はじめに

本編再構成物です。

ですが、すでにレンと晶のルートは通っています。

美由希ルートの「お前は俺の〜」発言もすでにしてあります。

時間軸は本編開始と同時期です。

恭也は誰とも付き合っていません。

上記の設定が嫌な方は戻ってください。

これを見て気分を害されても一切責任持てません。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


とらいあんぐるハート3 〜神の影〜

第3章 「桜の精と子狐」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月8日(土) 海鳴市藤見町 高町家 AM6:09

 

「・・・・・・む」

 

いつもより遅いものの、恭也は目を覚ました。

今日は山篭り後の疲れを癒すため、鍛錬はお休みなのだ。

しかし、寝なおすには朝食の時間が近いし、ぼーっ、とするには少し長い。

 

「・・・・・・・・・散歩でもするか」

 

この中途半端な時間を潰すために恭也は布団を上げ、着替えをしてから部屋を出る。

恭也がキッチンに顔を出すと高町家の朝の風景があった。

 

「あれ、お米、研いでてくれたのか」

「おお、ありがとうは?」

「あ―、あ―り―が―と―。 ほれ、しっしっ」

「うわっ、めっちゃムカちゅーな態度やなコラ」

「うるせ―な、邪魔すんじゃね―よ!」

「・・・・・・よく飽きないわね、あんたたち」

 

いつもの如く台所で戦いを繰り広げている晶とレンを冷めた目で見ているアリサ。

 

「・・・アリサ、ちょっと散歩に行ってくる」 

「あ、はい、いってらっしゃい」

 

それだけ告げると恭也は玄関へ向かう。

背後では、相変わらず言い争いをしている二人を、アリサがなのはの代わりに静めていた。

 

 

 

 

 

筋肉痛を紛らわすために、恭也は西町の神社へ向かう。

神社へと向かう山道と長い階段は、今の恭也にはいい運動になるだろう。

神社にたどり着いた恭也は、軽く体を動かし始める。

柔軟をした後、ぐ、と体を伸ばすと山篭りで使い込んだ筋肉が、ぎしりと悲鳴をあげる。

少しずつ体を動かしていくうちに、だんだんその痛みが気にならなくなる。

 

(やはり、まだ本調子には程遠いな)

 

無手で突きを放ちながら、体の具合を確かめる恭也。

とりあえず、一通り身体を解した恭也は、石段に腰を下ろす。

境内には桜の木もちらほらあり、簡易版花見にもなりそうだ。

 

(・・・桜、か。 そういえば、この時期に確か何かあったような・・・・・・)

 

自然に吹く風が心地よく、恭也は目を瞑ってそのまま風を受けながら記憶を反芻する。

暫くじっとしていたが、ふと、恭也の気配探知範囲に何かが引っかかる。

 

(・・・・・・・・・? この感じは、小動物みたいだが・・・・・・)

 

恭也の右側から、小さく木の葉の鳴る音がして、子狐が姿を現す。

そのまま子狐は、とてとて、と恭也のほうへ歩いてくる。

子狐は首に金色の鈴を下げている。

 

「・・・・・・飼い狐か?」

 

とりあえず恭也は『こいこい』してみると

 

「・・・・・・!」

 

子狐は驚いたようにびくりと跳ね、慌てて、今出てきた茂みの中に走って戻っていった。

 

「・・・・・・む、嫌われたか?」

 

元来、動物には好かれる性質だった恭也は、ちょっとショックを受けながら時計を見ると、朝食まであまり時間は無かった。

 

「そろそろ戻るか」

 

 

 

 

 

「だーかーら、邪魔すんじゃ、ねえーーー!!!」

「だーほ! なんでおのれは、人のアドバイスを素直に聞けへんのねん!」

 

恭也が帰ってくると何度目になるのか、晶とレンが戦いを繰り広げる声が聞こえてくる。

 

「・・・まだやってるのか」

「語弊があります、恭也兄さん。 まだ、じゃなくて『また』です」

 

止めるのをやめたのかアリサが庭の縁側で日向ぼっこしていた。

 

「三回目までは止めたんですけどね・・・・・・キリがないから諦めました」

 

はぁ、とため息をついた後、なのはなら一回で終わるんですけどね、と付け足すアリサ。

 

「・・・・・・あの二人はなのはに弱いからな」

「・・・恭也兄さんが言っても説得力が無いですよ」

 

心底呆れました、というような顔でアリサは恭也の顔を見る。

 

