第十八話「ネオ・カオス襲撃!!」
聖杯戦争二日目……
「我を何時まで吊るしておく気か!!」
ギルガメッシュは、可也頭にきているようだ。
「おいっ槍!! 我を下ろせ」
如何やらランサーも吊るされているようだ。
「ギルガメッシュにランサー、五月蝿いですよ。貴方達のせいで一睡も出来ませんでしたわ」
「おい。何処が一睡も出来なかった顔か!!」
カレンは熟睡していたのだ。
「その前に我を下ろせ!!」
「朝ごはんにします。自力で下りてきなさい」
そう言ってカレンは、教会の中に消えていった。
ギルガメッシュとランサーは吊るされたままだ。
「下ろしてから行きやがれ!!」
だが、下ろしてくれる者は誰も居ない。
「なあセイバー」
「何でしょうか？ シロウ」
「昨日の吸血鬼のこと如何思う？」
「あの真祖のことですか？」
「あぁ」
「確かに驚くべき事ですね。一晩のうちに真祖にまで成るなんて聞いたことがありません」
「セイバーは如何する？ 真っ先に叩くか？」
「流石に真祖五人とあの魔術師と高位の使い魔二体を相手にするのは部が悪すぎます」
「じゃあ、冬木に入り込んだ死徒は倒せるか？」
「わかりません。昨日聞いた話では二十七祖クラスの死徒らしいです。その事はシロウも聞いたでしょう」
「あの後、遠坂からタップリ教育されたから……」
シロウはあの後、遠坂とルヴィア、イリヤから地獄の教育を受けていたらしい。
「お陰で睡眠不足だ」
「夜まで寝られては如何ですか？」
その望みを打ち破る悪魔が現れた。
「士郎、昨日の続きを始めるわよ」
「シェロ、直ぐに勉強の容易をしなさい」
「お兄ちゃん!!」
「遠坂、ルヴィアにイリヤまで……」
「士郎、さっさと正座!!」
士郎に教育を始める遠坂。
「シロウ、がんばってください」
「せ、セイバー、助けてくれ」
「すみませんシロウ」
助けられないと言うセイバー。
「シェロ、昨日教えたことを言いなさい」
昨日教えたことを言えというルヴィア。
「立て続けに言わないでくれ」
「無駄話している時間は在りませんわよ。シェロ!!」
有無を言わさずに教育を始める三人。
「シェロ!! 死徒が生まれた経緯をいいなさい」
「えぇっと。何だったけ」
教えられたことを忘れている士郎。
「昨日教えた事、忘れてんじゃないわよ!!」
鬼の形相になって士郎に噛み付く凛。
王族の庭園
「そんなんじゃサーヴァントに勝てないわよ」
さつきにサーヴァントの知識を与える特訓が王族の庭園で行われていた。
既に数年間、外の時間で数時間使っていた。
「幾ら真祖だからって言ってもさっちんは、まだまだ経験不足なんだから」
そう、さつきはまだ経験不足なのだ。
経験不足だから佐々木省吾らに苦戦をしお腹を殴られて苦しい思いをしたのだ。
今は、アルクェイドから真祖の王族としてのあり方と真祖としての戦い方を仕込まれているのだ。
アルクェイドがブリュンスタッド城で眠っている間の歴史の教育はアテネが行っている。
膨大な量の歴史の勉強も大切な事の一つである。
「さっちん。まだ、半分も進んでないわよ」
歴史の勉強は半分も進んでないらしい。
「外に出るまで後5年しかないんだからね」
後5年で外に出る時間が来るようだ。
「そんな事言われても……」
「無駄口叩いている時間は無いわよ。無駄口叩いている時間があるなら勉強しなさい!!」
「はぁい」
さつきの真祖としての教育が続く。
午前中は、アテネが歴史の教育を。
午後は、全員で戦闘スキルを叩き込む日々が続いている。
冬木教会
「さあ貴方達、お昼にしますよ」
カレンがギルガメッシュとランサーに言う。
昼食は、言わずと知れた紅洲宴歳館・泰山の麻婆豆腐だ。
「よくも毎日飽きないよな」
其の一言がいけなかった。
「何か文句でもあるのですか？ 食べさせてもらっている分際で……。少しは働いて来て私に全額納めなさい」
働いて得た金を全額納めろというカレン。
