『HOLY CRUSADERS』






 
    序幕「終わりと始まり」




1931年、アメリカテキサス州にあるとある教会。そこに人は来るのだろうか?特段汚れているというわけではないし、

古いというわけでもない。しかし、その雰囲気はもう10年近く誰も入っていないようなものだった。正面にあるのはイエスの像。

教会ならどこにでもあるものだが、この教会のイエス像は他の教会で見られるものより神々しく見える。

が、その像の前にある祭壇にはやはり何年も人が立ったという形跡はない。教会であって教会にあらず。

むしろ、境界であって教会にあらずというような雰囲気の教会。それがこの教会を的確に表現したものだろう。

「もう・・・・3年・・・・か・・・・。」

 しかし、一人だけ人がいた。外見から見るとまだ20代前半、いや、10代後半にも見える。

しかし、その外見とは裏腹、老婆であるかのように老いた雰囲気を受ける。まるで彼女だけを置いて時が過ぎて行ったかのようである。

彼女はゆっくりと顔を上げるとそのまま目を閉じる。一体何を想っているのだろうか?それは誰にもわからない。

しかし、それはいい思い出なのだろう。彼女の周りにはやさしい雰囲気が漂っていた。

「どこに・・・いったのかなぁ・・・・。」

 しかし、彼女は急に顔を曇らせると、うつむいて涙を流し始めた。

「どこに・・・いるの・・・?」

 その涙はとどまることを知らず、次々とあふれてくる。彼女は涙をとどめようと両の手で顔を覆った。

しかし、それでも涙は止まらない。

「会いたいよ・・・シルフィ・・・・」

 彼女は泣きじゃくりながら一人の人物の名前を漏らす。しかし、いくら泣いてもその名前の人物は現れることはなかった。

彼女はただただステンドグラスから差し込む七色の日の光に照らされ、その場で泣き崩れていた。

――――――――――、ドックン。

「―――――――――!?」

 泣き崩れていた彼女は、不意に自分の胸に手を当てると座っていた椅子から転げ落ちた。

「かはっ・・・」

(とうとうきちゃったか・・・)

 彼女はそう思いながら、力の限りを尽くし祭壇の方に向って這っていこうとする。

が、思い通りに体が動かず、その場でもがくかのような動きになってしまう。それでも這うように祭壇の元まで行こうとする。

「が・・・・・あ・・・・・・」

(覚悟は・・・してたんだけどね・・・) 

彼女は既にこうなることを知っていたのだろうか?しかし、もしそうならば、このような場所にいるだろうか。

だが、事実として彼女はここにいるのである。彼女はやっとの思いで祭壇のそばまでやってきた。

(やだ・・・いやだ・・・)

「いやだよぉ・・・・死にたく・・・・ないよ・・・・」

 彼女はそういいながら力いっぱいイエス像に向って手を伸ばす。しかし、それが届くことはない。

(まだ・・・・あってないのに・・・・。まだ・・・・死にたくないのに・・・・)

 彼女は全力を尽くしたのか、力なく手が地に着き、そのまま横になるように仰向けになった。

(まだ・・・走りたいのに・・・。まだ・・・・生きたいのに・・・・。)

 彼女は再びあるだけの力、命を尽くすだけの力を以って手を天に向け、つぶやく。

「まだ・・・・生きたいよ・・・・」

 彼女は願った。切に。生きたいと。まだ生きたいと。まだ走り続けたいと。

 そのとき、何年も開くことがなかったであろう教会のドアがすさまじい音を立てて開かれた。

彼女の耳にはそれが届いたのだろうか?彼女はドアの方に顔を向けた。

が、既に彼女の五感はほとんど失われており、ドアを開けた人物が誰なのか確認することはできなかった。

「・・・・・・・!!!!」

 ドアを開けた人物は何かを大声で叫びながら彼女に駆け寄った。

しかし、彼女はその人が何を言っているのか聞き取ることはできず、力なくその霞んだ視力で入ってきた人物をうつろにみる。

入って来た人は彼女を抱き上げると、必死になって彼女の名前を呼びかける。

しかし、彼女はそれに反応することはなく、力なく横たわっていたままだった。

入ってきた人は不意に鞄からビンを出し、その中を口に含むと彼女に口移しでそれを飲ませた。

彼女はその瞬間、雷に打たれたかに似たような衝撃を受け、そのまま、意識を闇のかなたへと落として行った。









――――――どれだけの時間がたったのだろう?長い、長い時間眠っているような気がする。

「ん・・・・ここは・・・・」

 ここはいったいどこだろう。

(教会にいたはずなのに・・・天国かな・・・・?)