「そうだねー、恭也もなのはに弱いからね」

 

ガレージのほうから普段着のフィアッセが現れて、アリサに賛同する。

 

「おはよう、恭也♪ 昨夜はよく眠れた?」

「・・・ああ、おかげさまで、ぐっすりと」

 

ただでさえアリサだけでも手に負えないのに、フィアッセまでが向こう側では分が悪いので、反論しない恭也。

もっとも、反論できるだけの材料や根拠があるわけでもないが・・・・・・

 

「そう、よかった。 あ・・・そういえば、恭也にはまだ、ちゃんと言ってなかったね」

「・・・・・・?」

 

何のことか分からずに首を傾げる恭也の顔を覗き込み、じ、と目を合わせて、それから微笑む。

 

「進級、おめでとう、恭也」

「・・・・・・・・・ありがとう」

「でも、もう恭也も三年生か・・・・・・」

「・・・・・・そうだな」

「もうすっかりおにーさんだ」

 

フィアッセは微笑みながら恭也の頭をぽんぽん、と撫でる。

 

「・・・フィー姉さんの前だと、恭也兄さんって幼くなるんですよね」

 

微笑ましい恭也とフィアッセのやり取りを見ていたアリサが、苦笑しながら呟く。

 

「・・・フィアッセ。 俺ももう子供ではないので、あまり子供扱いをするのは、やめて欲しかったりする」

「あはは。 子供だよ〜、私には、昔からずっと」

 

恭也の反論も、恭也の頭をなでなでしながら一蹴するフィアッセ。

この関係はいつになろうとも決して変わることはないだろう。

一歩踏み出した関係にでもならない限りは・・・・・・

 

「俺の料理は、おまえのみたいにざっくばらんにできねーんだよ!」

「ちまちまちまちま、見ててうっとーしいんや、あんたの下ごしらえはー!」

「あー」

「・・・あれで食事がきっちり出てくるのが不思議でならん」

「恭也兄さん、あまり気にしないほうが良いですよ。 仕方ない、止めますか・・・」

 

そう言うとアリサは、未だ戦場と化している台所へ向かっていった。

 

「私達も行こう? 恭也」

「ああ」

 

 

 

 

 

「おはようございま〜す♪」

 

朝食を終えて一息ついたころ、桜花が高町家にやってきた。

 

「恭也さん、おはようございます。 美由希さん、いますか?」

「おはようございます、桜花さん。 美由希なら部屋にいると思いますから・・・・・・どうぞ」

 

これで恭也に用事なら多少警戒しただろうが、桜花は美由希の名前を出したため、恭也はすんなりと桜花を家に入れた。

 

「おはようございま〜す、美由希さん」

「あ、桜花さん? おはようございます」

 

桜花が部屋に入ると美由希はベッドに横たわっていた。

 

「・・・? どうしたんですか、いったい」

「それが・・・・・・筋肉痛が・・・今朝になったら、急に・・・酷くなって・・・・・・」

「・・・・・・・・・!(くふふ♪) それなら、私がマッサージしてあげましょうか? 今朝、瑛にしてあげたら「だいぶ楽になりました」って言ってたし」

 

ただし、その台詞の前に青ざめた顔で「お花畑が見えました」と言っていたが・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

美由紀は悩んだ。

人生でこれほど悩んだことがあるかってくらい悩んだ。

楽になるならそれに越したことは無い。

しかし、相手はあの桜花だ。

この状態で悪戯なんかされたらそれこそ死活問題である。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お願いします」

 

だというのに美由希はあえて受けることにした。が、

 

「はい♪」

 

とても嬉しそうに返事をした桜花に美由希は、「やっぱ早まったかも」と早くも後悔していた。

 

 

 

「い、いたいいたい!ギブア―――――ップ!!」

「・・・ん?」

 

恭也は美由紀の悲鳴を聞いて首を傾げる。

しかしすぐ後の言葉を聞いて「ああ」と納得した。

 

「ふふふ♪ ここか〜、ここがええのんか〜♪」

「いいぃぃぃいあああぁぁああああ!!」

「・・・・・・・・・安らかに眠れ、美由希」

 

思わず胸の前で十字を切ってしまう恭也だった。

 

結果からいって、美由希の体はかなり楽になった。

暫くの間、美由希は痙攣していたが、動けるようになると、体の具合を確かめるために、庭に出た。

ちなみに桜花は恭也にマッサージを受けることを勧めたが、恭也は断固として拒否していた。

 

