Snow drop 第2話「Rosemary」
かーさんが食事を持ってくる
と、言ってもおにぎりが二つに味噌汁だけの軽い食事だが
「あの・・・」
「ああ、食べてからで構わない」
「すいません」
三原さんは父さんにそう言われると「いただきます」と言ってから凄い速さで食べ始めた
よっぽどお腹が空いていたらしい
三原さんはおにぎりと味噌汁をそれこそ一瞬で片付け、更に「あの・・・お代わりを頂けませんでしょうか?」と言った
お代わりも食べつくすのに3分もかからなかった
・・・もしかして、腹が減って倒れていたんだろうか
「ごちそうさまでした」
「お粗末様」
かーさんがそれに応じる
食べっぷりが嬉しかったのか微笑みすら浮かべている
「では、経緯だけど・・・」
それを見計らって父さんが聞く
「えーと、少し長くなるんですが・・・」
前置きして彼女が話し始めた
「私は父母がいなくて、祖父母に育てられました」
「ご両親は?」
「祖父母からの又聞きですが、父は私が産まれて間もない頃に事故に合って、母もそれを追うように事故で・・・」
「・・・そうか、すまないね」
「いえ、慣れてますから」
三原さんが寂しげな微笑を作った
「それで、つい最近までは祖父母と一緒だったんですが、祖父母も亡くなってしまい・・・遺言にこれが」
彼女は封筒を取り出して父さんに渡す
「読んでいいのかい?」
「どうぞ」
俺とかーさんは父さんの後ろから手紙を覗き込む
最初は最後まで一緒に居てやれなくて済まない、というような謝罪の言葉
そして「挫けずに生きていくように」という事が書かれていた
そして最後に・・・・これは住所か?うちの住所ではないが・・・
「この住所は、御神宗家じゃないか・・・」
御神宗家だと?
「それでその住所の所になんとか辿り着けたんですが・・・何もなくて」
「まぁ、ちょっとした事情でそこはなくなってしまったので」
父さんが苦しそうな表情で言う
しかし、そこからどうやって三原さんはうちに?
「そこで呆然としていると、女の人が来ましてその人に、えーと、これを見せたら「ここに行けば良いと思うよ」と言ってメモをくれまして」
そう言って三原さんはもう1つ書状のような物を取り出して父さんに渡す
「もしかして、その女の人って背が高くて怖そうな感じの人じゃないかい?」
「えーと、そうですね。あと綺麗な人でした」
「美沙斗か」
父さんはそう呟きながら渡された書状を開く
美沙斗さんが日本に戻ってきてるのか
書状は表は真っ白だったが、裏の隅の方に小さく「美影へ」と書かれていた
「何だと・・・」
美影というと、父さんの
「失礼だが、三原さんの祖父母の姓は御神か不破とか言うかい?」
「いえ、近藤というよくある姓ですが・・・それがどうかしましたか?」
「いや、ちょっと気になってね」
三原さんが首を傾げる
「どうゆうことだ、一体」と父さんが呟きながら書状を開く
今度の書状は人が思いつく限りのありとあらゆる謝罪からまず始まっていた
そして私の孫をよろしく頼む、守ってやってくれ、との願い
そして最後に書かれていたのは――
お前の姉より?
「・・・・・・・・」
「父さん、これは一体・・・?」
「とどのつまり、俺の母親に姉がいてなんでこうなったかはわからんが・・・まぁ、要するに三原さんは御神の血縁になるな」
「えっと・・・そうなんですか」
三原さんが惚けたように言う
「さてと桃子、物を置いている部屋を片付けて三原さんの部屋を作らんとな」
「そうね、えーととりあえず中にあるものは庭にでも出しとくとしとして・・・」
「ちょっと待て、父さん、かーさん、どうするつもりだ」
「どうするつもりだって・・・三原さんをこの家に住まわせるに決まってるじゃないか」
「何か他の方法を・・・」
「他の方法って、恭也お前三原さんをこの寒い空の下に叩き出そうとでもいうのか?」
「いや、そうゆうことでなく・・・」
「ああなんてこと!恭也がこんな酷い子に育っちゃうなんて桃子さんショック!」
「桃子!」
「士郎さん!」
またひしと抱き合う夫婦
もう好きにしてくれ・・・
「待ってください!」
強い調子で三原さんが声を上げる
・・・やはり見知らぬ家に居候というのは抵抗が
「三原さんって呼ばれるのは他人行儀に感じるので雪花って呼び捨てで良いですよ」
まるでなかった!
「おお、そうかそうか、よろしく雪花」
「雪花ちゃん、よろしくね〜」
ああ、この人天然なのか・・・
俺は部屋の端の方で頭を抱えた
「さて、では今日のお昼は雪花ちゃんの歓迎会を開きましょうか、晶ちゃんとレンちゃん呼んでこないと」
「今日はこれから学校があるんじゃ・・・」
「今日は大雪警報が出てるから学校は軒並み休校になってるぞ」
そうだった
「恭也と士郎さんは空き部屋の片付けをお願いね」
「「了解」」
「桃子さん、良ければ私にも一品作らせてくれませんか?」
三原さんがかーさんに向けて言う
料理作れるのか・・・また美由希が「うう・・私だけ作れない・・・」とか言うんだろうな
「オーケー!じゃあ始めましょう!」
かーさんの楽しそうな声を尻目に俺と父さんは空き部屋の片付けを開始した
あとがき
第2話を書きあげました、きりしまでございます
ちなみにこの話はとらハ3のオープニングの2ヶ月前ほどから始まっています(にも関らず美沙斗の説得は完了していますが)
設定上は1年ズレています。では、また次のお話で
投稿ありがとうございます〜。
美姫 「美影さんのお姉さんの孫とは、予想してなかったわ」
遠縁にあたる雪花と恭也たちが、これからどんなお話を繰り広げていくのか、とても楽しみです。
美姫 「続きが待ち遠しいわ〜」
ワクワクドキドキしながら、続きを待っています。
美姫 「それでは〜」