 目を覚ました彼女は起き上がって、周囲の確認をする。しかし、周りのものを見てもここがどこなのかさっぱりわからない。

いや、むしろ、周りを見れば見るほどわからなくなる。なぜならば、自分の周りにあるものが自分の見たことのないものばかりだったからである。

「やっぱり、死んじゃったのかなあ・・・・」

 彼女は、ふと視線を窓の外に移す。そこに彼女が見たのは、やはり、自分の知らない街並みだった。

少なくとも、彼女の記憶がある範囲では、このような高いビルはなかった。

 彼女はしばらくそのまま窓の外を眺めていると、突然ドアが開かれた。入ってきた女性はシスターだろうか、修道服を着ている。

入ってきた女性は目を見開いて、まるで幽霊でも見たかのように驚いて走って部屋を出て行った。

彼女はそれをただただ眺めていたが、再び視線を窓の外に移す。

「目を・・・・覚ましたのね・・・。」

 彼女は再びドアのほうを向く。そこには、息を切らせた一人の修道服を着た女性が立っていた。

しかし、その服装はさっきの女性とは違い、どちらかといえば階級が上のように思われた。

「あなたは・・・?」

 彼女はしっかりとした口調で入って来た女性に誰なのか尋ねる。

「パトリシア。パトリシア・シュトラウスよ。おはよう。ロゼット・クリストファ。」

 ロゼットと呼ばれた彼女は別途から飛び起きると、パトリシアの肩を揺さぶって、

「あなた、私を知ってるの!?教えて!ここはどこなの!?」

 疑問に思っていることを矢継ぎ早に聞いた。

「落ち着いて、ロゼット。」

パトリシアはそういってロゼットをなだめ、ベッドに座らせる。

「本当に聞いたままの人ね。あなた。」

 ロゼットにはパトリシアのいったことが何のことだか理解することはできず、頭に?マークをいくつも浮かべていたが、

パトリシアはそんなことを気にせず続ける。

「本当にケイトおばあ様の言ったとおりの人ね。」

 その言葉にロゼットは驚愕した。彼女のかつての上司であるシスター・ケイトを知っているだけではなく、

そのケイトおばあ様と呼んだことが彼女には信じられなかったのだ。

「ここは・・・どこなの・・・?」

 ロゼットは驚きを隠せなかったが、今一度ここがどこなのか訪ねる。それに対して、パトリシアは神妙な面持ちで答えた。

「アメリカよ。ここはアメリカのニューヨーク。」

「そんなことあるわけないでしょ!ニューヨークはもっと・・・・!」

 声を荒げたロゼットをさえぎるようにパトリシアが続ける。

「西暦2000年、アメリカのニューヨークよ。」

 その言葉にロゼットは途中まで言いかけていた言葉を失った。

(西暦・・・・2000年?)