 

 

 

 

高町家 昼時

美由希に嬉々としてマッサージをした桜花は、恭也の説得に失敗したのを機に、残念そうに自宅に引き返していった。

つーか、何しに来たんだ? 彼女は。

その桜花のマッサージの被害者?である美由希は、レンと一緒に出掛けて、お昼は食べてくるとのこと。

晶は、朝食後にサッカーをやりに出掛けている。

アリサは桜花と一緒に神影家海鳴支部へお昼をお呼ばれになった。

そんなわけで現在高町家にいるのは恭也となのはだけである。

 

「・・・・・・♪・・・♪・・・」

 

恭也がなのはを探そうとリビングに出ると、探し人はじーっと一人でテレビを見ていた。

 

「・・・・・・」

 

ちょっと悪戯心が沸いた恭也は、気配を消すとなのはの背後に忍び寄る。

 

(さて、どうしてくれよう)

 

少し考えた恭也は、そっと手を伸ばしなのはの目を覆う。

 

「にゃ!! あわわ、わわわっっ!?」

 

なのはは何が起こったか分からず、ぱたぱた、と慌てている。

 

「・・・・・・さて、俺はいったい誰でしょう」

 

ここで桜花なら声色を変えて、相手を騙そうとするが、恭也にはそんな芸当出来やしない。

神影さん家のトラブルメーカーは、悪戯の技能が多種多彩なのだ。

 

「・・・あー! おにーちゃん!!」

 

ぱ、と恭也の手を振り解くと振り返って、なのはは怒った顔をする。

 

「よし、よく当てた」

 

声色を変えているわけではないので、お兄ちゃん子のなのはなら、さすがに間違えないだろう。

 

「うー」

「・・・油断をしてはいかん」

「おうちでテレビ見てるときくらい、なのはは油断していたい・・・」

 

なのはは呻った後にぺしん、と恭也を叩き、ぷー、とふくれてソファーに座りなおす。

 

「・・・・・・また、チャレンジするのか? お菓子作り」

「うん。 おかーさんみたくなるの」

「・・・まあ、頑張れ」

「うん」

「・・・・・・っとそうだ、みんな出かけちゃってるんだが、昼はどうする?」

 

危うく本題を忘れそうになった恭也は話を切り替える。

 

「あ、そうか・・・」

「まあ、俺とお前しかいないんだし・・・外に何か食べに行くのでもいいが」

「あ、行く!」

 

テレビは終わるのを待ってから、恭也たちは家を出た。

目的地はなのはと晶のお気に入りのハンバーガー屋だ。

 

「♪・・・♪♪・・・・・・」

 

恭也と繋いだ手にぶらさがるように、とんとん、とステップを踏みつつ、なのはは歩く。

 

「あ、ねこさんだ!」

「・・・にゃ・・・・・・」

 

なのはの視線の先では、民家の塀の上で、灰色の猫が眠そうに欠伸していた。

高町家付近では野良猫、飼い猫とも結構数が多い。

なのはが発見したのは首輪をつけた飼い猫のようだ。

 

「ねこさん、ねこさーんっ」

 

手を出しながらなのはは猫に近づいていくが、猫はちらりとこちらを見ると、ひょい、と塀の向こうへ飛び降りてしまった。

 

「あー」

「残念」

「うう、さわりたかった」

 

残念そうにそう言うと、なのはは恭也の手を取り、とてとてと歩き出した。

そんななのはを見て恭也は今朝のことを思い出す。

 

「・・・・・・そういえば、猫じゃないが・・・今朝、神社で狐見たぞ。 子狐」

「きつねさん!?」

 

それを聞いた瞬間、なのはの目がぱっ、と輝く。

 

「ああ」

「みたい! きつねさん、みたい!!」

「・・・いや、とは言ってもな・・・・・・」

 

一応、迷っている恭也だが結果は火を見るより明らかである。

 

「みたいー!」

「・・・・・・・・・」

「みたいみたい、みたいー!」

 

恭也がなのはのお願いを断れるわけが無いのだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・たまたま見かけただけだから、いるとは限らないぞ」

 

お昼はひとまず置いておいて、恭也たちは神社にやってきた。

 

「いるよー、きっと・・・・・・」

 

どこからその根拠は来るのか、なのはは神社の中をぱたぱたと走り回って、軒下の覗き込んだり、茂みの向こうを見てみたりと、あっちこっち探し回る。

如何に自然の多い海鳴とはいえ、子狐一匹を探し出すのは非常に困難だろう、一般的に考えれば。

そのため、恭也も見つからないだろうと高を括っていたのだが。

 

