Snow drop   第3話「Firecracker vine」

 

 

 

 

「父さん、こんなもんでいいかな」

 

「うむ、ここまで片付ければ充分だろう」

 

俺と父さんが片付けていたのは今まで高町家の物置きとして使われていた部屋だった

 

と言っても元々物置きとして建設されたのではなく、ただ空いていたから物置きにされていただけで、窓などは他の部屋と同じ様に設けられている

 

「で、この出した色々な物はどうする?」

 

「そうだなぁ・・要る物も結構混じってるから分配して、後は庭の物置きだな」

 

「よし、では早速」

 

「待て恭也」

 

「なんだ?」

 

「そろそろ昼飯の時間だ。お前は感じないのか?この家全体に漂っている芳しい匂いが」

 

鼻を鳴らして匂いをかいでみる

 

む・・・これは・・・

 

「嗅ぐだけで腹が空いてくるような感じが・・」

 

「だろう?」

 

その瞬間、俺と父さんの腹の音が同時に鳴る

 

「・・・・行くか」

 

「うむ・・・」

 

俺と父さんは空腹という敵を倒すために食堂への突撃を開始した。

 

 

 

 

 

「おお!!」

 

先に食堂に入った父さんが歓声を上げる

 

テーブルの上には色とりどりの料理

 

和風、中華、洋風問わず、大量の料理がテーブルからあふれんばかりに乗っている

 

どこからこれだけの料理を作る材料を・・・

 

とゆうか、あれから4時間も経ってないのによくこれだけの料理が作れるな・・・

 

改めて我が家の料理長達に感心していると、その料理長達と美由希が三原さんと十年来の友人のように話していた

 

・・・人見知りするタイプではないようだな

 

「こらっ!士郎さんつまみぐい禁止!」

 

「ぐはっ!」

 

テーブルの方を見ると料理をつまみぐいしようとしていた父さんがかーさんにスリッパではたかれていた

 

・・・子供だ

 

「うう、その腹が減って死にそうなとこに食欲をそそる匂いがしてつい・・・」

 

「はいはい、じゃあ歓迎会を始めるとしましょう。全員着席ー!」

 

かーさんの言葉で一斉に席に着く

 

いつの間にかなのはもちゃんと席に着いている

 

「あ、雪花ちゃんは美由希の隣で」

 

「はーい」

 

三原さんも席に着く

 

「さてと」

 

コホン、とかーさんが咳払いをする

 

「このたび、高町家の新しい住人となりました、三原雪花ちゃんでーす!雪花ちゃん自己紹介よろしくー」

 

妙なテンションでかーさんが説明する

 

「あ、はい。えっと・・・三原雪花です。下の名前は『ゆきのはな』と書いて『せっか』と読みます。美由希さんと同じ歳です、どうぞよろしくー」

 

「では、みんなグラスを取って・・・かんぱーいっ!」

 

『かんぱーいっ!』

 

全員でグラスをぶつけ、それぞれの飲み物を飲む

 

・・・ちなみに、全員ジュースであり酒ではない(父さんは飲もうとしていたがかーさんに笑顔で止められた)

 

「皆さん、このから揚げは雪花さんが作りはったんですよ。食べてみてください」

 

「レンちゃん、ちょっと・・・」

 

から揚げを薦めるレンを三原さんが慌てて止める

 

「大丈夫です、みんなびっくりしますよ」

 

レンが笑顔で言う

 

・・・びっくりするとはどういうことだろうか、まさか美由希のような・・・いやまさかな・・・とりあえず食べてみよう

 

全員でから揚げに箸を伸ばして、口に入れる

 

む・・・・!これは・・・!

