この話はSS【八神の家】の幕間ではなく、もしも(IF)の話です。

ですのでSS本編がもしStSまで進めば、必ず相違点が出る代物です。

ですから二次創作のIFを了承できる剛の者以外の方は読まれない方が賢明です。

 

注1)リインフォースが空に還らず闇の書の闇はどうにかなっています。

注2)階級に関しては自衛隊で使用されているものを流用していますが、将官の階級は原作通り第二次世界大戦時の日本軍の階級名に倣っています。また作中階級が明記されていない面々の階級については作者の捏造設定です。

注3)速人の外見年齢はリインフォースと同じかちょっと幼いぐらいです。(髪の長さはリインフォースとフェイトの中間程度で、ストレートです)

 

 

 

 

 

 

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魔法少女リリカルなのはAS二次創作

【八神の家】

とある可能性編 一つめ:とある日常

 

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「この3件が本日までに処理すべき案件です。そしてこの2件・5件・4件が明日・明後日・明明後日が期日の案件です。又明確な期日が無い案件が11件在りますが内5件は本日中にに処理若しくはその姿勢を見せた方が宜しいでしょう。

  尚本日は14:10〜16:35まで聖王教会でグラシア少将と謁見の予定があります。ただし終了時間が延長される可能性が高いので、謁見が始まるまでが本日事務処理に当たれる時間とお考え下さい。

  報告は以上です」

  報告を部隊長室ではなく一般の職場(ロングアーチスタッフが居る)の方で受けたはやてはあまりの仕事量に頬を引き攣らせていた。尚それを聞いていたグリフィス達は、はやてに課せられたあまりの仕事量にはやてから眼を逸らしていた。

「あ、あはは……うちの耳がおかしくなったんかな……なんか信じられん仕事量が在るように聞こえたんやけど……」

「復唱が必要ですか?」

「あはははは…………聞き間違いやないんやね……」

「復唱せずとも宜しいのですか?」

「大丈夫や………嫌になるぐらいはっきり聞こえたから……」

  乾いた笑みを浮かべながらそう言うはやて。

  そんな遣り取りを見ていたリインフォースは溜息を吐きながら速人に話しかけてきた。

「また急に期日変更を言い渡されたのか?」

「その通りです」

「……はあぁっ、毎度毎度飽きずに―――」

「―――不穏当な発言内容と推測されますので発言を控えた方が宜しいと進言させて頂きます。リインフォース一等陸尉」

「………迂闊な発言をするところだったな。諌めてくれて感謝する」

「業務内容の範疇の事柄に対して謝辞するのは控えた方が宜しいかと申し上げます。

  それと遅れて申し訳ありませんが、上官の発言を遮った無礼を御詫び申し上げます」

「はあぁっ………解った」

  若干疲れと寂しさの混じった眼をしたリインフォースだったが、溜息の後僅かに眼を瞑って再び眼を開いた時はいつもの凛とした眼だった。

「では八神二佐、部隊長室に向かいましょう。

  ここでは恐らく時間内に課せられた仕事を処理できないでしょうから」

「あ…そやね。

  それじゃあみんな、今日も一日頑張ってなー…」

  若干気落ちした雰囲気でリインフォースと一緒に部隊長室に向かうはやて。

  それを気の毒そうに、しかし眼は合わせぬまま見送るロングアーチスタッフ達。(迂闊に眼を合わせたなら過労で入院しかねない程の仕事が自分達に降り注ぐと知っている為)

  そしてドアの向こうにはやて達が消えた後重苦しい雰囲気が消え、皆の疑問を代表するようにグリフィスが速人に話しかけてきた。

「えーと……八神部隊長の仕事っていつもあんなに多いのかな?天神三等陸士」

「いいえ、あのような仕事量は小数第二以下切捨てで週に2.4回です」

「って、態々立って報告しないで座って仕事しながらでいいから」

「解りました。では失礼ながら着席し業務に当たりながら応答させて頂きます」

  そう言って着席して業務に戻った速人を確認したグリフィスは改めて速人に尋ねた。

「で、話は戻るけど、八神部隊長の仕事って実際どれくらいの量なのかな?

  何だか案件も多いけどそれ以上に忙しそうなんだけど………1案件当たりの仕事量って解り易く言うとどれくらいなのかな?」

「八神二等陸佐が受け持つ平均的な1案件の処理時間は平均的な部隊長ならば一日1案件捌くのが限界です」

「そ、そんなに時間かかるのが大量にあるのによく捌けるな……」

  感心してるのか呆れているのか判断が難しい声で呟くグリフィスの声には応じず、黙々と仕事を捌く速人。

  それを見たグリフィスは相変わらず会話が続かないことに苦笑しながらも速人に尋ねてみた。

「どうして八神二等陸佐があんなに仕事を裁けるのかな?」

  速人が会話しやすいように気を使って話題を振ったグリフィスだったが、

「私は与えられた業務を正確且つ素早く処理するだけが仕事の存在です。

  ですので、そのような推測でモノを語る質問には返答仕兼ねます」

と、実に模範的な回答が返され、会話はあっさり終わった。

「あ……うん……。変な質問をしたけど気にせず仕事に戻ってくれ」

「解りました」

  それで会話は終了し、黙々と常識を疑う程凄まじい速度でコンソールを叩き続ける速人。

  そんな速人から溜息を吐きつつ視線を外したグリフィスを見ていたアルトがルキノにこっそり話しかけた。

「相変わらず全然会話が続かないみたいだけど、速人さんと会話が続く人って見たことある?」

「1回だけ昼休みにリインフォースさんと個人的っぽい話をしてるのを見たけど……」

「やっぱりいつもどおりだった?」

「うん……」

「はあっ……やっぱ八神部隊長達が気にかけるほどの人には思えないなー。

  そりゃ仕事は凄く出来るけど…」

  溜息混じりに呟いたアルトだったが、グリフィスから視線で「仕事」と告げられ慌てて仕事に戻るアルトとルキノ。

  そして速人が振りまく程好い緊張感が場を満たしながら時間は過ぎていった。

 

 

 

                                   

 

 

 

    ―――食堂―――

 

 

 