「う、嘘よね・・?」

 ロゼットはそうでないことを祈るような、まるで物乞いをする人のような表情でパトリシアを見た。

しかし、パトリシアは表情を変えず、ロゼットに話す。

「本当よ。あなたは約70年の間眠り続けていたの。」

 ロゼットはすべての希望を奪われたような表情をしたが、ある矛盾点に気づいて声を上げた。

「そんなことないわよ。わたしは・・・クロノとの契約で30年生きられないって・・・

それに、仮に70年近くたっているなら、私、もうおばあちゃんになってるはずよ。

あと、仮に70年眠っていたのが事実としたら、何で覚醒してすぐにこんな話ができるの?」

 ロゼットのその指摘に対して、パトリシアはやっと本題に入れるといった表情を浮かべて話し始めた。

「そうね。ケイトおばあ様もそういっていたわ。わかったわ。すべてを話しましょう。ロゼット、あなた命の聖水(エリクサー)って知ってる?」

「知ってることは知ってるけど・・・」

「あなたはね、エリクサーを飲んだのよ。まさに死に逝こうとした瞬間に。」

 しばらくの沈黙の後、ロゼットのほうが口を開いた。

「そんなわけないわよ。私は、あの時教会で・・・・あれ?」

 ロゼットはそこまでしゃべると、ふと何かを思い出したかのように首をかしげた。

「エリクサーの効能は知っているでしょう?」

「それは・・・・飲んだ者に永遠の命を与える・・・っていうけど、そんな都合のいいことあるわけないじゃない。」

 ロゼットは軽くそういったが、パトリシアはそれに補足を付け加える。

「正確には完全に精製されたエリクサーならというのが抜けているけどね。」

「でも、私がそれを飲んだっていう証拠が・・・・」

 ロゼットのその言葉に、パトリシアは一言で答える。

「本来、30年経たずして死ぬはずだったあなたがこうして生きていることが何よりの証拠じゃないの?」

 ロゼットは言葉を詰まらせて最後に引っかかることをパトリシアに尋ねた。

「誰が私に飲ませたっていうの?」

 その言葉に対してパトリシアは少し顔をしかめて言う。

「その人もあなたと一緒に発見されたわよ。彼もエリクサーを飲んだのでしょうね。

二人のそばにエリクサーを入れるビンが落ちていたわ。」

「私は誰かって聞いてるの。」

 ロゼットの再びの声の後、しばらく沈黙が続いた。その間、互いにお互いの目を真剣に見つめていた。

パトリシアはロゼットの瞳に宿る確かなものを見て取ったのか、真剣な表情でエリクサーを飲ませた人物の名を告げる。

「シルフィ・H・ヒースクリフよ。」

 その言葉にロゼットは完全に言葉を失った。

(シルフィ・・・・が・・・・?)

