Snow drop 第1話「Rabit ear iris」
「うう、今日は寒いなぁ・・・」
鍛錬の前の準備体操をしていると、横にいる美由希が漏らす
「本当に今日は寒いですねぇ、天気予報によると雪も降ってくるとか」
横にいた晶が返事を返す
「毎年のことだろう、行くぞ」
「「はーい」」
俺と美由希と晶ははいつもの通りに走っていく
走って走って・・・俺の後ろを晶と美由希がついてくる
石段を一気に上り、平らな地面に出る
「はー・・・はー・・・」
「ふー・・・」
「3分休憩、その後に晶と美由希で少し打ち合い」
「「はいっ!」」
はあはあと息をついて美由希は石段に座り込む
晶はまったく息が乱れていない
やはり、晶は持久力が化け物じみている・・
「うわ、本当に雪まで降ってきたぁ」
後ろからの美由希の声を聞いて、空を見上げる
・・・ふむ、白いものがチラホラと降ってきている
紛れもなく雪だな、しかも結構な勢いで降ってきている
「帰るときには積もってるかもな」
「うう、寒いの苦手」
「雪の上ではまた良い鍛錬になるぞ・・・っと、もう3分だ、始めるぞ」
「「はいっ!」」
晶と美由希がケースに入れていた木刀を取り出す
「はぁっ!」
「たぁっ!」
晶と美由希の打ち合い
それは最近結構な見物になってきている
例えるならば、晶の剣は剛の剣、美由希の剣は柔の剣
晶の貫なんてまともにくらったら腕力も相まってとてつもない威力だし、美由希のスピードも最近かなり増してきている
実力的にはやや美由希が上といったところか
しかし、晶は美由希より年下でこの実力
ふむ、この調子なら二人ともかなり・・・
「さて、朝の鍛錬はこれで終わり」
「「ありがとうございましたっ!」」
挨拶と同時に美由希がぺたりと座り込む
「はー・・・二人がかりで行ってもなんで恭ちゃんには1本も入れれないかなー・・・」
「師匠に攻撃しても当たる気がしませんよね」
「うんうん、みんな捌かれちゃうもんね」
最後はいつも俺対晶・美由希コンビで模擬戦をしているが、まだ1本も入れさせたことはない
まぁ、実力差もあるだろうが・・・
「俺から1本も取れないのは、二人とも何も考えずに馬鹿正直に真正面から攻撃してるからだと思うが・・・」
二人とも考えなさ過ぎるんだよな
「うう・・面目ない」
「同じく・・・」
「・・・さて、体を冷やすといけないから早く帰るぞ。もう雪も結構積もってきてるし」
「「はーい・・」」
「しかし、まだそんなに時間経ってないのにかなり積もってきましたね」
帰り道を歩きながら晶が言う
「うん、こんなに積もったら警報で学校休みになるかも」
「ふむ、休みなら一眠りできるか・・・」
それは好都合
「ん・・・?師匠、あんな所にお地蔵さんって置いてありましたっけ?」
「地蔵?」
「あれです、なんか雪で包まれてるんですけど」
晶の指し示す方向を見ると、地蔵のような何かが形を形成している
「・・・この辺にはそういうものはなかったはずだが」
「俺、ちょっと見てきます」
晶がパタパタと走って何かのとこまで行く
「何だろうね?」
「まぁ、どうせ新手の看板とかいうオチ・・・」
「う、うわぁ!?」
「どうした!?」
唐突に晶が叫ぶ
「し、師匠!これ人です!人!」
「何!」
急いで駆け寄って雪をはらってみる
雪が剥がれ落ちると、下から女の人が出てきた
「恭ちゃん!」
「分かってる、とりあえず早く家に運ぼう」
俺はその女の人を背中におぶって走り出す
晶と美由希も後続につく
全速力で走って3分もせずに高町家に着く
「よう、恭也、美由希、晶おかえ・・・・・」
家に入ると父さんが出迎えに出てくる
俺の背中の女性を見て固まったかと思うと
「桃子!桃子ー!恭也が女連れ込んできたー!」などと叫んだ
「士郎さんっ!本当!?」
目にも止まらぬ速さでかーさんが出てきて言う
「ああ!せっかく良い男に産まれたにも拘らず、まったく恋人を作らなかった朴念仁の馬鹿息子が女を連れ込んできた!」
