『白薔薇と黒剣士』
第三話「クリスマスパーティー・前編」
「さて、そろそろ帰るか。」
廊下を歩きながら恭也はそう呟いた。
(しかし、終業式は教師陣に混じって参加したから目立たずに済んで良かった。そろそろミサも終わる頃か。
俺は参加しなくて正解だったろうな、いきなり男子が入って行ったら台無しになってしまうだろうからな。)
みんながミサに出ていた時、恭也は学園の中の構造を覚えるため歩き回っていたのだ。
(職業柄やはりやっておかないと落ち着かないな。)
そんな事を考えながら下足箱の前に辿り着いた恭也。すると、
「おっ、いたいた。よかった〜、恭也君まだ帰ってなかった。」
「佐藤さん、どうしたんですか?」
「実はさ、私が所属してる山百合会って言う、まあ普通の学校で言う生徒会みたいなものなんだけど、
そのメンバーでこれからクリスマスパーティーをやるんだ。それで昨日の御礼も兼ねて恭也君も参加して欲しくって。
他のメンバーにも紹介したいしさ。」
「はあ、しかし俺なんかが行ったら迷惑ではないですか?」
「大丈夫だって、きっとみんな歓迎してくれるから。行こ行こ♪」
(家に帰っても何もすることが無いし、ここはお言葉に甘えるか。)
そう考えた恭也は、こっちこっちと手招きする聖について行った。
(ここが薔薇の館か。昔なのはに読んであげた絵本に出てきそうな建物だな。)
「少し此処で待っててね。さすがにいきなり入るとみんなビックリするから。」
階段を上り扉の前まで来た聖は恭也にそう言い先に中へ入っていった。
ガチャ
「やっほー、準備はもう終わったー?」
「ええ、もう始められるわよ聖。」
蓉子が微笑みながらそう答えると、
「実はさ一人お客を連れてきたんだけど参加してもらっていいかな?」
「お客って、ひょっとして春日さんですか?」
聖の言葉に、”紅薔薇のつぼみの妹”・福沢祐巳はそう聞いた。
「ああ違うよ祐巳ちゃん、実はうちのクラスに転校生が来てさ、いい機会だからみんなに紹介しとこうと思って。」
「こんな時期に珍しいわね。まあ、人数が増えるのは賑やかでいいわ。大歓迎よ、白薔薇さま。」
”黄薔薇さま”・鳥居江利子がそう答えると聖は扉の外にいる人物を呼んだ。
「失礼します。」
そう言って扉から入ってきた人物に、山百合会のメンバー(聖除く)+カメラ係として呼ばれた武嶋蔦子は静止した。
それはそうだろう、リリアンに転校と言うのだからみんな女性だと思っていた。
しかし目の前にいるのは、紛れも無く男性である。
「はじめまして、高町恭也です。」
「私ももう一度自己紹介しておこうかな。佐藤聖、みんなからは”白薔薇さま”って呼ばれてるよ、改めてよろしくね恭也君♪」
二人が再び自己紹介をし終えたとき他の面々は、まだ呆然と見つめていた。
「ほらほら、こっちはもう終わったよ。みんなも早く自己紹介。」
そう言われ我に返ったメンバーはそれぞれ自己紹介をしていった。
「それで、恭也さんは何故リリアンに転校されて来たの?」
一先ず落ち着き、みんなで紅茶を飲み始めた時、蓉子がそう尋ねた。
「えっと、実は此処が女子校だと言う事実を今日初めて知りまして。転校する事が決まったのも昨日でして。」
その答えを聞き”白薔薇のつぼみ”・藤堂志摩子が不思議そうに、
「昨日初めて知ったって、転入試験や引越しなどはどうなさったんですか?」
「自分は、一応大学の方は受かっていますし三年のこの時期ですから試験は免除になったそうで。
それと引越しについては、母や幼馴染の両親がこの転校について結構前から計画していたらしく、二週間程前からマンションと生活用品の準備はしてあったそうなんです。」
その言葉に対して、
「本人に内緒で転校の手続きをしてしまうなんて滅茶苦茶な人たちですね。」
と、祐巳がコメントすると、
「ええ、あの人達は昔から俺をからかう事が大好きで、法や倫理に触れるような事をしょっちゅうしてきましたからね。」
その答えにみんな苦笑いを浮べていた。
「そう言えば祥子、恭也さんがいらっしゃってからずっと静かね。」
「そうね。男性恐怖症の祥子の事だから怒鳴りだすんじゃないかと思ったのだけど。」
「ひょっとして恭也くんがあんまりカッコイイから見惚れてたとか?」
と、おもしろそうに言う三薔薇さま。それに対して、
「なっ、何をおっしゃるんですかお姉さま方!わっ、私は別に、、、」
と、顔を真っ赤にしながら答える”紅薔薇のつぼみ”・小笠原祥子。それを傍観している他のメンバー。
「そうですよ、きっと小笠原さんはいきなり女子校に男性が現れたからビックリして声も出なかったんですよ。それに俺はカッコ良く等無いですよ。」
その言葉にみんな驚いたような顔をして、
「ねえ、どう思う?」
「本気で言ってるみたいね。」
「?」
聖と蓉子の言っている意味が分からず、首を傾げながら分からないといった表情をする恭也。
(うっ!!)
さっきまでの凛とした表情と違い、どこかあどけなさを残した母性本能をくすぐるその表情に、
(かっ、可愛い!)
と、全員が思った。
メンバー全員が顔を紅くしながらそう考えている一方、恭也は全く気付かずどうしたのだろうと悩んでいた。
山百合会の方々も遂に登場ですねー。
美姫 「それにしても、いきなり出たわねK・Tフィールド」
うん。恭也 高町フィールド。女性を惹き付ける謎のフィールドだな。
美姫 「さて、祥子が大人しい理由は果たして何なのかしら」
そして、山百合会の面々が恭也にどんな反応をするのか。
美姫 「今後の展開が気になりつつ、また次回ね」
うん。キレンジャーさん、投稿ありがとうございます〜。
次回を楽しみに……。
美姫 「浩、待て!」
ピタ!
美姫 「では、このまま続きを待たせますので。ではでは〜」
……俺は犬か!