「あなたと一緒にエリクサーを飲んだのはシルフィ・H・ヒースクリフよ。」

 ロゼットは放心状態でパトリシアの言葉を聴いていた。

「彼がどこでエリクサーを手に入れたのかはわからないけど、事実として30年しか持たないだろうといわれてたあなたがこうして生きてる。

それは事実よ。」

 ロゼットはしばらくうつむいていたが、顔を上げると今にも泣き出しそうな表情でパトリシアに尋ねた。

「彼は・・・・シルフィは・・・・どこに・・・・いるの・・・・?」

 と。

「隣の病室よ。」

 パトリシアはそう答えた。するとロゼットははじかれる様にベッドから立ち上がり、隣の病室に向かう。

幸い角部屋だったため、隣の病室はひとつしかなかった。ロゼットは勢いよくそのドアを開けて中に入る。

「シルフィ!!」

 果たして、彼はそこにいた。ロゼットが今まで眠っていた部屋とまったく同じつくり。その部屋の中、シルフィ・H・ヒースクリフは眠っていた。

「まだ彼は目覚めていないわ。」

 不意に後ろからパトリシアの声が聞こえた。ロゼットは振り返ることなくシルフィのほうを見る。

「いつ・・・目覚めるの・・・・?」

 震える声でパトリシアに振り向くことなく尋ねるロゼット。その声は震えの中に、早く目覚めてほしいという思いも感じ取れた。

「わからないわ。あなたと同じものを飲んだから、もう目を覚ましてもおかしくはないわ。

でも、正確にはわからないわ。今日か明日か。・・・・・はたまた何年後か・・・・。」

 パトリシアのその言葉にロゼットはその場にひざをついた。

「そん・・・・な・・・・せっかく会えたのに・・・・やっと会えたのに・・・・。」

 ロゼットは泣いていた。ロゼットにとって彼はなくてはならない存在だったのであろう。

まるで肉親を失ったかのように声を上げて泣いていた。

パトリシアは何もいえず、そのままたっているしかなかったが、しばらくしてロゼットを抱きかかえるとロゼットの部屋に連れて行った。







 ロゼットが目覚めて早くも2ヶ月がたった。最初の1ヶ月は食事もろくにとらず、部屋に引きこもっていたが、

ここ最近は修道院で働くようになってきている。自分の中で、何とか折り合いをつけることができたのであろう。

しかし、吹っ切れたというわけでもないようだ。修道院の仕事といっても、実際にはあまりすることはなく、

主に教会の掃除が仕事といえる仕事である。が、ロゼットは自ら進んでシルフィの世話役を買って出た。

彼と一緒にいたいという気持ちと早く目覚めてほしいという気持ちを胸に秘めてロゼットは教会の仕事に励んでいた。

「でも、70年も経っちゃったんだな・・・・。」

 ロゼットは掃除が終わり、洗濯物を干しながらポツリとそうつぶやいた。

(昨日のことように思い出せるんだけどな・・・・)

 彼女はそう思いながら目を閉じた。昨日のことのように思い出せる。それは歴史に記録されなかった、もうひとつの歴史。

人間と悪魔の戦いの歴史。ロゼットはその中で多くのものを得て、多くのものを失った。

しかし、彼女にとってそれはとても大切な宝物のような思い出だった。

「ロゼット。」

 ロゼットは思い出に浸っていたため、何気なく後ろからかけられた声に不意を突かれ、驚いて振り返る。

「シスター・パトリシア!?もう、驚かさないでくださいよ。」

 パトリシアはそんなロゼットを見て微笑む。パトリシアはそのままその場に立って、

「ぼーっとしてるからよ。それよりも、よかったら、あとで買出しを頼めないかしら。

次の日曜日のミサに使うキャンドルの数が足りなくなったの。」

 パトリシアのその頼みにロゼットはすぐにわかりましたといって頷く。



 ニューヨーク市内のとある街角。ロゼットは買い物を済ませて車で帰路に着いていた。

後部座席には頼まれた品のキャンドルや、食料品などが置かれている。ロゼットの乗った車は交差点の赤信号に捕まって停車した。

ロゼットはふと道端を歩く人たちに視線をやる。

(平和だなあ・・・・)

