「天上の黒薔薇」
1話「出会い」
リリアン女学校校門前
「視線が痛い・・・」
少年はそうつぶやいて大きくため息をついた、
「こいつらみんな敵か?ここはイエスの野郎関係の学校じゃないんか?、と聖職者の方が聞けば憤激しそうなことを思う少年、実は視線がこの少年に集まっているのは嘘ではない、180近い身長や後ろでまとめている漆黒のストレートヘアーだけでなく、どこか日本人離れした甘いマスク、さらに意思を秘めた深紅の眼が彼の存在感を際立たせていた。
周りの女性の声も
「なにあの人?めっちゃかっこよくない?」「モデルみたい」
「ここに何か用なのかな?」などと心の中で黄色い声をあげていた。
また一方で
「あのきれいな女性誰だろう」「新入生かな?」などとまったく逆の思案をめぐらせている人たちもいる、そうなのだ、少年はいまこそ真っ黒なジーンズにベストを着ているのでかろうじて男と判断できているが、彼がスカートをはけば全員が美少女だと答えるだろう、しかし、相手を女性と思っていても黄色い声をあげてしまいそうになるのは、リリアンの特徴だろうか・・・。
「そうか、あいつの意見にかかわらずここでは俺は、堕天なんだったな」
そういって少年は昔を懐かしむように空を見上げた、薄暗い厚い雲のかかった空からは
光はほとんど降りてこない
(俺は自らこうなる事を望んだ、たとえこれから先、俺に光が当たることがなくても俺は後悔しない、あいつに、俺たちに永遠なる業をせ負わせたあいつらに、復讐するまでは・・)
同時刻
「はあー。どうしてこんなに早く起きちゃったんだろう、まだ孫もいないのに。」
そういって歩いてくるオヤジ丸出しの女性、彼女の名前は佐藤聖、リリアンの生徒全員の尊敬を集める、三薔薇様の1人、白薔薇様(ロサ・ギガンティア)である。
その敬愛なる白薔薇様は
「あっ!でも志摩子はまだ一年だから、孫が出来るのは来年まで待たないといけないね。」
などとのんきなことをいっている、志摩子というのはリリアンの、姉妹(スール)制による妹のことで、ウェーブのかかった栗色の髪と、全体に清楚な雰囲気を漂わせている美少女だ、しかし、この白薔薇様も、つぼみである志摩子に負けないくらいの美人である、ギリシャ彫刻のような顔と、モデルのようなスタイル、二人とも並みのアイドルでは太刀打ちできないほどの容姿を持っている。
そんな聖が朝早く、人気も少ない道をあるけばどうなるか、
「よう、ネェチャン、俺らと遊ぼうぜぇ」
などと言われ7,8人の男たちに囲まれた、薬でもキめているのか眼の焦点が定まっていない
このようなことが日常茶飯事の聖でさえ、(ヤバイ!逃げられない!)と思った
それほど彼らの眼はイッてしまっていたのだ。
彼らはどんどん聖のほうへ迫ってくる、彼らのうちの一人の手が聖に伸びる
(もうダメ!)迫り来る絶望に身を硬くする聖!
しかし絶望はいつまでたってもやってこなくて、絶望がやってきたのは彼らの方だった。
「ウゲェ!」下卑た声を上げで三人の意識が刈り取られた、驚く事に人が来た気配がしたとき既に、すべては終わっていたのだ。
残った数人はさすがに気配を感じたのか、聖から離れる、それと同時に聖に近づいて、きた影は、後ろを振り向かずに聖の前に立った、その人物は
「なんかまた俺睨まれてるよ、さっき学校の前でさんざん睨まれたって言うのに・・・」
などと余裕かまして愚痴ってる、聖は心底不安になった、なんていうか、降り注いできた一筋の光明が、いきなり閉ざされるような・・・・・、さらに、
「刃物か、使い方解かってんのかお前ら?」
彼らはナイフや刃物を持ち出し少年の周りを囲み始めた、聖は数秒後にできるであろう血まみれの少年の姿を想像し、眼を閉じた
「そのままだ。」
少年のさっきまでとは違う真剣な声が聞こえた
「そのまま眼を閉じておくんだ、これから起こる事は見ない方がいい」
聖はそのまま強く眼を閉じつづけた、そして彼らは物の数秒で生きる屍になった
それから少したって、
「もういいぞ、眼開けても。」
少年は言ったが、聖は怖くて眼が開けられない、硬く眼をつぶって震えている聖は、不謹慎であるが、とても魅力的だった、そこで少年はイタズラっぽい笑顔を浮かべて、聖のほっぺをつねった、
「ふぁーにふんのよーう」
わけのわからない言語を発し聖は目を開けた。
「!!!!!!!?」
その時、少年の周りの空気が止まった、少年は狐につままれたような、それでいて長年あっていない親友に会ったような、喜びと驚きが入り混じったような顔をしていた
「・・・・・ガブリエル!」
少年が声にならないような小さな声でつぶやいた、聖はその少年に近づいて
「たすけてくれてありがと!私は佐藤聖、キミは?ここらじゃ見ない顔だけど?」