「あーあ、べつにここの飯がマズイわけじゃねえけど、はやてやハヤトが作った飯が食べてえなあ……」

「気持ちは解るが無茶を言うな。

  主はやても天神も今はそんな暇などどこにもあるまい」

「特に速人さんは住んでる場所も大分違うから、お弁当にでもしてもらわなきゃもう食べられないんじゃないかしら?」

「げー……」

  心底残念で嫌そうな顔をしながら天井を仰ぎ見て呻くヴィータ。

  と、それに昼食を食べ終わって談笑していたフォワードの4名が気づき、スバルが代表する形でヴィータに尋ねてきた。

「ヴィータ副隊長、どうしたんですか?天井を見ながら呻いたりして」

「あん?……なんでもねえよ」

  チラリとスバルを見やって雑にそう返すヴィータだったが、その雑な対応と若干のからかいを篭めてシグナムがヴィータに代わってスバルに告げる。

「気にするなスバル。ただの懐郷病だ」

「え?……ヴィータ副隊長どこか悪いんですか!?」

「む……言い方が悪かったな。懐郷病とはホームシックのことだ」

「なーんだホームシックですか。懐郷病なんて聞き慣れないんで凄く重い病気かと思っちゃいましたよ。

  ……だけどホームシックだなんて……ヴィータ副隊長も意外と見た目通りに可愛いところがあるんですね?」

  安心して気が緩んだのか、言わなくていい事まで喋ってしまうスバル。

  ティアナが慌てて口を塞ごうとしたが間に合わず、額に手をついて諦めの溜息を零す。

  そんな光景を視界に収めながらヴィータは迫力のある声でスバルに話しかける。

「…………確認もしないで決め付けるその単純思考直せって散々言ったよな?

  おまけに「意外」にとか他にも色々言ってくれやがって……明日は目玉も動かせねえほどティアナとセットで扱くから覚悟しとけよ」

「わ、私もですか!?」

「当ったり前だろ。こいつの手綱握んのはお前の役割だって散々言ってるだろが。

  コンビ組んでんなら相棒の不始末は一緒に受けろ」

「はい……」

  ガクッと肩を落として素直に返事をするティアナ。

  しかし自分のミスでティアナまで巻き込んだスバルとしては、自分が扱かれる分には兎も角ティアナまで扱かれるのは納得いかないらしく、やんわりとだがヴィータに反論した。

「えーと、ヴィータ副隊長。さっきのはあたしのミスなんでティアナは関係無いと思うんですけど……」

「…………はあぁぁ。だからなのはの考えは(あめ)えって言ったんだよ……」

  本当にしょうがないといった感じで溜息を吐きながら独り言を呟いたヴィータを見、自分が尊敬する人を馬鹿にされたように感じたスバルはヴィータに少し不機嫌さが混じった声で反論した。尚それを止めようとしたティアナはシグナムに制され、静観していたエリオとキャロはおろおろしていた。

「たしかにあたしはまだまだ全然弱いですけど、だからってなのはさんを悪く言わないでください」

「はあぁぁ…………あんなぁスバル、指揮する奴ってのは指揮しなきゃいけない奴の行動に責任持たなきゃなんねえんだよ。

  暴走した奴にも問題あんのは当然だけどな、暴走を許すような管理能力の低い指揮者にも問題はあんだよ」

  訓練時の鬼教官の顔しか知らなかったフォワードの面々は指揮者の何たるかを説くヴィータを見、個人差はあるが驚いていた。

  そんなフォワード面々の驚いた視線を受けながらもヴィータは更に話を進める。

「作戦中一人が暴走して死傷者が出たとして、「暴走した奴にだけ責任がある」じゃあ通らねえだろうが。

  ……そりゃあ命令を守って死ねとまでは言わねえけど、少なくとも現場で命令無視する時は自分以外に迷惑振りまいた挙句大抵は仲間を死ぬかもしれない危険な目に合わせんのは覚悟しとけよ。

  もう解ってると思うけどな、さっきなのはが甘えって言ったのは実戦を想定した事を教えもしないで魔法とか戦術とかの訓練ばっかしてっからだよ。

  ……スバル、もし実戦の時お前が敵の嘘の情報をあっさり信じて命令無視して暴走した挙句人死に出した時、お前どうするつもりだ?つか考えたことあったか?」

「…………………」

  未だ実戦経験の無いスバルには自分の行動で仲間が死ぬかもしれないということに実感は湧かなかったが、少なくとも自分の行動が周囲に多大な悪影響を及ぼすことがあると知り俯いて沈黙してしまった。

「気にすんなとは言わねえけどあんま落ち込むことはねえぞ。そこら辺の自覚や認識が甘いのはアタシやなのはが何もしなかったからなんだしな。

  ……ま、言いたい事は大体言ったから明日の訓練はちょっと厳しいぐらいで勘弁しといてやるよ。そんかわり今言った事はスバルだけじゃなくてティアナ達も頭に叩き込んどけよ」

「「「「はい!」」」」

「よし。うんじゃ散っていいぞ」

  その一言で丸く収まりそうだったのだが、空気を読めないと言うか空気を見れないと言うか、若しくは単に学習しないだけとも言えるスバルは態々最初の疑問をヴィータにぶつけた。

「ところでヴィータ副隊長、どうしてホームシックになんかなってたんですか?」

「………………………ティアナ、もしかしてこいつ言っただけじゃ学習しねえのか?」

「あー………はい。

  て言いますか、言っても学習しませんし、かといって叩いても戦闘関連以外は学習しません」

「………ティアナ、もしこいつが実戦で暴走しかけたら注意するより足撃ってとりあえず止めとけ。それが出来なきゃこいつ残して即座に引き上げてアタシかなのはを呼べ。

  最低でもとりあえずこいつの頭を鍛え上げきる時まではそれで通せ。解ったな?」

「え?でも………」

「暴走した奴を比較的無傷で取り押さえんのは倒す時の3倍手間かかんだよ。

  実戦でスバル止めんのにお前とエリオとキャロを使ったら敵はどうすんだよ?

