第二十九話「召還!!」






 
 ロアが倒された翌日、倫敦への飛行機に遠坂凛とルヴィアが乗っていた。
 その席は、アルトルージュの隣だったのだ。
 倫敦までの時間は二人にとっては地獄以外の何者でもない。
 少しでも喧嘩をしたら殺すと脅されているのだ。
「もし喧嘩したら、そなた等の血を吸ってわらわの死徒にするぞ」
 アルトルージュは脅す。


 時計塔
「あの二人はちゃんと指令を果たしたのですか?」
 エルメロイU世がゼルレッチに聞く。
「何をしていたと思う?」
「また、喧嘩ですか?」
「ロアと戦わず三咲町で大喧嘩しておった」
「帰ってきたら懲罰房にブチ込みますか?」
「いいや。もっと面白いことを思いついてな……」
 面白いことを思いついたと言うゼルレッチ。
「大勢の生徒の前で大恥をかかせてやろうと思う」
「大恥をかかせるのも良いですが、生徒たちが自信を無くすのでは?」
「その点は、心配要らんよ。馬鹿二人以外には真実をはなさんでよい。見学者が来るとだけ伝えれば……」
「生徒たちにはその様に伝えておきます」
 ゼルレッチの陰謀が時計塔を恐怖に陥れることを誰も知らない。
「さて、クロウの生まれ変わりに連絡を取るとするかの……」
 ゼルレッチはエリオルに連絡を取る。
「もそもし」
『そろそろ、電話が掛かってくるころだと思っていましたよ』
「まるで、分かっていたようだな……」
『はい』
「ワシの考えは分かってるのだろ?」
『今度、さくらさんを時計塔に招いて何かをするつもりでしょう』
「お主には隠し事は出来ぬな……」
『では、私も混ぜてもらいましょう』
「お主は何を企んでおる?」
『貴方が企んでいるものを更に発展させた物ですよ』
「どういうものだ?」
『さくらさんだけではなく、真祖も加えたらどうです? 面白いことになりますよ』
 面白いことになると言うエリオル。
「ほう、アルクェイド達をか……面白そうだな」
『どうしますか? なんなら、私もお邪魔しますよ』
「それよりも馬鹿弟子候補が問題を起こして困っておる。何かいい案はないか?」
『一寸、ある人を探していまして……』
「ある人? 誰じゃ?」
『『時の魔女』をご存知ですか?』
「また、随分古い二つ名が出てきたもんだ」
『その様子だとご存知なのですね』
「直接会ったことはないが、名は噂で知っておる」
『その魔女を探して欲しいのです』
「探せと言われても何処に居るかは分からんぞ」
『私も大体の位置までしか特定できていません』
「何処じゃな?」
『中央アフリカに居るらしいです』
「中央アフリカか……よし。あの二人の罰は『時の魔女』の捜索としよう」
『この件は秘密にしておいてください。明らかになれば協会がひっくり返るかも知れません』
「わかった。秘密にしておこう」
『彼には極楽地獄の生活を堪能してもらいましょう……』
「まだ、何か企んでおるのか?」
『お分かりになります? これから、あの町は騒がしくなりますから』
「あの町か……」
『はい。あの町です』
 あの町と言うエリオル。
 あの町とは『三咲町』のことである。
「あの町でまた何かが起こるのか?」
『確かに起こります。彼の周りは騒ぎが尽きませんから』
「あの町とやらにワシも行ってみようかの?」
『どうぞ、ご自由に……』
「行く前に仕事を片付けないといかんな」
 仕事を片付けないといけないと言うゼルレッチ。
「エリオルよ、また話そう」



