この話はSS【八神の家】の幕間ではなく、もしも(IF)の話です。

ですのでSS本編がもしStSまで進めば、必ず相違点が出る代物です。

ですから二次創作のIFを了承できる剛の者以外の方は読まれない方が賢明です。

 

注1)リインフォースが空に還らず闇の書の闇はどうにかなっています。

注2)階級に関しては自衛隊で使用されているものを流用していますが、将官の階級は原作通り第二次世界大戦時の日本軍の階級名に倣っています。また作中階級が明記されていない面面の階級については作者の捏造設定です。

注3)速人の外見年齢はリインフォースと同じか少し幼いぐらいです。(髪の長さはリインフォースとフェイトの中間程度で、ストレートです)

注4)ミッドチルダ語等は日本語等に翻訳されて話を進めています。

 

 

 

 

 

 

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魔法少女リリカルなのはAS二次創作

【八神の家】

とある可能性編  少し前・赤日の空

(本文1に対しおまけが3前後在りますので、スクロールバーで本文の長さを期待されぬよう御願い申し上げます)

 

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  ―――Side:燃え盛る空港内部 ―――

 

 

 

  閃光と爆音が突如空港を駆け抜け、気を失っていた少女が目を覚ました時、辺りの至る所で崩れた天井が瓦礫となっており、更に何を燃料にして燃えているのかは定かではないが、何故か燃えそうもない壁や床が燃えていた。

 

  少女が気絶していた時間は長くなかったらしく、床に接触していた箇所の皮膚が焼き付いているようなことはなく、少女は痛む全身に鞭打ち、何とか立ち上がった

 

「…………………………なに…………コレ……………………」

 

  呆然と辺りを見回す少女。

 

  床の其処彼処が燃え盛って見通しが非常に悪い為に通路の出入り口は見当たらず、燃えて脆くなった壁や天井が彼方此方で剥がれ落ちており、少女には世界の終わりの様に感じられた。

 

  だが、一緒に居た妹が何処にも見当たらず、凄まじい不安と焦燥に押し潰されぬよう、少女はあらん限りの大声を張り上げる。

 

スバルーーーーーーーーー!!!

  どこーーーーーーーーーー!?!?!?

 

  後で二度と喋れなくなっても構わないとすら思って少女は喉に走る痛みを無視して叫んだ。

 

  だが、その後に聞こえるのは少女の妹の返事ではなく、炎の爆ぜる音と壁や天井が剥がれ落ちる音と剥がれ落ちた壁や天井が床に激突する音だけだった。

 

スバルーーー!スバルーーー!スバルーーー!!

  返事してーーーーー!!!

 

  死んでいるかもしれないという恐怖と、世界の終わりの様に感じられる此の場に一人かもしれないという恐怖が混じり合い、必死に妹の名を呼ぶが、先程の大声で少なからず喉を痛めた為、先程に比べてかなり声が小さくなってしまっただけでなく、叫ぶと喉に針を刺したり抜いたいされたりするような痛みが少女を襲った。

  が、半ば恐慌状態に陥った少女はその程度の痛みで叫ぶことを止めたりはせず、更に大声を張り上げた。

 

誰か!誰かっ!!スバルを……妹を知りませんかー!!!???

 

  酸欠で足元が覚束無くなる程少女が叫んだにも拘らず返事は一切無く、返事の代わりと言わんばかりに爆発音が轟いた。

  そして爆発音から僅かに遅れて去来した震動により天井の一部が剥がれ落ちて瓦礫となった。

 

  だが、少女の近くに天井の一部が落ちたにも拘らず、少女は妹のスバルが生き埋めになっているのではと思い、死んでいるかもしれないという恐怖を堪えつつ、手近なな瓦礫を火傷しないようにハンカチを当てつつ懸命に転がし退かし始めた(天井は多層構造の為、天井に穴が空くまで天井が剥がれ続ける危険性が在った)。

 

 

  だが、少女が幾つか瓦礫を転げ退かした時、赤黒く濡れた、嗅ぎ覚えのある悪臭を放つ、見慣れた形だが、見慣れた形だったと分かる、モノを、見た。

 

             え?」

 

  少女はそれがナニかを半ば本能的に悟り、そして理性が理解と認識に至った瞬間―――

 

                                                       !?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

 

―――声すら上げられぬ程の衝撃と嫌悪と恐怖に襲われ、訓練校で倣った走り方などまるで無視した出鱈目な走り方で以って全力で其の場より離れた。

 

 

  然して走らぬ内に少女は足を縺れさせ、今まで習っていた事を何一つ活かす事無く、身体を痛めるように転倒してしまった。

 

  そして転倒した後、何とか起き上がろうと四つん這いの体勢になった直後、頭を垂れて目から涙を流しながら少女は叫び声を上げ始めた。

 

「うあああっ!あああっっ!あぁっ!あぁっ!ぁっ、ぁ、ぁ、ぁあっ、あぁあっ、ぁあっ、ああああああああああああああああああああああああああぅぇをっっっ!!おぅえぇぇぇぇぇぇ

ぇっっっ!!っっほぉっ!がぇはっ!ぐぁはっ!げっはっあ、……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

  咽び、叫び、吐き、痛哭する少女。

 

「ああああああああああああああああ!!!!!!あぁああっっっ!!!あぁっっ!!ぁあああっ!ぁあっ!ぁっ……………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

  肺の中の空気を搾り出す迄痛哭し、その後短い息継ぎをしながら咽び、そして酸欠で少しの間発声を止めて落ち着いた後、再び少女は痛哭した。

  だが、―――

 

「あああああああああああああ        あっっ!!!」

―――突如壁が打ち砕かれた様な音が遠くから聞こえた数秒後、どこかに酸素が流れ込んでバックドラフトが起こったらしく、爆発に因って焼けた飛礫と周囲の焼けた空気が爆風に乗って通路から少女が居る場所へと押し寄せ、通路の傍に居た少女は焼けた飛礫と空気を伴った爆風を無防備に受けた。

 

  幸い飛礫に可燃性の液体は付着しておらず、更に爆風に運ばれた空気は150度未満だった為、肌と髪は軽いダメージを受けただけで済み、少女は髪や衣服が燃え出して火達磨になる事態は免れた。

  しかし、秒速50m以上の飛礫混じりの爆風に晒された少女は20メートル近く転がった。

 

  四つん這いになっていた為吹き飛ばされずに転がるだけで済んだ少女だったが、焼けた飛礫が命中した事や転がる最中に瓦礫の欠片に幾度も激突した事が原因で、少女は転がっている最中に意識を手放してしまった。

  だが、極度の興奮状態の少女は直ぐに意識を取り戻した。

 

 

  数秒程気絶した為落ち着いたのか、少女は放心している容貌だったが、痛む身体に鞭打ちながら立ち上がり、幽鬼の様な表情と足取りで近くの瓦礫に歩き出した。

 

「………………………………………………………………………………」

 

  瓦礫の前で暫く瓦礫を見遣りながら立ち尽くしていた少女だったが、徐に瓦礫を転がし退かし始めた。

 

「……………っ………っっぅぅぅぅぅぅっっ」

 

  瓦礫が不安定だった為、少女は腕を全力で前に突き出す程度で何とか大きな瓦礫を転がし退かす事が出来た。

 

  そして呼吸を整えながら、5秒も触れていれば火傷してしまう抱えられる程の大きさの瓦礫を退かし、少女は瓦礫の下を確認した。

 

「…………………………」

 

  幸い瓦礫の下に少女の妹どころか誰も居なかったが、少女は安堵の溜息を吐くこともなく、又手近な瓦礫の山へ幽鬼の様な容貌と足取りで移動し始める。

  そして移動している最中に建物を戦車砲が直撃した様な震動が走り、数秒送れて先程を上回る規模のバックドラフトが近場で数箇所起こったらしく、爆発音から数秒遅れて全ての通路から瓦礫と爆炎が噴出していた。

 

  通路の惨状を視界に納めていた少女は、此の場から離れようとしなかった判断の正しさを気に留めるでもなく、覚束無い足取りを止めることなく別の瓦礫へと歩み続けた。

 

 

 

―――

 

  少女は目覚めた時、自分が焼死していないにも拘らず不燃性である筈のコンクリートが燃えているのを見、何らかの燃焼している可燃性のモノ(魔力と推察)が辺りを駆け抜けたと、漠然と判断していた。(注:フッ素に晒されればコンクリートは容易に燃えますが、それ以外ならば融点が約1200℃ 2200℃のコンクリートが単純な熱波で燃えるならば、人体どころか鉄すら蒸発しています)

 

  燃焼している可燃性のモノが壁を貫通(破壊)しならがら発生源より放射されたのならば、発生源に続く破壊された痕跡が見て取れる筈だが、その痕跡が微塵も見えない以上、恐らく発生源から気体か高圧液体が壁を這う様に建物を駆け巡ったのだろうと少女は判断していた。

  そして気体の様なモノが建物を駆け抜けたのならば、僅かな隙間から室内に侵入して室内も炎上していると判断し、建築材の強度が熱で低下し始めてバックドラフトが起こり易くなっている今、通路脇に幾つも部屋が有る通路を通れば爆発に巻き込まれて妹を探せなくなると判断した少女は、下手に動き回らずに此の場を探すことにしたのだった。

 

―――

 

 

 

  辺り一帯に煤が舞うだけでなく、鉄や肉が焼ける臭いどころか髪や爪が燃える異臭が満ちており、少女は妹が瓦礫の下で助けを求めているかもしれないという恐怖だけでなく、否応無く死を連想させる臭いが原因で、精神が益益消耗していった。

  だが、少女は足を止めずに歩み続けて別の瓦礫の前に辿り着き、ハンカチを瓦礫に当てて転がし退かし始めた。

 

…………私………はっ………………お姉ぇ…………ちゃんっ。

  ……………スバ…………ルをぉ…………………妹…………をっ………………助っ…………けなぁ………………きゃ…………

 

  折れそうな心を必死に自分に言い聞かせて保ちつつ、瓦礫の下の潰れた死体の顔を確認する少女。

 

  千切れ、潰れ、血に染まり、そして焼けている為、一目で少女の妹かどうかの判別が可能なモノは少なく、髪が炭化して赤黒くなった顔の確認をし続ける少女。

 

私はお姉ちゃん私はお姉ちゃんスバルを助けなきゃ助けなきゃ妹をスバルをお姉ちゃんだから私がスバルをお姉ちゃんだから私は助けなきゃスバルを私は私はお姉ちゃんだから

 

  少女は呼吸の拍子も忘れて必死に自分に言い聞かせる事で手を休めることなく瓦礫を退かしたり(大型は退かし終えている)、四肢から骨や肉が覗く死体以外の顔を覗き込み続けた為(自分達の体が普通でない為、四肢から骨が飛び出ないのは知っている)、直ぐに確認が終わった。

 

  そして確認し終わった少女は呟きを止め、深く静かな呼吸を再開しながら新たな瓦礫へと歩みを進めた。

 

 

  風の通り道が出来てしまったのか、少女の居る広間に熱風が流れ込み始めた為室温が130℃から更に上昇してしまい、湿度が極端に低い為即座に大火傷することはなかったものの、気化熱で肌を守れる限界を超えている温度の為、残った僅かな体力が凄まじい勢いで奪われていった。

  だが、少女は呼吸の度に喉や肺が焼かれ、眼が焼かれる痛さで涙が溢れ出しているにも拘らず歩みを止めなかった。

 

  そして瓦礫に辿り着いた少女は四度目の撤去作業を始めだした。

 

……………スバル…………………………必ず………………………………………助ける……………………………………………………から…………………………

 

  既に深部体温が43℃を越えている少女は正常な判断が出来ず、此処に在るどれかの瓦礫の下で妹が助けを待っていると思い込んでおり、更に限界寸前迄衰弱している精神は妹を助けるという目的を持つことで辛うじて支えている為、精神の防衛機能的にも少女に逃げ出すという選択は無く、虚ろな表情で少女は瓦礫を退かし続けた。

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

  肉体的疲労も相俟り、遂に少女の精神の衰弱が限界を超えだし、五感が徐徐に薄れだすと同時に能動的な思考が消え去り始めた。

 

  そして少女は自分が薄くなるような感覚を気にも留められなくなっていることにすら気付かぬ儘、500kg以上はあるだろう瓦礫を傾斜と砂利を利用して滑り動かして退かした。

 

  辛うじて瓦礫を退かした少女は、キングサイズベッドの様な大きさの瓦礫が在った下を覗き込み、―――

 

………………………………

 

―――文字通り茹だりだした脳が暫く眼下の光景を理解出来なかったが、―――

 

あ………………………………………………………………

 

―――理解に至った瞬間、―――

 

あああ!!!!!!!!!!

 

―――()きながら少女は駆け出した。

 

ぉっほっ!う゛え゛っふっ!くぁっはっっっ!!!

 

  熱気を出来るだけ冷ます為、今迄行っていた浅く短く静かな呼吸法ではなく、体の求める儘派手に息継ぎをした瞬間、170℃を越えた空気が喉だけでなく気管や肺を焼き、少女は胸を押さえながら転倒してしまった。

 

あ゛っっっはっあ゛!え゛っっぼぉっ!!      っっっほぉっっっっ!!!

 

  咽て肺の中の空気を吐き出し、肺の中の空気が乏しくなって周囲の空気を吸い、そして呼吸経路全般が熱気で焼かれて咽るという悪循環に少女は陥った。

  そして10秒も経たぬ内に少女は酸欠と衰弱が原因で四つん這いの姿勢すら維持出来なくなり、横向けに床に倒れてしまった。

 

「こぉっほっ  うぇっほっ  うぇほっ!………………………」

 

  幸い床付近の空気は呼吸可能な程度の温度であった為、少女はある程度咽終わると、辛うじて咽ずに普通に呼吸を再開する事が出来た。

 

 

  倒れ込んだ少女は徐徐に熱を帯びていく床の上で、浅く静かな呼吸を繰り返しつつ呆としていた。

 

 

 

―――

 

  少女は二十数回呼吸を繰り返し、漸くある程度思考力が回復したが、瓦礫の下の光景を理解した瞬間に心が折れてしまっており、又、体力は焦熱に因って急速に減少している為、既に生命維持活動が辛うじて可能な域迄低下していた。

  更に、折れた心を強引に繋いで先程の瓦礫の下を見ようものならば、少女の心がほぼ確実に砕け散って廃人になるのは目に見えている為、折れた心を奮い立たせるのは精神的に自殺するのと変わらず、それを無意識下で理解している少女に先程の瓦礫の下を改めて確認する意思を持つことは出来なかった。

 

  そも、錯乱せず自殺や自決や自害をするには普通ならば莫大な気力が必要であり、心身共に限界寸前の状態でその様な決断を下せる程、少女にとって死に対する忌避感は低くなかった。

  第一、生き残る為一時的にとはいえ限界近くまで心身を強化していたが、集中が解けた瞬間に強化が切れてしまった為、既に反動で心身共にズタボロの少女が先程と同じ強化に耐えられる体力と実行後に伴う苦痛を受け入れられる精神力が残っておらず、少女は自然と心身共に苦痛無く死を受け入れる状態へ移行し始めた。

 

―――

 

 

 

  倒れた姿勢の儘、少女は細かい破片を落す天井を横目で力無く見ながら物思いに耽った。

 

(ごめんね………スバル……。

  私………お姉ちゃんなのに……………スバルを………………助けられないよ………)

 

  拳程の燃えている天井の破片が周囲に落ち始め、少女を押し潰せるほどの瓦礫が降り注ぐまで時間が無いことが窺えたが、少女は力無く天井を横目に見ながら更に物思いに耽った。

 

(母さんみたいになりたくて……………一生懸命頑張ってきたのに、…………………………スバルすら助けられないなんて………私……………今まで何してきたんだろ………)

 

  床が懐炉より熱い為、既に低音火傷を起こし始めたにも拘らず、少女はその事に対して苦痛や恐怖を覚えず、身動ぎ一つせずに矢張り横目で天井見ながら物思いを止めなかった。

 

(母さんのように、少しでも父さんの手伝いをしたくて管理局に入ろうとしたのに、…………………父さんの役に立てなかったどころか………………………どこかで泣いてるスバルの役にも立てないなんて、…………………私………なんて役立たずなんだろ……………)

 

  悔しさと情けなさに押し潰され、流れ続ける涙で滲む視界で尚天井を見続けながら物思いに耽る少女。

 

(……………………生きてても役に立たないのに…………………死んだら悲しませるなんて…………………なんで生まれてきたんだろ?……………)

 

  無力感と虚無感にも押し潰され、涙の勢いが増す両の目を少女は腕で隠す。が、バランスを崩して仰向けの格好になってしまったものの、気にせず少女は物思いに耽る。

 

(助けたいのに、……………役に立ちたいのに、…………………………悲しませたくないのに、………………………………………もう何もしたくない……………)

 

  脳や内臓を撒き散らしている死体や、抉れた腹部の断面から頭部が抉れた胎児が飛び出している死体を見た少女は、錯乱が治まっても既に精神が衰弱しきっており、半ば自暴自棄になっていた。

 

(助けたい………。

  役に立ちたい………………。

  悲しませたくない………………………。

  なのに………………………………………もう………何も考えたくない。

  ………………………………………………………………何も感じたくない)

 

  少女の肉体は深部体温が50℃に達しかけており、脳が機能停止寸前な上に2度も爆風で吹き飛ばされて全身を痛打した為衰弱しており、更に半死体の体に鞭を打とうにも精神は強引に奮い立たせ続けた為完全に衰弱しきっており、これ以上精神に過負荷を与えると精神崩壊を引き起こしてしまう為、離脱を試みなければほぼ確実に死亡するという危機的状況にも拘らず、精神が活動休止若しく活動停止に移行し始めた。

 

  直ぐに少女から能動的な思考が消え、更に受動的な思考どころか五感すら望んだ通り深刻的に薄れ、1分もしない内に肉体の制御と共に五感の殆どを失くす勢いで少女の体からあらゆる感覚が消え去っていっていた。

 

  体力や怪我を考慮しても十分視覚を確保出来るにも拘らず少女の視覚は閉ざされだし、徐徐に視界内の領域が視界外に成り代わり、黒で塗り潰されるのではなく、単純に知覚出来なくなり始めた。

 

(…………………………………………私………)

 

  何度目かも覚えていないが、建物自体が砲撃を受けたかの如く震え、少女のほぼ真上の天井が接がれていく音が響き渡る。

 

(……………………………………………………なんで……………)

 

  少女は剥がれ落ちた天井が風斬音を立てながら落下し始めたのを、脱力した為目を覆っていた腕が僅かに下がった為に出来た隙間から眺めていたが、危機感も絶望感も一切感じず、虚ろな眼で見る僅かな視界に納めているだけだった。

 

(生きてたんだろ………)

 

  剥がれ落ちた天井自体が燃えている為、少女に近づく程少女の視界は赤色の光で埋め尽くされた。

 

  そして少女が押し潰される迄コンマ数秒という時、何時の間にか少女の近くに誰かが立っていた。

  しかもその者は少女の近くに存在する、軽く500kgはありそうな瓦礫を砲丸投げの様な体勢で半円を描かせつつ―――

 

破っ

 

―――少女が喉を痛めて出した大声を遥かに上回る声を出しながら、少女を押し潰さんとしている瓦礫に投げ付けた。

 

  結果、軽く2tはありそうな落下していた天井の一部は軌道を逸らされ、少女から5mm程離れた位置に落下した。

 

 

 

―――

 

  少女の傍に立っていた者は、500kg以上の物を持ち上げて半円を描いて投げ付ける為に、自身が重力に引かれるエネルギーを利用し(沈墜勁)、そのエネルギーを集束させ(十字勁)、同時に全身の間接を一斉に効率的に運動させつつ(纏絲勁)、横隔膜を急激に動かすことで得られるエネルギーを利用(爆発勁)した、その結果、500kg以上の物を80m/s以上の速度で投げ付けることに成功した。

  そして10m以上の距離を落下していた2t以上もある天井の一部が少女に接触するまで50cm程にも拘らず、瓦礫を投げ付けただけで少女を押し潰す軌道から完全に逸らした。

 

  尤もTNT(トリニトロトルエン)約2.4mt(ミリトン)(平均的手榴弾の28発分以上)に匹敵するエネルギーを持つ天井の一部の軌道を僅かな時間と距離で逸らす為には、超高効率に対象へエネルギーを伝播させる投擲方法で以って投擲したとしても、落下する天井の破片の約16倍のエネルギーをが必要であった。

  だが、投げ付けられた瓦礫は当然その条件を満たしており、投擲者の技量と力量が並外れて高いことを窺わせていた。

 

  そして、同じ材質で似た様な形状の物が衝突すれば、当然軽い方が(この場合は投げ付けた瓦礫)が爆散した。

 

―――

 

 

 

  しかし、圧殺されなかったとはいえ、平均的手榴弾450個分以上のエネルギーを秘めた瓦礫が激突の衝撃で爆散した為、至近に居た少女は爆散した物を大量に浴びてしまい、気絶してしまった。

 

 

 

―――

 

  少女は多数の破片を全身に浴びたが、投擲した者は投擲方向の逆側には投擲物自体が破片を防ぐ盾となる為殆ど影響が無かった。

  しかも叩き付けたのではなく投擲しているので激突時の反動は無い為、怪我は投擲する際に使用した筋肉と間接が軽く痛んだだけ(安静にすれば自然治癒する程度の怪我)だった。

 