 ロゼットはその平和な光景を眺めながら微笑んだ。彼女が得をすごしたニューヨークにもこのような風景は当たり前のようにあった。

しかし、彼女たちはその裏で何百とも知れない数の悪魔を葬ってきた。また、その悪魔たちの犠牲になったものも数知れない。

「70年・・・経っちゃんてるんだからね・・・。」

 ロゼットは当たり前の町の姿を見てそうつぶやく。悪魔のいなくなった町。できればもう少し早く見たかったのであろう。

 信号が青になり、再び車が動き出す。かつてはこのように車を動かすことはなかった。

車を運転し始めたころにはすでに悪魔祓いをしていたため、車の運転といえば、逃げた悪魔を追うときか、現場に向かうときだけだったからである。

 再びロゼットは70年というときの流れを感じていた。

 ロゼットは教会につくと、パトリシアにキャンドルなどを渡し、その足でシルフィの眠る部屋に向かう。

同じ敷地内にある小さな宿舎。しかし、ニューヨークの市街だけあって窓の外には高層ビルがいくつも見て取れる。

ロゼットはシルフィの眠る部屋の前に立つとそのドアを開けた。

シルフィが目覚めているかもしれないという期待とまだ眠っているかもしれないという不安の相反する気持ちを心にドアを開ける。

 部屋の中にはいつもと変わらず眠ったままのシルフィが横になっていた。

「まだお休み中か。」

 ロゼットはそうつぶやくと、ベッドのそばのいすに腰かける。

「もう70年もたってるんだよ。早く・・・・おきなよ。」

 ロゼットはシルフィに語りかけるようにしゃべり、その額に手を当てるそのままロゼットはシルフィの顔をしばらくの間じっと見ていた。

30分ほど足っただろうか、ロゼットは手を離し、立ち上がると静かにその部屋を後にした。



 2001年7月。ロゼットが目覚めてから早くも一年がたった。

相変わらず教会の仕事は掃除とミサの準備ぐらいなもので、大して忙しいということはない。

しかし、この日、ロゼットの姿は協会にはなかった。それでも街は平和で。

一人の人間がいるべき場所にいてもまったく何も変わらない。日常に埋もれた平和が今もニューヨークを包んでいた。

 ニューヨーク近郊の小さな村。いや、正確にはその跡地といってもいい。そこにロゼットはいた。

そこは戦いの始まりの場所であり、ロゼットの故郷でもある。ロゼットは自分が目を覚まして1年経って始めてこの地に立った。

今まで忘れていたというわけではない。ただ、ここに来るという決心がつかなかっただけだった。

しかし、覚醒してから1年たち、現実を受け入れる覚悟ができたからこうしてこの場所に立っているのである。

(みんなげんきだったのかな・・・・。)

 ロゼットは人気のまったくない、おそらく10年近く、誰も入ってはいないであろう村の後を一人、目的地に向かって歩いていった。

村の少しはずれにある丘の上。そこに一軒の廃屋があった。ロゼットは少しためらったが、その中に入る。

その廃墟はかつてロゼットが住んでいた家。その中はロゼットが暮らしていたときから少し変わっていたものの、

ほとんど変わってはいなかった。

「懐かしいな・・・・。」

 ロゼットはそうつぶやきながら部屋の真ん中にあるテーブルのいすに座り、部屋の中を見回した。

数分して、その椅子を立ち、かつての自分の部屋に向かった。その部屋の中も、ほこりをかぶって入るものの、

かつてのまま時が止まったかのように存在していた。

「そうだ・・・・」

 ロゼットはふとある場所のことを思い出して自分の部屋を跡にし、すべての始まりの場所、クロノとの出会いの場所に向かった。

数分後、ロゼットはその場所に着いた。

(崩落しちゃったんだ・・・。)

 しかし、その場所につながる洞窟はすでに崩れていて、岩で塞がれていた。

ロゼットはしばらくその場にたたずんでいたが、顔を上げるとその場をあとにした。

そのロゼットの顔はすがすがしく晴れ渡る青空のように明るかった。

 午後、ロゼットの姿は教会にあった。自室で、家から持ってきたアルバムを一人眺めている。

とはいえ、1920年代前半、カメラはそれほどまでに普及しておらず、写真の数は数えられるほどしかない。

ロゼットはそのアルバムの最後の一ページに机から取り出した一枚の写真をおいた。

その写真はあの戦いを共に戦い抜いた5人の写った唯一の写真。

ロゼットはそれをアルバムに入れるとしばらく眺めた後、アルバムを閉じて机の中にしまった。

そのまま机を離れると、ベッドに倒れこみ、昔の出来事を思い出すように目を閉じた。



同日深夜。ロゼットはふと目を覚ました。

(そういえば、夕ご飯食べてないし、お風呂にも入ってないや・・・・。)

「ん・・・・。」

 ロゼットはけだるそうにベッドから起きると備え付けの冷蔵庫から牛乳を、棚からクロワッサンを取り出して食べ始めた。

全部食べ終わるとごみを捨てて、タオルと下着、寝間着をもって一回の風呂に向かった。

30分後、ロゼットは自室に戻り、ドライヤーで髪を乾かすと、再びベッドにもぐりこもうとした。

(あ、今日はまだシルフィのところに行ってない・・・。)

 ロゼットはベッドから出ると隣の部屋の前に立った。いつもと同じ気持ち、目を覚ましているかもしれないという期待と、

まだ眠っているかもしれないという不安の気持ちで。ロゼットはしばらくその場にたっていたが、ついにそのドアを開けた。

ゆっくりと。そして確実にドアが開かれた。

(・・・・・・・・え・・・・・・・?)

