天上の黒薔薇

 

 

4話「旧友との再会」

 

 

「今日から皆さんと一緒に勉強する事になった、シオン・ファシールです

至らないところもあるかと思いますが、よろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げるシオン、生徒の反応は・・・・・・・もう言うまでもないだろう

お嬢様高と思えないほどの黄色い悲鳴が、二年松組に響き渡る。

先生が何か言おうとしているが、そんなのお構いなしに、生徒はシオンの周りを囲む

それが面白くなかったのか先生は

 

「彼女は学園長先生のお気に入りですから、この事を学園長先生がお知りになったら

どんな反応をなさるでしょうねぇ?」

 

ピキッ

 

確かに空間が凍りつく音が聞こえた、ある者は顔を真っ青にし、またある者は

身体を震わせながら、何かつぶやいている

 

軍隊顔負けの速さで席に着く生徒たち、シオンはその光景に苦笑し

 

(あいつは・・・・・・・ここでも全然変わってないんだから・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       職員室

「書類は全部揃っているわね。貴方のクラスは二年松組よ、行き方は・・・・・」

 

道順の説明を受け、今まさに行こうとした時それは現れた、

 

「し〜〜お〜〜んさ〜〜ん」

 

シオンは背筋に寒気が走った、身体が逃げろ、逃げろと警笛を鳴らしている。

しかし無常かな、後ろから、首を絞めてくるような形で抱きつかれるシオン

 

「学園長!こちらにおいででしたか、朝の会議が・・・・・」

 

おい、ていうか助けたれよ、生徒首絞められてるんだぞ

 

「・・・あの・・先生・・私・・を助けるという・・・選択肢は?」

 

「ないわ!学園長が聞いて下さる訳ないもの」

 

即答だった、・・・・大丈夫なのだろうかこの学校

 

「まったく、まず職員室よりも、私の所に来るのが筋ってモンでしょう

学園長の私のところにね」

 

そういって、(見た目は)優しそうな初老の女性は、先ほどから首を絞められて

意識が朦朧としているシオンを引きずって、学園長室へ歩いていった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      学園長室

「起きなさい!起きなさい!・・・・・・・・・・サマエル!!」

 

顔をぺちぺちたたく学園長、・・・地味に痛いぞ・・・これは・・・

 

「う〜ん・・・・・・」

 

眼を覚ますシオン、心なしか顔が青ざめている、そして学園長の顔を改めて

見てみる

 

「・・・・・久しぶりだな。」

 

「ええ、お久しぶりね。ざっと数千年ぶりかしら?

少なくとも、貴方がサマエルと

名乗るようになってからは会ってないわね。」

 

「そうか・・・・・もうそんなに経っているのか・・・・しかし今の俺の名前はシオンだ

【光を掲げる者】でもサマエルでもなくだ、解かったか?【太陽の統率者】聖ウリエル・・・・」

 

その言葉を聞くや、学園長の身体が見る見るうちに光に包まれ、一人の天使が

姿を現した。

 

「そうだったね、彼女を守るんでしょう?そのためにこんな格好してまでここにきたんだもんねぇ?」

 

ニヤニヤしながら言うウリエルと呼ばれた天使、このあからさまな挑発行為に

 

「・・・・・・やっぱりオマエとは、一回決着をつけたほうがいいな!」

 

シオンの周りに集まる力の波動

 

「!!!ちょっとタンマ!キミのそれはほんとに洒落になんないから。」

 

確実にここらいったいが吹き飛ぶ様子を想像し、シオンに平謝りするウリエル

うわぁ、天使様が人間に土下座してるよ・・・・・・

 

それを見てシオンは手を下ろし

 

「大体、朝、志摩子さんと会わせたのもあんたの策略だろう?彼女が聖と関係してると知ってて、おもしろいからっていう理由で・・・・あんたの美徳である《堅忍》が泣くぞ」

 

「や〜ね、他の意図もあるわよ、それに根回ししたのは私だけど、実際に合わせたのはレミエルよ、こういうことは彼の得意分野じゃない、ノリノリだったわよ、彼」

 

    ・・・・・・・ピキッ

 

また冗談かと思ったが、シオンの顔に青筋が立つ、あの男ならやりかねない

 

「こういうことか!」

 

「やっぱり、守るのでしたら遠くからより、隣で、ですよね♪」

 

前夜、去り際にレミエルが言った言葉を思い出し、レミエルへの仕返しを

ぶつぶつ言いながら企むシオン、

 

そこでタイミングよく予鈴がなる

 

「行きなさい、転校生が初日から遅刻なんて、面白すぎるわ」

 

「今の今まで俺を引き止めていたのは誰だ!」

 

誰だったかしらねぇ?と言って首をかしげる学園長こと大天使ウリエルを残し、

シオンは去っていった

 

(ついてねぇな、あいつとレミエルがタッグ組んだら、俺の生活からかい倒してくる

に決まってる・・・・でもまあ、昔の仲間にこんな極東の地で会えるなんて

主に感謝しなければな」

 

そういってシオンはそっと十字を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       教室

「というわけで、みんな仲良くしてあげてね」

 

先生が言い終わるとすぐに暖かい拍手によってシオンは迎えられた。

 

「では、席は小笠原さんの隣でいいかしら。」

 

そう先生が言うと、小笠原と呼ばれた人の隣にいすと机が運ばれる。

シオンは席に着き彼女に挨拶した

 

「どうぞよろしく、小笠原さん。祥子さんでいい?」

 