「・・・・・・・んー・・・・・・・・・・・・あ!」

「・・・?」

「いた!」

 

なのはの気持ちが届いたのか、探し始めてから十分もたたないうちになのは子狐を発見した。

嬉しさのあまり、ダッシュでなのはは神社の裏手へと駆けて行った。

 

「あ、こら、そんなに走ったら・・・」

 

狐しか見えていないなのはに注意の言葉も届くことなく、

 

「にゃ!」

「きゃあっ!」

 

ぽすん、と、何かがぶつかる音が響く。

 

「・・・・・・なのは!?」

 

なのはの悲鳴を聞いた恭也は急いで神社の裏手へ走った。

 

「あたたた・・・ご、ごめんね、大丈夫!?」

 

辿り着いた恭也が見たものは、巫女さんが地面に尻餅をつく形で、なのはを見上げているところだった。

 

「・・・・・・え?」

 

巫女さんを見た恭也の脳裏にある映像がフラッシュバックする。

 

 

 

父が亡くなって焦っていた春

 

いたら支えてくれたであろう、実家の戻っていた桜花

 

倒れるまで動いて、倒れたら起き上がって、また動いて

 

無駄と徒労が多かった、ただ、鍛錬のための鍛錬

 

疲れのあまり避けられなかった車

 

砕けてしまった膝

 

桜並木で出会った少女

 

誤解して浴びせた言葉

 

投げ捨てた『八景』

 

気になって様子を見に行った次の日

 

戻ってきた『八景』と解けた誤解

 

かけてもらった『おまじない』

 

『明日も』と交わした曖昧な約束

 

『おまじない』の後、疲れて眠ってしまった彼女を迎えに来た姉

 

大雨の降っていた次の日、無理してまで向かった桜並木

 

彼女は来なくて、昨日来た彼女の姉が『実家に帰った』と教えに来て

 

でも、救われた

 

諦めていた自分に力をくれた

 

彼女のおかげで治療やリハビリに一生懸命、取り組めた

 

 

「あきらめたら、いけない」―――その力を最初にくれた、彼女のこと

 

 

 

「・・・・・・・・・桜の精・・・」

「・・・え?」

 

呆然としていた恭也が思わず呟いた言葉に反応する巫女さん。

 

「なんでもありません。・・・あの、大丈夫ですか」

「あ、へ、平気です・・・」

 

照れくさそうに、地面に手をついて立ち上がろうとする巫女さん。

 

「よいしょっと・・・・・・ごめんね。 ちょっとぼーっとしてたから・・・」

「うぅ、こっちこそ、ごめんなさい」

 

お互いに謝りあって両成敗といったところで、巫女さんは恭也に会釈する。

恭也は表には出さないものの、内心まだ困惑しつつ、会釈を返す。

 

「・・・・・・あ、ここの、巫女さんですか?」

「あ、はい。 アルバイト・・・というか、お手伝いみたいなものですけど」

 

恭也たちが話していることなど眼中に無いのか、なのはは神社の角をじーっと見ている。

そこには小さな狐が、じっと恭也たちを様子を伺っている。

 

「・・・久遠、おいでー」

 

なのはの様子に気付いた巫女さんが呼びかけると、久遠と呼ばれた子狐は少し警戒しながらも、ちりちりと首にかけた鈴を鳴らして、走りよってきた。

 

「よいしょっと」

 

ひょい、と巫女さんは久遠を抱き上げる。

 

「はぁぁあ・・・」

 

なのはは、間近で見る久遠の姿に感動している。

動物園でもここまで近くで見ることはできないだろう。

 

「乱暴にしなければ、かんだりひっかいたりしないから・・・触っても大丈夫だよ」

「ほんとですか?」

 

なのははそーっと手を伸ばして、久遠の尻尾に手を触れる。

 

「・・・・・・・・・」

 

久遠も少し不安げに、なのはを見ている。

 

「抱いてみる?」

「は、はいっ!」

 

巫女さんの提案になのはは嬉しそうに返事をして、久遠を受け取る。

 

「・・・・・・・・・なでなで」

 

なのははまだ少し硬くなっている久遠の頭を、そーっとなでる。

 

「くう・・・・・うん・・・」

「ふわーー・・・・・・か、かわいい♪」

 