 ロゼットは一瞬自分を目を疑った。

―――――――、そこにいたのはベッドから起き上がり、外を眺めているシルフィの姿だった。

 シルフィは人の気配に気がついたのか、ドアの前に立つ放心状態のロゼットのほうを向いた。

「おはよう、ロゼット。あ、時間的にはこんばんはになるのかな。」

 シルフィのその言葉でロゼットはシルフィが目を覚ましたということを認識した。

「シルフィ!!!」

 ロゼットははじかれるようにシルフィに抱きついて泣きはじめた。シルフィは一瞬驚いたが、ロゼットを受け止めると、

胸の中で泣きじゃくるロゼットを優しくなでた。

「ごめん。なんか、待たせちゃったみたいだ。」

 シルフィはそういうと、ロゼットが落ち着くまで、すっとそのままでいた。ロゼットは30分近く、

泣くとゆっくりとシルフィの胸にうずめた顔を上げた。

「笑ってよ、ロゼット。ロゼットに涙は似合わないからさ。」

 シルフィはそういいながら、ロゼットの頬に手を当てると、目にたまった涙を指で拭いた。

ロゼットは泣き顔ながらも、笑めを作った。

「バカ・・・・。ずっと待ってたんだ方から。今も・・・・昔も・・・・。」

 そういってロゼットは再びシルフィに抱きついた。シルフィはそれを受け入れ、ロゼットの髪を手でときながら謝った。

「ごめん。謝るよ。長い間一人っきりにしちゃって。」

 ロゼットは抱きついたまま、顔を上げることもなく答えた。

「いいよ。こうして会えたんだから。でも・・・・お願いだから、もう独りっきりにしないで・・・・。」

 ロゼットは再び泣き始めた。一方、シルフィの瞳にも光るものがあった。


                 だんだんと夜がしらみはじめている。

ロゼットの心に、シルフィの心に再び光が差し込んだように、昇り始めた太陽の光が窓から差し込み二人を明るく照らしていた。






あとがき

HOLY CRUSADERSの序章です。序章ですのでまだとらハキャラは出ていません。

(フィーネ)じゃあ、とらハキャラは何幕ぐらいで出てくるの?

なるべく早く出すけど、多分、2幕の終わりごろか3幕になってからだな。

(フィーラ)でも、まだ物語りは動いてないわね。

いきなり動くわけないだろ。2幕か3幕で動くって。

(フィーネ)ちなみに、何幕ぐらいで完結しそう?

いきなり完結の話しなんかするな!!わかるわけないだろうが!!

(フィーラ)それはそうね。で?展開は?

いや、それを行ったたらネタばれじゃないか。

(フィーネ)でもさ、あんた基本的にオリジナル好きよね。

んー・・・。なんというか・・・苦手なんだよな。こう・・・でききったキャラで話を作るのが。

(フィーラ)まあ、文才無いってところがこんなところにでてたんだ。

失礼だな・・・といいたいが、まさにその通りだが・・・。

(フィーネ)じゃ、早く第一幕書きましょう。

おう!!では、第一幕、「始まりの鐘」で合いましょう!



遂に始まりました、新シリーズ。
美姫 「頑張って〜」
ファイトだよ〜。
美姫 「フィーネちゃん、フィーラちゃん、しっかりね〜」
怪盗Xさん、二人に負けないで下さい〜。
美姫 「……」
……。
美姫 「どういう事かしら?」
そっちこそ。
美姫 「私は二人を応援してるのよ」
だから、俺は怪盗Xさんを応援してるんだ。
美姫 「アンタが言うと、何か違う意味に聞こえるんだけれど…」
あ、あはははは。気の所為だよ決して、二人の虐めに負けないでなんて意味じゃないぞ。
それよりも、お前の応援も気になるんだが。
美姫 「や〜ね〜。私だってお仕置き頑張れ♪って意味じゃないわよ」
そうだよな。
美姫 「そうよ」
あはははっはは。
美姫 「うふふふふふふ」
……。
美姫 「……」
と、とりあえず、次回を待ってます。
美姫 「じゃ〜ね〜」



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