  尤も、本来ならば秒速80mで激突した瓦礫の破片を至近で身に浴びたならば、頭蓋骨を含む全身の骨の殆どが粉砕され且つ内臓が破裂するという結果になる筈だが、熱で強度が劣化していたことと投擲エネルギーを可能な限り対象に伝播するように投擲された為、投擲物の内部を殆どムラ無く運動エネルギーが駆け抜けた為に砕けた瓦礫は飛礫と呼べる程に小さく且つ軽く、しかも投擲された瓦礫はそのエネルギーの殆どを対象に伝播させた為爆散した飛礫には然して運動エネルギーが篭っておらず、少女は多数の飛礫を至近で大量に浴びても2階から落ちた程度の負傷未満で済んだ。

 

―――

 

 

 

  瓦礫を投擲した者は呼気を吐く為に外していた眼から下を隠す類の覆面を目元までたくし上げ、気絶した少女の腕を蹴り上げて右手で掴み、其の儘引き摺り出し始めた(生身で500kg以上の物を振り回して腕を少なからず痛めた為、回復させる為可能な限り負担をかけないようにしている)。

  少女を引き摺っている者は周囲を観察し、これ以上此の場には現状で回収に値するモノは無いと判断し、待機させていた者へ知覚及び記録されずに此の場へ4分以内に到着するように合図を出した。

  そして引き摺り始めて20秒も経たぬ内に衣服用の台車(シンク)の近くに寄った者は、シンクに詰め込まれた死体を幾つか取り出した後に引き摺っていた少女を放り込み、更にその上に死体を断熱材代わりとして被せる様に置いた。

  その後直ぐにシンクを熱風の通らぬ位置へと動かした時、天井の孔から飛び込んで来る者が居た。

 

  飛び込んで来た者はシンクの傍に立つ、外套とローブと覆面の全てが漆黒という、露骨に怪しい者を発見した瞬間、突撃するかの如く向かって来た。

 

  そしてシンクに身体の彼方此方が炭化若しくは欠損若しくは血塗れの、元ヒトだったであろう物体が詰め込まれているのを陽炎の向こうに朧気ながら見た瞬間、半錯乱し且つ早合点した為、シンクの傍の者目掛けて警告無しに攻撃魔法を撃ち放った。

  が、咄嗟に魔法を発動させた為か、撃ち放たれた魔力弾の数は6つと少なく且つ全ての性能が低かった為容易く回避され、更にシンクに直撃するコースの魔力弾は靴底で弾き散らされた。

 

此方は時空管理局より多数の特権と強権行使を認められている者です。

  此の場での待機は時空管理局に特例として認められています・

 

  ID情報を其方のデバイスに転送しました。

  確認終了次第貴殿の階級と役職と任務の開示を願います

 

  露骨な合成音声が熱風の吹き荒れる場に置いて尚辺りに響き渡った。

  そして機械により合成された音声の為、微塵も言い訳がましくない合成音声を聞く事で冷静さを取り戻したのか、攻撃した者は転送されたIDの照合をし、その結果、相手が少将を越えた相当権限と待遇保持者だと分かり驚愕した。

 

  だが、照合結果から分かった相手の立場を考えれば無様な姿を晒せないと思い、何とか毅然とした雰囲気を作り、問われた通り自らの階級と役職と任務を明かす。

 

「時空管理局本局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。

  階級は武装隊で一尉となってます。

  現在の任務は八神三等陸佐の臨時指揮の下、此の場での人命救助です」

 

  上官へ使うには少なからず相応しくない言葉使いを行うフェイトだったが、非常事態だという事を考慮すれば辛うじて及第点の言葉使いであり、実際言葉を向けられた者もそう判断し、特に気に留めずに空間パネルを操作して合成音声を流し始めた。

 

ならば此方の生存している者を連れ、即刻此の区域より離脱せよ

「えと………どこに居るので……………っっっぅぅっっ!?!!!???

 

  ……………あ………………っぅ………………う…………………………わ、分かりました。

  あと…………そちらの死体は…………………どう……するんです…か?」

 

  折り重なった断熱材代わりの死体の隙間から少女が抜き出される最中、少女が見てきた死体に比べれば遥かにマシとは言え、死体の顔を直視してしまったフェイトは動揺するが、辛うじて持ち堪えて了解しつつ質問を述べた。

  だが、その答えは―――

 

其の件は君の任務にかかわりが無い事だ

  後、君に質問を許した覚えは無い。

  強権を発動され、此れ以上自身以外の顔に塗りたくなければ即座に実行するように

 

―――言う気も無い上、発言を許していないという、フェイトにとっては辛辣なものだった。

  合成音声に告げられた直後、フェイトは食って掛かろうとしたが、相手は少将を越えた権限と待遇保持者で在る為、養母や義兄よりも更に上の存在の不況を買えば多大な迷惑を被らせかねないと判断し、渋渋引き下がって了承の意を返すことにした。

 

「……分かりました。

  それでは引渡し………っ……では……」

 

  触れることすら拒むと言わんばかりに近付こうとしたフェイトへ少女が投げられ、少女を受け止めたフェイトはかなり無礼な態度でその場を急いで後にした。

 

  そして、フェイトが少女を抱え、飛び込んできた孔から飛び去って数秒経った後、炎が吹き荒れる通路から、その場で立っている者と同じ格好をした者が多機能且つ強固なバリアを外套やローブの内側に展開しながら現れた(耐熱や耐火や対爆機能を持った、フィールド型バリア)。

 

「待機していたリインフォースです。

  確認は必要でしょうか?」

「不要だ。

 

  それでは他者の目に触れぬ様に現区域を離脱する。

  その間、重要証拠の運搬と私の護衛を任ずる」

「了解しました。

  此れより重要証拠の運搬と貴官の護衛を務めます。

 

  それと、質問を宜しいでしょうか?」

「構わない。

  発言を許可する」

「では、……先程の執務官に渡された者の処遇を御聞かせ願えますか?」

 

  リインフォースは救命された少女の処遇が気になり、尋ねた。

 

 

 

―――

 

  リインフォースはフェイトが飛び込んで来る少し前からその存在を知覚しており、鉢合わせせぬ様に炎が吹き荒れる通路の奥で待機し、フェイト登場からの一部始終を見聞きしていた(無論、制限時間限界迄しか待機するつもりはなかったが)。

  故、周囲の目から隠れるように移動するならば、口が緩過ぎるフェイトを離脱させたことや少女を救命していた事への理由は限られていると考えていた。

  そしてリインフォースが考えた理由は、

1.口外する前に何らかの方法で口封じする。

2.口外しても相手にされぬ様に先手を打つ。

3.口外した際に責任を追及し、合法的に処分した上に関係者へ責任を追求する。

の三つだった。

 

  リインフォースとしては、組織に属することのメリットとデメリットを理解せずに自らの意思で組織に居続ける者は、仮令その末路が死であろうと基本的に気は病まないが、救命された見覚えのある少女は局員の候補生であった筈の為、非情過ぎる対応は憚られた。

  要するにリインフォースは立場的にも精神的にも半人前の者には非情に徹し難く、自分達に危険が及ぶなら兎も角、自分達が苦労する程度で済むならば処遇を緩めてほしいと言外に進言していた。

 

  尚、リインフォースは一般局員の監視下に置かれている状況では、自らが指揮していない限り基本的に進言等は滅多に行わないが、その限りでない場合は度度何らかの進言をすることがあった。

 

―――

 

 

 

  相手が、【断末魔も笑い声も、籠められた想いが同じ領域ならば等価値】、と思っている者だと知っている為、自分達が危険にならないのであれば何とか穏便に済ませられる様、視線と言外に想いを乗せてリインフォースは尋ねた。

 

「救命された者は将来現場の第一線に就ける可能性が高く、更には際立ったモノが無いだろうが幹部補佐への適性も見受けられた。

  そして救命された者と先程の執務官が知り得ているだろう情報と、それが口外された際の損益を考慮した結果、先程の対応を採った。

 

  故、少なくとも現状では其れを損なう対応を下しはしない」

 

  そしてリインフォースの疑問に答えた声は、〔有益成り得るので無碍には扱わない〕、と言う、単純な損得で説明可能な納得のいくモノであった。が、同時に、現状(・・)と口にしたからには、仮に自分が知り得ていない思惑が現状に絡んでいたとしても前言を翻したりはしないという墓穴を掘らせてしまい、リインフォースは内心で自分の浅薄さを罵倒しつつ口を開いた。

 

「………御答え下さり感謝致します」

 

  相手に謝られる筋合いも無ければ、自分が謝れる立場でもないと思っているリインフォースは謝罪の言葉を飲み込み、感謝の言葉だけを述べた。

  そしてそれを受けた者は軽く頷くだけで返し、それからシンクを押して歩き出しながら告げる。

 

「工業用下水道を通り、工業用下水処理施設傍の整備用通路から施設内に入り、其処で受け渡しを行う。

  工業用下水道へは此の施設の汚染処理施設内の機材を爆破し、下部装甲を破壊して侵入する。

  それを踏まえて適宜な行動を採るように。

  尚、工業用下水道は既に隔壁で閉鎖され、空港手前から緊急用の迂回路で工業用下水処理施設へ流れており、外部からの侵入は対策済みだ。

 

  質問は在るか?」

「いえ、現状では在りません」

「では行動を開始する」

「了解しました」

 

  淡淡としつつも、不思議と余人には立ち入れない雰囲気を伴った会話は尾を引かずにあっさりと終わった。

  そしてその遣り取りを最後に、二名共其処を後にした。

 

 

 

  二名が其の場を去って5秒も経たぬ内、蛍光色の桃色の光線が床と天井と外壁を貫いた。

  当然床から外壁にかけて孔が穿たれれば、熱された空気が外部へと逃げ、下がった気圧分の空気が周りから流れ込む為、酸素を多く含んだ空気が流れ込んだ此の場は大爆発を引き起こした。

  更に爆発して空気を四散させた為に気圧が急激に低下し、気圧差を平均化する為に下の階層から空気を吸い上げていたが、その最中に天井や外壁が崩れてしまった為に途中から外の空気を使って気圧を正常値に戻したが、そうすれば今度は空気を吸い上げた為に気圧の低くなった下の階層に空気が流れ込む為、酸素を多く含んだ新鮮な空気が流れ込んだ下の階層は大爆発を引き起こした。

  そしてそれは複数の場所で連鎖的に発生し、空港の地上施設が壊滅しただけでなく、地下施設の大半も壊滅する程の惨事へと発展し、様様な証拠品が炎と崩落により隠滅してしまった。

 

 

 

―――Side out:燃え盛る空港内部 ――― 

 

 

 

 

 

 

――― Side:地上本部最高責任者執務室――― 

 

 

 

「人為的災害の証拠になりうるモノは破壊、若しくは回収致しました。

  但し、殺害が起きたであろう現場の目撃者の有無は不明です」

 

  引渡しを終え、薬品を噴霧されて一定の清潔さを確保した後に陸の局員服に着替え、堂堂と地上本部最高責任者の執務室を訪れて任務終了の胸を告げていたが、告げ終わるや否やレジアスは即座に問い質しだした。

 

「不測の事態は?」

「時空管理局 陸上警備隊第108部隊 部隊長ゲンヤ・ナカジマ 三等陸佐 の息女、ギンガ・ナカジマを確保致しました。

  ギンガ・ナカジマは天井一部の崩壊に巻き込まれて圧死する直前に確保致しましたが、天井一部を破壊した際に破片の直撃を受け気絶しつつも生存していると判断した為、遺体を含めた重要証拠を収めていた台車へ、遺体を断熱材代わりにしつつ搭載致しました。

 

  そして落下した天井の一部を破壊した約23秒後、時空管理局 本局執務官 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン と遭遇しました。

  回収した遺体を認識したであろう直後に警告無しに物理設定の攻撃を受けましたが、回避及び迎撃し、合成音声で時空管理局関係者と告げ、その後機密資格IDをデバイスに転送した後、ギンガ・ナカジマの救命を命じて離脱させました。

 

  尚、外套と覆面と法衣を着用して行動しており、更にギンガ・ナカジマを確保する際、威力増強の為に発声しましたので、ギンガ・ナカジマには私の肉声を記憶された可能性が在りますが、確保後の容態から既に死亡寸前の意識が朦朧とした状態と推測される為、鮮明に記憶された可能性は低いと思われます」

 

  可也事細かに報告され、少少聞きつかれたレジアスだったが、厳つい顔を顰めながら得られた情報を基に思考に耽りだす。

 

(犯罪者でもない以上、命が救われたことは素直に喜ばしいが…………………頭痛の種が多過ぎる………。

 

  大規模火災の最中、人命救助よりも遺体回収を優先していたと思われる機密資格保持者が居たという事が知られた上、機密資格のレベルが最高位階なのも知られてしまった。

  しかも知られた相手が本局至上主義急先鋒のハラオウン家の小娘だ。

  間違いなくハラオウン共に話し、一家総出で調査に乗り出してくるな。

 

  …………儂の絶対命令で個人を特定可能な情報は全てロックしてあるが、裏を返せば地上には所属を問わずに少将以下を顎で使える者が存在するということがバレたも同然。

  しかも海に人材を吸い上げられ続ける地上で……………しかも儂の直轄区域内で、病的且つ偏執的な取得難易度の最高位階機密資格を確実に得られるだろう超絶有能な者は1名のみ。甘く見積もっても3名。

  そしてその該当者の何れもが本局が取り込みたがっている者だ。

 

  …………期間限定の側近とは言え、碌に価値と危険性が分かっていない屑者共に火力のみを評価されて掠め取られるのは我慢ならん!

  儂が対応の仕方を学ぶまでどれだけの痛手を被ったか分かっているのか!?

  一度(ひとたび)奴を構成する世界に危害を加える素振りを見せようものなら、即座にどれだけ難癖付けても事故としか言えない報復が怒涛の勢いで降りかかり、幾度と無くゼストも巻き込んで社会的にも生物的にも事故で死にかけたにも拘らず………………所属させれば命令に服従するなどと本気で思っているのか!!??)

 

  自分が警告の段階の報復で社会的にも生物的にも幾度と無く死に掛けた事を思い出した為若干顔色を悪くしたが、直ぐに気を取り直して思考を再開する。

 

(…………まぁ、仮に掠め取られたとしても、局員としてではなく個として交わした約を反故にする奴ではない以上、儂の失墜や転落に直結しないのが救いといえば救いだな。

  それに、奴等の価値観も付き合い方も知ろうともしない者共が管理下に置こうとすれば、自動的に滅亡してくれるのが確実ならば、寧ろワザと掠め取らせた方が良いのやもしれんな。

 

  む…………ならば………そろそろ陸と海が袂を分かたねば共倒れになりかねん以上、海と袂を別てる機会を作るのが良いか?

 

  局員以外からしてみれば下らな過ぎる陸と海の対立の煽りを受けて徐徐に陸の治安が悪化している現状、少なくとも市民には最大の功労者と映っている儂が犯罪抑止の為に質量兵器使用の必要性を説けば大半は納得する筈だ。

  そもそも100キロ以上の範囲を消滅させられるとかいう謳い文句を掲げるアルカンシェルを地表で炸裂させれば、惑星内の人間を含めたほぼ全ての生命体が死滅しかねん被害を齎す以上、魔法が安全などと言う建前は簡単に論破可能だ。

  それに身内の恥を晒す覚悟で局員の不祥事を晒し、質量兵器を廃止して得た力は個人の良心が唯一の安全装置であり、そしてそれがまるで役目を果たしていないのが現状だと知らしめれば、少なくとも各世界のトップ程度は魔法至上主義の考えを改めるだろう。

 

  幸い、有名で、戦闘力が高く、幾度と無く暴走する本局側の局員なら心当たりがあるからな。

  ………………今迄いつか切れるカードだと思って我慢していたが、漸く切れそうだな……)

 

  今迄、[非殺傷設定だから大丈夫]、という言葉を返すだけで、幾度と砲撃を地上に向けて撃ち放っては地形や建造物を破壊し続け、苦情と請求だけを陸に回しては自分だけが脚光を浴びる、という業腹の展開が続いていたが、何時か役に立つ日が来ると思って目を瞑り続けたのが報われると思ったレジアスの心は清清しく、厳つい顔を爽やかな雰囲気に即した容貌へと変えつつ、更に思考に耽る。

 

(そうだ!今こそ海と………いや、管理局と袂を別つ時なのだ!

 

  人材不足という免罪符を掲げ、高ランク魔導師というだけで精神鑑定も受けずに要職に就けることを認めるわ、自分達の管轄区域外の子供を自発的に徴兵することを認めるわ、犯罪者の罰の軽減措置として気安く奉仕させるわ、……………組織として末期なのは明白だ!!

  此れも偏に各世界の武力の源泉たる質量兵器を禁止し―――)

「―――失礼ですが、主席監査官より出頭を命じられておりますので、御考察に御時間が掛かるようでしたら退室して構いませんか?」

「………むっ?

  あ、ああ。すまんすまん。

  若干本筋から離れた思考をしていて時間を食ってしまったな。

 

  急ぎならば構わんが、後10分大丈夫か?」

「10分ならば問題在りません」

 

  本来ならば引き渡し後即座に主席監査官へ報告に向かう筈を強引に呼び寄せている為然して時間が有るわけでもないのだが、後10分程度ならば移動手段で十分に短縮可能な範囲だと判断し、問われた時間ならば問題が無いとの意を返した。

 

「うむ。

  それでは単刀直入に訊くが、局員としてではなくおまえ自身的には今回のことを機に、袂を分かった方が良いと思うか?」

 

  突如公僕としてではなく個としての意見を訊ねられ、即座に話す際の損益を計算して話す事を益と判断したらしく、直ぐにレジアスへ答えが返される。

 

「局員ではなく私として対応させて頂きますので、対等な口調になりますが御容赦を願います」

「構わん」

 

  私としての時は謙った応対をするつもりが無い為、事前に応対が荒くなることへの確認を行うが、当然付き合いを少なからず続けているレジアスは気にせず了承の言葉を返す。

  そして了承の返事を得た為、見事な変わり身で先程まで謙った対応をしていた者に荒い対応採り始める。

 

「分かりました。

 

 

  費用対効果及び此方の都合の何れに置いてでも反対だ。

  現状で本局若しくは時空管理局からの脱退は極めて高い確率での武力衝突を意味する。

  如何に民衆の支持を得ようと時空管理局局員の意識を改革しない限り、武力衝突は極めて高確率で発生するだろう

  そして俺としては管理局を辞した後を考慮するならば、レジアス・ゲイズが振るえる権限の低下は望ましいものではない」

 

  急激な対応の変化だったが、レジアスはいつものことと思って気にした素振りも見せずに黙って聞いていた。

  そして意見を聞き終わった後にレジアスは疑問を投げ掛ける。

 

「ならば何故少女を助けた?

