「風が気持ちいいな…………」


裏山の頂上で横になり眼をつぶっている圭一がポツリと呟いた

他には誰にもいなく自然が奏でる音だけが聞こえていた

いつもは煩いひぐらしの泣き声も逆によく感じられた

少しすると圭一はウトウトとし始めた

雛見沢に来てから気を緩めることがなかったため一時の安らぎが彼を急速に夢の世界へと招こうとしていた


「それにしても静かだな〜」


意識を保つためか圭一は誰かに話すかのように言葉を発した

雛見沢での活発な表情でも東京の暗い表情でも魔法使いの凛とした表情でもなく

どこか優しい雰囲気が感じられる表情をしていた

しかし、突然笑いを堪えているかの様な表情になった


「みんな苦労してるな」


圭一が楽しそうに言うのと同時に、その場に人が現れた

レナ、魅音、沙都子、梨花、詩音、悟史、羽入とおなじみのメンバーであった

そんな、みんなに共通していたのは全員ボロボロであることだ

切り傷などが主であった


「どうだった?」


「どうしたもこうしたもないよ。おじさん死ぬかと思ったよ」


圭一の質問に心底嫌そうに魅音が答えた


「本当でございますわ。特訓と言うより拷問ですわ」


沙都子は不機嫌そうに答えたが台詞ほど疲労はしていないようだ


「レナもちょっと疲れちゃったかな、かな」


ある意味、部活メンバー最強のレナは、いつも通り笑顔で答えた


「僕は、それほど苦労しなかったのです」


「僕もなのです。これも一ヶ月の特訓のおかげなのです」


みんなより一ヶ月速く修業をしていた梨花と羽入はほぼ無傷だった


「それにしても酷いですよ圭ちゃん。いきなり特訓なんて」


「むぅ、今回は僕もそう思うな」


詩音は純粋に苦労したからの言葉だが悟史自身はそれほど苦労していないが沙都子や詩音の事を心配しての言葉だろう

そんな悟史の姿に詩音は幸福の笑みを浮かべて悟史にくっついていた


「まぁ、そう怒るなって。少しは無茶しないと間に合わないからな」


「そうだね」


苦笑まじりに返す圭一に悟史も同じ様な表情で頷いた


「さてと、それじゃあ今から一ヶ月間みっちり鍛えてやるから覚悟しておけよ」


「「「おお〜!!」」」


圭一の言葉に返事をできたのは梨花と羽入、悟史の三人だけであった








 
 ひぐらしのなく頃に

  〜裏運命編〜


第三話 運命を喰らう者


昭和58年6月

雛見沢・古手神社








「よし、今日はお前らがどこまで成長できたかみせてもらう

俺に最大攻撃を撃ってこい」


そう言うと圭一はみんなから少し離れて静止した

圭一の周りには常人ではわからない、すさまじい結界が張ってあった


「でも圭一ぼくら全員の最大攻撃だと、いくら圭一でも無理なんじゃないかな」


「悪いが俺の結界は、そう簡単に破れないぜ」


「そう言うなら容赦はしないからね」


「当たり前だ」


それと同時に悟史はさらに圭一から離れる

困惑していた面々も悟史の方へと移動する


「じゃあ、僕の合図で放って」


みんな、ためらいつつも頷く


「それじゃあ、いくよ。三・二・一・零!」


悟史の合図と共に圭一に向かって攻撃を放つ



レナは炎の渦を

魅音は風の塊を

沙都子は地割れを

梨花は巨大な氷柱を

羽入は水の刃を

詩音は雷の斧を

そして悟史は闇の暴風を



レナ達の攻撃が混ざり合い、後ろから悟史の暴風が後押しする

圭一の結界が悲鳴を上げる

だが圭一は未だ微動だにしない


「くっ!」


ガラスは割れるような音がした後、強烈な爆風で前が見えなくなる

