第八話「死者の巣窟」






 
 友枝中学校
「行くよ!!」
 さつきは、死者の中へ勢いよく飛び込んでいった。
 先頭に居た死者達が一瞬で灰になる。
 敵襲に死者達が一斉にさつきに襲い掛かる。
 だが、真祖であるさつきの前では死者は、赤子同然だ。次々と灰に化していく。


 友枝中学校地下
「省吾様。例の死徒が来たようです」
「あのお姉ちゃん一人?」
「いいえ。仲間を連れて来ているようです」
「仲間を連れてくるなんて弱そうだね其のお姉ちゃん」
「いいえ。仲間の力を借りず一人で戦っているようです」
「其れで校庭の死者たちは?」
「はい。次々、倒されていっています。此のままだと後、一時間程で駆り尽されてしまいます」
「其れより、マッサは何処で遊んでいるんだろう?」
「呼び戻されては如何ですか」
「そうだね」


 友枝町内
「クソッタレ!! 何時になったら追って来やがるんだ」
((マッサ、戻ってきて。お姉ちゃんは、もう僕の城に来ているよ)) 
「分かりました。省吾様」
 マッサの眉間に血管が浮き上がる。
「城に戻ったら轢き殺してやる」
 そう言うと全速で城へ急いだ。



 時計塔
 倫敦にある魔術協会の一室で二人が叱られていた。
「さて、今回の経緯を説明してくれるか」
 ゼルレッチが傍らの男性講師に聞いた。
「はい。始まりは些細ないい争いがきっかけだったようです。以前からこいつらの仲が悪いのは有名でした」
 此の二人の仲の悪さは、協会で有名のようだ。
「今回の二人の喧嘩による被害は講堂Dが壊滅、地下7階から9階が吹き抜けになりました」
 男性講師の顔に血管が浮き上がり体が震える。
「負傷者30名。被害総額は概算で……ごっ……500万£程かと……」
「よくもまぁ、暴れたもんじゃな」
 ゼルレッチはカッカッと笑う。
「ロード・エルメロイU世!! こやつ等の処分如何する?」
「被害が被害です。最悪、除籍処分になる可能性が高いかと……」
「此の件。ワシが預かってやってもいい」
「大師父!」
「但し条件がある」
「え……?」
「丁度今、危険な案件を抱えていてな……お前さんたちなら適任だろう」
 ゼルレッチが二人に命令を言う。
「日本へ飛べ!! お前達に任務を与える。三咲町と言うところと友枝町という所に入り込んだ死徒を退治して来い」
「大師父!! 死徒は教会の代行者が処理しているのでは?」
「三咲町とか言う所には第七司祭が行っておる」
「司祭が居るのなら私たちが行かなくてもいいのでは?」
「困った事にアルクェイドのヤツが一度殺されて弱っていての」
「真祖の姫が殺された!?」
「其れで困っているんじゃ。あの町には27祖クラスの死徒が数体暗躍しておる」
「真祖に27祖。私たちに死ねと仰るんですか?」
「あぁ。そう言っておる」
 顔色が悪くなる遠坂とルヴィア。
「忘れるところだった。彼の地にはアルクェイド以外にも真祖が居るからな」
「真祖の姫君以外に真祖が居はず……」
「無駄口叩いている暇があったらさっさと仕度しろ!! 既に飛行機のチケットも用意してある」
 そう言って飛行機のチケットを受け取る。
「飛行機の時間は……」
 飛行機の時間を確認するルヴィア。
「搭乗手続きまで後、一時間ないじゃありませんか」
 二人はドタバタして空港へ急いだ。

「あの二人大丈夫なんですか?」
「なぁに。心配いらんじゃろう」
「一番重要なことを言わなくて良かったのですか?」
「次元の違いを肌で感じさせるのも薬じゃ」
 ロード・エルメロイU世も知っているようだ。
 一番重要な話の内容を……。



 友枝中学校
 さつきが死者達の中に飛び込んで行って三十分あまり。
「なかなか、減らないね。一体何匹抱えているんだろう?」
「既に200匹ぐらい殺しているはずですのに」
 殺せどグランドの死者の数がなかなか減らない。

「やっと見つけたぜ!!」
 全速で戻ってきたマッサが其処にいた。
「俺を無視してくれたお礼に全員、全速で轢き殺してやる」
((マッサ。戻ったなら城の警備について))
「ちっ。之からテメェらを全速で轢き殺してやろうと思ったのに……俺が守備するところへ来たら轢き殺してやるからな」
 そう言うとマッサは校舎のほうへ跳んで行った。


 そして、さつきは……。
 休みなく死者達を駆っている。
 唯の爪だけで……。
「いくよ〜!!」
 さつきの振り下ろした拳から爆発が起こる。
 拳から発生した衝撃波で一瞬で数体の死者が消し飛ぶ。
 


 友枝中学校地下
「マッサ。早く配置につけ!!」
「あぁ。早く轢き殺してぇ」
「お前が轢き殺すのなら、我は斬り刻んでやる」
「マッサも小次郎も死者どもを指揮して配置につけ」
 四天王は死者達を率いて配置場所へついた。