シオンは気軽に、しかしそれでいて礼を欠かない言い方で、祥子に話しかけた

 

「ええ、こちらこそ宜しく、シオンさんでよくて?」

 

お互い自己紹介が終わり、先生が出て行ったのを確認し、一挙に人が

押し寄せてきた

 

「ねえ!どこから来たの?趣味は?」

 

「あの学園長とはどんな関係?」

 

「あの年がら年中いたずら大好き学園長に何か言われなかった?」

 

まず先に学園長関係の事を聞かれる時点で、この学校への影響力が

伺える。

 

「あの・・・・・・・学園長って・・・・・?」

 

シオンは内心返ってくる答えを予想したのだが、念のために聞いてみた

 

「ああ、学園長ね別名リリアンの魔女、人に悪戯する事と、人をからかう事が

三度のご飯より好きというお方よ・・・・・」

 

それでもあの愛くるしい(見た目だけは!)聖母のような笑顔を見ると許してしまうと言う、

・・・・・・・・そりゃ彼女天使ですから。

 

「そんな事より、学園長とは?」

 

「ああ、えっと古い友人のようなものかな?」

 

「友人ですか?随分とお年が離れている気がしますが?」

 

「うん、だから、友人みたいなものだって、変わっていないねあの人は、私も昔は苦労したわ・・・・・・」

 

そう言って、わざとらしく肩をすくめて見せるシオン

 

「学園長って昔からああだったんですか?」

 

今度は別の人が聞いてくる、見てみるとシオンと祥子の周りには、クラスのほぼ全員

が集まっていた

 

「聞きたい?」

 

にやりと笑って、シオンは話しはじめた、他のみんなは目を輝かせてそれを聞いている

しかし、ここで一番可愛そうだったのは、いつの間にか来て忘れ去られていた

一時間目の就学教師だったという・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      昼休み

「シオンさん」

 

シオンはピクリと反応して、逃げられない事を悟った、何故なら

 

「白薔薇のつぼみよ!」

 

「シオンさんに用があるみたいね」

 

「「「シオンさんって何者?」」」

 

回りは興味深々だといわんばかりに、その光景を見守っている

 

さらに追い討ちをかけるように

 

「あら志摩子、二年の校舎に何か用?」

 

「ごきげんよう、紅薔薇のつぼみ、シオンさんをお姉さま方に紹介しようと思いまして」

 

「紅薔薇のつぼみ!!!!」

 

シオンは眼を見開いて隣に居る祥子に向けた、祥子はあら、言ってなかったかしら?

と言って首をかしげている、まさか、さっきまで笑顔で談笑していた相手が、

この学校では雲の上の存在である、山百合会の人間だなんて・・・・・・・

シオンはここにはいない二人の悪友の顔を思い浮かべ

 

(・・・・・覚えてろよ、ウリエル、レミエルこの恨みはらさでおくべきか・・・・・)

 

結局、話の成り行きで祥子も同行する事となり、三薔薇のうちの紅白二人のつぼみと歩いている事で、学園中の好奇の眼にさらされる事になるシオンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      薔薇の館への道

「そうなんですか、あの学園長と・・・・・」

 

入学したばかりの志摩子でさえ学園長の恐ろしさを知っていたようで

ここでも学園長の行動力がわかるだろう

 

(仕事してんのか?あいつ?)

 

そうして本気でこの学園の心配をしていると

 

「ところで志摩子、あなたは何故シオンさんを、お姉さま方に紹介しようと思ったの?」

 

祥子が尋ねた、志摩子は少し考え。

 

「勘・・・・でしょうか」

 

「勘?」

 

祥子は、志摩子の言葉を訝しげに聞き返した。

 

「朝、私たちが会った経緯はお話しました、その時にこの人は山百合界に必要で、

今後無くてはならない存在になると思ったんです、根拠はどこにも無いですけど・・・・・」

 

そう言って、軽くうつむく志摩子

 

(鋭いな、初見の人を一度見ただけでこれだけの事を感じ取れるなんて、

あいつの言っていた他の意図とはこの事か・・・・・)

 

シオンはまたしてもウリエルにしてやられたと思い、顔を濁した

 

(本格的に感知能力があるとすると、敵に利用されては厄介だな)

 

そして志摩子にも魔の手が来ることを予想し、彼女の護衛の必要性を感じた

シオンだった

 

「・・・・そう、あまり人と関わらないあなたが、そこまでいう言うの人ならそうなのでしょうね」

 

祥子はぶっきらぼうに言ったが、その中には、志摩子やシオンに対しての

信頼が感じられた。

 

「着きました、ここが薔薇の館です」

 

そうこう言っているうちに、目的地に着いたようだ

 

「お姉さま方はもう中にいらっしゃるはずですわ」

 

(・・・・・・・覚悟を決めるか)

 

シオンは意を決して、薔薇の館の中に入っていった。

     

    


あとがき

       引っ張ってしまってすいません、次回聖と再会させる

     予定なのでよろしければ、次回も読んでください ケイロンでした




学園長って……。
美姫 「まるで、某ゲームのティオレさんみたいね」
いや、名前を出したら、ゲーム名を暈した意味がないんじゃ…。
美姫 「気にしない、気にしない」
まあ、良いけどね…。
美姫 「さて、次回はいよいよ聖との再会みたいね」
うんうん。一体、どんな反応をするのか。
また、他のメンバーの反応や如何に。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
ではでは。



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