車、ノエルの運転するリムジンの後部座席に恭也と忍が並んで座っていた。そして彼等は今、夜の一族の長、エリザ・ローレンシュタインを訪ねようとしていた。

 

「なあ忍、そのエリザって人はどういう人なんだ?」

 

恭也が隣にいる忍に尋ねる。彼女は顎に指を当て、少し考えるような仕草をとった後、答えた。

 

「う〜ん、そうね。一言で言えば“凄い人”かな。一族で最高権力者の一人で、かつその中で最年少。世界最高クラスの魔術師と言われ、同時に退魔術師に置ける最強とまで言われる人。で、戸籍上はさくらの叔母さんで、だけど私達夜の一族は長寿だから凄い美人だよ。」

 

「ほー、魔術師とか夜の一族の事に関してはよくわからんが、凄い人だという事はわかった。」

 

裏の事情にそれほど詳しくない恭也だったが、それでもエリザという女性がとてつもなく凄い人だという事だけはわかった。

 

「む〜、何かいい加減な答えねえ。ま、恭也らしいか。」

 

その恭也の答えが不満だったのか忍は頬を膨らませるが、すぐに、笑みを浮かべる。

 

「すまんな。しかし、力を貸してもらえるといいが。」

 

「うーん、エリザって人間っていうか、他人と関るのがあまり好きじゃないからねえ。気に入った相手にはとことん甘えてきたりするんだけど。」

 

悩む二人。そう、彼等はエリザの力を借りる為に彼女を訪ねようとしていた。話は前日にさかのぼる。

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・。」

 

小さくうめき声を上げながら目を覚ます耕介。血を吐いて倒れた彼はシエルに寮に運ばれ、そして、同じく重症を負った志貴と共に病院から駆けつけたフィリスとシエルの魔術による治療をうけ別々の部屋に寝かされた。二人とも本来なら、病院にまで運ばれるべき重症だったが、病院に彼等を運んだ場合、そこで敵の襲撃を受ける恐れがある為、それは出来なかったのである。

 

「「「「「耕介さん!!!」」」」「「「「耕介!!」」」」

 

彼を見守っていた寮生の皆が彼の名を呼ぶ。それに対し、耕介は笑顔を浮かべて答えた。

 

「みんな、心配かけちゃったみたいだね。」

 

だがその笑顔はいかにも無理した痛々しいものだった。そんな彼を真雪がいきなりどついた。

 

「痛ってええええええ!!!何するんですか、真雪さん、俺、怪我人なんですよ!」

 

それに対し講義する耕介。だが、真雪はそんな彼を怒鳴りつけた。

 

「馬鹿野郎、あたしは寮の奴等を守れって言っただろう!!お前が例外だと思ってたのか!!」

 

そう言う真雪の目には涙が浮かんでいた。それを見て耕介は申し訳なく思うと同時に胸が熱くなる。

 

「どうやら、目を覚ましたようですね。」

 

その時、冷たい声が投げかけられ、その声と共に部屋に一人の女性が入ってきた。その声の主はシエル。彼女は冷たい目で耕介を見ている。だが、そんな彼女に対し、耕介は笑顔で返した。

 

「ああ、迷惑かけたみたいだね。状況からして助けられたのかな?だったらお礼を言うよ。」

 

「いえ、あなたには遠野君がお世話になったようですし、間接的にとはいえ助けられました。遠野君とシオンだけではあの状況を看破できなかったでしょうし、礼を言うのはこっちです。」

 

そう言って頭を下げる。

 

「はは、それじゃあ、お互い様と言う事で。」

 

「・・・・・そうですね。それにしても、貴方は何故、そうも私に対して気楽に接する事ができるのですか?」

 

顔を上げた後、不信と疑問が半々ずつ混ざった表情で彼女はそう言った。それに対し、耕介は静かに答える。

 

「それは、俺が代行者と過去に2度交戦しているからと言う事?」

 

「そうです。そして、そのうち一人を貴方は再起不能にした。」

 

その言葉に寮生が驚いた顔をする。耕介が出会った代行者はただ、それが人でないにも関らず、人の形をした者だというだけで、キリスト教の教義にしたがい、平穏に暮らしている魔の者を殺そうとした。そして、耕介は彼らに対して戦った。彼にとってはあまり知られたくないことだったが、どの道、隠していてもいつかはばれるだろうし、彼女達を守って何度も死徒や魔術師として交戦していた事などはばれてしまったのだからと、シエルの答えを予測しつつあえてそれを止めようとはしなかった。

 

「確かにね。けど、俺にしてみれば、あれはそちらに非がある。そっちにはそっちの言い分があるんだろうけど、それは俺にとって絶対に譲れない境界だ。君が同じ事をしようというのなら、俺は何としてでも止める。例え、今、この瞬間であっても。」