  あの少女はお前が行動を制限される事態になったとしても、尚価値を保っていられる存在なのか?」

「誤解を指摘するが、俺はギンガ・ナカジマを助けてはおらず、助けようとすら思っていなかった。

  俺は徒、剥がれ落ちた天井の一部を砕き弾いただけだ」

「………………ふん。………なるほど……。

 

  つまり自分が動くことでどの様な存在(価値)になるかを試したというところか。

  そしてあの少女はお前の行動が制限される可能性が在ったとしても、尚試されるだけの可能性を秘めていたというところか」

「細部は異なるが大筋は相違無い。

  それと誤解している様なので指摘しておくが、俺と時空管理局の双方の益に成る結果だと判断している」

 

  てっきり自分の利益追求だけで少女を助けたと思っていたレジアスだったが、まさか時空管理局にも益を齎すとは思っていなかった為、驚愕と疑惑を混ぜた眼差しと声音で訊ねだす。

 

「…………あの少女それ程の人材なのか?」

「少なくとも俺ならば、ある程度見識を広めさせた後に最前線の小隊長等、若しくは将官の副官補佐等に据えて活用する」

「………………病的なまでに辛口過ぎる評価を下すお前にそう言われるのならば、その少女は是非とも手元に置きたいところだな」

「私見だが、原石の儘ならば大成はしない類だろう。

  価値観の形成が終わる二十歳前後迄の経験が鍵となるだろう」

 

  受け答えだけでなく、自身の考察も織り交ぜる私としての方が矢張り話し易いと感じつつ、レジアスは若干思考の為の間を空けた後に言葉を返す。

 

「………訓練ではなく経験が鍵ということは、……………その少女は既に戦闘スタイルなどは完成しているのか?」

「私見だが方向性すら確立していないだろう。

  知っての通り戦闘機人である以上、通常の戦闘形式に適合する可能性は著しく低い。

  故、見聞を広め且つ実践乃至高精度な演算を繰り返し、自身で確立させなければならないだろう。

 

  身体構造の大半がヒトと異なるにも拘らず通常の戦闘形式を修得したとしても、良くて自身の能力を発揮しきれず、悪ければ錬度が上昇した際に身体に負担を掛けて自滅するだろう」

「………となると訓練校に通わせ続けて余計なな癖を付けさせるのは不味いな。

 

  ………………………………よし。

  時空管理局認定 最高位機密資格保持者 天神 速人 に命ずる。

  件の少女………ギンガ・ナカジマを災害後のカウンセリングということでお前に預けるので、半年以内に下地だけでも作り上げよ」

「了解しました」

 

  合図すら無しに局員としての対応に切り替え、即座に了解の返事を述べた。

 

 

 

 

  その後、一月毎の経過報告の際、ギンガが初日で廃人になっているのを知ったレジアスは唖然とした。

  だが、それに対して一切の治療を行わず、廃人の儘でも問題無く行動可能な様にしているのを知ったレジアスは更に唖然とした。

  だが、直ぐに我を取り戻したレジアスは、即座に激昂しつつも治療を命じた。

 

  そして、下地作りと平行して治療を行い、丁度指定された期限間際に下地作りと治療は終わった。

  しかし、価値観や人格の根底が可也一般と懸け離れている事に気付いた者は少数だった。

 

 

 

――― Side out:地上本部最高責任者執務室 ――― 

 

 

 

 

 

 

――― Side炎上全壊した空港近辺――― 

 

 

 

「…………………………」

 

  今尚燻り続ける瓦礫と化した空港跡を、管轄の者に引継ぎを済ませたはやては呆と眺めていた。

 

「………………………………………」

 

  現場封鎖をしていた局員の横を通り過ぎ、空港の受付が在ったであろう辺りへとはやては歩みを進めていく(三等陸佐で先程まで陣頭指揮を執っていたことを現場封鎖していた局員達は知っていた為、特に注意しなかった)。

 

「……………………………………………………」

 

  柱の傍だった為か、天井や屋根等が崩れずに済んだらしく、辛うじて建築材以外と判断出来る机の様な物と、その傍に煤とも炭とも見て取れる物を見た時、はやては拳の握り込み方も知らぬにも拘らず拳を力強く握り込み過ぎてしまい、手の甲の血管が千切れてしまった。が、そんなことに構わず、煤とも炭とも取れない物をはやては見続けた。

 

「…………………魔法…………………………遣えんやん……………」

 

  寄せ集めた急場凌ぎの編成とはいえ、自身を含めて3名居た高位魔導師の誰もが大規模火災に対して有効な魔法を使えず、救助という後手しか取れなかったことに対しての悔しさと無力さから握り締めていた拳から力が抜け落ち、俯きながら力無く呟かれた言葉には信じていたナニカが崩れ落ちた様な悲壮感が籠もっていた。

 

「…………………人も…………………知識も…………………経験も…………………………何もかもが…………………………足りないことすら実感出来とらんかった…………………………」

 

  楽観はしていなかったが、高位魔導師が3名も居るという事で、希望が在ると思って取り組んだが、次次と救助不可能になる区域が増えていく最中、災害の只中に希望など在りはしないと遅まきながら痛感した自分を罵倒するかの如く、はやての口から力無い呟きが漏れた。

 

「……………迷う暇すら無くて…………………効率だけ考えて指揮して………………………………………残ったのは見捨てた人達と助けきれんかった人達だけやん…………………………」

 

  局員の命ならば兎も角、救助されるべき多数の命を少数の為に費やすわけにもいかず、流される儘下し続けた決断の結果、自分に残ったのは見捨てた者達と確保しきれなかった者達の遺体だけであり、賞賛や栄光、況してや感謝とは無縁の立場だと知り、はやては深く頭を垂れた。

 

「……………[佐官なんてなるもんじゃない]、って…………………………こういう意味やったんやな…………………………」

 

  どれだけ人を救ったとしても、僅かでも救い上げきれない者が居れば自分の責任であり、更に救い上げきれなかった者の遺族や自分達に不満を持つ者達に罵られ、仮に全員救い上げても名声は現場の者達のみが得られると知り、実感が篭った忠告をしてくれたナカジマ三佐(ゲンヤ)の苦悩の一端が漸く分かり、精神的に未熟過ぎる自分がこれからの道程に耐えきれるかが脳裏を過ぎった瞬間、はやてはそれだけで足から力が抜けていった。

 

「……………………………………………………………………………………………」

 

  足から力が抜け落ち、足場が悪いために背中から倒れ込むはやて。

  だが、その背中に対して余りに小さい手で支えられ、同時に声を掛けられる。

 

「少なくとも最初から全員助けられないのはほぼ確実だったですし、指揮はマニュアル通りで責任を追及される様なモノじゃなかったです。

  だから、気に病むことは在っても責任を感じる必要は無いですよ?」

 

  支えられている面積が小さい為、少なからず痛みの走る背中へと振り向いたはやてが見たのは、自身の数十倍はあるはやて(自分)を震えながらも支えるツヴァイだった。

 

「勘違いしてるですけど、切り捨てたのと殺したのは別の話ですよ?

  それに、助かった人が少しでもいるなら、少しぐらいは助かった人に目を向けないと、助かった人なんかどうでもいいと言ってる様に聞こえるです。

 

  あと、そろそろ立ち上がってほしいですと言うか重いです疲れるです軋むです」

「あああ、ご、ごめんな!?」

 

  障壁で支えているのではなく、純粋に自身の体で支えているのだと理解したはやては急いで体勢を立て直しつつツヴァイに振り返った。

 

「……………あはは………………………………………見っとも無いトコ見せてもうたな……………」

 

  場都合が悪そうに空笑いしながら力無く言うはやて。

 

「世界の広さを知れば、昂ぶるか嘆くか関わろうとしないかが普通ですから、少なくともツヴァイは初めてなら見っとも無いとは思わないです」

 

  場を考慮したのか、何時もの溢れる笑顔ではなく、無表情にほんの少しの笑みが混じった表情でそう返すツヴァイ。

 

「ツヴァイも、自分に好くしてくれた人が目の前で次次と弾けて死んでいくのを見た後、人が死ぬというのを実感して大泣きしたですよ………」

「………そか……………」

「奇襲を受けたんですけど、何とかツヴァイの分だけはバリアが間に合ったですけど、近くのおじちゃんやおばちゃん達は元がナニかも分からない程の容なってしまったです………」

「…………………………」

 

  地球でもミッドチルダでも、ツヴァイは度度リインフォースと速人と一緒に旅行していることをはやては思い出し、一足先に自分よりも辛い体験をした、自分よりも幼い先駆者の体験談に耳を傾けることにした。

 

「せめて、バリアの範囲をもう少し広げていたら………一人くらいは死なずにすんだかもしれないと思ったです。

  ですけど……………下手したら死に損なって、恨み言を遺しながら死んでいった可能性もあるですし、最悪ツヴァイ諸共苦しみ抜いて死んだ可能性もあるです」

「………………………………………」

「………まぁ……………こんなのは全部建前で、本音はツヴァイが絶対死にたくなかった…………………………じゃなくて、お兄さまとお姉さまと離れたくなかったってだけです」

「……………………………………………………」

 

  言い直す程の差が今一理解できなかったが、はやては黙って耳を傾け続ける。

 

「……………結局、ツヴァイの一番はお姉さまとお兄さまとツヴァイ自身ですから、一番以外が原因で一番を失うなんて認められなくて、ツヴァイは好くしてくれたおばちゃんやおじちゃん達を見捨てたんだと理解したです」

「…………………………………………………………………そか……………」

「…………………………見捨てたということは苦しいですけど、それでもツヴァイは後悔もしてなければ恥とも思ってないです。

  だってツヴァイの一番の為にした行動ですから」

「……………………………………………………………………………………………」

 

  言外に、〔いざとなったらはやてちゃん達でも見捨てるです〕、と言われた様に感じ、少なからず寂しさを覚えたはやてだったが、ツヴァイが懸命に励ましてくれているのは嘘じゃないと思い、先程よりも生気のある笑みを浮かべながらツヴァイへと話しかける。

 

「…………………………ありがとさん。

  ……………おかげで私の一番………て言うか、夢を思い出せたわ」

 

  力無い笑みを浮かべながらの言葉だったが、それでも今にも壊れそうな雰囲気は感じられなかった為、ツヴァイは一瞬だけ微笑んだ後に後ろを向いてから話す。

 

「現場封鎖してた人達に気を使わせて離れてもらってたですから、御礼に飲み物でも渡してくるですから、はやてちゃんは真っ直ぐ戻ると良いですよ」

「……………そやな。

  お言葉に甘えて先に戻っとくわ」

 

  然り気無く一人の時間をくれたツヴァイへ言外に礼を籠めて言葉を返し、はやてはその場から立ち去って行く。

 

 

  そして、大分ツヴァイと話した場所から離れた場所ではやては一度だけ立ち止まって後ろを振り返り、今尚燻り続ける空港跡を見遣ったが、直ぐに前を向き、瞳に煩悶を宿しながらも確りとした足取りで歩き出した。

 

 

 

――― Side out:炎上全壊した空港近辺――― 

 

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  とある可能性編  少し前・赤日の空 ――――了

 

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【後書】

 

 

 

  ………元はIF3−2で、ティアナに訊ねられてギンガが速人との出会いをギンガが語る(回想風に)という内容だったのですが、一人称では上手く表現できない為、気がつけばこのような容になってしまいました。

 

  しかし…………災害現場を描写すると、鬱展開一直線ですね。

  後、書いてて思いましたが、原作で空港を撃ち抜いたり凍結させたりしていましたが、災害救助の方方を馬鹿にし過ぎですね。

  外に何が居るか以外にも、射線軸上にエネルギータンク系の有無や、バックドラフトの危険性や、砲撃で崩落しないか、等等問題点が在りますから、どれだけ都合のいい思考と展開かが伺えますね。

  凍結の方も表層を氷結させただけならば表層が熱疲労で瓦解して直ぐに燃え出すでしょうし、内部まで凍結させたのならば熱疲労で即座に瓦礫と化しますね。しかも瓦解した時の粉塵で粉塵爆発の可能性は付き纏いますし………。

  尚、仮に氷漬けにする魔法ならば、原作でもコンクリートが剥がれ落ちる程の温度(推定最低温度約750℃)を瞬間的に氷漬けにし且つH2O()が氷結粉砕しない温度で冷却するという、常識外な魔法の精密制御を要求されるでしょうから、原作の描写は謎です(一応空気中には窒素や酸素や二酸化炭素が有りますが、どれもあれ程の量を一箇所に出現させたならば、気化しだした際に風下の生物は殆どが死滅します。下手すれば5キロ先でも死ねるでしょう)。

 

  因みにギンガは一度廃人になった為、IF3の段階で趣味の一つに、【只管穴を掘っては只管埋める】、という、どこかの強制収容所での日課のような趣味があります。

  他にも、【カップに掬った米の数を数えては米櫃に戻す】、や、【服を汚しては洗う】、等といった、続ければ精神崩壊しそうなものが趣味に連なっていたりします(まともな趣味も在ります)。

 

 

  この手の番外編の更に番外編の位置付けでやろうと思っていたものに、【ヤサグレティアナ 〜妄執編〜】、というのが在ります。

  此れは模擬戦と演習を履き違えたなのはを、速人がティアナを撃墜する模擬戦中にヴィータ達に命令してなのはの暴行を取り押さえようとするモノです(練習通りやるのは演習で、規則内で好き勝手やっていいのが模擬戦ですので(大雑把な説明ですが)、本来ティアナは何一つ攻められる要素は無いです。第一叱責等は模擬戦終了後や中止後にするものです)。

 

  大まかな流れは、

01.模擬戦の意味を理解しているティアナと理解していないなのはとの間に深くて広い溝が生まれる。

02.なのはの肩を持つ感情論派のフェイト達と、思惑は異なれど静観派のそれ以外の面面に別れ、只管孤立していくティアナ。

03.見かねたヴァイスが希望になればと、速人が魔法と兵器を使わずにエース級魔導師を打倒したと聞かせる。

04.速人から教えを受けることに成功するが、精神を崩壊させられて一から精神を再構築されてしまう(価値観は同じ)。

05.訓練の最中、ティアナ(自分)に対して意識及び無意識問わずに見下した者を叩き潰すことを支えに耐えてきた為、訓練終了後はなのは達を廃人になる目に遭わせるのが目的の一つになる。

06.なのは達からすれば間違った力の使い方をしているとなのは達に指摘され、更にはそれを正す為にと模擬戦をなのはに挑まれる。

07.只管砲撃を回避してなのはを疲弊させ、頃合を見計らってレイジングハートを取り落とさせ、更に高濃度AMFを展開してなのはに落下速度減速及び落下ダメージの軽減を目的とした魔法を許さず、50m以上の上空から墜落させる。

08.骨格の原型が残らない程の負傷でなのはが魔導師としてリタイアし、怒り狂ったフェイトの一撃をワザと食らうことでフェイトを言い逃れ出来ない状態にした後に告訴。

09.厄介者を陸から追い出す為にと、殆どの陸関係の者から支援を受けた結果、フェイトが執務官を辞することになる。

10.未だ三等陸士という候補生扱いのエリオとキャロが、保護責任者のフェイトに問題が在るという理由で更迭される(特殊監査官資格を取ったティアナが先導して)。

11.シャリオがなのはの教導の意味を教えようとするが、職務放棄と不当拘束と其の他諸諸で謹慎処分を下される(謹慎期間の長さから事実上機動六課から除名)。

12.余りにティアナの勝手が過ぎるとシグナムが諌めようとするが、速人の副官に就いたティアナは完全に別の指揮系統の為それが出来ず、しかも仕事は自分以上の精度と速度で処理していて文句が付けられない為、何も出来ずに不満が募る。

………という流れです。

 

  まあ、実際にそれをしてしまえば、当然隊員の暴行は典型的なスキャンダルで、なのは自身と強引に捻じ込んだ本局に対して責任を追求可能ですが、その場合少なからずはやての監督問題が発生しますので、はやて(陸関係者)が可能な限り責任を取らなくて済むよう、速人はティアナ撃墜を止めなかったという裏話が在ります。

  …………流石に陸の高官達と一緒にリアルタイムでIF2でなのはが晒した醜態を見たならば、幾ら厚顔無恥でもはやて(出向先の陸)の監督や責任問題にはすり替えられませんからね(仮にはやてに責任を被せようとすれば、本局の魔導師は自力で規則を守れないと公言するのと変わりませんし)。

  尚、シグナムが殴ろうとする時に止めたのは、はやての守護騎士という括りが在り、ほぼ確実にはやてへ飛び火するのを防ぐ為です。

 

  因みに速人はなのはが教導目的を開示せずに教導をしていることとティアナの価値観を考慮し、機動六課が発足する前から既にIF2に至るシナリオを大まかに描いており、なのはがティアナのメンタルケアを怠っているのを敢えて看過し続けたりしています。

  ………つまり、速人は細部こそ予測しきれてはいないものの、〔ティアナが己の才覚を疑問視して苦悩する〕→〔ティアナが焦燥して不適切な判断を下す〕→〔更に焦燥して教導官と衝突する〕→〔教導ではなく教導官を疑い始める〕→〔信奉者に情報が入れば布教を始める〕→〔信奉者を拘束すれば教導官が越権の弾劾を始める〕→〔意識誘導して模擬戦を提唱させる〕→〔IF2の展開へ〕、と言うシナリオから外れぬよう、六課の部隊長陣以外を意識誘導していたりします(例:ティアナがヘリポートでグダグダ言えばシグナムが殴ろうとするのを速人は予測していたので、敢えて騒ぎを起こさせてシャリオに目撃させ……以下略……、という具合です)。

 

 

 

  で、毎回恒例の矢鱈と長い作中補足です。

 

 

 

                                     

 

 

 

【作中補足(小ネタや原作考察も混じります)】

 

 

 

                                     

 

 

【ギンガが取り残されていた場所と状況】

 

 

  空港二階で、出入国者の身体検査や身元証明や税関を行う為の待合所という設定にしています(因みに一階が国内線で、二階が国際線という独自設定です)。

 

  当然かなり広く、ギンガ以外に其の場に居た者で生存した者も多数存在しまたが、気が付けば辺り一面火の海で、しかも瓦礫の近くに居たギンガは破片を浴びて死んでいると思われて置き去りにされています(パニックの集団には死体と思われているので、集団の誰も見捨てたとは思っていません。そしてその反応と解釈は普通です)。

  それと空港とは名ばかりの転送装置での移動という設定にしていますので、滑走路どころか航空機すら無いという設定です。

 

  因みに爆心地に近いことと砲撃や爆発の震動等に因り、ギンガが速人と出逢った時には既に崩壊寸前であり、後1〜2回砲撃か爆発の震動が伝播すれば、天上と壁と床が纏めて崩壊していました。

  尚、ギンガが退かした瓦礫は凡そ5〜500kg前後で、瓦礫の不安定さ次第では子供でも十分転がし退かせます(筋肉と関節をヤバイ程(椎間板が飛び出しかねない程)痛めますが)。

 

 

                                     

 

 

【コンクリート】

 

 

  採算度外視した特殊なコンクリートでなければ融点は約1200℃〜約2200℃で、フッ素に晒されない限りは基本的に燃えません(特殊な設備を用いる、若しくは核の炎等に晒さない限りは燃えないと考えてほぼ間違いありません)。

  尚、原子力発電所の炉心に使用されているコンクリートは融点が約2200℃ですが、一般的な建築物に使用されるコンクリートの融点は約1200℃です。

 

  一般的なコンクリートも含めてコンクリートは極めて高い不燃性を保持していますが、燃えずとも高温に因る強度劣化は起こります。

  約500℃〜約600℃を境に強度劣化が始まり、約750℃で材質が変化し始め、約1200℃〜約2200℃で融解します。又、750℃以上に加熱されれば冷却後も強度が劣化した儘です。

 

  一般的にコンクリートは、約300℃〜約600℃で薄紅色になり、約600℃〜約950℃で灰白色になり、約950℃〜融点温度迄が淡黄色となります。

  尚、火災時に炎に炙られたコンクリートの温度が600℃を超える事は然して珍しくなく、時には1200℃を越える場合も在り(火災旋風の場合は3000℃を超えた100m/s以上の熱風に煽られる場合も在ります)、火事場でコンクリートが融解するのは決して在り得ない話ではありません。

 

 

                                     

 

 

【ギンガの居た場所の温度】

 

 

  ギンガが気絶から覚めた時は40℃前後で、2度目の瓦礫撤去作業辺り(60℃前後)から急激に温度が上昇し始め、ギンガが3度目の瓦礫撤去作業後辺りでは130℃を越え、4度目の瓦礫撤去作業後は170℃を越えていました。

 

  尚、サウナは通常乾式の場合は約80℃〜約100℃で、湿式の場合は約40℃〜約50℃です。

  が、フィンランド地方等(サウナ発祥の地と自負している地方)では乾式で130℃越えや、湿式で70℃越え等という、火傷前提のトンドモ大会が在ります(噂では室温150℃以上の状態で焼けた鉄板に水を大量に撒いて一気に湿度を上げる我慢大会が在るとか………)。

 

 

  因みに作者は11歳時に父親とサウナでの我慢勝負(絶えずラジオ体操しつつ)に挑み、50分以上耐え切って勝ったというアホな記録保持者です(作者もアホですが、真面目に張り合う父親は大人気無さ過ぎるアホですが)。

  そして勝った時は当然汗を掻いていないどころか口内や目が殆ど乾燥しており、失明の危機どころかマジで死ぬ半歩手前でした。

  因ってこれを考慮する限り、少女が火事場で行動可能な時間と運動量は作中程度と予測しています(鍛えていなければスバルも普通に訓練で疲れていましたから、鍛えていない戦闘機人の体力は然して高く無い(運動の効率化や自己調整機能が低い)と思っています)。

 

  尚、高温下での運動は冗談抜きで致命的な行為です。

  自分はアホな行為の代償に、2〜3日程衰弱状態になっていました。

 

 

                                    

 

 

【速人とギンガの初対面】

 

 

  実は速人が陸の彼方此方を回っている際、108部隊に偶偶居たギンガとスバルは速人と遇っています。

  しかもはやて達より早期に。

  後、レジアス繋がりのゼストと縁が在るクイントやゲンヤと会うことが間間在り、其の時にも何度か遇っています。

 

  尤も、ギンガはミッドチルダで子供が働いているのは然して珍しくはないので、ゲンヤに指摘されるまで思い出せませんでしたが(速人が顔を覚えられないよう、極力顔が見える位置に立たなかったのも原因の一つですが)。

 

 

                                     

 

 

【機密資格】(オリジナル設定)

 

 

  飛び抜け過ぎて優秀な人材が徹底的に審査された上で取得可能な、准将〜少将超相当官の権限か待遇、若しくは其の両方を有する事が可能な資格の総称で、資格内に位階は在るものの、間違い無く管理局内での最高資格です。

  尚、少将超とは読んで字の如く少将を超えているという意味ですが、中将には届いていないという意味です(中将より明確に下ですが、少将より明確に上という、この資格の為だけの特殊階級です(当然オリジナル設定です))。

 

  管理局が本当の意味で手放したくない程の能力を有する人材に対し、役職に空が出来る迄絶大な権力か待遇、若しくは其の両方を握らせることで管理局から離れることを防ぐ目的で制定された資格です。

  但し、佐官の相当権限や待遇は兎も角、一線を画す将官の権限や待遇を気軽に与えていれば組織が崩壊してしまう為、合格条件を明らかに常識外の難易度に設定し、更に試験を受ける為には准将以上一名と三佐以上三名の者の推薦を受けた上で少将以上が受理し、更に中将以上が合格判定と資格の交付を行なわなければなりません(最高評議機械に指示を仰ぐ必要は無いです)。

 

  基本的に非直接戦闘系の審査だけですが、前途の通り合格条件は常識外の難易度であり、

  指揮関連全資格を取得済

  司法関連全資格を取得済

  諜報関連全資格を取得済

  通信関連全資格を取得済(暗号解読及びプログラム関連も含む)

  事務関連全資格を取得済

  医療関連全資格を取得済(魔法での治療とは別)

  整備関連全資格を取得済

  教導関連全資格を取得済

  操縦関連全資格を取得済

  取扱関連全資格を取得済(危険物から生物の販売関連も含む)