 友枝中学校
「キリが無いよう」
 倒せどキリがない。
「固有結界を使おうかな? いやいや、駄目」
 固有結界を使おうとするも思いとどまる。
 固有結界を持っていない普通の死徒のふりをして戦わないといけないからだ。
 其の為、影の中に居る混沌も使えないのだ。
「一体、どのくらい居るの!?」
 さつきは、減らない死者に気が遠くなる。


「さくらちゃん。手を出しちゃ駄目よ。私たちも我慢しているんだから」
 アテネが、さくらに言う。
 自分も手を出したいのを我慢していると言う。
「でも、此のままだと夜が明けてしまいますわ」
「アテネ!!」
「さつきさんなら、“絶対大丈夫だよ”」
「“絶対大丈夫だよ”か。無敵の呪文ね」
「此のままだとテープが足りなくなってしまいますわ」 
 知世は、カメラを手に撮影をしている。
「後、バッテリーも……」
 バッテリーの方も心配する。
 知世の家には、プロが使うような機材もあるのだ。(劇場版『封印されたカード』を参照)



「邪魔をしないで!!」
 さつきは、両手を振り回して死者達を引き裂いていく。
「貴方達ばかり構っているわけにはいかないから、一瞬で葬ってあげるね」
 さつきが、片手に魔力を込めて一振り。
 其の一振りで、グラウンドに居た死者たちは消滅した。



 友枝中学校地下
「省吾様。グラウンドの死者共は一掃されたようです」
 ブリミルが言う。
「アレだけの死者たちじゃ足りなかったかな?」
「アレだけと仰られましても全死者の4割、約600人の死者たちですぞ」
 この事から計算すると省吾の死者の数は3000と言う事になる。
 更に四天王も居る事から可也の戦力があることになる。
「では、省吾様。モニター映像を第一の関所に切り替えます」
「第一の関所は、ベッテルが担当だったね」
「はい」
「省吾様。お願いがあります」
「アイルトン。配置についたのではなかったの?」
「はい。一旦ついたものの城内では、我ら四天王の力を全開出来ません」
「確かに僕や四天王が戦うには狭いね。いいよ。外で全力で戦って……僕も外で見るから」
「しかし省吾様、敵に体をさらす事はないでしょう」
 ブリミルが忠進する。
「外だといざと言う時、直ぐに逃げられるから」
「分かりました。外に出ましょう」
「あのお姉ちゃんたちにも外に出てもらって」



 友枝中学校地下第一の関所
「此処から先は通行止めだ!!」
「あんたが此処の番人?」
 アテネがベッテルに聞いた。
「そうだ!! 予定では、此処が第一の関所となるはずだった」
「なるはずだった?」
「四天王である我が全力で戦うには此の城の中は些か狭すぎる。省吾様の命により四天王全員が表で相手をする。表へ出ろ!!」
「あんたもさっちゃんが相手をするから」
「今のうちに威勢を張っていな!! 後で泣きを見るのはそっちだから」
 そう言ってベッテルは死者を連れ外へ出て行った。
 アテネは、ベッテルが外へ出て行くのを確認して後をついて行った。
 さつきも其の後に続いた。
「さっちゃん。あの死徒、結構強いわよ。二十七祖クラスの力、少しだけ使ってもいいわよ」
 アテネは、さつきに二十七祖の力を限定ながら開放を許した。
 此のアテネの許可が四天王に真の恐怖を与える事になることを誰も知らない。





 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間や」
 おなじみのコーナーが始まる。
「巷では新型インフルエンザが流行っているようやが大丈夫か?」
 流行性疾患を気にするケルベロス。
「流行性疾患の話は置いといて、本題に行くで!!」
 画面が変わり何枚かの写真が写る。
「今回は、此の三人について説明したる。先ずはコイツや」
 さすは、名物講師。
「ロード・エルメロイU世!! 魔術師としては並らしいが、講師としては超一流らしい。後に紹介する二人のせいでしわが増えていっとる。んでコイツがエルメロイU世と名のっとる理由やが没落したアーチボルト家を復興させたかららしいんや!! 詳しくはwikiを見たってや」
 エルメロイU世の説明を終え次の説明に入る。
「いよいよコイツラの番や。此の二人は、時計塔の魔術師で主席を争っているんや。おまけに性格まで似とるから喧嘩がたえないんや。あの二人が壊した施設の修理代は時計塔開設以来の最高記録を更新中らしい。そんな二人やが財力はドラゴンとアリの差がある」
 二人の説明を続けるケルベロス。
「んで、コイツが冬木のセカンドオーナー遠坂凛や。原作でもおなじみの万年金欠に苦しんどる。まあ、使う魔術が派手やらしゃあないやろうな」
 遠坂凛の性格を話す。
「そんで、コイツがルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトや。なんや知らんが時計塔の主席候補らしいな。今回、あまりに暴れまくった為に遠坂凛共々、ゼルレッチに罰として死徒退治を命じられとったなぁ」
 と、言ったところで時間切れ。
「おっと、もう終いの時間か。もっと此のコーナーを盛り上げて幾ら楽しみにしとってや。ほななぁ」



凛たちも日本に来る事になったみたいだぞ。
美姫 「これまた混沌とした状況になりつつあるわね」
だよな。うーん、この二人勘違いしてさつきに襲い掛かったりしないだろうか。
美姫 「流石にその辺りの説明ぐらいは聞いて……」
……うーん、説明しているのか、いないのか。
さてさて、どうなるのかな。
美姫 「気になる続きは連続してこの後!」



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