 それから数時間後、ゼルレッチの前に遠坂とルヴィアは立たされていた。
「さて、何故呼ばれたか分かるか?」
 ゼルレッチが理由を問う。
「呼ばれた本人が一番分かっているだろう……?」
「それは、指令をせずに喧嘩をしていたからですか?」
「分かっているではないか!!」
「でも、それは遠坂凛が……」 
「言い訳をするな!! 喧嘩両成敗じゃ」
「この際、両者を追放されてはどうですか?」
 エルメロイU世が追放を進言する。
「いや、主席候補を二人同時に失うのは痛い」
「このまま在籍させておけば、また問題を起こします」
「とりあえず二人には時計塔の掃除をしてもらう」
「生易しすぎです」
「聞こえなかったのか!?」
「はっはい!!」
「わかったら、早くはじめんかぁ!!」
 怒鳴りつけるゼルレッチ。
 ゼルレッチに起こられて掃除を始めるルヴィアと凛。




 友枝町
「さっちん。学校は如何するの?」
 アルクェイドがさつきに聞く。
「ロアさんの件で行方不明って事になってるから如何しよう……」
「さっちん、真祖に成ったんだから学校に行かなくてもいいじゃん」
「でも、志貴くん会えなくなるよ」
「じゃあ、志貴を攫えばいいじゃん」
 志貴を攫えと言うアルクェイド。
「復学したとしても留年かも知れませんわよ」
「留、留年……」
 さつきの肩に留年の二文字が重くのしかかる。
「情報操作やら色々しなくてはいけないかもしれませんわ」
「でも、家に帰ったらどう説明しようか?」
 さつきが家に帰るにも問題が山積みなのである。
「家に帰る必要ないじゃん。ブリュンスタッド城から通えば……」
「具現化させる場所があるのかなぁ?」
 具現化させる場所は殆どないのだ。
 在ったとしても大騒ぎになるのは必須である。
「それ以前に期末テストは大丈夫なんですか?」
「うぅぅぅっ。期末テスト……」
「その前に復学手続きですわね」
 さつきには復学手続きが待っている。
 その前に家に帰れば警察からの事情聴取確実なのだ。
 未成年の上、失踪してたから補導されかねない。
 余程の金持ちに頼んでもみ消して貰うしかない。
 三咲町で圧力を掛けられるのは遠野家だけなのだ。



 そして倫敦では……。
「例の二人、魔導元帥から罰を喰らったらしいぞ」
 早くも噂が時計塔内を駆け巡っていた。
「どんなことをやらかしたんだ!?」
「それが……」
「えぇっ!? それじゃ、あいつ等……」
「声が大きい!! 聞こえるって……」
「聞こえていますわよ」
「ほら見ろ!! 言わんこっちゃない」
「此処は逃げるが勝ちだな」
 そう言って逃げる学生たち。
「逃げるなっ!!」
 掃除道具を学生に投げつける凛。 
 しかし掃除道具が学生に当たる事はなかった。
 その代わり廊下に飾ってある備品に当たり壊した。
 その一件でまたゼルレッチに絞られたのは言うまでもない。


 その頃、アルトルージュの城では……。
「わらわが留守の間に変わった事はなかったか?」
 アルトルージュは、城に帰っていた。
「変わった事はありません。姫様!!」
「白翼に動きは?」
「ありませんでした。クロウの生まれ変わりに削られた勢力の建て直しに費やしていたようです」
「暫くは安心してくつろげるわね」
「それで姫様、日本での用事は終わったのですか?」
「あぁ。『無限転生者ロア』は、消滅した。実の娘と『殺人貴』によって……」
「『殺人貴』って誰です?」
「アルクェイドが惚れた男だ」
「是非あって見たいですな」
 是非あって見たいと言うリッゾ。
「姫様、蛇の娘は、どうなったのです」
「蛇の娘は真祖に成った」
「姫様、死徒が真祖には成れないでしょう?」
「だが、真祖に成っておった。さくらの力でな……」
「さくらちゃん、ついに死徒を真祖にする術まで編み出したんだね」
「今度、わらわの城に招くからな……」
「では、今から準備に取り掛かりましょうか?」
「準備に取り掛かるのは12月20日過ぎでよい」
「ですが、直前に準備をすると白翼に勘違いをさせますぞ」
「仕方ない……準備を始めるがよい」
 準備を命じるアルトルージュ。
「パーティーでもするのですか?」
「身内のささやかな宴じゃ」
「身内って誰を呼ぶのです?」
「呼ぶのは、13人じゃ」
「13人ですか? 若しかしてアルクェイドもお呼びになる御つもりですか?」
「身内の宴に呼ばぬわけにもいかぬであろう。新しいブリュンスタッドを祝う宴でもあるのだらな……」
「ブリュンスタッドは、姫様とアルクェイドと便宜上名乗っているアテネ殿だけでは?」
「リッゾ、そのことは当日、話す」