  上記以外全資格を取得済(自身の戦闘能力に因る資格は除外)

の内最低でも3つ以上の項目を満たし、その上で満たした項目に関する論文を提出し、それらが管理局の各分野の最高責任者に認められねば合格となりません(上位資格を保有していれば下位資格を保有していなくても構いません)。

  尚、試験結果で資格の位階が決まるので、どの位階に挑戦するかは基本的に決められません。又、上位位階を目指す際は既に合格した項目は審査対象外となります。

  後、資格の幅は時空管理局が業務上有益と認める資格のみです。

 

 

  跳び抜け過ぎて優秀な人材を管理局に留める為に制定された資格でですが、資格取得者が余りに少な過ぎ、更には優秀過ぎて煙たがれる場合が多い為、本来の目的を果たしているとは言い難いですが、佐官から昇進が伸び悩んでいる者へ希望を与えるという名目で残っています(資格内の最低位階であろうと、一度資格を取得すれば余程の不祥事を働かない限りは順当に少将へ昇進可能ですし)。

 

  尚、速人は過去に一人しか取得していない最高ランクの少将越相当権限及び待遇の機密資格保持者です。

  過去に取得した者は60代前半で最高位階に至り、都合が良い時だけ権限と待遇を揮いながら現場で佐官として活躍しており、空戦SSS―で某型月の宝石翁の様な豪快な者ですが、既に管理局を辞しています。

  因みにIF3−1の段階で機密資格を保持している者は3名で、其れ迄に機密資格を保持した者の合計は5名です。

 

  それと当然ながら陸と海と空を問わずに機密資格は有効であり、局員と設備の挑発権限を有しています。

  つまり、緊急時に置いて最高責任者が自身の権限よりも下の者ならば、問答無用で陸と海と空の者を自身の指揮下に置くことも可能であり、陸と海と空の混成部隊すら一時的にとはいえ編成可能です。

  後、仮に正規の指揮系統であろうとも、最高責任者が自身の権限未満ならば問答無用で拒否可能であり、更に条件さえ満たせば挑発すら可能です。

 

 

                                     

 

 

【レリック暴走に置ける威力及び被害規模規模の解釈】

 

 

  作者的にはレリックの暴走は燃料気化爆弾の劣化版程度の事象だと思っています。

  そして燃料気化爆弾とは、呼んで字の如くの爆弾(ミサイルもあります)で、炸裂点から数百mを2500℃〜3000℃の炎で対象を融解又は蒸発させる実在の兵器で、搭載された可燃性の薬品を一次爆発で加圧沸騰させ、沸騰液体蒸気拡散爆発を起こさせて数百kgの燃料を2km/s以上の速度で飛散させ(飛散完了迄の時間は0.1秒前後)、その後に発火して大量の熱を生み出すという、一般の爆弾が瞬間的に一方向からの攻撃に対して全く逆の、長時間全方位から高熱で攻撃するという兵器です(ビルも解け崩れます)。

 

  仮にギンガのいた空港内で燃料気化爆弾が起爆したならば、ほぼ確実に空港内の者は戦闘機人を含めて全員蒸発しているはずです(場所と構造材次第なら、フレームは残るかもしれませんが)。

  そして生存者が居たとしても数十秒で空港は瓦礫に変わるので(熱でコンクリートが融解しきるので)、生存者無しは変わらないでしょうが。

 

 

  …………危険と言われているレリックの暴走が燃料気化爆弾にも及ばない被害だとするならば、質量兵器を目の敵にしたくなる気持ちも分からなくないと思ったりもしますね。

  余談ですが、フェイトのフォトンランサー・ジェノサイドシフトはクラスター爆弾の劣化版だったり、シグナムのシュツルムフォルケンは初速が速いだけの巡航ミサイルの劣化版だったりと、質量兵器の性能が洒落にならない領域だと実感するものが多いです。

 

 

                                     

 

 

【空港火災時のギンガの総合能力】(独自解釈、及び独自設定)

 

 

  魔法で全体強化を行えばほぼ全てがオリンピックで優勝可能な程の身体能力になりますが、ミッドの空港に着く前にデバイスを預けている為、完全に制御出来ていない戦闘機人としての能力ならば少少鍛えた大人程度です。

  完全に戦闘機人として覚醒したならば、Sts時よりも速度と小回りに若干優れている分だけ出力と体力が若干劣っていますが、身体面的には全盛期に分類される時期です。

  尚、一般の人間が潜在能力を完全開放している時の30%〜50%前後が戦闘型戦闘機人の最大身体能力と作者は設定しています(耐久限界を無視すれば、3t〜5tを一般人でも持ち上げられます)。

 

  技術や判断力や経験は完全に見た目通りなので、恭也と戦えば99.9%強で敗北します。

  しかし取得魔法の種類自体は捜査官志望の為Sts編のフェイトよりも遥かに多いです。が、自分の適性を理解した上で使用魔法の取捨選択を行っていないので、魔法の平均習熟度はフェイトの60%となっています(支援系魔法が多いですが、フェイトの8倍以上の魔法が使用可能です)。

  又、耐久力は、ヒトが1でターミネーター初代が10とすれば、3〜4です。が、重要器官は生身なので、装甲を貫いて重要器官に衝撃や熱が伝わる系統の攻撃には滅法弱く、浸透勁の攻撃は天敵です(戦闘機人全般)。

 

  因みに最大で成人男性の7倍強の食事を1日に12回摂取可能なので、消化器関係の機能と耐久力は象並です。

  一応平日の訓練校では三食(デカ盛り)ですが、休日だと平気で五食になります(厳しい自主錬をしているからですが)。

  異性に好意を持たれるものの、デカ盛り至上の思考が原因で離れる者も多いです(デートで奢れば小遣い消滅はほぼ確定ですから)。

 

 

                                     

 

 

【ギンガ主観の速人を取り巻く者達への認識(関係)と感想(IF3−1時点)】

 

 

リインフォース・・:ガチ夫婦。私の理想。

ツヴァイ・・・・・:ガチ息女兼ガチ夫婦。お持ち帰りしたい。抱き枕にしたい。

アリサ・・・・・・:凄くカッコ好い友達。私の先生。

すずか・・・・・・:凄く綺麗だけど色色と腐り果てた友達。お姉さんって感じ。

フィリス・・・・・:何だか徒ならぬ関係。お持ち帰りしたい。着せ替えたい。

はやて・・・・・・:元カノ?。変態一番手。

シグナム・・・・・:元カノ?の親?。戦闘中毒末期者。

ヴィータ・・・・・:姉御?。八神家の常識と良識の最後の砦。

シャマル・・・・・:噂好きのオ……姉さん?。影薄い。

ザフィーラ・・・・:モフモフ。フモッフ。

なのは・・・・・・:猿(ジン君が犬と言うか狼)。トリガージャンキー。

フェイト・・・・・:普通。多分高町一尉側で一番割を食ってる気が………。

スバル・・・・・・:普通。後、アイス製造機としか見てない気が………。

ティアナ・・・・・:弟子。何処となくアリサさんに似てる気が………。

エリオ・・・・・・:普通。ジン君に少しでも憧れた段階で騎士道を踏み外してる気が………。

キャロ・・・・・・:普通。多分一番ジン君との付き合い方が無難。

グリフィス・・・・:同僚。多分八神二佐よりジン君と相性が良さそう。

ヴァイス・・・・・:同僚。多分八神二佐と並んでジン君にとんでもない誤解を植え付けてそう。

ゲンヤ・・・・・・:知人。多分取引には応じてくれると思う。

カリム・・・・・・:余り知らないから分からない。話題に上ると何故かイライラする。

シャッハ・・・・・:多分普通。なんだかルームランナーで走り続けてる感じがする。

ヴェロッサ・・・・:多分普通。何だかジン君達を恐がってるっぽい?

ユーノ・・・・・・:多分知人。多分勤務外で会ってる時間が一番多いと思う。

クロノ・・・・・・:多分普通。何だか凄く厭な感じがする人。

リンディ・・・・・:多分普通。何だかとっても凄く厭過ぎる感じしかしない人。

ナイアルラトホテプ:メル友。すずかさんも加えてトリオになると凄いことに……。(ギンガはスカリエッティ=ナイアルラトホテプと思っていません)

ギンガ・・・・・・:友達です。少し後輩要素と弟子要素もあるけど、友達です。パーソナルスペースがスバルより近いけど友達です。

 

 

                                     

 

 

 

【作中補足終了】

 

 

 

                                     

 

 

 

 

  最早暴走し過ぎて原作の原型が殆ど見受けられないSSを毎回掲載して感想を下さる管理人様と御読み下さった方に沢山の感謝を。

 

 

 

 

 

 

                                    

 

 

 

【おまけ・其の壱】客観的に証拠示せなければ正論ではない

 

 

 

「っちゅうわけで、今回の様な事態が起きても迅速に対応出来て、更にはそういう民間人が大勢集まる上に万が一災害が起こった場合大災害に発展する可能性の在る施設に警備員として派遣出来るような部署を新設しようと思うんやけど…………どやろ?」

「ほぼ100%無理だと思うです」

「……………容赦無い意見がキツイわぁ………」

「ただでさえ陸は優秀な人材が少な過ぎて悲鳴を上げてるというのに、そんな優秀な人材を普段は警備員として派遣するなんて、海や空が認めてもレジアス中将はほぼ確実に認めないです」

「…………………あう………」

「少なくてもミッドチルダの治安問題がある程度解決するか、解決の目処を立たせない限りは設立案を出すだけ無駄です。寧ろ、そんな動きをしただけで睨まれる可能性極大だと思うです」

「………………………はい……………」

「目標を遠くに持つのは大事だと思うですけど、自分の現状と最適な状況を考えるのも同じくらい大事だと思うです」

「………………………………おっしゃる通りで…………………」

「それにはやてちゃん自身の指揮能力を上げたり、部隊を新設したり維持する為のコネ作りも大事ですし、部隊を新設した時に周りから見縊られないように実績を積むことも大事です」

「………………………………………全くもっておっしゃる通りで…………………………」

「……と、まあ、夢ばかり見る向こう見ず者への洗礼は終わりです」

「……………………………………………………情けない年長者ですみません……………」

「ああもう、元気出して下さいです。

  別にはやてちゃんやはやてちゃんの夢を馬鹿にしてたわけじゃないですよ?

 

  いきなり仲間すらいないレベル1の状態で、バリアが張り巡らされたラストダンジョンを走り抜けようとしたから注意しただけです」

「………………………そらまた壮絶な間抜けやったんやな…………」

「それが理解出来たなら大丈夫です。

  後は只管RPGの様に地道な作業の繰り返しです。

 

  ツヴァイはアリアハンで魔法使いのレベルを只管上げて、アバカムを覚える派ですけど」

「派手だか地味だか分からんのやけど!?」

「メンバーは、【勇者・ねえさま】、【僧侶→色色→賢者・ツヴァイ】、【魔法使い→色色→賢者・にいさま】、の三名です。

  後、酒場に、【遊び人・マイスタ】、【戦士・シグナム】、【戦士・ヴィータ】、【僧侶・シャマル】、【戦士・ザフィーラ】、【遊び人→賢者・すずか】、【商人・アリサ】が居るです。

  アリサ以外はみんなレベル1です」

「酷っ!!」

「【商人・アリサ】、は、お爺さんにくれてやろうとしたですけど、途中バシルーラで60回以上飛ばされたり、死なせてから蘇生しようとしたらMP尽きて戻る羽目になったりしたですから、諦めて、【商人・シラケル】、を連れて行ったです」

「…………ゲームでの運も良いんかい……………」

「因みにメインパーティー全員は転職しまくった挙句、種を使いまくってパラメータをカンストさせたです」

「…………マジで凄いな……………」

「なになに?

  なにを話してるの?」(←フェイトを引き連れたなのは)

「む、キリが良いですのでツヴァイは残務整理に励むとするです。

  そして早くお兄さまとお姉さまに逢いに行くです」(←天井擦れ擦れをフェイト以上の速度で飛行して去っていく)

露骨過ぎやって……(そんな急がんでも良かのに……)

「…(なのはとは犬猿の中だから仕方ないと思うよはやて)…まあまあ、ツヴァイも早くリインフォース達に会いたいだろうから仕方ないよ」

「そうなんやけど…………マイスターと呼ばれとるのにえらい扱い軽いんがなぁ……」

「え、ええと………そうそう、一体なにを話してたの?」

「うん?ああ、ドラクエVっていうゲームの話をしてたんや」

「それだけじゃないよね?

  ついさっきまで元気が無かったのに、今はもう元気になってるんだから、それ以外の話をはやてちゃんはツヴァイとしてたよね?」

「あ、ああ。

  新しい部隊を自分で設立したいな〜、って話をしとったんや」

「へえ〜、どんな部隊を作ろうとしてたの?」

「いや………、戦闘特化じゃなくて対災害特化させた部隊を新設したいなぁ、って話しやったんや………」

「へえ、いいことだと思うよ、はやてちゃん」

「私もそう思うよ」

「あんがとさん。

  そやけど…………現状じゃ問題山積みでまず無理やけどな……」

「「問題?」」

「そや。

  現状、高ランク魔導師は次から次に引き抜かれて陸には殆ど()らんから、貴重な高ランク魔導師を普段遊ばせるような対災害専門要員になんて出来へん。

  それに私は実績無いから、新設どころか既存の部隊の指揮官に就けるかすら怪しいんよ」

「義母さんかクロノに頼めば多分後見人にはなってくれると思うよ?」

「いや、陸の部隊新設に海の人間が後見人なったら火に油やん………」

「大丈夫だよ。

  はやてちゃんの部隊が出来れば火事とか平気になるんだから」

「そやから、陸には普段遊ばせても構わん程人材に余裕が在るわけやないし、災害で救える人よりも犯罪を防いで救える人の方が多いって判断されるやろから、まず無理やって」

「でもはやてにはシグナム達がいるよね?」

「そうだよはやてちゃん。

  シグナムさん達を呼べば陸に迷惑掛けないだろうし、私とフェイトちゃんも協力するから陸に文句は言われないよ!」

「あの〜、なのはちゃーん、………何時起こるか分からん災害の為にずっと隊舎とかに待機してくれるん?」

「あ」

「それに陸の部隊やのに、主要メンバーを海や空で固めるのはアカンやろ………」

「そんなことないよ!

  それで誰かを助けられるなら、陸とか海とか空とか関係無いよ!」

「そうだよはやて

  それに掛け持ちするって方法も在るんだから、諦めるにはまだ早いよ」

「………いや、一分一秒を争うのに、所属隊員が掛け持ちしとって直ぐに出れんのやったら、災害が起こる度に派遣要請した方が効率的やん。

 

  あとな、別に諦めたわけやないんよ。

  ただ、今のままじゃ部隊新設しても運営どころか指揮すら碌に出来んて分かっとるから、しばらくはスキルアップとコネ作りに励むってだけや」

「そんなことないよ!

  はやては立派に指揮してたよ!?」

「そうだよ!

  混乱してるだけだった人達を纏めた後に直ぐ現場の指揮を執って活躍したんだよ!?

  しかも陸の追加の人達なんか全部終わってから到着したんだよ?

 

  私達と一緒に素早く解決したんだから、十分指揮出来るよ!」

「フォローしてくれるのは嬉しいんやけど、あれくらいは佐官なら出来んと降格モンなんよ。

  あとな、………追加要員の人達を悪ぅ言うんは止めてや。

 

  地球と違って重機や工具が質量兵器禁止のせいで装備出来ん以上、一定ランク以上の魔導師しか災害現場に突入出来んのに、その一定ランク以上の魔導師の殆どが海と空に引き抜かれてしまっとるんよ?

  現場に駆けつけられるだけの範囲に居って且つ手が空いとって、更に現場で命令を聞くだけの余裕を持てる経験者か度量持ちで、しかも最低限の医療知識を持っているのが必須条件。

  そしてそれを満たした上で、火の海の中に突入しても大丈夫だったり、応力や気流を計算して瓦礫撤去や壁の破砕が出来たり、悪路でも運搬可能な能力があったり、医療技能を持っとったり、と、その他色色な技能を持っとる人を急いで纏め上げてチームを作っとるんよ?

 

  …………寧ろあの短時間で到着したことの方が驚きモノなんよ」

「それでも終わってから到着したのは間違い無いんだよ!?

 

  人が居ないのは分かるけど、それでも陸を守るのが役目なんだから、私たち空や海のせいにするのはおかしいよ!!」

「………たしかにそうや。

  人が足りんからいうて、無様を晒して構わん理由にはならへん。

 

  やけどな、それやったら、〔何で陸で育てた人材を引き抜くのか?〕、って話になるんよ」

「そんなの決まってるよ!

  私達の扱う事件の方が危険が一杯だからだよ!」

「うん、………危険なのは陸も認めとると思う。

  やけどな、それやったら海や空は自分達で一から人材を育てたらいいってだけの話やん。

  少なくとも陸の業務に支障を来たす程引き抜くんは、暗に、〔陸の局員もそれに守られる民間人も知ったこっちゃ無い〕、って言うとるんと同じやん」

「違うよ!!!

  私たち仕事の方が大事だからそうしてるだけだよ!!!

  どうしてそんなこと言うの!!?」

「そうだよ!

  私達が次元の海を守らなきゃ、陸は今よりもって酷いことになるんだよ!?」

「陸も海も空も、仕事の大事さは何処も一緒や。

  それに多分、陸としては自分達が自分達の各世界を確り守れば、次元世界も平……………いや、熱くなり過ぎてしもたな………。

 

  ……………人も集まってきたみたいやし、解散しよ?」

「まだ話は終わってないよ!!

  私たちがどんな相手と戦ってて、どれだけ仲間がやられてるかとか、お話したいことはたくさんあるんだから!!!

「な、なのは………落ち着いて」

「落ち着いてなんていられないよ!!

  同じ局員なのに私たちのことを知ってもいないんだよ!!?」

「フェイトちゃん、なのはちゃんを連れて急いでここから離れてや。

  飛行許可なら後から取っとく。

 

  場を押さえられたら陸も海も空も恥を晒すことになってまう」

「わ、分かったよ」(←レイジングハートをセットアップし始めたなのはを抱えつつ、飛行し始めるフェイト)

「離してフェイトちゃん!!

  私たちの仕事がどれだけ平和に役立ってるかお話しなくちゃいけないんだから!!!」

「顔合わせると冷静に話せそうにないからお話は簡便やけど、メールでなら構わんで」

「それじゃあっ!!」(←なのはを抱えて夜空に去っていくフェイト)

 

 

 

 

 

「…………………なるほどなぁ〜……………。

  …………………………こうやって陸は海や空が嫌いになってくわけなんやなぁ………」

 

  ある程度話を聞いていた者達ははやての呟きに黙って頷き、それを見たはやては苦笑を浮かべながら周囲を軽く見た後に告げる。

 

「どうもお騒がせしました。

 

  今の騒ぎは私に責任が収束するようしますんで、安心して持ち場に戻って下さい」

 

  その言葉に少なからず安堵したらしく、各自その場で休憩を続けたり持ち場に戻ったりし、場は閑散とした空気に戻った。

 

「さって…とっ、………ここの責任者に事情説明して、その後フェイトちゃんの飛行許可取らんとな………」

「それならもうツヴァイが済ませてますんで、大丈夫ですよ?」

「へ?」

「ですから、ツヴァイが此処の責任者の方に事情説明して納得してもらってるですし、飛行許可と運搬許可も確りと取ってるです。

 

  それと、今日は此の場でお仕事終了ですから、後ははやてちゃんが此処の責任者の方に挨拶して帰るだけです」

「……いきなり面倒事から逃げたと思うたら、いきなり面倒事済ませて現れるって………」

「ツヴァイは愛に生きてるですけど、義理と人情も忘れてないのです」

「おおぅ。

  ……………なんかツヴァイが凄く大人に見えるわ………」

「はやてちゃんは未だ仕事中ですから、あんまりお喋りしてないで挨拶に行った方が良いですよ?」

「っとと、そやね。

  それじゃあ挨拶に行ってくるから、ちょっと待っとってや」

「了解です」

 

  早歩きで通路の奥に消えるはやての背中は、気疲れが滲んでいるものの暗い感じは無く、先程の話を引き摺っている様ではなかった。

 

 

 

【突如終わる】

 

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

【おまけ・其の弐】相手の性別に性的関心を持たない者程フラグが立ち易い

 

 

 

『つまり、精神崩壊患者を回復させる手段はないかってこと?』

「厳密には違うが、概ねその通りだと解釈してもらって構わない」

『そんなのカウンセラーにでも頼めばいいでしょが。

  第一、速人はカウンセラーの資格持ってるでしょが』

「資格は保持しているが、精神崩壊者を洗脳せずに社会復帰させるのは未経験だ」

『?  空港火災に巻き込まれたって言ってたわよね?

  ………あんまり言いたくないけど、火災の間に強姦されたり殺されそうになった程度じゃ、精神崩壊したとしても、後である程度勝手に再構築するでしょ?