「其れからランサー。貴方は特別にお代わりを許します」
「ざまあ見ろ!! 槍!!」
ランサーの不幸を喜ぶギルガメッシュ。
「ギルガメッシュ!! 何時から人の不幸を喜ぶようになったのですか？」
カレンに反論できないギルガメッシュ。
「人の不幸を喜ぶ貴方には紅洲宴歳館・泰山の超激辛100倍の麻婆豆腐を食べて頂きましょうか」
ギルガメッシュから玉のような汗があふれ出る。
まだ、食していないのにだ。
「そんな物食えるか!!」
そう言って脱走を図るギルガメッシュ。
「何処へ行こうというのですか？ まだ、昼食は終わっていませんわ」
カレンは、聖骸布でギルガメッシュを絡め捕まえた。
「貴方には、私が直接食べさせてあげます」
そう言って、ギルガメッシュの口に熱々の激辛麻婆豆腐を流し込む。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
あまりの熱さと辛さに悲鳴を上げる。
「英雄王ともあろう者がこの程度の熱さと辛さで根を上げるのですか？」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」
有無を言わさずギルガメッシュの口に激熱、激辛の麻婆豆腐を流し込み続けるカレン。
「其の程度で参ってしまったのですか？ まだ、半分も無くなっていませんわよ」
カレンが悪魔に見えるギルガメッシュ。
昼食後、ギルガメッシュは死んだ。
テーブルにうつ伏せになりピクリとも動かない。
ランサーも同様に死んでいた。
衛宮邸
「シェロ!! 何度言ったら覚えるのですか!?」
そう言ってガンドを士郎に撃つ。
当然防ぐ事が出来ずに食らう士郎。
「お兄ちゃんには罰が必要だね」
「おいっ。お前等、俺で遊んでないか？」
「遊んでませんわ」
「どうも、俺でストレス発散させてないか？」
「「「ギクッ!!」」」
如何やら図星だったようだ。
「ヤハリそうなのか？」
「ルヴィアのせいでストレスが溜まっていたから」
言い訳を言う遠坂。
「私のせいだというのですか!? トオサカ!!」
遠坂とルヴィアは言い争いを始めた。
終いにはガンドの打ち合いに発展した。
「姉さん、先輩の勉強は如何ですか？」
様子を見に来た桜の様子が一変する。
「姉さん。何をやっているのですか!?」
「さ、桜……」
黒桜に震えがる遠坂。
「ちゃんと指導しているかと思ったら、先輩でストレス発散ですか……」
黒桜の魔力が膨れ上がる。
「もう姉さんなんか知りません!! 其れから先輩でストレス発散させた件、覚悟は良いですね」
黒桜の魔力が益々大きくなる。
其の魔力にルヴィアも恐怖を感じる。
そして衛宮邸は、跡形も無く消し飛んだ。
元に戻った桜が見たものは跡形も無くなった衛宮邸の跡地だった。
「先輩のお家が……」
「あんたがやったのよ桜」
「私がですか？」
「あんたがぶち切れてこうなったのよ」
「あわわわ」
慌てふためく桜。
「今夜、何処で寝ればいいんだ!?」
家の主、衛宮士郎は呆然としていた。
嘗ての衛宮邸の面影は何処にも無い。
「之は蔵で寝るしかないな……」
「無理ですよシロウ。蔵も道場も全壊しています」
衛宮邸は全ての建物が全壊していた。
「士郎、お腹すいたわ。ご飯食べさせて」
駄目人間がやってきた。
「藤ねえ。今日は、作れないんだよ」
「なんでよ」
「見て判らないのかよ。家が跡形も無く消し飛んだんだよ」
「如何したのよ士郎。家は何処へ行ったのよ」
やっと気づく藤ねえ。
「士郎、夜は如何するのよ」
「野宿でもするから良いよ」
「しょうがないわね。士郎、私の家に寝なさい」
「お姉ちゃんは認めません!! 遠坂さんの家に泊めてもらって夜はイヤラシイことをするんでしょ」
疑って掛かる藤ねえ。
「オーギュスト!! シェロの家の再建の手配を直ぐにして」
『畏まりました』
ルヴィアの電話越しに執事の声が返ってきた。