 

耕介がシエルの目を見据え、はっきりと言い放つ。それに対しシエルが睨み返し答える。

 

「その身体でですか?そんな寝たままの状態で?」

 

「こんな状態でも戦う手段はあるんだよ。ま、流石に君に勝つのは難しいかもしれないけどね。」

 

耕介の言葉に嘘は無かった。もし、彼等がかって耕介が会った代行者のように美緒や久遠に危害を加えようとするならどんな事でもして止める。そして、それをシエルは感じ取る。二人の間に走る緊張が走る。

 

「ふぅー。」

 

突然息をつくシエル。二人の間にあった空気が僅かに緩む。そして彼女は続けた。

 

「例の件に関しては明らかに彼等はやりすぎでした。何の能力も無い一般人にまで危害を加えている。その事に関してはむしろ謝罪します。それから、少なくとも、この寮の人達に危害を加えるような真似はしませんよ。」

 

「そ、なら、安心したよ。」

 

耕介はその言葉が信頼に値すると感じ、緊張を解く。もともと、彼はシエルをそれほど疑ってはいなかった。もし、彼女がそのつもりなら耕介が目を覚ます前に行動に出ていただろう。目を覚ました時点で何の問題も起きていないのが彼女にその気がないのはほぼ確実と言えたのだった。二人の間にあった硬直した空気が完全になくなったことで、その様子を見守っていた寮生の皆もほっと息をつく。その時、恭也が部屋に入ってきた。

 

「耕介さん、目が覚めたんですか?

 

「ああ、恭也君、君は怪我は大丈夫かい?」

 

「ええ、俺は対したことありませんよ。けど、志貴はかなりの怪我で治るのに10日はかかるそうです。」

 

それを聞いて耕介は考え込む。これで、アルクェイドと自分を含めて3人が戦えない事になる。鬼滅刃は最強の概念武装以上のダメージを魂に与える技であるので、それによってきられたルーカスも当分動けないだろうが、油断はできない。シエルが手を貸してくれるとしても、戦力に不安がある。しばらく思案した後、耕介はこう答えた。

 

「恭也君、エリザという人のもとに言って欲しいんだ。」

 

 

 

 

 

そして、恭也はエリザの親戚である忍に連絡を取った。耕介の怪我を知り、耕介と関係のある女性の一人であるさくらがさざなみ寮に飛んできた。そして恭也は彼女に自分の代わりに寮の守りを任せると、エリザの屋敷を訪ねたのだった。

 

 


後書き

柿の種:2部開始です。でも正直あまり、自信なかったり・・・・・

ロア:そんなことでいいのか?

柿の種:うるせええ!!ゲストのネタが尽きたから仕方なく呼んだヘタレのお前なんかに言われたくねえ!!

ロア:なっ!私がヘタレだと!?

柿の種:番外とは言え二十七祖の癖に志貴にびびってあっさりやられたお前などヘタレで十分だ。

ロア:くっ・・・・・。

柿の種:まあ、それはいい。それはそれとして今回だが。

ロア:恭也という男に主役が移るという事だったが、あまり目立ってないな。

柿の種:まあ、次回から出番も増える。2部は恭也が更なる力を手に入れる話でもある。まあ、今でも十分強いんだが、直視の魔眼や霊力のような切り札の無い恭也はこの先パワー不足に陥る可能性がある。1部の最後に話がでてきた覇神(仮称)の域には12年でたどり着けるもんじゃないし、“閃”以外が効かないんじゃこの先苦しいからな。

ロア:まあ、確かにな。それで、エリザとかいう女だが。

柿の種:以前に話がでた耕介と関係がある夜の一族の権力者の女性で、次回は恭也との対決になる。

ロア:ほう。それはなかなか興味深そうだな。

柿の種:後、ノエルのパワーアップ話とかでてくる。

ロア:そんなにネタをばらしていいのか?

柿の種:まあ、他にも色々と考えてあるし。それでは次回もよろしくお願いします。




ノエルがパワーアップ……。
美姫 「ずばり、オッ○イミサイルね!」
また、それか!
美姫 「それ以外何があるのよ」
……………………。
…………目からビーム?
美姫 「大して変わらないじゃない」
いやいや、六段変形とか。
美姫 「一層の事、イレインコピーと合体とかは?」
それも良いな。後は、ドリルか。
美姫 「やっぱりドリルよね」
ああ、ドリルは基本だろう。
美姫 「って、お馬鹿な事ばっかり言ってないで」
おお、そうだった。
待ちに待った第2部のスタート。
とても嬉しいです〜♪
美姫 「これから頑張って下さいね」
ではでは〜。



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