 

  事前に拷問や薬物投与や隔離されて精神崩壊してたんなら分かるけど、その場合は専門の機関に回すでしょ?』

「当初、空港火災時に死体を目撃して半錯乱していた程度なので、発見及び直接救助に関わり且つカウンセラー資格等を持つ俺が担当することとなった。

  そして対象が軍関係の組織に酷似した訓練生であることを考慮し、死体を見たという、一般的には貴重な部類に入る記憶を忘却しない方向で対処することにした」

『……すっごく碌でもない展開になる気がするから、正直あんまり聞きたくないけど……続けて』

「組織の最高責任者より直直に命を下された後、確認と保険の為に、発令者及び保護者及び訓練校校長に、意訳だが、〔戦う者に必要な人の死に触れた経験を活かす為、それに合わせた治療を行うが、代償に日常生活を問題無く過ごせるものの価値観及び人格が少なからず影響を受けるが構わないか?〕、と問い、了承の意を受けたので治療に当たった」

『意訳してそうなる提案を何で了承したのか本気で気になるけど、御経より長くなりそうな説明受けそうだからパスするわ』

「続けるが、空港火災時に死体を目撃した時の衝撃を希釈して与え続けることで、人死にに慣らしつつ快復させることを目的とした為、以前アリサと月村すずかが命名した〔黒の章〕に類する映像を5時間程鑑賞させた頃に錯乱が沈静化した。

 

  そして経験も積み且つ日常生活も問題無く過ごせると判断したので、戦闘者としての知識や判断の下地を作成行い、一月後に経過報告を提出した際、全方面から苦情が寄せられた」

『…………………』(←頬を引き攣らせている)

「意訳だが、〔元の状態に戻せ。カウンセラーの資格を持ち且つ此のような状態に追い込んだ者なら出来るだろ?〕、と言われた。

  尚、当初は俺以外のカウンセラーに預けたらしいが、[どのような対処を行なったかを理解している者が一番効率的且つ高効果での治療が可能です]、と言われたらしく、再び俺が指名された。

 

  刑法で訴訟されることはないが、民法で訴訟され且つ代理人が認められない可能性が高いので、俺としては事態を解決したい」

『…………………』(←片手を額に当てて天を仰いでいる)

「しかし精神は非可逆性要素が多く、精神崩壊者を洗脳せずに快復させたことのない俺では悪化させる可能性が高く、時間を割きたくないので快復乃至偽装可能な医者の紹介を求めている。

 

  尚、精神の非可逆性要素の多さを説明し、意訳だが、〔自我は以前に近い状態へと構築することも可能だろうが、Esと超自我に関しては未知数となる〕、と再三説明し、そして契約書と念書に了承の意を示す署名をさせている〕

『…………事情は分かったわ。

  そしてカウンセラーの名医を金や圧力で動かしても効果は低いから、知り合いの多そうな私に連絡したことも分かった。

 

  ただ…………今更なんだけど、私が紹介できる医者に通わせても大丈夫なの?』

「その点は問題無い。

  協力者や協力機関の名は伏せ、更に誤誘導を行う事で伏せた名を自己完結するよう仕向ける。又、情報を改竄し且つ証明可能な証拠を物理的に破棄する。

  そも、協力者等の制限は受けていない。

  そしてこの通信は約370時間前に現在俺が知り得る理論と設備を限界まで用いて構築した直通の通信経路だ。

  そちらの場所自体が盗聴されていない限り、盗聴可能性は約10の50億乗分の1未満だろう。

 

 尚、 患者となる者の戸籍は、俺が正式に発行するので問題無い」

『そっちでもドンだけ金持ってるのか凄く気になるけど、とりあえず危険度は考慮外にして構わない程小さいのが分かったし、こっちでの身分も問題ないみたいだから、一人紹介するわ。

 

  あ、一応後で開示しても構わない通信関係技術を送っといて。

  無駄かもしれないけれど、一応私の方でも対策採って置きたいから』

「分かった。

  紹介された者へ事前に会う際に書類を直接渡す為、了承後に渡す事となるが構わないか?」

『それでいいわ。

 

  それで、紹介するカウンセラーは近くの総合病院の矢沢って医師よ。

  因みに高町家の専属医で、忍さんとの信頼関係も深いそうよ』

「フィリス・矢沢ならば異論は無い」

『知ってんの?

  名前だけじゃなくて評判とかも?』

「以前心理学的援助(カウンセリング)を受けさせることで精神的負担を減少させようとした際に調査した。

 

  時間は経っているが定期報告通りならば、医者としては兎も角助言者(カウンセラー)としては世界屈指と判断している」

『………報告だけでよくそこまで判断できるわね………』

「それが出来ぬ者は組織の管理者足り得ない。

  尤も、優秀な諜報員の存在が必要だが」

『耳が痛いわね。

 

  ……ま、言いたい事は分かったし、速人があたしに何か要求とかするのはレアかだから、喜んで協力するわよ』

「礼は要るか?」

『私が好きでやってんだから、別に必要ないわよ。

  第一、訊かれてから貰う礼なんていらないわよ』

「分かった。

  ならば借りということにしておく」

『あ、借りにしなくていいから、近いうちに時間とって付き合って頂戴。

  リインフォース達も歓迎するから、出来るだけ大勢連れて来て』

「明日確認の為に其方に赴き、問題が無いようならば明後日から140日前後は其方に滞在する予定なので、他の者を連れたって赴くのは滞在終了後以降になるが構わないか?」

『それなら滞在してる間、出来るだけ付き合ってもらうってことでいいわ』

「了解した。

 

  それでは其方の現地時刻で明日11:00(ヒトヒトマルマル) (から) 12:00(ヒトフタマルマル)の間に訪ねる予定だが、構わないか?」

『了解。

 

  それじゃまた明日』

「又明日」

 

 

 

 

 

「初めまして、アリサ氏より紹介されました、カウンセラー及び遺伝子関係専門医のフィリス・矢沢です」

「初めまして、アリサ・バニングスに紹介されました天神 速人です」

「大まかにですがお話は伺っております。

  …………精神崩壊された方の治療の助力を請いたい、と……」

「正確には治療ではなく再構築ですが」

「…………治療ではなく再構築。

  ………そして再構築の依頼ではなく助力……ですか………」

「問題点が在るようでしたら指摘されて構いません」

「いえ、問題ではないのですが……………………、失礼ですが3点御尋ねしますが、宜しいですか?」

「此の件に関係し且つ機密に事項に抵触せず、更に琴線に触れない範囲でならば御答えします」

「では1つ目ですが、貴方は患者さんと仰って良いのかは疑問ですが、その方をどうなされたいのですか?」

「理想的環境下に置こうとしています」

「………つまりそれは治そうと思っているわけではないということですか?」

「その通りです」

「………2つ目ですが、貴方は私………若しくは医者に不信感を抱かれていますか?」

「その様なモノは一切抱いていません」

「…………………3つ目ですが……………………、貴方は私に何を望まれているのですか?」

「私が引き合わせる対象が精神を再構築する際の一助となることです」

「………………ふうぅぅ。

 

  ……………………………御聞きしていた通り、誠実なのに少しも善人とは思えない人柄ですね………」

「結論を御聞きかせ願います」

「私は病院の経営者若しくは幹部でもありませんので、私の一存で症状を確認していない者の受け入れを決めることは出来ません。

  そして仮に受け入れたとしても私が担当医になるとも限らず、更に私には病院へ様様な報告を行う義務が在ります。

  ………ですが、貴方は私が詳細な記録を作成して報告することを望まれてはいないのですよね?」

「その通りです」

「ならば海鳴大学付属病院G棟研究員 フィリス・矢沢としましては御断りさせて頂きます。

 

  ……………ですが、私個人としてはその限りではありません」

「条件は?」

「貴方が私に引き合わせようとされている方を、私がある程度回復したと判断する迄は決して治療を中断させないこと。

  最低でもこの一点だけは守って頂きます」

「対象の関係者から帰還要請等が在る場合、貴女が随伴なされるのでしたら構いません」

「その関係者とは御家族や恋人や保護責任者の方ですか?」

「家族及び所属する組織の幹部達若しくはその意を受けた者達です」

「………御家族の方達ならば、御本人が未成年の場合は経過説明をしても納得されない場合は、最悪通信ででも続けます。

  逆に未成年でないならば御本人の意思を尊重します。

 

  所属する組織の方達に関しては、治療放棄と看做した場合は身柄の引渡しに応じません」

「本人がそれを望んでいる場合は?」

「少なくとも治療不可能と断定しない限り、例え御本人が望まれても身柄の引渡しには応じません。

 

  尤も、組織の都合を優先したのではなく、御自身の信念に基づかれた上で治療の放棄や中断を望まれておられるならば、……………非常に不本意ですが認めます」

「ならば18〜82時間以内に御連絡下されば、3分以内に御自宅に伺います。

  若しくは同時間内ならば御自宅の右隣に居りますので、御訪ね下さい。」

「分かりました。

 

  あ、遅くなりましたけど普通に喋って構いませんよ?

  これから個人として付き合うんですから、お互い疲れるでしょうし、治療の妨げにもなりかねませんから」

「〔大医の病いを治するや、必ずまさに神を安んじ志しを定め、欲することなく、求むることなく、先に大慈惻隠の心を發し、含霊の疾を普救せんことを誓願すべし〕。

 

  ………初めて己が身で証明せんとする者に出逢った」

「………そんな人に尊敬される様な者じゃないですよ………私は。

 

  ………………………皮肉か意趣返しか………………若しくは復讐してるだけですから………」

「熟知しているだろうが、自己否定は死への本能(デストルドー)を共鳴増大させる可能性が或るので、引き合わせる者に悪影響を与えぬ範囲で行う様に留意してくれ。

 

  それと俺の他者への評価は、仮令評価対象者であろうと否定される謂われは無い」

「…………………ホント……皆さんの言ってた通り不思議な人ですね………。

 

  こう………透明なナニかが染み込んで来る様な……………逆に透明な何かを染め上げる様な………」

「初めて言われる表現だな。

 

  時間が押しているので続きは次回に持ち越させてもらう。

  それでは又後日、フィリス・矢沢」

「あ、長長と話し込んでしまってすみません。

 

  それと態態フルネームで呼ばれなくても結構ですよ?」

「指定が無い限り、一切不便と思っていないので現状を維持する。

 

  それでは…」

「あ、はい。

  明日か明後日に休みを取れるようにしますから、その時此方から伺いますので待ってて下さい」

「分かった」

 

 

 

(行っちゃった…………。

 

  ………………恭也君達が言ってた通り、仙人と悪人と聖人と賢人を変な感じに混ぜ合わせた感じって言ってたのも分かるけど………………、私は人語を解す野生の獣って感じか………………若しくは汎用人型決戦兵器?

  後……………然りげ無く私の家を知ってたり、何時の間にか隣に移り住むようなお金を持ってるのは微妙に怖いような気が…………。

 

  ……………………時間があったらぜひともリスティに合わせてみたいな。

  ……………リアクション薄いのに切り返しが鋭い人との相性は最悪っぽそうだし………)

 

 

 

【唐突に終る】

 

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

【おまけ・其の参】中将は辛いよ(IF2の少し前)

 

 

 

「次は、機動六課に出向中の者に関する報告です。

 

  先ず、時空管理局本局武装隊 航空戦技教導隊第5班所属  高町なのは一等空尉、です」

「待て。

  先に乳製品を摂取して胃穿孔を予防する」

「私も御一緒させて頂きます」

 

 

 

 

 

  牛乳とヨーグルトと豆腐を混ぜ合わせた生温い物を啜る二名(不味くはないが、不気味で不快な食感と温度)。

 

 

 

 

 

「では改めて報告を概略で読み上げます。

 

  其の壱。実働部隊となるフォワードの人員を常に全員限界迄教導し、出撃を考慮していない件に関して。

  教導終了後に全員疲労困憊しており、教導終了後最低210分は本来の実力の30%も発揮出来ないであろう状態と推測され、実働部隊の隊長としての自覚を著しく欠いているものと判断されます。

 

  ……とあります」

「……フォワード陣が疲労困憊時に出撃要請を受けた際は、待機にするよう言って置け。

  そして部隊長以外の隊長陣で対応不可能ならば、緊急措置として試験部隊を導入するように告げて置け」

「分かりました。

  それでは次です。

 

  其の弐。作戦中、ヘリよりバリアジャケットを纏わずに降下し、空中でバリアジャケットを纏った点に関して。

  バリアジャケットを纏う時間的余裕が在るにも拘らず、態態被弾可能性の在る空中でバリアジャケットを纏い、撃墜されて作戦に支障来たす可能性を徒に上昇させるという、戦闘者及び現場指揮者としての自覚が全く無いと判断されます。

 

  ……とあります」

「………次も同様のことを行い、その上で撃墜されたのならば回収は実働部隊の隊長陣全員で当たらせろ。

  そしてフォワード陣を機動六課の防衛か民間人の防衛に専念させ、事態解決は試験部隊が行う。

  そう伝えて置け」

「分かりました。

  それでは次です。

 

  其の参。試験運用すらしていない個人専用デバイスのみで実戦に投入した点に関して。

  後述のシャリオ・フィニーノ一等陸士で詳しく説明致します。

  尚、シャリオ・フィニーノ一等陸士は本局所属から陸に転属されており、ほぼ確実に本局の者と見て間違い御座いません」

「…………次だ」

「分かりました。

  それでは次です。

 

  其の肆。分隊指揮の権限委譲を行わずに分隊指揮を放棄した点に関して。

  単独若しくは別分隊隊長と共に空戦を行い、陸戦魔導師への指揮を状況終了時迄行っておらず、現場の前線管制官に全く事前通達無しで指揮権を委譲したとの調査報告が在ります。

  尚、前線管制官はツヴァイ陸曹長であり、更には他の現場の者達とは異なる命令系統且つ被指揮者の能力や判断傾向の把握が浅く、指揮官資格を保有していようとも指揮権を移譲する理由には足らないと判断します。

 

  ……とあります」

「……………次に同じ行動をすれば即座に一時更迭及び拘束し、分隊長としての全業務を部隊長の補佐官達に代行するように伝えておけ。

 

  それと本局の馬鹿共に抗議する必要は無い。

  下手に抗議すれば更迭するのを妨害される。

  抗議は機を見て行う」

「分かりました。

  それでは次です。

 

  其の伍。アグスタ警備時に無断で制服着用を怠った点に関して。

  ……この件はフェイト・T・ハラオウン執務官も同様であり、後述の機動六課実働部隊に関する問題点で詳しく説明致します。

  尚、八神二佐も一見して制服を着用していないように思われておりますが、外見を変えたバリアジャケットの為、一応局員として最低限の職務は果たしていますので御安心下さい」

「………………本局に対する抗議以外は全てお前に任せる」

「分かりました。

  それでは次です。

 

  其の陸。模擬戦中の粛清に関する点に関して。

  演習ではなく模擬戦にも拘らず、自身の教導内容から逸脱した行動を実行した隊員を明らかに過剰な攻撃で無力化し、更に救助を試みた別の模擬戦者を捕縛し且つ眼前で先の隊員へ更に過剰な威力の追撃を放ったと判断されます。

 

  ……と、あります」

「…………………その件は模擬戦の承認要請の際に報告を受けているので不要だ。

  その後の隊員の暴走や拘束及び取り調べに乱入した事等の詳細も報告を受けているので不要だ。

 

  ……………二度も聞くと脳の血管が切れそうだ」

「分かりました。

  それでは其の漆と其の捌は省略します。

 

  では、その玖です。月の1日辺りの平均睡眠時間が120分を下回っている点に関して。

  特殊な訓練乃至特殊な体質で無い限り身体回復に最低限必要とされる180分を機動六課設立後より常に下回り続けており、戦闘員として健康管理意識が著しく欠けていると判断され、更に休日を無許可で返上して強引に業務に就くという行為に因り人事部から苦情を機動六課に寄せられており、高町なのは一等空尉を深く知らない者は陸が使い潰そうとしていると判断し、海や空との折衝が更に困難になると判断されます

  尚、睡眠時間はデバイスの記録及び隊員管理機構の一つである生命徴候(バイタルチェック)に拠る推測ですが証拠としては十分であり、更に機動六課医務官であるシャマル二等海尉が、[魔力で体力の低下を補っており、遠からず身体的故障を引き起こすのは明らか]、と述べております。

 

  ……と、あります」

「……………………絶対防衛線は決して張らせない様に厳命しておけ。

  仮に張らせなければならない場合は適当に耳障りが好い事を語って高揚させ、更に英雄譚の様な話をして射幸心を煽って玉砕(単騎突撃)させ、その後は素早く後詰に絶対防衛線を張らせろと伝えておけ。

 

  …………何時暴走か狙撃(暗殺)されるか分からん奴に絶対防衛線など張らせんに限る」

「分かりました。

  それでは次です

 

  其の拾。恒常的な公私混同及び職務意識の低さの点に関して。

  この件は派遣された者全員に少なからず当て嵌まっている為、後述の機動六課実行部隊に関する問題点で詳しく説明致します」

「………………………此れでとりあえず一区切りか?」

「はい。

  次は、時空管理局 本局 執務官 フェイト・T・ハラオウン 一等空尉 に関する事ですので、とりあえずは一区切りです」

「………………第一回の監査報告書とはいえ、…………まさか此れ程問題点が在るとは………」

「特殊監査部経由の為、相当量の添削…………ではなく省略が成されておりますが、それでも恒常的な公私混同及び職務意識の低さに関する報告量は全体の80%以上ですので、概略を述べるだけでも20分以上は掛かると思われます。

  尚、省略前の報告書の情報量は省略後の18倍強だそうです」

「…………………………緊急性が低ければ勤務終了前に報告してくれ。

  ……………気が滅入り過ぎる………」

「分かりました。

 

  尚、報告者(次席特殊監査官)及び特殊監査部部長(主席特殊監査官)の見解ですが、放置して擁護者諸共自滅するのを待つのが得策との事です」

「……………奴らが自滅する前に儂の胃が溶解しきりそうだが………やはりそれが得策か。

 

  ………………分かった。向こうの見解に沿うとしよう。

  どの道模擬戦を承認した時に模擬戦終了迄は放置すると決めたのだ。提案通り此方も放置すると返しておいてくれ。

  それと儂の執務室以外のミッド限定だが、結果を出した場合に限り、一度だけ機密指定区画での無許可行動を不問にすると伝えておいてくれ」

「分かりました。

 

  しかし…………態態特殊監査部経由で報告書を入手せずとも、第三補佐官を召還して査問に掛ければ宜しいのでは?」

「………恐らく第三補佐官として知りえた事のみしか発言しない以上、詳細を知ることは困難だ。

  ならば対価を支払おうとも、特殊監査部とパイプを作る方が遥かに得だ。

 

  第一、流石に容疑者でも犯罪者でもない者を喚問することは出来んし、査問にしても陸の印象が悪化するだけだ。

  ……一応、強引に喚問か査問することは可能だが、六課の陸の者が喚問を受けようものならば、本局に付け入る隙を与えてしまうだけだ」

「……思慮の浅い質問をしてしまい、申し訳ありませんでした」

「…………オーリス。覚えておくといい。

  俗物的でも即物的でもなく、正義や大義にも拘らず、そして己を省みぬ者相手に対し、倫理や権力の効果は非常に薄い。

 

  ………独自の価値観と思考を持ち、その在り方を続けられる者はそれだけで極めて優秀であり、そのような者を倫理や権力で縛ろうとすれば…………極めて高い確率で手痛い反撃を受ける。

  最悪、どちらかが滅ぶまで際限無く玉砕攻撃を受け続けることすら在り得る」

「………組織人としての適性がまるで無いように聞こえますが?」

「無いだろうな。全く。

 

  一見組織人として完璧に見えるのは、単に、〔価値を見出していないことに関してケチを付けられたくない〕、という思考故だろう。

  …………どのような目的や事情で組織人になったのかは知らんがな」

「……………私としましては高町一尉よりも危険だと思いますが……」

「確かにその透りだ。が、馬鹿(邪魔)ではない。

  そしてその一点が両者を別ける決定的な違いだ」

「……………御説明と御教授を下さり、恐悦の至りに存じます。

  御時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」

「構わん。

 

  ……それでは小休止は終わりだ。

  残りの監査報告は仕事上がり前にするとして、それ以外は何時も通りだ」

「分かりました」

 

 

 

【唐突に終わる】

 

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

 

【おまけ・其の肆】模擬戦と書いて鬱憤晴らしと読む(IF3の少し前)

 

 

 

「ええいっ!!いい加減にしろ!劣化の将!!!」(←鍔迫り合いの最中)

「声のニュアンスで馬鹿にしていることくらい分かってるぞ!

  お菓子くれない?の騎士が!!」(←同じく鍔迫り合いの最中)

「うるせえっ!!

  桃色剣の騎士に言われたくねえっ!!

 

  局員辞めてクラブで働いてろ!!」

「桃色ではない!薄紅色だ!!」

「うっせえよ!戦闘中毒末期侍が!!

 

  そんなに戦うのが好きなら戦争の最前線で一人弾除け代わりに戦ってやがれ!!!」

「勘違いするな!

  戦いが好きなのではない!戦っているのが好きなのだ!!」

「良い事言ってるつもりだろが、強引に相手を戦いに引き摺り込んでる時点でアウトだからな!!?」

「強引ではあっても無理強いはしていない!!」

「無限会話ループするか辻斬りに走る奴が何言ってやがる!!!?」

 

 

 

 

 

「凄い罵りあいですぅ」

「うん。

  ………観戦者全員ドン引きやな」

「やはりストレス解消の為に模擬戦をさせたの正解でしたね」

「……………………」(←少女サイズのツヴァイを膝に乗せた儘眠っているリインフォース)

 

 

 

 

 

「仕事するからには真面目に働く奴になれーーー!!!」(←ラケーテンハンマーの発動中)

「家で愚痴を零す迷惑行為は止めろーーー!!!」(←飛竜一閃の発動中)

「胸を揺らしてんじゃねえーーーーーーー!!!」(←直撃に近い被弾ながらもシグナムに攻撃中)

「他人の身体的欠点を謗るなーーーーーーー!!!」(←鞘で受け止めきれず、ヴィータと変わらない程攻撃を受ける)

「何処が欠点だコラ!!