久遠は不安げに尻尾を揺らしているが、なのははご満悦のようだ。

 

 

 

「・・・・・・えっと、間違っていたら失礼なのですが―――」

 

ひとりと一匹が、おっかなびっくりコミュニケーションするのを見守っていた巫女さんが、何か引っかかるものがあるのか、じっと恭也の顔を見ながら尋ねてくる。

 

「昔、桜並木であったことありませんか?」

「・・・もしかして、『おまじない』の?」

 

引っかかることがあった恭也も、一目見たときから気になっていたことを訊いてみる。

 

「はい!」

 

嬉しそうに頷く巫女さん。

覚えててくれたのが余程嬉しかったのだろう。

 

「あのときはすみませんでした。 あの日、わたし、倒れちゃって・・・眠りつづけて、姉に叱られて」

 

申し訳なさそうに巫女さんが話し始める。

 

「・・・結局、約束の時間に・・・・・・来れなかったんです」

「いえ、無理させたのは自分ですし・・・・・・」

「そんなこと無いですよ。 それに、来てくれたんですよね・・・・・・随分、時間が経っちゃいましたけど、次に会えたら言おうと思っていたことが・・・あったんです」

 

巫女さんは軽く息を吸うと

 

「『・・・神咲那美です・・・・・・名前、教えてくれる・・・?・・・・・・友達になりたいから』・・・」

「・・・・・・・・・ありがとうございます。 高町恭也です。 俺も友達に・・・・・・なりたいです」

「・・・・・・うん・・・恭也、さん」

 

巫女さん―――那美が優しく微笑むと、恭也も少々ぎこちないものの微笑んだ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・それにしても不思議ですよね」

「そうですね、一年同じ学校にいても気付かないんですから」

 

自己紹介から始まり、なのはの紹介、自分達の通う学校の話になり、同じ学校だと分かった両者の最初の発言がこれだった。

ま、人生なんてそんなものだろう。

 

「・・・・・んしょ・・・」

「・・・・・・・・・!」

 

なのはが久遠の抱き方を変えようとした瞬間、とん、と久遠はなのはの腕を飛び降りて、茂みの中へと駆け込んでしまった。

 

「あーーー・・・・・・」

「あ・・・と、久遠! 久遠!!」

 

那美が久遠を呼ぶが、一向に久遠は戻ってこなかった。

 

「ごめんね。 あの子、ちょっと怖がりだから・・・」

「いえー。 だっこできて、うれしかったですーー」

 

なのはは腕の残る久遠の感触に、少々夢見心地だ。

 

「あの子、この辺りでよく遊んでいるから・・・『久遠』って呼んだら、出てくると思うよ。 よかったら、また遊んであげてね」

「は・・・・・・はいっ!」

「じゃあ、日を改めてまた来るか」

「うん!!」

 

恭也のこの言葉に嬉しそうに答えるなのは。

久遠と触れ合えて、なのははご機嫌だ。

 

「あ・・・じゃあ、失礼します。 那美さん」

「しつれいします。 えと・・・那美さん、ありがとうございましたー」

「はい、失礼します、恭也さん。 ばいばーい、なのはちゃん」

 

恭也にお辞儀、なのはに小さく手を振って、那美はもといた神社の裏側のほうへ歩いていった。

 

 

 

 

 

神社を後にした恭也たちは、ハンバーガー屋に入り、お昼を済ませた。

ただ、何故か居た桜花に恭也が、女性の武器を使われてからかわれたのは、不運だったといえよう。

そして、からかわれてた恭也は気付かなかった。

桜花が一瞬だけ、訝しげな表情でなのはを見たことに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

七彩です。

ここを読んでいるということは、最後まで読んでくれたんですね。

感謝、感謝、です。

さて、恭也・なのはの那美・久遠との出会い、です。

後の段階で那美との出会いを思い出すと、強制的に那美ルート直行なので、ここで思い出させました。

オールエンドルートを通りたいのでこんな無茶をさせたしまったり

出来るだけ飛ばそうとしても結構な量があるもんですな・・・・・・

次は忍の転落事故ですね。

では、また次回で




那美との再会を果たした恭也〜。
美姫 「そして、次回はいよいよ忍の登場ね」
そうみたいだな。
だが、その前に気になるのが、桜花の反応だったりする…。
美姫 「一体、これは何を意味しているのかしら」
と、まあ、次回も非常に楽しみな訳で。
美姫 「次回も待ってますね〜」



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