されたと思ったら、やっぱり蓉子には見抜かれてたか。
みんなに分からないよう普通に振舞ってたんだけど、ダメだな、また蓉子に心配掛けちゃった。)
「いばらの森」の件で、一年前の事を思い出し少々ナーバスになっていた事を見抜かれ、心配させてしまった事に聖は苦笑いを浮べていた。
(明日でちょうど一年か。今何処で何してるんだろ。)
「ねえキミ、今ヒマ?俺達とつきあわない?」
考え事をしながら歩いていた聖に、四、五人の男達が声をかけてきた。
「・・・・・・。」
見るからにナンパといったその男達を聖は無視した。
「なあなあ、俺達と遊ぼうぜ。いい店知ってんだよ。」
「悪いけど興味ないから。」
そっけなく答え通り過ぎようとした聖の肩を男の一人が掴んだ。
「そう言うなよ、きっと気に入るって。」
しつこく言い寄って来る男に対して、イラついてきた聖は、
「しつこい!しつこい男は嫌われるよ!私が興味無いって言ったのは、あんた達に対してよ!」
「んだとぉ、このアマ!」
その言葉を聞いた男は、掴んでいる手に力を込めてもう一方の手を振り上げた。
(あっ、やばっ!)
次に来るであろう痛みに対して聖は、歯を食いしばって目を閉じた。
(・・・・あれっ?)
しかしまったく痛みが来ず不思議に思い目を開けてみると、
「ナンパに失敗したからといって、手をあげるとは感心せんな。」
その視線の先には、周りの景色に対してまったく正反対の、全身黒ずくめの青年が男の腕を掴んでいた。
「ナンパは引き際が肝心だと思うぞ。あきらかに、今この女性は迷惑がっていたぞ。」
「てめえには関係ねえだろ!おい、おめえ達、相手は一人だ。痛い目にあわせてやれ!」
その言葉で、周りにいた残りの四人が一斉に襲い掛かってきた。
しかし雪のせいで動きがぎこちない四人、そんな中、恭也は平然と動いている。
無駄の無い動きで一人、また一人と男達を一撃で倒していく恭也。
「ちくしょう!もう容赦しねえ!」
そう言ってただ一人残った男は、懐からナイフを取りだして、それを恭也に対して突き出した。
恭也はそれを避けて手首に手刀をくらわし、腹に軽い蹴りをお見舞いした。
「使い方がなっちゃいない。」
そう言い恭也は落ちたナイフを拾い上げ男に向かって投げた。
「ひっ!」
ガスッ!!
短い悲鳴をあげた男のイヤリングの輪っかの中にナイフが刺さっていた。
(これだけやっておけば流石に懲りただろう。)
気絶した男達を一瞥してそう考えながら恭也は絡まれていた女性に話しかけた。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「あっ、はい。」
「そうですか、よかった。」
そう言って恭也は微笑を浮かべた。
それに見惚れている聖。すると、その後ろから騒ぎを聞きつけた警官がやって来た。
「それでは自分はこれで失礼します。」
さすがに、来た早々警察と関わりあいたくは無いと考えた恭也は、そう言って警官とは逆の方向へ駈けていった。
「あっ、あの、」
せめて、お礼だけでも言わなければと思い、声を掛けようとした聖だったが恭也はあっという間にいなくなってしまった。
(しまったな、お礼言いそびれた。)
そう思いながら聖は、さっきの恭也の笑みを思い出していた。
(また、会えるかな?)
聖は心の中で無意識にそう呟いていた。
投稿ありがとう〜!
美姫 「聖と恭也の最初の出会いね」
この時点で、恭也はまだ自分が通う所が、女学園だと知らないんだよな。
美姫 「そうよね。だとしたら、次回以降の恭也の反応が楽しみよね」
うんうん。次回がとても楽しみ♪
美姫 「次回も楽しみにしてますので、頑張って下さ〜い」
ではでは。