「おい・・・」
「私達の教育方法間違えてなかったのね!」
「桃子!」
「士郎さん!」
唖然とする俺と美由希と晶の前でひしと抱き合う万年新婚夫婦
いつもこんな調子だ
「・・・・そこの万年新婚夫婦、冗談はよしてこの女性を介抱してくれまいか」
「はいはい、ったく、恭也は冗談が通じねーなー。ちょっとしたお茶目だろうが」
状況を考えろ馬鹿親父、とは思ったが口には出さない
「で、その方はどうしたの?」
すぐに体を離したかーさんが言う
正直、毎回そのアクションは呆れるものがある
「道で雪に埋もれてたんだ」
「雪に埋もれてたぁ?・・・とりあえず、布団でもかけて温めてやれ、目が覚めたら事情を聞こう」
「ああ」
かーさんに女性を渡すと急いで居間に連れていった
「・・さて、とりあえず飯でも食おうか・・・」
「・・・そうですね、なんかいきなり疲れちゃいましたよ」
「あはは・・・、朝からいきなりだもんね・・」
俺たちはぐったりしながら食堂へ向かった・・・
「父さん、何かわかったか?」
朝食を平らげた後、父さんに尋ねてみたが
「なーんもわからん。所持品が何もないから調べようがない」と返事が返ってきた
「所持品が、ない?」
「そう、着ている服以外に持ってる物何もなしだ。さすがに服を脱がせてまで調べるわけにはいかんし」
「それはそうだ。しかし、倒れてた回りに物が落ちてる気配はなかったが」
「やっぱ目を覚ましてから事情を聞くしか・・・」
「う、ううん・・・」
女性のうめき声
「あ、目を覚ましたわね」
丁度かーさんが何かを手に持ってやってきた
彼女がむくりと体を起こす
きょろきょろと周りを見渡し「?」という感じに首を傾げる
状況がつかめてないようだ
「あなた道で倒れてたのよ」
かーさんが優しく言う
「えっと・・・」
「はい、温まるわよ」
かーさんが手に持っていたものを彼女に渡す
ホットココアか
彼女はまだ状況がつかめない顔をしていたが「ありがとうございます」と言ってココアを受け取り、嬉しそうに飲んだ
「あの、私倒れていたんですか?」
「ああ、君が道に倒れてた所をコレが発見して運んできたんだ」
「そうだったんですか、すいません、ありがとうございます」
彼女が俺に向かって一礼する
「いえ、そんな。それに運んだのは俺ですが、発見したのはまた別な奴なんでそいつにも礼を言ってあげてください」
「はい・・・。あと、その重ね重ねすみませんが、このメモの住所を御存知ないでしょうか?」
彼女が手近にいたかーさんにメモを渡す
「えーと海鳴市の・・・ってこれうちの住所だけど・・・」
「あら?」
彼女がきょとんとしたような顔をする
「とりあえず、君がここに来ることになった経緯を説明してくれないかな。力になれるかもしれない」
「あ、はい。どこから話し・・・」
彼女が話そうとした途端に「ぐ〜〜」というとてつもなくでかい腹の虫の音が聞こえてきた
父さんか?
「・・二人とも俺の方を見るな、俺の朝飯は済ませてあるぞ」
かーさん・・でもない。勿論俺でもない
だとすると―
「あの、すいません、私です・・・」
彼女は顔を真っ赤にしている
「桃子、何か持ってきてやれ」
父さんが苦笑して言う
「・・・その、本当に重ね重ねすみません・・・」
「いや、いいよいいよ。困った時はお互い様だ。と、すまん、まだ名乗ってなかったな。俺は高町士郎、でこっちがうちの長男で朴念仁の恭也」
余計なことを付け足すなというのに
「あ、私は三原雪花と言います・・・」
あとがき
新話はじめました。きりしまでございます
今回はとらハ3の話です。ちなみに士郎の設定は「親子喧嘩」を流用しています
では、できれば今後ともお付き合いください。また次のお話で
新しいお話ですね。
美姫 「うーん。この倒れていた女性はいったい…」
これから一体、どんなお話になるのか、とても期待してます。
美姫 「ワクワクするわ〜」
それでは、次回も頑張って下さい!
美姫 「次回を待ってます〜」