爆風が収まり視界がクリアになる


そして前にいたのは……無傷の圭一だった


「ふう〜。まさか第一結界だけじゃなく第二まで破られるとな」


少し冷や汗をかいてるようだ


悟史達は呆然としていた


いくら圭一でも自分達が全員で最大攻撃をしたのに無傷だからだ


最低でも傷だらけだと思っていたのに予想を裏切って圭一は、元いた場所から少しも動いていなかった


「なんで無傷なんだ? って顔だな。簡単に言えばお前らの力が足りなかった。説明すると俺の結界は三段階張ってあったんだ」


圭一は三段構えで結界を張って悟史たちの攻撃を防いだ


「一つの結界で耐えるのは、しんどいから三つ張ったんだ。こっちの方が手間はかかるが楽だからな」


「「「「「「「なるほど」」」」」」」


一つの強い結界を張るより、手間はかかるがある程度の結界を三つ張ったほうが効率がいい


「まあ、第二まで破られたことだし合格だ」


「「「「「「やった〜」」」」」」


みんなが喜ぶ、しかし悟史だけが難しい顔をしていた

悟史は今、本当に自分達は役に立てるのか疑問に思っていた

みんなで戦っても圭一の足を引っ張ってしまうだけなんじゃないのか

そんな、悟史の考えに気付いた圭一が悟史に声をかけようとした時――





「あら、ここにいたのね。探したじゃない」





「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」


圭一を含めた全員が驚愕の表情をする

何故ならここには圭一が他の人にばれない様に結界を張っていた

常人ならわかるはずがない、ということは――


「鬼に魅入られたか……」


圭一はポツリとだけ呟いた

そして脳裏には師匠の言葉を思い出していた




『いいか圭一。鬼は、たまに人間を利用することがある』


『どうやってですか?』


『鬼には人を魅了することができる』


『でも、所詮は普通の人間です。そんなに障害にはならないんじゃないですか?』


『そうでもないんだ。吸血鬼みたいに鬼に魅入られた物は半鬼化してしまう。気を付けろよ半鬼化すると鬼の身体能力、人間の頭脳と何かと厄介になるからな』


『はい』




(厄介だな。鷹野さんを殺すわけにはいかないし)


惨劇を止めるよりやっかいになったなと呟き圭一は戦況は見渡す

悟史達は状況を理解できていないし。鷹野さんと戦うことはできない

それに鷹野さん一人とは考えられない

監督と下手したら富竹さんもだろうな


(ちょっと、やばいかな)


鷹野は圭一の考えをわかった様に


「そんなに構えなくても今日はあいさつだけよ」


鷹野が手を叩くと監督と富竹が現れる


「「「「「「「監督!? 富竹さん!?」」」」」」」


「チッ」


圭一は舌を鳴らす


(やっぱり二人もだったが)


「ははっ、圭一君そんなに怖い顔しないでよ」


富竹が笑う。でもその笑いはいつもの富竹とは違っていた


「そうですよ。私達は酒呑童子様の命により伝言を伝えにきたんですよ」


監督も笑う。富竹同様いつもの監督とは違っていた


「酒呑童子? 誰だそれ、俺は知らないぜ」


(酒呑童子っていったら背丈が6m以上で角が5本、目が15個もあったといわれる鬼のことだよな・・・・・まさか!?)


 ・・・
「あいつか」


             ・・・・・
今でも忘れない前の世界でのあの出来事


俺の前で笑いながら人を殺し続けた、あの顔……忘れるわけがない


「酒呑童子様は一週間後に祭りを始めると言っていました」


(残り期限は一週間……か)