  青少年誘惑騎士が!!!」(←とりあえず離れる)

「特殊性癖者大量生産騎士に言われたくはない!!!」(←とりあえず離れる)

「生憎とそれはツヴァイに欲情している奴が殆どで、アタシの人気なんて大したことねえんだよ!!!」

「ならば私の人気もリインフォースに比べれば大したことないと言わせてもらう!!!」

「馬ーーー鹿っっ!!!

  お前のファンクラブだけは抱き枕とかバスタオルとか騎士甲冑の時の脇チラとか、他にもアイコラされたエロ画像が山程出回ってんだよ!!!」

「知っているなら止めろ!!!

  と言うか、なぜ私だけ扱いが変態的なんだ!!!???」

 

 

 

 

 

「そういえばヴァイス君がシグナムのグッズを売っとったなぁ」

「因みにお姉さまとお兄さまとツヴァイのグッズを売ろうとしてましたけど、普通の画像だけだったんで注意だけにしたです」

「……たしか、[そういう対象で見るのは憚られるし、多分他の奴も同じだから健全なのが一番だろ?]、って言ってました」

「……………私のファンクラブは居らんのやろか?」

「人気はあってもファンクラブなんて遠い夢のまた夢です。

  少なくともツヴァイはそんなコアでマニアで限定され過ぎたファンクラブなんて知らないです」

「………………グリフィス君、……………………私って……………そんな魅力無いん?」

「いえ…………魅力は在ると思いますけど………………佐官の上に部隊の最高責任者ですから…………」

「……………………」(←寝顔を膝の上のツヴァイに記録されまくっているリインフォース)

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおお!アタシのアイゼン(相棒)が光って唸る!!ニートの性根を潰して直せと  輝き叫ぶ!!!」(←大量に流し込まれた魔力がギガントフォームのグラーフアイゼンから赤い光として漏れ、赤熱化している様に見える)

「中らざれば死!貫かざれば死!!久しからずば死!!!」(←弓に矢を番えて引き絞りつつ、矢に焔を撒き散らす程魔力を篭めている)

 

 

 

 

 

「ならばツヴァイの決め台詞は、〔エネルギー充填120%〕、ですっ」(←リインフォースを起こさないよう、大声にならないように注意している)

「なら私は、〔この呪文はほとんど魔法力を使わない。そのかわりに己の全生命エネルギーを爆発力と変えて敵を討つのだ!!〕、やね」(←本当は大声で言いたいが、リインフォースを起さないように気を使っている)

「部隊長の決め台詞が自爆ってのは勘弁してください…………」

「………………………………」(←今迄抱いていたツヴァイが居なくなり、軽く自分を抱きしめて手持ち無沙汰を癒しながら寝ているリインフォース)

 

 

 

 

 

「死力を尽くして闘った後に和解するとか…………、そんな都合の良い事考えてんじゃねえっっ!!」(←鍔迫り合いの最中、シグナムの腹部に蹴りを連続で放っている)

「闘いの中で語り合う事が出来ぬ者が騎士を名乗るなっっ!!」(←レヴァンテインに炎を纏わせてヴィータを焼いている)

「アホか!? アホだろ!?!? アホなんだな!?!?!?

 

  意見が割れてっから戦ってんのに、なんで戦ったら意見が纏まんだよ!!!???」(←シグナムの腹部を蹴って離脱)

「言葉では伝えられぬモノが在ることくらい騎士ならば分かれ!!!」(←腹部を蹴られた際にヴィータの足首にレヴァンテインの柄を打ち付けた)

「そういうことはせめて話そうとしてから言えよ!???

 

  口下手だからっていきなり斬りかかられたら相手は堪んねえだろがっっっ!!!」

「私は剣で語る方が得意なのだから仕方あるまい!!!」

「ソレが迷惑だといい加減気付けえええぇぇっっ!!!」

「何を言う!!??

  口下手ならば歌なり拳なり剣なりでで想いを告げるの普通の筈だ!!!」

「拳と剣は普通に犯罪だからな!!!?

  だいたい口下手を理由に話さねえで剣で語るなんて、失語症の患者を馬鹿にし過ぎだ!

  土下座した後に舌を斬り落として詫びやがれ!!!

 

  言葉すら思い浮かべられない奴らが必死に思いを伝えようと足掻いてんのに、ストレス解消に暴れてんのを正当化してんじゃねえ!!!」

 

 

 

 

 

「ヴィータちゃんが優勢ですぅ」

「と言うか、始めからシグナム副隊長は負け戦確定状態でしたから、ある意味当然の状況ですね」

「…………責任は逃げずに負うんやろけど、義務はあんま果たしとらん様にしか見えんからなぁ」

「ある意味、高町隊長と並んで好き勝手やってますからね………」

「いや、シグナムは一応良識の範囲内で好き勝手やっとるで?」

「そうですね。

  尤も、良識と常識と規則が別物だということに気づいてほしいですけど…………」

「……………………………」(←再び膝の上に納まったツヴァイを軽く抱いて眠り続けるリインフォース)

 

 

 

 

 

「ハヤト考案!!  ギガント ラケーテェェェェェン!!!」(←巨大なラケーテンハンマーを両手で縦回転させて遠心力を追加させている)

「天神考案!!  火竜乱閃!!!」(←炎を撒き散らしている連結刃を柄から外して完全遠隔操作へと切り替え、炎を纏った鞘との同時攻撃を挑もうとしている)

 

 

 

 

 

「………公開模擬戦で新技を暴露しちゃってるですよ………」

「………隠し玉が残っとらんかったら始末書書いてもらお………」

「………何も態々考案者を言わなくても………」

「……………………………」(←膝から下りたツヴァイに髪を梳かれつつも眠っているリインフォース)

 

 

 

 

 

「流石にやるな………………魔人・乳揺らし」

「そちらこそやるな………………寸胴体系」

「……………………………………………………………………………………………………」

「……………………………………………………………………………………………………」

「星になれええええええええええええええっっっ!!!」

「灰になれええええええええええええええっっっ!!!」

 

 

 

 

 

「飽きたからお姉さまと一緒に眠るです」(←待機時間終了20分前に目覚ましをセットし、ソファーに座っているリインフォースを横にし、抱き合いながら眠ろうとするツヴァイ)

「そんなら私も仮眠しよ。

 

  ………流石に馬鹿騒ぎの模擬戦で手札を全部晒したり、模擬戦場を不必要に損壊させたりせんやろし………」

「15分前には起こしますから、部隊長も仮眠していて下さい」

「あんがとさん、グリフィス君」

「いえ、僕が待機中の時は部隊長が起こしてくれていますからお相子ですよ」

「「…………………………………」」(←ソファーに横たわって抱き合いつつ眠るリインフォースとツヴァイ)

 

 

 

 

 

「天と地と万物を紡ぎ、相補性の巨大なうねりの中で、エネルギーの凝縮体に成る能力が欲しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「世界を終わらす気か!!!???」

「コアを抜き取ったみたいに、お前のニートでバトルハッピーで辻斬り思考でギリギリ乙女騎士な要素を抜き取ってマトモにしてえだけだっっっ!!!」

「ならば私はお前を串刺しにし、〔今度こそ、君だけは、幸せにして(成長させて)みせるよ〕、とでも言ってやろう!!!」

「……………………………………………………………………………………………………」

「……………………………………………………………………………………………………」

「ズタボロになれえええええええええええええええええええええええええっっっ!!!」

「燃え尽きろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」

 

 

 

 

 

「…………………ホント……根深いけれど陰湿じゃないのが救いか………」(←遅めの昼休みを切り上げて仕事に移るグリフィス)

「………………………」(←椅子の背凭れを倒して眠るはやて)

「「………………………」」(←親子とも姉妹とも百合とも取れる雰囲気をばら撒きつつ、ソファーで抱き合って眠るリインフォースとツヴァイ)

「…………………スカートの辺りにタオルでも掛けてくれると目のやり場を確保出来るんだけどな…………」

 

 

 

【投げっ放しで終わる】

 

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

【おまけ:其の伍】銃にナイフや魔法でも、殺されかければ普通は怖い(一発オリジナルキャラ有り)

 

 

 

(このおまけは敢えて経過を明記しておらず、重要な事柄を明かさずに話を進められるかという実験的要素が非常に強いですので、消化不良且つ意味不明になる可能性が窮めて高いですので、その様な話に嫌悪感を覚えられる方は御読まれになられない方が宜しいです)

 

 

 

Side:機動六課受付

 

 

 

うわあああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?」(←一発キャラ(名:フィー))

「っっ!!!  フィー!大丈夫だ!此処にはあの時の綺麗なお姉さん達もいるから大丈夫だ!!!」(←一発キャラ(名:ラズ))

 

 

 

―――

 

  男手一つで育てている為碌に構ってやれない愛娘へ、せめて普段寂しくて退屈な思いをさせている侘び代わりにと、先日の御礼を述べに行くのに便乗してクラナガンで二泊三日予定の旅行を計画していたラズだったが、いきなり自分達を殺しかけた者を前にしたフィーが人格が崩壊しかねない程の恐慌状態に陥ってしまい、ラズは何とかフィーを落ち着かせようと全力を尽くしていた。

  だが、ラズが全力を尽くそうとも、フィーが恐慌状態に陥っている原因がゆっくりと近づいている為全く効果は無く、ラズは愛娘が廃人になりかねない程感じている恐怖を少しも和らげる事が出来ない自身の不甲斐無さに憤怒しつつも、今は此の場でどう行動すれば最もフィーの精神的抑圧を和らげる事が出来るかを考えていた。

 

―――

 

 

 

「どうしたの?どこか具合悪いの?」

 

  フィーが恐慌状態に陥った原因の者が心配していると思わせるような声色で話しかけるが―――

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっ!!!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっ!!!!!!!!あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

 

―――喉が潰れんばかりの大絶叫を上げ、更にラズが両腕ごと体を抱きしめている為逃げ出す事も出来ず、首が折れかねない程振り回しながら胴を捻り、何とか眼前の恐怖から逃れようと足掻いていた。

  だが、今拘束を解かれれば全速力のまま壁に突撃して死ぬ可能性も在り得ると判断したラズはより強くフィーを抱き締めた。

  そしてフィーの精神の為にも、自分がフィーを抱えて一瞬でも早く眼前の者から遠ざかるべきだと判断した瞬間、一瞬の迷いも無く後ろへとフィーを抱えた儘走りだした。

 

「すみません!」

 

  外へと通じる扉を塞ぐ位置にフィーが恐慌状態に陥った原因が居た為、許可が無いのを承知でラズは止む無く奥へと続く通路目掛けてフィーを抱えて駆け出しつつ、呼び出してくれた受付の人と迷惑を掛ける隊の人達に謝罪を述べた(断じてフィーが恐慌状態に陥っている原因の者へと向けた言葉ではない)。

 

  そして、フィーに一瞬でも早く安息を与える為、火事場の馬鹿力で一般人とは思えぬ速さ(秒速15メートル以上)で通路の奥へと疾走していった。

 

 

 

 

 

「逃げ………た?

  ……………それに六課の奥に黙って入ってったって事は……………もしかしてあの子を人質にしたテロリストかも!?」

 

  少女が半狂乱に陥った原因に思い至っている周囲の面面(全員)は、〔娘の為に限界突破した速度を叩き出した父親〕、という結論を出していたが、その考えに思い至れなかった少女を半狂乱に追い込んだ者は六課の一大事と判断し、―――

 

「レイジングハート!セットアップ!」

Consen consent I see(Set Up)………….》(はいはい、分かりました(セットアップ)…………)

 

―――事後承諾を取ろうと思うどころか、許可無く飛行魔法を使用して廊下の奥へと走って行ったラズを追った(なのはでは身体強化しても走っては追いつけない為)。

 

 

 

Side out:機動六課受付

 

 

 

 

 

 

 

Side:機動六課部隊長室

 

 

 

「はいはい、こちら機動六()なのに部隊(・・)長の八神はやて」

 

  警報も鳴っていなければ戦闘音も聞こえず、更に受付上のIDを使った通信だった為、軽いノリで通信に出るはやて。

 

『此方受付07のウルキです。

  八神部隊長、約12秒前に先程第一及び第三部隊長補佐へと面会を希望した一般人の親子が、発令所へ通じる通路へと侵入しました』(←一発キャラ)

「うん?  あの可愛いお嬢ちゃんが通路に入っていって父親が追いかけたとかなんか?」

 

  面会希望の理由と事実確認をしたところ、訪ねて来た親子が破壊活動をするとは万に一つも無いと判断しただけに、はやては好奇心旺盛で元気な子供が親を振り回しながら六課を駆け回っていると思い、軽い感じで聞き返した。が、―――

 

『いえ、面会希望者フィー・セルクイトさんが高町一等空尉を確認した瞬間に半狂乱状態に陥り、更に高町一等空尉がそのことに気付かず執拗に接近し、外への離脱が困難と判断したであろう面会希望者ラズ・セルクイトさんが面会希望者フィー・セルクイトさんを抱えて関係者以外立ち入り禁止区域へと離脱したものと思われます』

「一等空尉は?」

『幼児を人質にしたテロリストと判断されたらしく、バリアジャケット展開後、飛行魔法で追跡に移られました』

「分かった。

  兎に角確認取るから命令が在るまで搬入業者も含めて六課内への立ち入りを禁止し、六課隊員には隔壁のシステムチェックをしている間は挟まれる可能性が在るから、点検終了までは緊急時以外は廊下に出らんように他の受付に指示。

  他の隊員には私が知らせる」

『了解しました』

「復唱は要らんから」

 

  そう言うとはやては即座に通信を切って先程受付で何があったかを確認した(4倍速で)。

 

 

  そして、高速思考やマルチタスクが苦手なはやてだったが、この時は凄まじい速さで最悪の未来図が脳裏に描かれていた。

 

 

 

―――

 

  映像確認を終えたはやては、

 

1.事故にせよ以前殺害しかけた局員が幼女に迫り精神崩壊に追い込む。

2.その際に局員から愛娘(幼女)を引き離そうと止む無く一般人進入禁止区域に侵入した一般人を過剰攻撃で鎮圧。

3.幼児とはいえ人一人抱えた一般人を追跡する為、最前線に立つエース魔導師が施設内を無許可で飛行した。

4.逮捕権限すら無い者が独断で一般人をテロ認定し、更にそれに即した行動を採った。

5.一般人の落ち度を徹底的に槍玉に上げ、自分達の失態を揉み消そうと海と空がする。

6−α.海と空に面会希望を受諾した責任を問われて陸に付け入る隙を許してしまい、転落コース一直線。

6−β.海と空が不祥事を揉み消すが、後に幼女の証言を切欠に再度捜査が開始され、海と空から道連れとばかりに身内を庇った部隊長として転落コース一直線。

6−γ.事態は公にならずとも陸の上層部に知れ渡り、部下の管理不行き届きで市民を無為に犠牲にしたとして別の容で責任を取らされて転落コース一直線。

6−δ.事態の情報漏洩の有無に拘らず、一組の親子を不幸に突き落とした自責の念に耐え切れず精神を病む。

 

という未来を予想した。

 

―――

 

 

 

  此の儘ではなのはが自己満足する以外では、対立組織や上を引き摺り下ろして利権を貪ろうとする者達とマスコミ関係者とゴシップ好きの市民を喜ばすだけの結果になりかねないとはやては思い、急いでリインフォースとグリフィスへ一般回線で緊急通信を繋げた(流石に使用説明が困難なので専用の守秘回線等は使用を控えた)。

 

『此方リインフォース一等陸尉』『此方グリフィス准尉』

 

  就業時間帯だけあり、両者とも2秒以内に応答した。

  そしてはやては即座に応答した両者へ即座に命令を下す。

 

「リインは画面に表示されている目標AとBを、E860(ハチロクマル)で対処後、部隊長室へ。

  後、ツヴァイへ急ぎ情報伝達。

 

  直ぐに実行や」(E860とは、部隊長命令で目標を極力無傷且つ周囲を破壊せずにで保護乃至確保、という符号(部隊長陣だけの符号))

『了解しました』

 

  敬礼すらせず、空間モニターに重なって表示されているラズとフィー(目標AとB)の光点へと疾走を開始した(曲がる際に壁に着地し、その後暫く壁を一定時間疾走可能な速度)。

 

「グリフィス君はリインの邪魔が現れんように隔壁閉鎖を担当。

  後、他の隊員に隔壁の点検等の理由で廊下に出れんようにドアを閉鎖したから、適当に事情説明して命令を伝えること、。

 

  それとなのはちゃん(黄点)の予想移動経路は基本的に塞がんように。

  邪魔したら直ぐに物理設定の砲撃を撃つやろからな。

 

  部隊長命令や。

  直ぐに実行してや」

『了解しました』

 

  リインフォースと同じく敬礼もせずに通信を切るグリフィス。

  そしてその事を微塵も気にせず、はやては就業時間外(待機中)のツヴァイが、同じく待機中(恐らくツヴァイと一緒に寝ている筈(眠ってはいない筈))の速人へ状況を伝達し終え、直ぐに速人が独自の判断で憎まれ役を買って出る(綱紀粛正を行う)筈なので、自分は事後処理の準備をし始めた。

 

 

 

Side out:機動六株隊長室

 

 

 

 

 

 

〜〜〜 15分後  〜〜〜

 

 

 

 

 

 

Side:機動六課部隊長室の奥

 

 

 

「私は時空管理局本局 古代遺失物管理部 機動六課 の最高責任者八神はやて二等陸佐の第三補佐官であり、時空管理局 内部監査機関直属 特殊監査部特殊監査官 の資格保持者である天神速人です。

 

  此の度は時空管理局局員の理性的且つ一般常識に欠けるものと判断される行動の結果、御息女の精神に甚大な負荷を掛けてしまいました事を深く御詫び申し上げます」

 

  部隊の最高責任者が直ぐ傍に居るにも拘らず、何故第三補佐官が場を仕切っているのか少少不思議に思いながらも、ラズは毅然とした返事をする。

 

「たしかに、………そのことに関しては思うこともあります。

  ですが、私と娘が立ち入り禁止区域に無断で侵入した件が在りますので、謝罪はその件が済み次第で宜しいでしょうか?」

 

  ラズのその発言の後に速人が後ろに下がり、対してはやてが前に出て告げ始める。

 

「先程天神第三補佐官が紹介した、この機動六課最高責任者の 部隊長 八神はやてです。

  私の監督不行届きが原因で、部下が御息女の精神に甚大な負荷を強いてしまい、真に申し訳ありませんでした。

 

  話を戻しますが、建造物侵入及び威力業務妨害に関する件ですが、………端的に申し上げるならば今回は此方に最大の責任が存在しますので、刑罰並びに叱責はほぼ不可能です。

  保護者が被保護者を加害者より保護する為に選択した行動であり、更に加害者が一般的な判断能力を有していないことがその選択を採らせた最大の要因で在る以上、此方としては謝罪するしかありません。

  尚、移動履歴等から諜報並びに破壊活動を行っていた可能性が極めて低く、スパイ法(管理局機密法)及びその未遂に抵触していないと判断される為、過失相殺を行って尚此方に過失が在ると判断される為、貴方方が今回の件で気に病む必要は在りません。

 

  結論を申し上げますと、部隊長としても管理局員としても、物品及び金銭並びに懲罰及び謝罪で此方の誠意を示し、可能な限り示談にしたいところなのです。

  しかし、貴方方の御気が納まられないのならば、機動六課の監査の任を負い且つ弁護資格を有している此方の天神が今直ぐ起訴の手続きを行える手筈を整えています。

  つまり今回の件は貴方方が主導権を握っておりますので、私共が用意したどちらかの選択肢を選ばれる、若しくはそれ以外の選択肢を選ばれるかを御決断下さい」

 

  長長と話はしたものの、話す速度自体は相手が十分に理解出来るだけの速度の為、聞き終わったラズは十分に内容を理解していたらしく、数秒沈黙を挟んで一息吐き、直ぐにはやてへと話しかける。

 

「失礼ですが、懲罰と謝罪とは具体的にどの様なものですか?」

 

  物品や金銭に惹かれるものが無いと言えば嘘になるが、それ以上に謝罪の行動がどのようなものかが一番ラズは気になり、仮に加害者を引き摺ってきて土下座させるなどというフィーへの追い討ちを掛けようとするならば起訴する気構えで尋ねた。

  だが、―――

 

「ミッドチルダで最高位とされる精神療養所を御紹介致します。

  更に御息女が望むのであれば三名を就業時間外の待機時間を使い、日常生活に支障来たさない頻度で退院なされるまで訪問可能な様に取り計らいます。

  そして其方の交通費等をも含めた全ての代金は此方が支払います。

  最後に、三名が定時に上がる為の仕事及び代金を、私及び加害者が減給という容で全額負担致します。

 

  尚、加害者が御息女へと接触を図らぬよう、貴方方に関する情報を機密指定にする、若しくは証人保護プログラム適用者と同様の待遇も準備しております」

 

―――はやてから告げられた内容は、十分誠意を感じられるもので、ラズは憮然とした顔に苦笑を混ぜながら答えを返す。

 

「………此方の立場を考慮した上で其方が十分な対応と誠意を示そうとされている以上、此方に訴える気は在りません。

 