 

サクッとした歯応え、噛んだとこから溢れてくる肉汁、柔らかい鶏肉、そして絶妙な味付け・・・

 

『・・・・・・・・・』

 

全員無言になる

 

「え、あれ、えっと、皆さんどうかしましたか?」

 

あわてたような三原さんの声が聞こえる

 

「おいしー・・・・」

 

惚けたようになのはが呟く

 

いや、(恐らく既に味見をした)レンと晶と三原さんを除いて全員惚けていた

 

―あまりにも旨かったからだ

 

「いやー、雪花ちゃん料理上手なのねー、桃子さん感激ー」

 

惚けから立ち直ったかーさんが三原さんを激賞する

 

「いえ、ちょっとかじっただですからそんなに大したものじゃ・・・」

 

三原さんが照れた口調で返す

 

歓迎会は終始なごやかな雰囲気で過ぎていった

 

 

 

 

 

 

歓迎会とそれに伴う片付けが終了した後、俺と父さんは三原さんが入る部屋を更に片付けた

 

空き部屋に入っていた荷物もなんとか物置に全て仕舞い込んだ

 

作業が完了したことを伝えようと居間に行くと、三原さんと女性陣が話しこんでいた

 

「で、やっぱ私はさん付けでで晶とレンはちゃんで・・・」

 

「何の話だ?」

 

何やら熱弁を振るっている美由希に話しかける

 

「あ、恭ちゃん。ちょっと呼び方の問題で」

 

「呼び方?と、かーさん空き部屋片付いたから。あと父さんが空き部屋の方で呼んでる」

 

「わかったわ、ご苦労様」

 

「ああ、・・・・で呼び方がどうかしたのか?」

 

「うん、雪花さんの呼び方で私は雪花さんで晶とレンは雪花ちゃんで行こうって・・・恭ちゃんはどうするの?」

 

「どうするの?って・・・・三原さんでは駄目なのか?」

 

「駄目に決まってるじゃない、恭ちゃんは家族を苗字で呼ぶの?」

 

「む・・・まぁ、そうか」

 

「雪花さんは恭ちゃんの事なんて呼ぶ?」

 

美由希がみ―ではない、雪花さんに話題を振る

 

「えっと、あの、その・・・・」

 

雪花さんが急に顔を赤くして口ごもる

 

どうしたのだろうか?

 

「えと、お兄ちゃんて呼んでいいですか・・・?」

 

『え』

 

絶句、場が固まる

 

・・・・とりあえず、事情を聞こう

 

「・・・・・・構いませんが何故?」

 

「・・・私、昔から兄や姉が欲しかったんです。一人っ子でしたから」

 

雪花さんは顔を赤くして照れるような笑顔を見せたが・・・・それはとても寂しそうな笑顔だった

 

そうか、雪花さんは家族が・・・・

 

「わかりました、『お兄ちゃん』で良いですよ・・・」

 

「あ・・・」

 

雪花さんがぱぁっというような音が出そうな程の笑顔をする

 

それは、とても魅力的な笑顔だった

 

「あと・・・・敬語とかはやめませんか?『きょうだい』ですから」

 

雪花さんが提案する

 

一瞬考えるが・・・答えは決まっている

 

「わかりま――いや、わかった。雪花、これからよろしく」

 

「うん、よろしく・・・・お兄ちゃん」

 

雪花が顔を真っ赤にして言う

 

しかし―、それはとても嬉しそうだった

 

「雪花お姉ちゃんもお兄ちゃんのことお兄ちゃんって呼ぶの?」

 

唯一固まっていなかったなのはが雪花に尋ねる

 

「うん、そうだよー」

 

「じゃあ、私たち仲間だねー」

 

「うん、仲間仲間」

 

雪花となのはが笑い合う

 

・・・・この二人、似てるかもな

 

そんな、とてつもなく日常で運命の一日

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた達、何固まってるの?」

 

「「「・・・・・」」」

 

「一体どうしたの?」

 

「やっぱお兄ちゃんの方が破壊力あるのかな・・・?」

 

「はぁ?」

     

    

  


あとがき

え、えーっと・・・・まぁ色々とその、やっちまいました。きりしまでございます

あとがきしづらいことこの上ないので、あとがきはここまでとします・・(え

では、また次のお話で




美姫 「お兄ちゃん♪」
…………(硬直)
美姫 「どうしたの、お兄ちゃん?」
お、おま、おま、お前、何をとち狂った事を!
病院…、精神科か、この場合は。えっと、110番だっけ?
えっと、電話帳、電話帳。
美姫 「うーん、本当に破壊力があるわね。
このまま、混乱させておこう〜。
それじゃあ、きりしまさん、また次回を楽しみにしてますね〜」
うがーー!何処に電話すれば良いんだーーーーー!!



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