「シェロの家は、この私が立派に立て直して差し上げますわ」
士郎の家は、無事元通りになるのだろうか……。
王族の庭園
「之で、歴史の講義はお終い!! 次は、帝王学にいくわよ」
「まだ、あるんですか？」
「何言っているの？ 本番は之から教える帝王学よ」
歴史の講義は前座に過ぎないというアテネ。
「帝王学って何ですか？」
知らないさつきが質問をする。
「帝王学と言うのはね古い王家や貴族が代々受け継ぐ学問の事よ。さっちんに教えるのは真祖の王族に受け継がれた帝王学よ。アルクちゃんは、まともな教育を受けられなかったようだけど……」
「言ってくれるわねアテネ」
「だって本当なんでしょ」
「確かに私は、まともな教育を受けていないわ。落ちた魔王を葬る事しか……」
「だから、ロアに騙されて血を吸っちゃったんでしょ」
「あのう。時間が無くなっちゃいますよ」
「さっちんは黙ってて!!」
「はっいっ」
「アルクちゃんもさっちゃんに同じ思いをさせるつもり!?」
「私と同じ過ちをさせるわけ無いじゃない」
「じゃあ、帝王学の講義を始めましょう」
真祖たちによる帝王学の講義が始まった。
さつきは、覚える事が出来るのだろうか？
冬木市郊外
「さぁ、喰らえ!!」
冬木市の郊外で惨劇の幕があがった。
「人殺しだぁ!!」
「ば、化け物だ!!」
「逃がさん!!」
ネオ・カオスの使い魔の餌食になる人々。
「聖杯の在り処を探って来い!!」
ネオ・カオスの体から黒い鳥が放たれる。
黒い鳥は聖杯の在り処を捜しに行った。
「聖杯を手に入れるには力を蓄えねばならぬ。サーヴァントを喰らうには力が足りぬ」
ネオ・カオスは、ある魔力に気づいた。
「あの魔力、我が糧としてくれよう……」
衛宮邸
「シロウ、気おつけてください!!」
警戒を促すセイバー。
「如何したんだ!?」
「何者かが近づいてきます」
「何者かって、誰なんだ？」
「ほう。上質な魔力が集まっておる」
「何時の間に……」
「其の魔力、我が糧として頂く」
「吸血鬼……」
「では、こいつが例の吸血鬼ですか？」
「間違いないわね。こいつがネオ・カオスで間違いないみたいね」
「こんな極東の地にまで我の名が知れ渡っていようとはな……」
「こんな時に襲ってくるなんて最悪」
「我にとっては幸運だ!! 何しろ上質な魔力が手に入るのだからな」
ネオ・カオスは今にも喰らおうとする。
「王の財宝」
無数の宝具がネオ・カオスに突き刺さり切り裂く。
「無駄だ!! 我は999S。幾ら切り裂こうと意味が無い」
「ほざくな雑種!! 雑種なら雑種らしく大人しく我に跪け!!」
「よう。娘ちゃんたち助けに来てやったぜ」
ギルガメッシュに続いてランサーも参戦してきた。
「槍!! お前の出る幕などない。我が全て片付けてやる」
「幾ら最古の英雄王でも我を倒す事は出来ん」
「やってみるか？ 雑種!!」
「突き穿つ死翔の槍!!」
ランサーは魔槍ゲイボルクをネオ・カオスに放つ。
ゲイボルクはネオ・カオスの体を吹き飛ばす。
上半身を吹き飛ばされたネオ・カオスが立っている。
何事も無かったかのように復活するネオ・カオス。
「だから無駄だと言っただろう。我は体を幾ら砕かれようが復活する」
「ゲイボルクを喰らったのに生きているだと」
確かにゲイボルクはネオ・カオスの心臓を貫いた。
「シロウ、今度は私が行きます」
「待て、セイバー!!」
「如何して止めるのですか？」
「あいつは、どうやっても倒せない。今は、この場から逃げる事を考えるんだ!!」
「我が簡単に逃がすと思うか!?」
ネオ・カオスは混沌を放って逃げ道をふさぐ。
「ネロ・カオスは倒されはず……」
「ほう。ネロ・カオスの事を知っているようだな」
「三咲町で倒された死徒二十七祖の十位でしょ」
「其処の小娘!! お前、聖杯だな!?」
イリヤが聖杯だと見抜く。
「そっちの娘も……」
「イリヤ、桜逃げなさい!!」
ズブッ!!