  それに私は義理とはいえこの子の親なのですから、娘の心身を護り、癒し、そして導くのは私でなければなりません。

  たとえ私にその知識と技術と力が無くとも、私が誰よりも早く身と心を砕かねばなりません。にも拘らず、それを最初から心身を砕かずに済む選択など選びたくありません」

「つまり………」

「貴方が今行われた謝罪だけで結構ということです。

  此方が望むのはクラナガンに滞在する予定の今日を含めた3日間、娘が懐いている其方の三名と先程捜査官と名乗られた方達が話し相手になってくだされば他は望みません。

 

  ………先程の方が執拗に娘へと接触を図ろうとすれば別ですが」

 

  相手の要求を聞き、はやては暫し思考を巡らせる。

 

 

 

―――

 

  はやてとしては、なのはに略取された際に片方の肩が外れる程暴れて拘束を抜け出し、更に通路の奥に追い詰められた時に壁を掘ってでも逃げようと片方の手の爪が根こそぎ剥がれて骨まで削れる程錯乱した幼女のことを考えると、破格な要求だと判断していた。

  又、飛行許可及び武力行使許可及び逮捕権限の無い者が保護者に非殺傷設定とはいえ砲撃して行動不能に追い遣ったのも大問題であり、建造物侵入と威力業務妨害を盾にしようにも原因はなのはに在り、しかも明らかに過剰な対処である以上、普通ならば口止めに一生暮らせるだけの金銭を渡すか口封じに適当な名目で喋れない様にするかのどちらかで在る以上、本当に破格の要求だとはやては思った。

 

  尚、現在なのははデバイスを一時押収され、武装したギンガとティアナと共に隔離室で仕事に就いている(出向者でなければデバイスを封印した後に魔力を一時封印して隔離室で拘束しつつ護送待ちになる筈であった)。

  因みに階級が上の者を監視等する為の経験と告げられたギンガとティアナだったが、両者とも降格しても構わないから拒否したいと悲鳴と怒声の中間の声で拒否したが受け入れられず、胃薬を持ち込んで監視の任に就いた。

 

―――

 

 

 

  確かに急に補佐官全員と出向している捜査官が3日抜けてしまうのは色色と問題が在るが、本来相手が請求可能な事と比較すれば余りに小さな事である為、はやては直ぐに決断を下して返事をする。

 

「私にはその命令を行う正当性を証明不可能なので四名へ命令する権限は御座いませんが、四名を本日より3日間待機状態………つまり休日にすることは可能です。

  無論緊急時には非常招集を掛けますが。

  ですので、その件は其々に御話して了承を得て下さい。

 

  ………其方の御希望に沿った答えを返せずすみません」

 

  申し訳無いと思いながらもはやては最低限公私を分別した答えを返す。

  だが、その瞬間に速人とリインフォースとツヴァイは眼で即座に意思疎通し、代表する容でリインフォースがはやての発言の後に続いた。

 

「それならば有給を消化する好い機会でもありますので、私達三名は御要望に御応えさせて頂きます」

「ありがとう御座います。

  ですが…………此方から言っておいて今更ですが、ご迷惑ではありませんか?」

 

  流石に殆ど交流の無い者と三日間過ごす為に貴重な有給を使わせているかもしれないと思い、控えめに確認取ったが、返ってきた答えは―――

 

「たしかに、予定外での有給消化は少なからず不本意であり憤りを感じますが、それは原因を発生させた者へと向けておりますので、貴方が御気を遣う必要は御座いません。

 

  それに………交流の深い者達とだけ過ごす休日も良いですが、偶には権謀術数とは無縁と思われる幼児と過ごすのも良いと思いますので、本当に貴方が御気を遣う必要は御座いません」

 

―――相手を気遣いながらも本音で構成されたモノだった。

  尤も、敢えて一名がその考えから外れていることを告げはしなかったが、リインフォースがそう思っているのは事実であり、そしてそれを感じ取ったラズは安堵した表情を浮かべながらリインフォース達に頭を下げた。

 

「本当にありがとう御座います。

 

  娘は尋常でない程自分に向けられる敵愾心や猜疑心に鋭い上、更に打算で近づいた者はとにかく避けますので、今まで私以外の者に興味を示さなかっただけに、本当にありがたいです」

「その御言葉は三日後に御息女の精神が充溢されていた時に受け取らせて頂きます」

「ですね。

 

  あ、それと先程の捜査官の肩にもお声を掛けたいのですが………」

 

 

 

Side out:機動六課部隊長室の奥

 

 

 

 

 

 

  その後、三日間有給を使って娘に付き合ってくれという要望を聞いたギンガは、

1.なのはの監視及び緊急時の制圧任務及び胃痛と頭痛から解放される。

2.久しぶりに速人達と休日を過ごせる。

3.自分に懐いてくれた可愛くて保護欲をとてつもなく刺激する少女と一緒に過ごせる。

4.速人とリインフォースが居るなら手料理が食べられるかもしれない。

と、判断し、即座に了承した。

 

  尚、一人残されたティアナは、僅かでも身内の恥を雪ぐ為になのはと同じ空所属且つ分別の在るヴィータが訪れる迄、只管なのはに詰問され続けた。

  そして理性や忍耐力を研磨機で削られる様に磨り減らされたティアナは、何時の日かヘッドショットを御見舞いして黙らせてやれる程偉く成ろうと心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

●■▲ ティアナの以下のスキルが更新されました。 ●◆▼

 

【ツンデレ・・・・:D−】(←−補正が付きました)

【気合・・・・・・:C+】(←+補正が付きました)

【根性・・・・・・:B】(←1ランク上昇しました)

【艱難辛苦・・・・:D】(←女難が変化しました)

 

 

●■▲ ギンガの以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【姉・・・・・・・:C−】(←1ランク上昇しました)

【自己啓発・・・・:C】(←+補正が消滅しました)

【仕切り直し・・・:E−】(←新たに追加されました)

 

 

●■▲ ヴィータの以下のスキルが更新されました ●◆▼

【組織人・・・・・:D】(←1ランク上昇しました)

【ストレス・・・・:C+】(←2ランク上昇しました)

 

 

●■▲ なのはの以下のスキルが更新されました ●■▲

 

【暴走・・・・・・・:E+++++++++++(+11)】(←+補正が一つ追加されました)

【匹夫の勇・・・・:E++】(←1ランク下降しました)

【リリカル放棄少女:A+】(←+補正が一つ追加されました(別名:空気読めない上に読まない)

【カリスマ・・・・:E++++++】(←+補正が一つ追加されました)

 

 

●■▲ レジアスの以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【ストレス・・・・:B++】(←1ランク上昇しました)

【突然死・・・・・:E+】(←新たに追加されました)

 

 

●■▲一発キャラ(ラズ)の以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【父・・・・・・・:B】(←1ランク上昇しました)

【医術・・・・・・:E】(←新たに追加されました)

【社会の裏知識・・:D+】(←新たに追加されました)

【親馬鹿・・・・・:A+++】(←1ランク上昇しました)

 

●■▲一発キャラ(フィー)の以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【娘・・・・・・・:B】(←1ランク上昇しました)

【妹・・・・・・・:A】(←新たに追加されました)

【社会の裏知識・・:E−】(←新たに追加されました)

【生存能力・・・・:E】(←新たに追加されました)

 

●■▲ ツヴァイの以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【虚勢・・・・・・:A+】(←4ランク上昇しました(別名:背伸び、若しくは姉の威厳))

【抱き枕・・・・・:A+】(←−補正が+補正に変更されました)

【無差別教育・・・:A++】(←新たに追加されました)

【自粛・・・・・・:A+】(←+補正が追加されました)

 

 

●■▲ リインフォースの以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【コスプレ・・・・:A+】(←2ランク上昇及び+補正が追加されました)

【二次元解放・・・:A+】(←新たに追加されました)

【男性不信・・・・:A+】(←+補正が追加されました)

【不可侵オーラ・・:A+】(←+補正が追加されました)

 

 

●■▲ 速人の以下のスキルが更新されました ●◆▼

 

【無差別変装・・・:A++】(←+補正が二つ追加されました)

【薔薇の種・・・・:A++】(←+補正が二つ追加されました)

【百合の種・・・・:A++】(←+補正が二つ追加されました)

【人類衰滅・・・・:A++】(←+補正が一つ追加されました)

 

 

 

【投げっ放しで終わる】

 

 

 

 

 

 

●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○

 

 

 

【おまけ:其の陸】速人の個人授業(IF1の4〜6年前)

 

 

 

「で、今のはどう訳すのが正しいでしょうか?」

「〔お前との時間は苦痛だから、此処で解散しよう〕、か?」

 

  その言葉を聞いたすずかは、教鞭を机に叩きつけながら大声を上げる。

 

「違います!

  着いたばかりでご飯の話をするのは、〔此処はつまらないから別の所に行こう〕、って意味です!

 

  何でいきなりデートを終わらす方の考えになるんですか!!?」

「無為な時間など共有せず、個人で時間を有意義に使用する方が建設的だと思うが?」

「デートなんですからいきなり諦める思考は止めて下さい!!」

 

  バシバシと教鞭を机に叩き付けながら大声を上げるすずか。

 

「…………次の問題です。

  デートでの行き先や食事のリクエストの際、〔何処でもいいよ?〕、という言葉はどういう意味でしょう?」

「…〔リクエストしないから代金は其方が支払ってくれ〕、という意味か?」

 

  すずかは笑顔を盛大に引きつらせつつ―――

 

「全っ…………然!違います!!!

  正しくは、〔私を楽しませてね?〕、ですっっ!!!」

 

―――教鞭を圧し折りながら大声を張り上げた。

  そして直ぐに予備の教鞭(タングステン合金製)を取り出し、又もや机を叩きながら次の問題をすずかは告げる。

 

「次は基本中の基本問題です!!

  〔今日は家に誰も居ないんだ………〕、という言葉はどういう意味でしょうか!!!?

  因みに、〔晩御飯の準備が忙しいから早く帰りたいんだけど?〕、とかじゃ絶対ないですからね???!」

「恐らく大丈夫だ。

  色恋沙汰に疎すぎる俺でも、間接的な交尾の誘いは理―――」

「ストーーーップゥッ!!!」

「―――解…」

 

  教鞭を連続して机に叩き付けながら大声を上げたすずかを、速人は何時も通りの淡淡とした表情で眺めていた(教鞭は4度叩きつけられた時に砕け折れた)。

 

  そして又もや新しい教鞭を取り出したすずかは速人に大声で告げる。

 

「ダウトです!禁句です!!NGです!!!

  良いですか!!?女の人から誘われた時、そんな考えを口にも態度にも雰囲気にも出しちゃダメです!!!

  呆れられますよ!?ドン引きされますよ!!??ぶちキレられますよ!!!???

 

  いいですか!!!?乙女や総受けの男の娘は繊細なんです!!!

  恥ずかしくて悶死しそうなのを堪えて一歩を踏み出したのに、ドキドキやワクワクの要素が全然存在しない生物学や心理学の視点からの発言はトラウマ確定のカウンターなんです!!!

 

  仮面恋人としてのデートであろうと、アリサちゃんとデートする以上、徹っっっ底ぃっ的にっっっ!!!……………私の独断と偏見に依る、乙女と受けと攻めと腐の何たるかを叩き込みます」

 

  教鞭を両掌で縦に圧力を掛けて砕き潰しつつ、扉の方を力強く睨みやりながらすずかは声を上げる。

 

「お姉ちゃん!リスティさん!出番です!!」

 

  数秒後、隣の部屋から室内の様子をカメラとマイクで見聞きしていた両名が扉を潜って現れた。

 

「はあ〜い♪久しぶり、速人君」

「HA〜Y♪久しぶり、すずか。

  そして君とははじめましてだね」

 

  爆笑しすぎた為、両者とも目元に涙を浮かべながら笑顔で速人に挨拶をする。

  対して速人は部屋の扉が開く前に椅子から立ち上がり、更に窓を破壊して離脱可能な位置へ即座に移動しており、その場所で言葉を返した。

 

「実質上の家主より暫定的に許可は得ていますが、名目上の家主が眼前に居る以上許可の是非を伺わせて頂―――」

「了承了解許可認可〜♪

  前から言ってるでしょ?君とアリサちゃんはすずかが招いたなら何時でも幾らでも遠慮せず上がっても構わないし、何なら永住して構わないって♪」

「―――きます。

 

  分かりました」

 

  速人の発言に被せて了承を告げる忍と、自身の言葉に被せられても一切自分の調子を崩さず話す速人を見たすずかは、苦笑と笑みの中間の表情で浮かべた。

  が、和んでいる暇も勿体無いとばかりに速人に話を切り出した。

 

フラグ建設(自己紹介)は一段落着いてからです!!

 

  …………速人さん。………………仮令御見合い破談の為の偽装デートだとしても、純情ツンデレ乙女のアリサちゃんにとっては正真正銘の初デートなんです。

  …………普段から、〔骨を断たせて命絶つ〕、なんていう男の人よりも漢らしい考えをしてるせいで女子から告白されたことは数知れず、男子から告白されれば90%強は罵って下さいとかいう内容だし、御見合い相手からの手紙にはスクール水着の胸の部分だけ濡らす萌え技術をマスターする為に特訓をするように希望されたりとかで、兎に角普通のデートに対する憧れが人一倍強いんです。

 

  そもそもアリサちゃんは一人でこっそりと可愛い服を着ては鏡の前でポーズを取りつつも似合わないと思ってゴスロリ系の服を封印したり、ゴスロリへの未練を断ち切る為に短髪にしようとしたり、冬ソナよりもタイタニックやロミオとジュリエットみたいな超王道恋愛を夢見たり、Hよりもただ一緒にイチャイチャしたいだけの子供っぽい思考だったり、頑固と言うよりも関係の変化は裏切りみたいに感じてるから友達からのステップアップは禁忌扱いっぽいし、そんなんだからリインフォースさんとツヴァイちゃんと速人さんの間に私と一緒に割り込んでラブコメとか愛憎とか愛―――」

「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」

「―――欲と淫欲とか肉欲とか獣欲とか百合とか修羅場とかヤンデレとかヤン―――」

「………覇っっ!!!」

「―――ドラとぎ1Vαδ?!?!?!」

 

  足を肩幅程開き、中腰の体勢でアリサが手加減無しで繰り出した掌底はすずかの後頭骨の下に命中し、小脳を斜め上に押し上げつつ脳幹に衝撃を伝播させ、見事一撃で直立どころか会話すら不可能な程に意識を混濁させた。

 

「すみませーん。少し覗きの件や私の常識とのズレについて語り合いたいんで、隣の部屋借りますねー」

 

  脱力した儘のすずかを引き摺って隣の部屋に消えるアリサ。

 

「………相変わらず三人揃うと笑いの渦を生み出すわね〜」

「………話には聞いていたけど、全員頭のネジを全部付け忘れたみたいにブッ飛んでるね。

  まぁ、面白いから全然OKだけど」

「月村すずかに用事が出来たようなので御暇します」

 

 

 

 

 

「……………挨拶すら掛けられなかったのは初めてだよ」

「殺害級の攻撃をされなかっただけマシと思った方が良いですよ。

 

  ………昔すずかとアリサちゃんと仲の良かった子が、電波系の善意で核発射ボタン並みの危険物を強引に設置しようとした時、問答無用で左腕以外を切り飛ばしたりしたこともあるから」

「…………………裏?」

「あの子が裏の関係者なら、今頃3000以上の肉片に解体されて世界中の研究機関で保存なり培養なりされてますよ」

「げ………………、もしかして……………イロイロと遠い所の奴等かい?」

「正解です。

  忠告しておきますけど、明らかにすずか達と温度差が在るのに相手が親しそうにしている場面を見かけたら、極自然に可能な限り素早く場から離れた方が良いですよ。

 

  特に赤い玉を身につけてる子には狂信者や信奉者が居るから、特に気をつけた方が良いですよ」

「………………あれ?

  …………………………たしか………恭也の妹さんと条件が一緒な気がするんだけど?」

「いませんよ。そんな子。

 

  恭也の妹は美由希ちゃんとすずかだけです。

  あ、もしかしたらアリサちゃんと後二名が追加されるかもしれないですけど」

「……(まだ結婚してないだろうに)……大体事情は推測できたよ。

  ………………あの恭也とその親御さん達にそういう決断を下される程だから、よっぽど改善の余地が無い子なんだろうね。

 

  あと、恭也というか忍の義妹が増えるかもしれないことについてだけど………………、凄〜〜〜〜く面白そうだね」

「そりゃもうその件に関しては此処最近で一番面白い件ですから♪」

「それじゃあ夕方から開かれるゆうひの一時帰還パーティーでじっくり聞かせてもらうことにするから、話の種(恭也)を呼んできてくれないかい?」

「ゆうひさんに会えるんでしたら、[恭也にメイド服着せて首輪して引き摺って来い]、って言われても連れてきます」

「あはは。

  そういう恭也は見てみたいけど、流石にゆうひを出汁にしてお願いするわけにはいかないからね。

  いつかボクの能力や裁量を頼られたときにお願いすることにするよ」

 

 

 

【手抜きの上投げっ放しで終わる】

 

 

 

 

 

                                     

 

 

 

【おまけ:其の漆】ギャンブル中毒とは当たった時の安堵感が癖になっているそうです(IF1の4〜6年前)

 

 

 

Black jack」(←速人)

Royal flash」(←リインフォース)

It is red dog !」(←ツヴァイ)

 

  勝利後直ぐに半分悟った様な顔のディーラーから配当を貰う速人達。

  その後、全員テーブルを離れる為にチップを清算用の高額チップに替えてもらい、ツヴァイ以外は全員片手で掴めるだけのチップをカップに移し変え、ツヴァイは両手で掬った分をカップに移し変え、その後全員席を立った。

 

  そして、そんな大勝ちしている速人達は休憩も兼ねて見晴らしの良い場所に移動しつつ、見事に経営者側の思惑に嵌っている面面を眺めやった。

 

 

 

 

 

「チクショーッ!!

  12回連続でダブルアップ1回目で失敗だ!!!」(←ヴィータ(最少額しか賭けていないので大して負けていない))

「……………あかん。

  もう大当たり分のコインが尽きそうや」(←はやて(今止めれば100ドル程の勝ち))

「こ………今度こそだ!

  既に15回連続で外している以上、次外れる確率は1/65536だ!」(←シグナム(2千万ドル弱負けている))

「あ、同じツーペアでも私の方が数もマークも上だから私が勝ちですね」(←シャマル(丁度チャラになった))

「む、数で負けたか」(←耳と尻尾を魔法で隠したザフィーラ(今100ドル負けた))

 

 

 

 

 

  四名は健全に楽しんでいるようだったが、一名だけドツボに嵌っている者を見た瞬間、リインフォースとツヴァイは頬を引き攣らせた。

 

  普通ならばほぼ確実に周囲の者も巻き込んで破滅に陥る程の負けっぷりを晒しているシグナムを見た速人達三名は、無言でシグナムの方にチップを移動させるように指で示した(四度目)。

  そして階段を上って集合場所(大雑把な場所決め)へと移動しつつ、シグナムに負けず劣らず経営者側の懐を暖めている者達へ視線を移した。

 

 

 

 

 

「ねえ、私は負け分を取り返したいだけなのに、どうして勝たせてくれないのかな?

  このお金、無理して借りてるって分かってる?分かってるかな?分かってるよね?」(←なのは(合法と非合法の金貸しに管理局が用意した戸籍で100万ドル程借りている))

「うぅぅ………返せなかったらマッサージするって言ったお金が無くなっちゃった………」(←フェイト(体を担保に200万ドルを借りる(当然マッサージではなくX指定行為)))

「何で図柄が滑るんだよ!!!

  7できちんと押してんのに!!!」(←アルフ(フェイトと同じく体を担保に80万ドル借りる))

 

 

 

 

 

  半日で駄目ギャンブラーの末路へと駆け抜けかけている三名の発言にリインフォースとツヴァイは呆れたが、自分の仲間内に同類が存在していることへ激しい頭痛を覚えたものの、その頭痛を振り払う様に軽く頭を振り、一足先に予約席に着いていた速人へと心持ち急ぎ足で近寄り、声を掛けた。

 

「やったですよ!

  これだけ有れば一番高い所でお兄さまとお姉さまと一緒に、半月程は愛欲に塗れた退廃的な日日を過ごせるですよ〜♪」

 

  そう言って2.5万ドルチップを20枚以上入ったカップを速人の居る机の上に置くツヴァイ。

  そしてそれに続く様にリインフォースが―――

 

「英訳し難い日本語とはいえ、理解出来る者が居たら恥ずかし過ぎるから勘弁してくれ………」

 

―――少し疲れた表情をしつつ、ツヴァイの置いたカップの横に2.5万ドルチップが30枚近く入ったカップを置いた。

 

  置かれたカップを軽く持ち上げ、重量で計測した速人は口を開いた

 

「俺の分と合わせて85枚だな。

  現在の為替レートは1ドル107.13円だが、換金後は円とドルのどちらで預金するか?