  まあ………納得出来なかったら少なくてもスバルを無視して三人だけで事に当たれ。そんでとっとと終わらせたほうが安全だ」

「はい………」

  心情的には納得がいかないがヴィータの言っていることは至極尤もなので渋々了解するティアナ。

  とりあえず納得したティアナに満足したヴィータは椅子から立ち上がりティアナの背中を叩いて話す。

「ま、納得いかねえだろうが理解しとけ。憎まれ役も指揮する奴の仕事の一つだってな」

「………はい」

「よし。

  さて………それじゃあスバル、午後は頭の訓練だ。デスクワークはしばらく無いようにしてやっから、知恵熱で頭が溶けるほど扱くから覚悟しろよ」

  そう言ってスバルの手を強引に引いて食堂を出て行くヴィータ。

「え?なんで!?どうしてですかー!?」

  そんなスバルの抗議と悲鳴の混じった声は食堂のドアが閉まると聞こえなくなった。

「しかしまあ………まさかヴィータがあれほど人にものを教えるのが板につくとはな」

「そうね。六課に配属される前、速人さんに散々闘いの教え方を聞いていた時も驚いたけど、さっきの説教を聞いてきちんと教官やってるんだなーって改めて驚いちゃいました」

  食後のお茶を飲みながらしみじみと呟くシグナムとシャマルだったが、意外な事実を聞いたとばかりにティアナ達が質問してくる。

「え!?ヴィータ副隊長の指導方法って天神さんに習ったものなんですか!?」「速人さんって戦えるんですか!?」「ヴィータ副隊長って速人さんとお話出来るんですか!?」

  三人から矢継ぎ早に質問され少々顔を顰めたシグナムが告げる。

「落ち着けお前達。纏めて聞くことは出来ても纏めて話すことなど出来んのだ。

  質問するなら一人ずつにしてくれ」

「「「はい……すみません」」」

  そう謝った三人はアイコンタクトで話す順番を決め、一番手はティアナからとなった。

「で、改めて尋ねますけど、ヴィータ副隊長の指導方法って………天神さんから習ったものなんですか?」

  非戦闘員の速人が自分達の訓練メニューに関与していると知り、かなり疑心暗鬼気味にティアナは尋ねた。

「詳しくは知らんが無関係ではなかろう。

  ただお前達の訓練メニューは基本的に高町教導官が考えて決めていて、ヴィータは訓練メニュー実施時にある程度の裁量を持たされている関係という事を考慮すれば天神が関与している比率は低いだろうな。

  これ以上は直接本人に聞くのだな」

  そう言ってティアナの質問の回答を打ち切り次の質問を促すシグナム。

  そして二番手のエリオが質問してきた。

「えっと………速人さんは魔導師じゃないみたいですけどヴィータ副隊長に教えられる程戦えるんですか?」

  その質問を聞いたシャマルは又シグナムが説明役にうってつけと思い眼で説明するように促しシグナムも視線で了承の意を返して説明を始めた。

「天神が戦えるかどうかという問いに関してだが、それに関しては是だ。

  あまり詳しくは言わんが、この六課の中でと戦闘と闘争と戦争を一番深く理解して立ち向かえるのは天神だ。これに関しては私以外の隊長陣も同意だろう。

  それと具体的な戦闘力は公務中に唯一天神と訓練をしたスバルの姉のギンガに尋ねてみるといいだろう。尤もあまり詳しくは喋らんだろうがな」

  そう言ってエリオの質問の回答を打ち切り、最後に残ったキャロに視線で質問するように促すシグナム。

  そしてキャロとしてもちょっと失礼だと思いつつも思い切って声に出して質問した。

「あ、あの………速人さんって………自分のお仕事以外のことでお話しってするんですか?」

  と、キャロの質問はかなり失礼ながらも機動六課に居る大半の者が思っていることだった。

 

 

 

―――

  部隊長補佐の資格を持っているので普段は部隊長室とロングアーチを行ったり来たりする事の多い速人だが、医務・精密技術・整備・操縦・通信と、速人以外のロングアーチに所属する者の保有資格を殆ど取得しているので、部隊長補佐の仕事が無い時(一段落している時)は便利屋として機動六課のあちこちに居るので、機動六課では会った事が無い者は居ない存在だった。

  だが、会う機会が多いが、まず必要な業務しかせず、喋ることも必要連絡事項と業務に必要な事だけで、それ以外は【しない・話さず・取り合わない】で徹しているため、機動六課内で速人に対する認識は基本的に【仕事一徹】だった。

―――

 

 

 

  なので折角の機会と思い、キャロは失礼と思いながらも速人と縁深いとされているシグナム達に尋ねたのだった。

  そしてその質問を聞いたシグナムは、対人関係のことに関してはシャマルが適任だろうと視線で説明役の交代を告げ、ようやく出番が回ってきたと一瞬無闇矢鱈と眼を輝かせて小さく首肯したシャマルが説明を始める。

「えと、速人さんが仕事の話以外するのかってことだけど、あまり多くはないけれどちょくちょくしてるわよ。

  ただ親しい人に対してでもあんな感じで喋るから、基本的に速人さんと会話は続かないし弾まないわね。だけど……話をすれば本気で話を聞いて本気で応えてくれるわ。

  ……尤もべつに親しい人限定じゃないけれど……」

  と、そのシャマルの話を聞いて納得できないところがあるのかキャロはシャマルに質問した。

「あの……でもそれなら皆さんのお誘いを受けると思うんですけど………」

  と、キャロは今まで多くの者の誘いを全て断り続けた速人を思い出してそう返したのだが、キャロにとっては予想だにしなかった答えがシャマルから返された。

「私の解釈だけれど、話しは応えるけれど要求には応えてないだけだと思うわ。

  要するにいつも本気で断ってるってわけよ」

「えと………それって仲良くなれないってことなんじゃ………」

「そんなことは無いわよ?

  詳しい基準は解らないけれど、何か感じるモノが在れば常識を疑う程此方の意思を尊重してくれるわよ?

  まあ………感じるモノが無ければかなり拒絶的だけど」

「………なんだか子供みたい………」

  ポツリと呟いたキャロだったが、実際速人は【動機は子供、思考は賢者】を地で行くので、強ち間違いとも言えない評価だった。

  そしてその評価を聞いて全くだとばかりにシャマルとシグナムは苦笑いをしていた。が、おずおずとだが不審そうな眼でティアナが質問してきた。

「あの……私達が六課に配属されて結構経ちますけど……どうして今になってそんなこと言うんですか?」

  何故最初に紹介された時にでも言わなかったのか?という疑問と、そしてシャマルから聞いた速人の価値観に多大な疑念と不満と苛立ちを滲ませながら問うティアナにシャマルは苦笑しながら答えた。

「それじゃあ逆に尋ねけれど、もし最初にこんな説明されたからってあっさり信じたかしら?」

「……………多分……………いえ、間違いなく信じなかったと思います。

  スバルの馴れ馴れしさがあれば少しは私的な意見を得られると思ってましたし……」

「でしょ?