何かを貫く音がする。
「えっ……」
遠坂は自分の体を見た。
目に入ったのは獣の角に貫かれた部分から流れる血だった。
「姉さん!!」
「凛!!」
「遠坂!!」
「良いざまですわ」
一人だけ喜ぶルヴィア。
「何で庇ったりしたのよ凛」
「凛。今助けます」
そう言ってセイバーは、獣の角を切った。
獣の角から開放された凛は前のめりに倒れた。
地面に倒れる前にセイバーが受け止め地面に座らせた。
地面に座らせると凛の体に刺さっている獣の角を引きに抜いた。
「我が二十七祖に成るのに邪魔だ!! 祖の小娘みたいに痛い目にあいたくなかったら立ち去れ小僧」
士郎が目障りだというネオ・カオス。
「アイツが……逃がしてくる分けが……ないでしょ」
激痛に顔を歪めて言う遠坂。
「凛。それ以上喋らないでください」
凛の腹部からは血が流れ続ける。
「士郎、私が……死んでも……後を……追うんじゃ……ないわよ」
遠坂は荒い息で言う。
「遠坂、早く病院へ」
「あ、アイツが、行かせてくれる分けが、ないわよ。それに……」
苦痛に顔がゆがむ。
「アンタの家……ないじゃない」
「死ぬんじゃない。遠坂!!」
「心配せずとも仲良く喰らってやる。さぁ喰らえ!!」
「くっ、遠坂!!」
だが何時までたっても喰われた感じがしない。
恐る恐る目を開けると真祖たちが居た。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーの時間やで」
「なんか、本編では遠坂の小娘が危ない状態になっておるようやな」
「それにしてもネオ・カオス、すごいやつやな。ギルガメッシュとランサーの攻撃を喰ろうたのにピンピンシとるわ」
「流石は、二十七祖に入ろうとしとるだけあるわ。しかも聖杯を見抜いとったし……」
「サーバントを連れとらん小娘達はどないするんやろうか？ 令呪を使って呼ぶんやろうか？」
「ワイも大暴れしたいわ」
「アイツを消し炭にするの間違いじゃないのですか？」
「ス、スッピー!!」
「どうもお久しぶりです」
「どっからでも掛かってこんか!!」
「貴方は、まともに司会も出来ないのですか？」
「何おう。やるか!?」
場外乱闘のゴングがなる。
「相手になれというのでしたらなりますよ」
「じゃあ勝負や」
「勝負はいいですが、時間切れですよ」
「何でや、如何してや!!」
叫ぶケルベロス。
「もう終いの時間や。次回も楽しみにしていてな!!」
「覚えとれよスッピー!!」
「何か言いましたか？」
相当ピンチな状況だな。
美姫 「よね。本当にもう駄目かと思ったけれど、そこに真祖たちが」
危機一髪という所か。
美姫 「そういえば、もう一人のさくらは何処に？」
何処だろう？ それよりも、ネオ・カオスは力を蓄え終えたのかな。
美姫 「元々、聖杯を手に入れるために力を欲してたものね」
力を蓄えるつもりで魔力のある所を襲ったら聖杯まであったという状況なのだろうか。
美姫 「どっちなのかしらね」
疑問をちょっと口にしつつ、それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」