「それじゃあ。伝えたからね。さようなら、くすくす」


そう言ったと同時に鷹野達は消えた


場を沈黙が占める


「圭一、あいつとは何なのですか?」


意を決して梨花が圭一に問う


「ああ、あんまり言いたくないんだがな」








『くそ! みんな死んじまった……』


俺はみんなが死んだ後さまよっていた

鬼が攻めてきた時におきた地割れで気を失っている間に夜になっていた


『ちっ! これから、どうすればいいんだ』


体の節々が痛く、意識もはっきりしない




そんな時、あいつに会った




みんなの……死体を食っていたあいつに








「あいつは運命に抗う力……正確に言えば努力するエネルギーを好物にしていたらしい。だからこそ、あの時の俺らはごちそうだったらしい」


みんなが身震いする

当たり前だ自分が鬼に喰われてたなんて聞いたのだから


「まあ、そこでなんだかんなであいつに気に入られた?のかな、と言うことだ」


「そ……そうなのですか」


梨花が否みんなが不安そうな顔になる

圭一は、そんなみんなを見ていたくなかったのか、きわめて明るく




「大丈夫だって。今回こそ俺がみんなを守るから」




みんなを守る――前の世界で誓いできなかったことだ




「「「「「「「圭一(圭一君、圭一さん、圭ちゃん)」」」」」」」




みんなが圭一を見つめてくる

圭一は、うんうんと頷いた後、首を傾げて




「って! 悟史何でお前も乙女チックにしてんだよ! ちょっと違和感無かっただろ! ってかここは詩音は僕が守るからとか言うところだろ!?」




「ははっ、冗談だよ、冗談」




「笑えないって、そんな事より詩音が待ってるぞ」




詩音は圭一の言葉を聞いて

眼をキラキラさせながら悟史を見つめている




「え、え〜と、し、詩音はぼ、僕が守るから」




「はにゃ!」




詩音の頭が爆発して倒れた

とっさに悟史が抱きかかえる

詩音はというと幸せそうな顔をしていた


「詩音さようなら。詩音のことは忘れないから」


「ねーねー、安らかに眠ってください」


魅音と沙都子が半分マジで手を合わせる


「そ、それはひどいと思うな、な」


レナが冷や汗を流しながら苦笑する


一方、圭一は羽入と話していた


「あうあう、圭一は僕も守ってくれるのですか?」


「当たり前だろ。羽入も俺の大切な人なんだから」


「け、圭一〜」


羽入は抱きつこうとしたが、その前に恐ろしい声が聞こえてきた


「今日はキムチとワインのフルコースかしら」


羽入が油がきれたロボット見たいに振り返ると

幼女の姿をした死神がいた

なんだか後ろに巫女姿をして鍬を持っている梨花が見える


「あうあう、梨花許してください」


「ダメよ。いくら圭一が天然シゴロでも許さないわ」


「梨花〜!」


圭一は呆然としていた


(さっきまでのシリアスな雰囲気はどこにいったんだ?)


一週間後に生死をかけた戦いがあるというのに


(まあ、こういうやつらだしな)


いきなり、自衛隊みたいな奴らとやりあったり


拳銃で撃たれたり


そんなことが、あっても動じないみんなだ


この程度じゃ動揺しないと


(なんか、真面目に考えてる俺がバカみたいだ。でも――)




でも圭一は思う



こういうやつらだからこそ俺は信頼することができたんだろうな




「よし、みんな!――」




みんなが圭一の事を見る


すると圭一は微笑み右腕を天へと上げる






「未来を掴むぞ!」






みんなも笑顔になり腕を天に上げ






「「「「「「「おお〜!!」」」」」」」






明らかになりつつある敵






決戦は一週間後






迎えうつは未知の鬼






運命の歯車は着実に時を重ねていた











あとがき


このたびは第三話運命を喰らう者を読んでくれてありがとうございます

梨花「敵の正体がおぼろげながらわかったのです」

酒呑童子、知ってる人は知っている鬼だな

梨花「昔話にでてくるような化け物と戦うことになるですか?」

うん(即答)

梨花「言外に死ねと言ってるのかしらクスクスクス」

恐っ! 素の梨花ちゃん初登場!?

梨花「フフフそんな作者は私たちより先に地獄行きチケットあ・げ・る」

あ、あの許してもらえないでしょうか

梨花「うん、それ無理(即答&いい笑顔で)」

二話連続でなん…………い〜〜や〜〜〜〜!!

梨花「次回は第四話雛見沢・人鬼戦争 バトル開始なのです」

け、圭一達が勝つことを祈っていてく……だ…………さい………………




修行の最後に待っていたのは……。
美姫 「敵さんから挨拶に来るとはね」
しかも大物の名前が。
美姫 「無事に済むのかしら」
一体どうなる!?
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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