  お見合いじゃないんだからまずは自分である程度見極めてもらって、そしてそれでも知りたがっているならその時に話したほうが良いと思ったから黙ってたのよ」

「……………………べつに私は天神さんの事を特に知りたいとは思ってません。

  教えて下さるなら聞いておこうって程度の関心です」

「ふふっ。そういことにしておくわ。

  あと………睨んでるだけじゃ相手は理解出来ないと思うから、本人に尋ねるのが難しいならせめて周りの人に尋ねるぐらいはした方が良いわよ?」

「……知りたいと思えばそうするように心掛けます」

  無闇に反論しても見苦しいと思ったのか、出来るだけ無難な返答を複雑な顔でするティアナ。

  そんなティアナを苦笑しながら見ていたシャマルだったが、その時食堂に滅多に現れない人物を見て驚きながらも声をかける。

「こんにちは、速人さん」

「おはようございます、シャマル二等海尉並びにシグナム二等空尉と以下の方々」

「はあぁ、……天神、局員の挨拶としてはそれで正しいだろうが今は休憩中だろうが。

  もう少し肩の力を抜いても構わんだろうに……」

「そうですよ?シグナムが肩の力を抜けって言うのは納得し辛いでしょうけど、休憩中なんですから普段通り呼び捨てにして構いませんよ?」

  特に会話に入ることも無いとティアナ達は軽く敬礼したが、話の内容に興味があったのか全員その場に残っていた。

  それを気にした様子も無く速人達の会話は進められていく。

「申し訳ありませんが、休憩中であっても勤務中ですのでそのような振る舞いをするわけにはいきません」

「……まあそう言うと思ってましたから引き下がりますけど……休憩中なんですからもうちょっとフランクに話しても良いと思いますよ?さっきなんかここ最近速人さんと仕事以外であんまり喋ってないから、ヴィータちゃんが寂しそうにしてましたし……。

  ……って、そうだ!速人さん、ヴィータちゃんにお弁当作ってもらえませんか?」

「明日でしたら本日は時間的猶予が有りますので構いませんが、それで宜しいですか?」

「あ、出来たら私達の分もお願いできますか?」

「私達とはシャマル二等海尉以外に八神二等陸佐・リインフォース一等空尉・シグナム二等空尉・ツヴァイ空曹長・ザフィーラさんだけでなくそちらのティアナ・ランスター二等陸士達も含まれているのでしょうか?」

「え?………う〜んそうねぇ……せっかくだからお願いします。あ、あとなのはちゃんとフェイトちゃんの分もお願い出来ますか?」

「解りました。明日零八三丸から零八五五の時間内に医務室に配送予定ですが、それで宜しいでしょうか?」

「それでお願いします」

「解りました。

  それでは私は八神二等陸佐達に昼食を配膳する為これで失礼させて頂きます」

「あ、引き止めてしまってごめんなさい」

「いえ、指定された時間までには間に合いますのでお気になさらず。

  それでは」

  そう言ってシャマル達に敬礼して速人は去って行った。

  そして速人が去って直ぐに今まで黙っていたティアナ達が口を開いた。

「あの……どうして私達の分まで頼んだんですか?」「その……速人さんは僕達の分のお弁当を作るのは迷惑なんじゃ……」「ふわ……シャマル先生って速人さんとお喋り出来るんですね。凄いです」

  矢継ぎ早に話されたシャマルだったが、とりあえず順に答えていこうと話し出す。

「うーん、ティアナ達の分のお弁当も頼んだのは折角この場に居るのに無視しするのもなんだし会話の切欠でも作れたらいいかなと思って、ね。あとなのはちゃん達の分も頼んだのは、私達とティアナ達がお弁当食べてるのに二人だけ除け者にするのもどうかな〜って思ったからよ。あと折角だから隊長陣との交流もかねてってとこね。

  それと速人さんはプライベートに関しては嫌な事は基本的にしないから、あまり了承したことを気にする必要はないわよ。

  あと、速人さんがお話出来ない人みたいに思ってるみたいだけど、速人さんはお話【出来ない】じゃなくてお話【する気が無い】だけよ?だから難しいけれどお話させる気を起こさせれば結構話しかけてくれるわよ」

「話す気を起こさせるって………なんだか10年かけても出来そうにない気がするんですが………」

  同感なのか頷くエリオとキャロ。尚キャロの帽子の上で寝ていたフリードは、キャロが頷いても帽子から落ちずにしがみ付いて落ちないようにしてまだ寝ている。

  と、そんなティアナの言葉やエリオ達の反応に肩をすくめながらシグナムが話し出す。

「まあ天神は【押せば引き、引けば更に引く】を地で行くので難しかろう。

  無理に理解せず波風立てぬ程度に流して過ごすのも一つの手だな。

  天神は別に戦闘員ではないのだから、連携等の為に理解を深める必要はお前達には無いのだからな」

「シグナム……言ってることは尤もなんだけど、私が色々気を利かせている最中にそういうことを言わなくても良いんじゃないかしら?」

「む?たしかにそうだったな。すまんな。

  そう言うわけだ、先程私が言った事を実行するのは出来れば明後日以降にしてほしい」

「あ……はい」

「それくらいならべつに……」

「いいですけど……」

  三人のその言葉にシグナムは頷くと席を立つ。

「さて、それでは私は昼から主はやて達と聖王教会に同行するので準備の為にこれで失礼する。

  シャマルもティアナ達もそろそろ休憩が終わるのでそろそろ散ったほうがいいぞ」

  そういい残してシグナムは食堂を去って行き、残された面々も自然に各々の持ち場に向かっていった。

  そして最後に食堂を出て行くシャマルが笑顔で呟いた。

「さて、と。早速ヴィータちゃんに連絡して喜ぶ顔を見るとしましょうか」

  ヴィータが見せるだろう笑顔と同じくらいの笑顔をしながらシャマルは食堂を後にした。

 