  若しくはそれ以外で預金するか?」

 

  日本のコンビニの袋に乱雑にチップを移しつつ、速人はリインフォースとツヴァイに尋ねる。

 

「円では十分持ってるですから、ドルの儘で良いと思うです」

「…(賭け事で得た金銭は直ぐに使いきりたいが、そう言った途端ツヴァイにホテルへ引き摺られそうだな)…私もドルの儘で良いと思う」

「分かった。

  では換金して指定口座に振り込む様に支持してくる」

 

  両名の意見を聞いた速人は袋からチップを4枚取り出し、そのうち3枚を飲食等用として机に置き、残り一枚をポケットに放り込みつつ、一見無防備に200万ドル分以上のチップが入ったコンビニの袋を持ってCHANGE(換金所)へと歩いていった(ポケットに放り込んだ1枚は口座振込みを頼む手間賃に使う予定)。

 

  そして速人の後姿が人込に呑まれるまで見送っていたツヴァイがリインフォースに尋ねた。

 

「ところでお姉さま。

  シグナム達にやった分も入れれば、どれくらい勝ったですか?」

「……主はやてたちが借りたり返したりしていたから詳しく把握していないが、恐らく1千万ドル前後だろう」

「あ、ツヴァイと同じくらいですね。

  ならお兄さまはどれくらい勝ったんですかね?」

「………シグナムを見る限り、私達とそう変わらないと思うが……」

「む〜、気になるですね。

  ………お兄さまを待つ為にも離れたくないですし、ここは聞くことにするです。

 

  Hi.Which was money remitted before for a while at the unlucky lady there?

  Please investigate how much money was remitted till it and now.」(すみませーん。あそこの負け犬にさっきどれだけお金が送られたか。それと今迄幾らお金が送られたかを聞いてきて下さいです)

 

  適当な従業員に2.5万ドルチップをチップとして渡しながら告げるツヴァイ。

  そして何一つ気負う事無く2.5万ドルも手間賃に使用したツヴァイを見ていたリインフォースは、世間離れし過ぎた金銭感覚を矯正するべきか思案したが、ツヴァイの事をとやかく言えぬ程に一般から乖離し過ぎた自分が語る常識は当てにならないと思い、それに関しては口出しするのは止めることにしつつ、別のことを口にした。

 

「ところで…………私の此の格好は浮いている様な気がするのだが…………」

 

  そう言って自分の姿を軽く見やりながら言うリインフォース(AS最終回の服装に黒のロングコートを羽織っただけの格好)。

  だが、そんな自信無さ気に述べたリインフォースに、ツヴァイは力強く言葉を返す。

 

「気がするじゃないです!正しく浮いてるです!!!」

「………………」

 

  世界中の誰が否定しようが決して主張を変えないと言わんばかりの思いが篭められた声で力強く断言され、自分が醜態若しくは痴態を晒していたと思い、軽く落ち込むリインフォース。

  しかし、何故リインフォースが落ち込んでいるのか分からないツヴァイは更に言葉を紡ぎ続ける。

 

「綺麗過ぎるお姉さまの存在が浮かないなんて………、そんなことは人類学上在り得ないです!!

 

  片足の絶対領域にもう片足の生足!コートの奥から時折覗く脇!コートの袖から覗く白い手首!黄金比率の体の線が浮き出る服!そして黒の服に映える白磁の肌!更に光を受けて輝く銀髪!その上引き込まれそうな赫い瞳!

 

  昔ならお姉さまを巡って世界中の国が争いが起きること鉄板です!!!」

 

  バリアジャケットと同じデザインの服装を着ている妹と思っている者(ツヴァイ)に力強くベタ褒めされ、リインフォースは頬を僅かに染めながら言葉を返す。

 

「い、いや………褒めてくれるのは嬉しいのだが………私達三名の格好はどう考えても可笑しいと思われているようなのだが…………」

 

  着物なのか浴衣なのか判断が難しい格好だった速人を思い返しながらツヴァイに尋ねたが、―――

 

「格好が可笑しくてもお姉さま達は可笑しくなんてないです!!

  お姉さま達は青い鳥と座敷童と美の神を足して10の48乗(一極乗)しても全然足りない存在ですから、寧ろ崇め謳われるべき存在なのです」

 

―――更に力強くベタ褒めされ、先程以上にリインフォースは照れてしまい、少なからず挙動不審になってしまった。

 

  そして、ツヴァイが力強く主張して少しの間両名の間に沈黙が下りたが、―――

 

「はいはい。あんまりリインフォースを困らすんじゃないわよ」

 

―――絹で出来た無地のワンピースを着たアリサが両者に声を掛けて沈黙を払拭した。

 

「むむむっ。ツヴァイとお姉さまの優しい沈黙の時間を引き裂くとは……………世界大戦を吹っ掛けてるですね?」

「違うわよ。

  リインフォースが困ってる姿だったのを理由にナンパしようとした奴らが居たから祓っただけよ」

 

  そう言いながらナンパしようとしていた者を視線でツヴァイに示しつつ、アリサはツヴァイとリインフォースにノンアルコールシャンペンが入ったグラスを渡す。

 

「あ、態態すまない」

「感謝するですから、そっちも感謝されたことに感謝するです」

「感謝しないでいいと言ってやるから、温かい心遣いに感動して涙でも流しなさい」

「温かい?

  まともな顔……もとい、マシな面……もとい、健全な頭じゃなさそうですけど、大丈夫ですか?です。

  主に結婚運のことですけど」

「生憎と私は結婚を然して大事と思ってないから、心配しなくても大丈夫よ。

  寧ろ誰かの温かい心配りも分からない、精神的不感症なあんたが心配ね。

  …………隣人の心遣いに気付かないせいで関係が悪化するってのは、お約束と言える程よくあるパターンだから」

「ふふんです。ツヴァイはお兄さまとお姉さまへの感覚は、常に過剰過敏な超感覚です。

  更に何時でも想像の翼を広げ、輝かしい未来図に浸ることだって出来る程の愛が溢れてるです」

「想像と言うより妄想でしょうが。

  速人がリインフォースとあんたと一緒に肉欲の日日を送る確率なんて、ロト籤で一等引き当てるより低そうじゃない。

 

  で、それはそれとして、すずか知らない?

  結局すずかだけ別れてから会ってないんだけど………」

「むむ…………そう言えばツヴァイも見てないです」

 

  急に舌戦を繰り広げたかと思えば急に舌戦を終えるアリサとツヴァイ。

  そしてそれを眺めていたリインフォースは、[どちらも心底楽しそうで良い事だ]、と思いつつ、アリサとツヴァイに一声掛けた。

 

「すずかならば先程家族と関係者に連絡を入れると、落ち着ける場所を探して回っていたから、ポーカーテーブル近くて落ち着ける場所に居ると思うが………」

「…………十中八九あそこで借金しまくってる馬鹿の迷惑を被らない様に注意する為の電話でしょうから、戻ってくるのを待つことにするわ」

「………………いっその事ツヴァイ達が借金を肩代わりして貸しを作れば…駄目です。アウトです。最悪です。

  踏み倒されて因縁付けられた挙句、モスラの糸並に粘っこくて頑丈な縁に絡め取られて狂信の徒共の巣窟に引き摺り込まれるです」

「あー分かる分かる。

  [お金があるなら平和のために協力するべきだよ]、とかほざいた挙句、勝手にあたし名義の土地に機材置こうとしたくらいだしね〜」

「むむ?

  …………一体どうやって第16使徒(アルミサエル)並にめんどくさい相手の干渉を振り切ったですか?」

 

  傍迷惑な点が全力全開の不屈の心と組み合わさっているなのはのその手の干渉を振り切るのが容易でないことを重重承知しているツヴァイの目には、アリサが魔王を一時的にとはいえ退けた重要キャラに見えていた。

 

「別に大したことはしてないわよ。

  少し北側の国に極秘で軍事転用可能な物をそこら一体で開発してるとかいう噂を広めて、餌に釣られてノコノコ遣って来た馬鹿を撃退する時に銃撃戦を展開したらあっという間に白紙になっただけよ。

 

  ……………やっぱりN2地雷級に強力な地雷を炸裂させたのが効いたみたいね」

「あっ!

  もしかして少し前にあった謎の国際問題級大爆発ですか!?」

「それそれ。

 

  後、一応裏では国連に話は通してるわよ。

  〔月村家と共同開発した次世代型エネルギー炉の必要物質の生成実験〕、って容でね。

  因みに磁気単極子(モノポール)の製造を目的としてるから、失敗したらあれくらいの爆発は寧ろ当然ね」

10の28乗(1穣)℃以上の温度の中で生成されたと言わてる物の生成実験の許可がよく下りたですね」

 

  現在人間が生み出せる熱が10億℃にも届いていないことを考えれば、最低でも10の19乗(1千京)倍は温度を上げなければならず、普通に考えれば失敗以外の結果が見えてこない実験によく許可が下りたと本気で不思議に思って尋ねたツヴァイだったが、―――

 

「こんなの建前よ。

  幾ら成功した時のメリットが大きくても成功する見込みなんてほぼゼロな以上、核爆発実験に許可を出す程国連も馬鹿じゃないわよ。

 

  納得させた理由は、炭素の核反応実験とか、レーザー核融合炉の試験運用とか、マイクロブラックホールの生成実験とか、………まぁ、失敗したらあれくらいの爆発が起きても全然不思議じゃない様なのばかりだから。

  あ、一応全部バニングスと月村が速人の組織(アインス)から情報提供を受けてるから、実験してたこと自体は嘘じゃないわよ。

  実際、態と臨界実験とかしてデータ取ったりしてたし」

 

―――返ってきた答えは薄薄と予想していた通り、色色とぶっトんだものだった。

  そしてアリサのその言葉に聞いたリインフォースは、呆れながらツッコミを入れだす。

 

「直径約47万、ジオイドマイナス約1万3千。

  …………もう少し威力が高ければプレートが割れていたらしいぞ」

「平和ボケした上位種気取りのリリカルマジカル原理主義の連中を一泡吹かせられるなら安い代償でしょ?

 

  弾速がアホみたいに遅いらしいけど、炸裂すれば地表もジオイドも関係無しに100万は抉る終末誘発兵器を持ち出されるよりはマシだと思うんだけど?」

「いや、実際はそこまで効果範囲は広くないようだ。

  以前書に直撃した時の地点を確認に赴いたことがあったが、風化したりしたことを考慮してもクレーターが小さ過ぎた。

 

  …………過大評価したとしても、直径7千から1万の球形空間が効果範囲なのだろう」(注:作者はSts編のゆりかごの全長をサバ読みまくったとしても10km弱と考えていますので、演出的にこの程度の効果範囲と思っています(本当は1〜3kmと思っています))

 

  一気に効果範囲が10%以下だろうという予想を聞き、頬を引き攣らせるアリサ。

 

「…………マズった…………かしら?」

「別に構わないと思うですよ?

  地球に住んでる者が自分の意志で決めたんですから」

「いや………そうじゃなくて……って、………あら?」

 

  自分の言いたいことから微妙にズレた意見を貰ったアリサは言葉を返そうとしたが、腕を組んで歩いてくる速人とすずかを見、驚きや好奇心よりも呆れを多分に含んだ声を掛けた。

 

()除け? それともボディーガード(弾除け)?」

「両方………かな?」

 

  そう言ってアリサ達の前に到着したすずかは目配せで速人に礼を述べてから組んでいた腕を解き、それからツヴァイとリインフォースに声を掛けた。

 

「ねえ、ツヴァイちゃんにリインフォースさん。

  さっき速人さんに大勝ちしたならこの辺に別荘を建てたらどうかなって話をしてたんだけど、どう思う?」

「愛の巣は幾ら在っても困らないからツヴァイは大賛成です」

 

  間髪入れずに返答するツヴァイに苦笑いをしつつも、リインフォースは自分も意見を述べることにした。

 

「私としてはキャンピングカーを購入し、此処近辺で整備してもらっておけば良いと思うのだが……」

……………常識人の意見の様に思えるけど、ホテルで寝泊りしようという案が出ない辺り、結構一般からずれまくった思考をしてるわよね

 

  初期負担が軽く、更には地税等の負担が無いとは言え、キャンピングカーの管理費や整備費も一般人からしたら十分費用が掛かる為、何気にリインフォースも一般思考から外れていると再認識したアリサの呟きだったが、周囲の喧騒に呑まれてリインフォースは認識しきれなかった。

  そしてアリサのツッコミが流された儘、更にすずか達の会話は続く。

 

「あ、キャンピングカーも良いかもです。

  こう………原子炉が搭載されてる程大きなサイズのキャンピングカーを作るです」

「あ、それだったらうちに注文くれないかな?

  お姉ちゃんが某D-LIVEを見てから一度はそういうのを作りたいって言ってたから、今なら開発費込みでもかなり安く作ってくれると思うよ?」

「公私に渡って取引を行う者達の技術力向上は有益と判断するので、俺は賛成だ」

「気合の入った大型移動要塞級のカッコ好い愛の巣が出来そうですから、ツヴァイも賛成です」

 

  ツヴァイがそう言った後、ツヴァイ達の視線がリインフォースに集中する。

 

 

 

―――

 

  どう考えても別荘やキャンピングカーとは懸け離れた代物が出来そうな為、リインフォースとしては断りたかった。

  だが、多数決以前にツヴァイの期待に満ち満ちた視線を受け、乗り気ではないが反対したいわけではないリインフォースは、ツヴァイの期待に応えぬわけにはいかなかった。

 

  尚、実物を見た際に感じるであろう諸諸の感情は、金銭を消費して少なからず経済を回して活性化させたと思うことで納得しようと思っていた。

  因みに、リインフォースは速人への配慮は在れども遠慮というモノが基本的に無い為、賛否の発言で気に病むことは無かった。

 

―――

 

 

 

  自分の中で強引に色色と納得させたリインフォースは、期待と言う名のプレッシャーを自分に与え続けるツヴァイに軽く微笑んでからすずかに答えた。

 

「……出来るだけ………目立たない外見で頼む……」

「了解です♪」

………多分だけど……光学迷彩とか可愛げの在る物じゃなくて、全波長迷彩とか人工噴霧機とか搭載して解決すると思うわね……

 

  又しても独り言を述べるアリサだったが、又してもそれはリインフォースには認識されずに周囲の喧騒に呑まれた。

 

「それじゃあ詳細は後で煮詰めるとして、今は夕方の集合時間まで此処でのんびり話し合お?」

「賛成です。

  そしてこの前中断してしまった、〔萌えとフェチ、そして趣味と性癖の違い〕、について熱く語り合うです」

 

 

  その後、はやて達が集合する迄、主にすずかとツヴァイが熱く語り合った。

  尚、迂闊にツッコめば弄られると学習しているアリサとリインフォースは、なるべく会話に巻き込まれない様に日頃の苦労話に花を咲かせていた。

  そして、速人はノートパソコンで電子書籍の圧縮データを高速で閲覧しつつ(10秒で聖書1冊分)、ツヴァイ達から時折振られる言葉を丁寧に返していた。

 

 

 

 

 

 

 

「………なぁはやて……」

「………ぅん?」

「………ギャンブルって…………(こえ)ぇな………」

「やな…………」

「いえ、せめて我を見失った時のギャンブルが怖いと認識して下さいね?

  少なくとも私やザフィーラみたいに節度を守れば楽しい遊びですよ?」

「そうです。

  最終的に10ドル負けましたが、十分楽しめました」

「いや…………あれを見ると……なぁ?」

 

 

 

 

 

「まだだ!

  たとえ1千しか賭けられずとも、人に頼んで賭けてもらえば問題は無い!!!」

(↑  100名前後使って、複数のテーブルで一点張りを続けるシグナム。

  そして、速人達の大勝の皺寄せが来ているかの如く大敗連敗が続き、速人達から貰ったチップで既に2500万ドル以上負けている。が、速人達の勝ち分を全て消費する勢いで負け続けているので、カジノ側は速人達の大勝に対して特に文句を付けていない(そも、バニングス家と月村家の令嬢と、更に正体不明の超VIPな速人達の連れの為、初めからカジノ側は速人達に文句をつける気は無かったが)

 

 

 

 

 

「うぅ〜っっ!

  マッサージってHなことだったなんて!」

「……っったくっ!!

  フェイトを傷つけようとするなんてなんて奴らだい!!!」

(↑  全額使い切った直後、直ぐに騒ぎにならない様に車まで運ばれたフェイトとアルフだったが、味見代わりに迫られた直後に魔法を使ってその場の全員を薙ぎ倒して逃亡を図った。

  尚、変身する露出女と犬耳と尻尾付きの主従プレイの二名が幾つかの監視装置を経て記録されており、地球の裏側で着実と魔法が知られていっていた)

 

 

 

 

 

「ねえ?ねえ?ねえ?

  何でここまで負けるのかな?

  さっき負けた分を取り返したいだけって言ったよね?

  勝ちたいわけじゃないんだよ?

  なのにどうしてもっと負けるのかな?

  お店の偉い人とお話させてくれないかな?

  あそこでシグナムさん(凄い勢いで負けている人)の分があればあたしの分ぐらい返してくれるくらいワケ無いのに、何でもっと負けてるかお話してもらわなくちゃいけないんだ。

  なに?何で邪魔するの?お話したいだけなのになんで邪魔するの?だけど邪魔しようとしても無駄だよ?魔法が使えなきゃ(あなたたちじゃ)あたしには敵わないんだから」

 

(↑  その後、バリアジャケットを纏う(コスプレ少女になる)寸前、遠距離から硬質ゴム製のスタン弾を頭部に受けて気絶し、その間に外へ叩き出された。

  尚、借りた金銭は真っ当な銀行ではなかったという理由で踏み倒そうとするどころか、管理局員の自分を騙したとして即座に捕まえて管理局に突き出そうとするが、なのはと同じく相手も自分の身元を正直に明かしているわけでもない為、元締めに辿り着かないだけでなく、監視装置関連に魔法を行使する姿を残してしまった)

 

 

 

 

 

「……………空でも海でもなくて良かったわ。

  あと、シグナムは帰ったらしばらくお説教やな」

「ゲッ!?アタシは同じ空じゃねえか!

  絶対後からアタシにもとばっちりが来るぜ………。

 

  あ、シグナムにはお金のありがたさを実感させるのと嫌がらせの意味を籠めて、近くのパチンコ屋でバイトでもさせて給料を全部納めさせようぜ」

「いえ、みんながみんな以前に速人さんから貰った限度額1千億のカードがある以上、お金のありがたさなんてあんまり身に付かないと思いますよ?」

「既に天神にミッドの戸籍を作る手配をした代金として、我等全員に10年は豪遊出来る程の金銭を渡され、利子で生活可能な以上は勤労意欲や金銭の有り難味は欠片も芽生えんだろう」

「………アリサちゃんの言ってた通り、資産家やなくてただの金持ちは堕落するってのは本当やったんやな……」

 

 

 

 

 

●■▲ 速人に以下のアイテムが追加されました ●◆▼

 

 

【呪いの借用書・・:D】(フェイト&アルフの借用証書)

  返済見込みがないばかりか凶運を呼び込み続ける。

  尚、示談させなければ捨てても意味が無い。

  ランクDならば1年以内に零細企業が経済的若しくは物理的に破滅する事態が降り注ぎ、事態を解決しない限り同様の災禍が同様の確率で降り注ぎ続ける。

  勿論全ての事態を一定以上収束させたならば呪いは解除される

 

 

【呪いの借用書・・:B】(なのはの借用証書)

  返済見込みがないばかりか凶運を呼び込み続け、更には周囲にEランクにダウンするとはいえ感染させ続ける。

  尚、示談させなければ捨てても意味が無いのだが、示談させる際に縁が結ばれる為、大抵の縁切り行為では呪いを振り解けない。

  ランクBならば最低でも1年以内に中堅企業(某フジテレビ級)が経済的若しくは物理的に壊滅する凶事が降り注ぎ、事態を解決しない限り同様の災禍が同様の確率で降り注ぎ続ける。

  勿論全ての事態を一定以上収束させたならば呪いは解除される(感染した者の事態は解決せずとも構わない)。

 

 

【債権回収委託書:A+】(2枚)

  このアイテムのランク未満、若しくは判定しだいでは同ランクの借用書のメリットとデメリット(呪と祝の両方)を委託回収者側に押し付けられる。

  但し、借用証書がこのアイテムのランクを超えた場合、若しくは同ランクでも判定次第ではこのアイテムのランクに応じて災禍が増強されて自身へと降り注ぐ。

 

  ランクA++をならば、炉心融解(メルトダウン)マグニチュード9以上(チリ地震)中心気圧940hpa級の台風(最強台風ロッキー)が起こる程の災禍が1月以内に降り注ぎ、事態を解決しない限り同様の災禍が同様の確率で降り注ぎ続ける。

  勿論全ての事態を一定以上収束させたならば呪いは解除される

 

 

【要塞・・・・・・:B】(速人とリインフォースとツヴァイの別荘では12番目)

  走る空母状態の要塞。

  地震もトルネードも雹も落雷も過冷却水の雨も問題無く耐えられる頑丈さだが、地割れや噴火や津波等の大規模災害は防ぎ切れない(津波は海洋上に浮いていれば乗り切れる)。

 

  カジノで儲けた金ではなく、速人達三名が論文等を売却して得た金銭で建てられている。

  ツヴァイの暴走で古今東西のX系統の施設及び道具が揃っている(拷問系の物は倉庫に封印されている)。

  流石に全波長迷彩は施されていないが光学やレーダーに対する迷彩は施されており、更には海上走行及び潜水がが可能である為、衛星からの発見は非常に困難になっている(比重の関係で淡水での水上走行及び潜水は規格外)。

 

 

 

【突然終る】

 

 

 

                                     




今回はIFのちょっと前、空港火災の話か。
美姫 「ギンガの救出とその後ね」
しかし、下地を作れとだけ命じればああなるのか。
美姫 「命令も慎重にしないといけないわね」
だな。おまけは合間合間の小話という感じかな。
美姫 「こちらでも皆、相変わらずね」
まあ、それはそうだろう。中々のボリュームでおまけも楽しませてもらいました。
美姫 「ありがとうございます」
次回も楽しみにしています。
美姫 「待ってますね〜」



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