そういって少年の手をとりハイテンションにまくしたてる。
(やはり、記憶までは残ってはいないか・・・)
小声でそうつぶやき少年は少し悲しい顔をした、
それに敏感に反応したのか
「どうしたの?私の顔に何か付いてる?」
と不安そうに尋ねる、
「いや、昔の友人に似てたから、別になんともない、心配してくれてサンキュ」
といって笑顔を作って見せた
「!!!」
聖はその笑顔に数秒間見とれていた、栞の時のような、もしくはそれ以上の感情ずっと昔からこの人を知っている、この人を・・・・・・・、そうやって考えていると急に頭が割れるように痛くなって、自分が自分でないような、そんな気がして・・・もう一度少年を見た時聖の意識は途絶えていった
「おい!おい!しっかりしろ!どうしたんだ、なにがあった!」
体をゆすっても反応はない、どうにかして意識を取り戻させようと四苦八苦する少年
しかし、この時、さきほど倒したはずのやつらの生き残りが、後ろから迫ってきていた、
とっさに後ろを向く少年、しかし間に合わない
(くそっ!ここで力を使わなければならないのか?)そう思った瞬間
何十本もの水の槍が男の体を貫いた、即死だった、それを放ったのは
「聖さん!」
聖だった、ただいつもと違っていたのは目の色が深青色であり、そのめがとても哀しそうだったことだ
「いったぁーい、ってて、ここどこよ?」
聖は湖のほとりにいたそして導かれるようにして森に入っていく、
(いいところだな、一生ここにいたいかも)
などと考えていると
「ダメよ」
どこか聞いた事があるような、懐かしい声がした、振り向いてみるとある木陰の下に
「えっ!あなたは私?ていうかわたし口に出してたっけ?」
そこには深青色の眼以外は聖とそっくりの少女が立っていた
「貴方には未来がある、まだここに来てはダメ、私は信じてあげられなかった後悔してからでは遅いから、あの人を私の大切な人を暗闇から救い出してあげられるのは、貴方しかいないのだから」
と言って、泣きながら聖にしなだれかかってきた、
聖は何故か断ることが出来なかった、むしろやらなければいけないと、自分の心が言っていた、聖は意を決し
「わかったわ、誰を助ければいいの、私は何をすればいい?」
少女は予想以上に早い答えにおどろきつつも、すぐにうれしそうな顔になり
「ありがとう。ありがとう」
泣きながら言葉を発す
「私の力を貴方に託すわ、この力であの人を救って!ル・・・・・・・・を!」
「なになに?聞こえないって!」
少女が手を広げたると、周りが急に暗転するその中で蒼い光が舞っている
その光に近づくと光は聖を包み、今日会ったばかりの名前も知らない少年の声で
現実世界に戻る
(ヤバイなこれは、)少年は思っていた聖(裏聖と言えばいいか)の放つ水の矢で回りは穴だらけさっきまで生きていたもののうち、残っているのはただ一人、他のものは屍も残っていない
そのただ一人はあまりの恐怖に失禁し、狂っている
「ガブリエル・・・・・」
少年はつぶやいた
「俺たちが求めたのは、こんな力だったのかよ」
「俺たちが求めたのは、こんな人の命を簡単に奪うためのものだったのかよ!」
「答えろ!戻って来い、聖!」
少年は力の限り叫んだ、すると
「よっ少年、初対面のおねーさまに呼び捨てはないんじゃないかな♪」
などとのたまいよったものが一人
「・・・・正気に戻ったのかもっとおかしくなったのか・・・ふぅ」
「なによそれ!私がいつもおかしいみたいじゃない!」
「・・・とりあえず逃げるぞ」
少年は聖の手をとって走り出す
「あっ!ちょっと待ってよ、私貴方の名前まだ聞いてないよ」
「そうだったか?俺にファーストネームはない好きなように呼べばいいよ」
聖は疑いもせず少し考えて
「よーしわかったじゃあ今日から貴方はシオンね、決まり!」
「ふーん、ってちょっと待て!俺は男だ!シオンじゃあ女みたいじゃねーか!」
「男らしくないなー、男なら一度言った事に責任もちなよ」
「めちゃくちゃ言うなぁ、・・・・」
「あはは、ところでファミリーネームは?」
「・・・・・・・・ファシール」
「へーじゃあ今日からキミはシオン・ファシールだ、さっきも言ったけど私は佐藤聖よろしくね!」
「不本意だがいいだろう、まあよろしく」
こうして二人は再び出会った
幾千年もの因果を断ち切るために
あとがき
どうもケイロンです、一話はシリアスです、ただこれから数話リリアン女学園編はギャグ、コメでいこうと思います よろしければ二話以降も見てやってくださいではでは。
何やら、一話目から謎めいた言葉が…。
美姫 「一体、どんなお話なのか」
期待一杯です。
美姫 「二話以降は、ギャグ、コメになるそうなので、そっちも楽しみにしてます」
それでは、また次回で〜。