 

 

――――食堂―――

 

 

 

                                   

 

 

 

  ―――カリムの執務室―――

 

 

 

「お疲れ様、はやて」

「あう〜、ほんまにお疲れや〜」

  そう言ってテーブルに突っ伏すはやてだが、執事のようにそばに控えていた速人に諌められる。

「八神二等陸佐、勤務中に上官を前にした態度にしては問題があると思われますが?」

「あー……そやったね。

  ちょっと待ってな……(空間に浮き出たパネルを操作中)……っと、よし。これでうちと速人はんは勤務終了や。

  つうわけやから今からはプライベートっちゅうわけやから堅苦しいのは抜きやで?」

  疲れが滲んではいるが笑顔でそう言うはやて。

  が、

「八神二等陸佐、私達が終業時間外だとしてもグラシア少将は就業時間内ですので―――」

「―――っと、はい。これで私も管理局員としての就業時間は終わりましたよ?

  で、あとは教会の騎士としての仕事ですけど………」

  チラリと脇に控えているシャッハを見やるカリム

「………まあ……今日くらいは構いませんよ。

  ……私も殆ど私用で騎士シグナムと手合わせしますから……」

  シャッハの言葉を聞き、悪戯が成功した子供の笑みを速人にむけるカリム。

「解りました。

  それではこれより公人としてではなく私人として行動させて頂きます」

  その言葉を聞き満足な顔のはやてとカリムだったが、対してシャッハ顔を顰めていた。

  が、当然私人の速人がそんなことを気にするわけでもなく、先程とは打って変わった態度になった。

「はやて、明日はやて達とティアナ・ランスター他5名の弁当を作ることになっているのだが、何か要望があるか?」

「………相変わらず変わり玉みたいな切り替えの速さやな。

  あと、弁当のことならシャマルからみんな聞いとるけど、今回はみんな特に要望はないで。

  さすがにあんだけ大人数分急に作ることになったっちゅうのに、リクエストなんかしたらもうてんてこまいになること間違いなしやしね」

「解った。

  では俺の判断で作製することにしよう。

  …カリム、明日理事官補佐役として此処に来るのでカリムの分の弁当も作って持ってきた方が良いか?」

「是非ともお願いしますわ、速人氏」

  笑顔で答えるカリムを見、未だカリムが速人に敬意を払うことに納得がいかないシャッハは露骨に顔を顰めた。(本来は【氏】ではなく【様】だったのだが、シャッハの猛烈な反対により渋々速人氏と呼ぶことになった。尚○○氏とカリムに呼ばれるのは速人だけである)

  たしかにシャッハとしても速人を一角の人物だと認めている。が、公人の時は兎も角、私人の時は【退かぬ、媚びぬ、省みぬ】を地で行き、更には『平和とは更地の上に築くモノ』だとか『正当防衛とは殺害許可と同義』だとか其の他諸々のトンデモ発言をする速人に、騎士であり自身が尊敬するカリムが特別な敬意払うのはどうしても納得出来ていなかった。

  そして露骨に顔を顰めているシャッハに気づいたカリムがその原因に気づきながらもあえて的外れな事を言い出した。

「あら?シャッハ、なんだか凄い不機嫌な顔だけど、もしかして速人氏にお弁当を用意してもらえないから拗ねているの?」

「断じて違います。

  …………騎士シグナムと模擬戦の約束をしておりますので退室させてもらいます。

  それでは騎士カリム、騎士はやて、……失礼します」

  そう言って足早に退室していくシャッハ。

  それを見て溜息を吐くカリムと苦笑いをするはやて。

「はぁ……ごめんなさいね速人氏。

  シャッハはどうにも苦手意識があるみたいで……」

「っちゅうか、たぶん嫉妬やで?大事なカリムがポッと出の速人はんに盗られたと思うとるんよ。シャッハってカリムの秘書兼お姉さん兼お兄さんって感じやし。

  まあそんなわけやから速人はんも気を悪くせんといてな?」

「悪意を抱かれている方が思考を掌握しやすいので現状通りで構わない」

「うあ……速人はん…うちらには優しいのになんでシャッハには冷たいん?」

「あ、その件に関しては私も是非とも聞きたいと思ってました」

  そう言って速人に理由を尋ねるはやてとカリム。

  一応二人は真に重要な事柄に関しては基本的に尋ねずに徹底的に考え抜くのだが、それに該当しないことは会話という交流も兼ねてポンポン軽く尋ねるのだった。(速人と親しいとされる者はリインフォース以外全員そう接している)

  そして尋ねられた速人は特に秘匿するべき類でもないと判断し、二人の疑問に答える。

「先に指摘しておくが、少なくとも俺は誰かに優しくも冷たくもしているつもりはない。

  だがそれでも誰かに優しく若しくは冷たく接しているというのならそれははやて達だけだ。それ以外のシャッハのような有象無象の一つに分類される者にはやて達が言う想いを向けはしないだろうと推測されるので、はやて達以外に対する俺の対応が冷たく見えるのだろう」

「うぅわぁー、アウトオブ眼中ってことかいな……」

「たしかに何とも思っていない方には普通優しくも冷たくも出来ませんから……」

  速人の言葉を聞いた二人はシャッハの前で聞かなくて良かったと安堵した。

 

 

 

 

(その後暫くお茶を飲みながら歓談)

 

 

 

 

「しっかし速人はんもいい加減昇進すればいいのに………。

  三佐相当権限持ちの三士やからもうロングアーチのスタッフ達が戸惑って戸惑って………」

「けれどそれでもかなり控えめな方でしょう?実は准将相当権限持ちって知られたら六課が荒れるわよ?

  准将相当権限持ちの速人氏と、二佐だけど少将以上の後見人持ちで速人氏の所属している部隊の最高責任者のはやてだと、速人氏がはやてとギリギリで同等ってところよ?」

「あ〜〜、たしかにそうなったら六課が荒れに荒れるわ。

  そやけど……准将相当権限持ちの三士って………ようお偉いさんがそんな好き勝手許しとるなー……」

「あ、それはレジアス中将が速人氏を気に入っているからよ。

  非公式でだけど、管理外世界では質量兵器に関してはエキスパートだった速人氏に色々相談したりで結構付き合いがあるのよ。

  それに非公開情報になっているのだけれど、速人氏が正当防衛でA〜AAA+の魔導師を複数人同時に質量兵器で殺傷した実績があるのが特に気に入られている要因よ。

  ………尤も最初は相当目の敵にされていたみたいだけど」

「あー、納得やわ。

  たしかに質量兵器で人材不足を補えるって言うてるんなら、速人はんの存在はめっちゃ希望やもんね。

  尤も……速人はん以外があの結果出せるとは思えんけどな」

  嫌ではあるが大切な思い出を振り返りながらしみじみとそう呟くはやて。尚、話題の速人は明日の弁当の材料と調理場と容器の手配をしている最中だった。(当然会話は聞いている)

  そんなはやての言葉を聞いたカリムは困ったような顔をしながら溜息がちに零す。

「管理局でも一角の人物になると思っていたけれど、ほんの数年でまさかこれほどになるなんて正直驚いたわ。

  しかもはやての様に人の尊敬と嫉妬を集める表の出世街道を疾走するんじゃなくて、地位や義務や責任を伴わず権力だけ獲得する裏出世街道をはやて以上のスピードで疾走するから、一部の上層部の人達が速人氏を始末しようと暗躍し始めていると知って二度驚いたわ」

「……………クロノ君が速人はんを強引に引き抜いて危険度の高い死地に送り込もうとする人達がいるから気をつけてくれって言っとったけど……それって下の暴走や無くて上層部の暴走を指してたんや……」

「そうよ。

  恐らく時空管理局で最も質量兵器を運用出来且つ並ぶ者が無い程の軍略と軍団指揮能力を持ち、非公式の実験とはいえSランクの空戦魔導師を携帯型質量兵器を使用して戦闘不能にし、そして今の管理局が抱える問題点を正確に理解し且つ組織の指導者としての器も持っている速人氏は魔法至上主義の上層部からは本当に目障りな存在なのよ。

  特に海の上層部は速人氏がレジアス中将と手を組んで反乱を起こすんじゃないかって危惧しているくらいよ」

「うあぁぁぁーー〜〜〜………………そやけど速人はんが三等陸士なん理由もやっと解ったわ。

  たしかに責任のある立場や無い三等陸士やったら陸……特にクラナガンやったら好き勝手呼べるし、海も適当な理由つけて引き抜きやすいし、………何より一度速人はんの意見無視して昇進させた時速人はん一度管理局辞めとるから、もし又迂闊なことやって今速人はんが管理局辞めてどっかの犯罪組織にでも行ってしもうたなら………マジで大規模戦争になるて恐れとるんやろな………」

  速人がその気ならば殆どの魔導師を戦闘をせずに大量殺害できることを十分承知しているはやては、局の上層部の懸念も強ち的外れではないと納得していた。

  そしてそんな自分が深く関わる会話がなされているというのに、相変わらず速人は黙々と明日の弁当の準備を進めていた。

  と、そんな速人を眺めつつはやては苦笑混じりに喋る。

「そやけど、そんな恐がられとる速人はんが今真剣に弁当作りの準備をしてるって知ったら、みんな驚くやろな〜」

  先程から信じられない速度でコンソールを叩き、高速処理や並列処理が出来ないはやてでは既に理解不能な程同時に複数の画面の表示が忙しくなく切り替わり続ける。

  その画面の切り替わり続ける様を見て感心しながらカリムもはやての意見に賛同した。

「そうね。

  この物凄い速さで切り替わり続ける画面を局の上層部の方達が見たら資材発注か何かだと思うけれど、まさかお弁当の材料や調理場の手配をしているって知ったら唖然とするでしょうね」

「それも信じられん程の速度で処理しながらやから、尚の事驚くやろな」

  相変わらず自分のことを話されているにも拘らず、無視しているわけでも聞き逃しているわけでもないのに全く会話に参加しない速人。

  ただ、はやてもカリムも速人は話しかけられれば応え、話す気が在る時は大抵は会話の内容と話すタイミングを気にせずバンバン話し、そしてそれ以外では基本的に聞きに徹するのが速人なりの親しい者との付き合い方と知っているので、会話が少ないことに少々の不満はあるものの概ね気にしていなかった。

  と、唐突にコンソールの操作を止めた速人がカリムに話しかけた。

「はやて、カリムの乳房を揉んだ事はあるか?」

「………は?」

  突然脈絡無く予想外の言葉をかけられ一瞬思考が止まるはやてだったが、何とか気を持ち直して理由を尋ねる。

「え〜と、何でそんなこと聞かれるのかさっぱり理由がわからんのやけど……」

「はやては一定以上の私的交流のある女性には心的交流を目的に乳房を揉むことが度度あるが、現在に至るまでカリムにその様な行為をしたことを俺は知らず、はやてと親しいと目している人物の女性の中では唯一の存在なので疑問に思い尋ねた」

密かに胸揉むのが普通と思われとる!?

「違ったか?」

「あう………」

  全くその通りなので沈黙してしまうはやて。

  と、その時、いつもの柔和な顔に若干戸惑いを浮かべたカリムが速人に話しかけた。

「えと…………殿方がその様な痴態の有無尋ねられるのは如何なものかと…………。

  その…………私も………………………少々恥ずかしいので……………」

  最後の方は少々俯き加減で恥らいながら話すカリム。

  そしてそんな仕草を異性同姓問わずに虜にしそうな容姿と雰囲気を持ったカリムが行えば、世の男性のほぼ100%を魅了するはずだったのだが、そのほぼから外れている速人はいつも通り淡々と言葉を返した。

「思慮が足りず不快な思いをさせてしまってすまない」

  そう言って作業を一時中断して立ち上がり、カリムに頭を下げる速人。

「そ、そんな畏まって謝られなくても……………。

  ……恐縮して此方が申し訳なくなります」

「謝罪が不快とだというなら即座に止めよう。

  それと後学の為にどのような対処が適切か、後日教授を頼めるか?対価として教授に費やした時間と気苦労分は、カリムの要求を呑もう」

「ふぅ…………速人氏………公人ではなく私人としての私と貴方の関係に、その様な無粋な取引は不要ですよ?

  どうしても納得されないのなら、貴方を知り、そして私を知ってもらえる、そんな相互理解を深められる場を提供してもらったのが、私が貴方から頂いた対価だと思ってください」

  少し気疲れした表情の後に微笑を浮かべながらそう返すカリム。

「分かった。ならば対価を受け取る事を要求しない」

「はい。そうして下さい。

  …………………ところではやて、さっきから落ち込んだり驚いたり狼狽えたりしてどうしたの?」

  先程から変わり玉の様に表情を変えていくはやてにカリムが尋ねた。

   するとかなり沈んだ声ではやては返事をしてきた。

「…………せめて落ち込んだ理由は見当ついてや…………。

  …………親しかったら誰彼構わず胸揉む変態と思われたら、流石に私でも凹むて………」

「全く……それは日頃の行いのせいでしょ?

  だいたいはやてよりリインフォースの方が可愛そうよ………。

  この前『親睦を深めるのに乳房を揉むと良いと聞き、強ち的外れとも思わないので実践して構わないか?』って真顔で尋ねられてパニックになったって愚痴を零していたわよ………」

「あ、あはは…………あの後文字通り守護騎士()()どころか、108部隊に用事で出向いた時ギンガやナカジマ三佐に(おんな)じこと言うたらしくてな……………もうみんなから非難と文句の雨霰やったで………。

  ちなみにその後は、みんなの説得で何とかカリムと地球のアリサちゃんに飛び火するのを防いだんや」

「………………もし速人氏が私にそんな事を言っている現場にシャッハが居たら……………はやては速人氏と一緒にヴィンデルシャフトを交えたお説教だったはずよ………」

「そ、そうなりそうな予感がヒシヒシとしとったから私も全力で説得したんよ。

  良くて速人はんが重症で拘置所行き、悪ければ私と一緒に入院するまでタコ殴り(お説教)、最悪()()()()()殺されると思うてな…………。

  まぁ………別の意味での最悪は、カリムが冗談か本気かテンパってかは分からんけど、速人はんの言葉に頷くことやけどね」

  若干ジト眼でカリムを見ながら話すはやて。

  そしてその視線を受けながら、いつもの柔和な表情で答えを返すカリム。

「大丈夫よ。いくら私がお茶目だからってそんな事を冗談で了承したり、相手の無知に付け入って一生モノの選択をさせたりしないわ」

「微妙にツッコミどころが残る答えやけど、まあええわ。

  …………っと、速人はん、モニタ閉じたようやけど、もう行くん?」

  空間モニターを次々と閉じていく速人を見ながらはやては疑問を投げかけた。

「はやてとカリムが俺に用事が無いならば直ぐに此処を発つ」

  全ての空間モニターを閉じてそう返事をする速人。

「うーん、うちとしてはもう少し一緒に居てもらいたかったんやけど、そのせいで速人はんに負担かけとないし、特に今直ぐいう用事は無いな」

「私も同じです。

  ………それでは名残惜しいですが、また明日御会いしましょう。

  御弁当……楽しみにしていますね」

 

 

 

  二人のそんな言葉に送られて速人は聖王教会を後にした。

 

 

 

  ―――カリムの執務室―――

 

 

 

 

                                   

 

 

 

 

 

 

 翌日、発言通り作成した弁当をシャマルに渡し、残ったカリムの分は用事で聖王教会に赴く速人が自分から手渡しに向かった。

 

  ただ、シャマルに渡された弁当は、作成個数確認の時その場に居ないうえ確認されなかったスバルの分は当然の如く無かった。(フリードリヒの分は有った)

 

  そして速人に手渡されたカリムは、速人が自分の分を作成していない事を知り、一つの弁当を二人で分けながら食べた。

 

 

 

 

 

 

【速人の弁当が齎した結果】

 

 

 

[キャロは速人に対して好感度が1上がった(フリードリヒの分の弁当を個別に作った為)]

 

[フリードリヒは速人に対して好感度が1上がった(キャロが少し好意を抱いた為)]

 

[エリオは速人に対する好感度が1上がった(五人分の量の弁当を渡された為)]

 

[ティアナは速人に対する嫉妬と不信感が40%まで上がった]

 

[スバルは速人に対する不信感が60%になった。しかし速人の作ったアイスを分けて食べさせてもらい0%になった]

 

[ヴィータはストレスが10%まで下がった。元気が90%まで回復した]

 

[シャマルは年寄り臭さが3上がった]

 

[シグナムはニート侍の二つ名を拝命した]

 

[ザフィーラは狼からおじさん守護獣へとクラスチェンジした]

 

[ツヴァイは好物を満腹まで食べ夢の世界へ旅立った。昼からの仕事を全て休んだ(はやての負担が70%上昇した)]

 

[シャッハは速人に対して怨み・嫉み・辛み・妬み・僻みの五つがそれぞれ6上がった]

 

[カリムは幸福値が4上がった。対抗心が2上がった。????の自覚が30%になった]

 

[はやては速人に対する好感度が8上がった。しかし既に限界値なので意味が無かった]

 

[リインフォースは速人に対する感謝値が10上がった。しかし既に無限大なので意味が無かった]

 

[速人は六課陣から天然ジゴロの二つ名を付けられた]

 

 

 

 

 

 

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  とある可能性編  一つめ:とある日常――――了


【後書】

 

 

 

  A‘S編の本編も幕間も終わってないのに何を思ったのかSts編を書くという暴挙に出てしまいました。

  しかも本編の息抜きに書いたのでツッコミ所満載ですが、それでも楽しんでいただければ幸いです。

  で、作中補足です。

 

 

 

【作中補足】

 

 

 

                                     

 

 

【階級について】

 

  陸に所属している者は○等陸○、海に所属している者は○等海○、空に所属している者は○等空○、このようにしています。

  また作中階級が明記されていないシャマルやカリムの階級については作者の自己設定です。

 

 

                                     

 

 

【速人の設定】

 

    級:三等陸士

    属:空管理局本局 古代遺物管理部 機動六課

    職:部隊長補佐・整備士・操縦士(全般)・通信士・メカニック(全般)・経理事務

所持資格:魔力に依らない資格は殆ど最高位を取得済み(はやて達にも殆どの資格は明かしておらず、また機動六課には資格の位階を下げた数種しか登録していない為、精々部隊長補佐が出来る便利屋との印象が強い)

魔法術式:無し。ただし合金製の撥を常に2本携帯。(質量【兵器】ではないので許可は必要無し)

 

 

  本来ならば多岐に渡る資格保持者の為はやてと同等以上の階級のはずですが、悉く昇進の辞令を拒否し続け、更には拒否が出来ない時は辞職し、再度入局して資格を取り直してまで三等陸士で在り続けている偏屈者。

  本人曰く[義務を伴う昇進は邪魔だが、義務を伴わない権利と資格は取得する]です。

 

  10年の歳月でジェイル・スカリエッティとカリム・グラシアが友誼を結びました。

  しかし、友が出来ると同時に対人関係の悪化に拍車がかかり、クロノからは[お前の為に死刑制度を復活させてやる]と言われ、シャッハからは[暇ならば水中で5時間ほど祈りを捧げてくれませんか?ああ、ついでにそのまま入滅でもなさって下さい]と言われ、その他の者にも誹謗中傷を津波の如く浴びせられるようになってしまっています。

 

 

                                     

 

 

【リインフォースの設定】

 

    級:一等陸尉

    属:空管理局本局 古代遺物管理部 機動六課

    職:部隊長補佐

魔法術式:古代ベルカ式・空戦A(リミッター問題の為わざとAランクにしている)

 

  とある方法に因り存在し続け、八神家の一員として過ごしています。

  存在し続けられる最大要因且つ凄まじい負担と危険を負わせた速人に対し、無上の感謝を抱いていますが、それを抜きにしても速人をツヴァイと並んで他の誰よりも気の置けない存在と思っています。

 

  闇の書の頃の歴代の主が原因で人間不信に加え更に若干男性嫌悪症で、そしてその反動の為若干同性愛よりの思考になっています。(速人とザフィーラは嫌悪対象外です)

  尚、対人関係は基本的に【攻守完璧だが、親しくなる程無警戒】なので、同系統の速人とだけで居ると、両者とも互いに無警戒且つ距離感を掴み損ねるので同衾することもしばしば有ります。

 

 

                                     

 

 

 

【作中補足終了】

 

 

 

  しかし作っていて思ったのですが…………まずありえない展開ですね。

  ………まあ、その辺は好き勝手出来るIFということで納得していますが。(IFって便利な言葉ですね〜)

 

  あと速人の弁当を食べる時に何が有ったかは御想像にお任せします。

 

 

 

  毎回好き勝手暴走しているSSを掲載して感想を頂ける管理人様と御読み下さった方に沢山の感謝を。

 

 

 

                                     

 

 

 

【おまけ】(18話消滅フラグの一部)

 

 

 

リーゼアリア「ふふっ。どうしたの?今更私の身体なんか恥ずかしくないでしょ?」

 

クロノ「なあぁっっっ?!?!?ご、誤解を招く発言はやめてくれっ!!」

 

リーゼアリア「本当のことでしょ?だってちょっと前は訓練後のシャワーの時、私とロッテと一緒だったじゃない」

 

クロノ「そ、それは小さい頃の話だ!!最近はそんなことはない!!」

 

リーゼアリア「そうね。最近は私やロッテを押し倒そうとしたり、いきなり胸を揉みしだいたりするほど成長したものね」

 

クロノ「か、勝手にヒトの行為を捏造するな!!

揉みしだいたりなんかしてないだろ!?僕がやったのは鷲掴……み……………」

 

エイミィ『ふーん。随分と積極的だね、クロノクン…………』

 

リンディ『ふうぅ。子供のヤンチャで済ませられるか楽しみね、クロノ…………』

 

クロノ「ま、待ってくれ!違うんだ!ソレは訓練中の事故なんだ!!」

 

リーゼアリア「そうね。事故だから犯罪にもならないし文句も言えないわね」

 

クロノ「頼むからちょっと黙っててくれアリア!!」

 

リーゼアリア「【そりゃたしかに僕だけ何度も気持ち良い思いして,逆にそっちには何度も嫌な思いさせたかもしれないけど、訓練中の事故として納得してくれ】BY クロノ・ハラオウン」

 

エイミイ『………ムッツリ………』

 

リンディ『………出頭するか告訴されるか選んで起きなさい………』

 

アルフ『………素直に謝りゃいいのに………馬鹿なコト言ったね………』

 

フェイト『………クロノ………………………それはあんまりだよ………』

 

ユーノ『………男として恥ずべき行為だよ………』

 

なのは『………Hなのはいけないと思う………』

 

速人「…………で、時空管理局所属の婦女暴行容疑者」

 

クロノ「誰が婦女暴行容疑者だ!?未遂だ未遂!!

この場合正しくは婦女暴行未遂容疑者だろ!!!」

 

速人「語るに落ちているが、最早どちらでも構わない。

後ほど告訴されるお前と交渉しても高確率で徒労に終わるので、リンディ・ハラオウンと交渉する。

交合するなら話の邪魔にならぬよう隅の方でしているがいい」

 

クロノ「ふ、ふざけるな!犬や猫じゃあるまいし人前でするか!!」

 

リーゼアリア「失礼ね。猫の私も人前は流石に勘弁したいわ」

 

クロノ「だったらこんな人の眼のある場所でそういう事をしようとするんじゃない!!」

 

リーゼアリア「(面白い程自爆してるわね)分かったわ。

速人様。そういう分けですのでお邪魔にならないよう別室に行きます」

 

速人「懐柔出来ぬなら処置は任せる。但し増援が来るまでに終わらせるように」

 

リーゼアリア「分かりました。

じゃあ手早く済ませましょう」

 

クロノ「なっ!?ま、待て!!何を………って、何故落とし穴がああああぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 

 

【手抜きの上投げっ放しで終わる】

 

 

 

                                     




まずはありがとうございます。
美姫 「消滅フラグをおまけで入れて頂きまして」
いや、本当に色々と妄想してしまいそうな。
美姫 「で、今回はIFという事で」
Sts時代と。しかし、最初のヴィータの台詞に思わず速人の影響が、とか思ってしまったけれど。
美姫 「IFだからというのもあるけれど、速人が本編と変わってないのが良いわね」
確かにな。こういうのもまた面白いです。
美姫 「うんうん。本編の方も楽しみにしてますね」
ではでは。



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