 12月15日。
 午後8時50分。
 三咲町繁華街。
「ここが、三咲町か……」
 謎の男が三咲町にやって来た。
「何故、人気がない!!」
 彼は知らない。
 まだ猟奇殺人事件の影響が色濃く残っているということを……。
「せめて、人が居れば血を吸ってやれるのに……」
 この男は、吸血鬼のようだ。
「まだ居たんだ」
「誰だ!?」
「アルクェイド・ブリュンスタッド」
 アルクェイドの名を聞いた吸血鬼が震えだす。
「アルクェイドが何でいる!!」
「貴方、この街に来たからには覚悟はいい?」
「血を吸うのは俺の勝手だ!! 貴様に止める権利はない。俺はこの町を根城にするイワノフ・ハミルトンだ」
「貴方の名前なんかに興味はないわ」
 名前に興味ないと言うアルクェイド。
「消えちゃえ!!」
 そう言うと爪でイワノフを引き裂いた。
「そ、そんなぁ……俺は……」
 イワノフは、何も出来ないままアルクェイドによって処刑された。
「これで何人目だっけ? 次から次へと入り込んでくる死徒が耐えないんだもん」
 アルクェイドはロア消滅後、既に何人もの死徒を葬っているようだ。
 そしてイワノフもアルクェイドの爪にかかった一人になった。



 その頃,さつきは……。
 復学目指し勉強していた。
「何で、復学試験を受けないといけないの? 好きで失踪してた訳じゃないのに……」
 さつきは、復学の為の勉強をしている。
「それに、『冬休みに学校へ来い!!』 だなんて」
「でも、2日間で済んだじゃん」 
 どう言う手を使ったのか2日間の補修で形がついた様だ。
「よかったと言えばいいのかな?」
「私たちが裏工作しなかったらパーティーに参加できない所だったんだよ」
「パーティーってなんですか?」
「アルトちゃんが開く身内のパーティーよ」
「アルトルージュさんが?」
「そう。アルトちゃんよ」
「身内のパティーって何時ですか?」
「招待状には12月24〜25日に開くって書いてあったわよ」
「一週間切っているじゃないですか!?」
「さっちんも、時間作って旅行の用意をしておいてね」
「はっはい!!」
「パーティーの後は、倫敦観光もするから」
「倫敦は何処へ行くのですか」
「それは、行ってからのお楽しみ♪」
 お楽しみと言うアテネ。




 12月23日。
 午後7時30分。
 大道寺邸。
「もうすぐ、さくらちゃんの転送魔術でアルトルージュさんの城に行きますがいいですか?」
 知世が聞く。
「私たちはいいよ」
 アテネたちは忘れ物がないようだ。
「さつきさんは?」
「わ、私もありません」
「では、さくらちゃん、お願いしますわ」
「さくら、黒の姫さんの城の位置は覚えているやろ?」
「うん」
「私、アイツの城には行きたくない!!」
 アルトルージュの城に行きたくないと言うアルクェイド!!
「さくら、さっさと転移してしまえ」
「うん……。我等をアルトルージュの城に誘え」
 その一言で転移魔術を発動させ転移して行った。



 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーの時間やで」
「今回から倫敦篇スタートと言うことでこのコーナーをパワーアップさせるで」
「倫敦篇最初のゲストは……」
 ドラムロールが始まる。
「コイツや!!」
 スポットライトがゲストに当たる。
 倫敦篇最初のゲストは……。
「わらわじゃ」
「黒の姫君アルトルージュや」
「その言い方、気に食わぬ!!」
「まぁ、硬いこと言うなや!! この倫敦篇は、幻の月姫2もかねているんや」
「そう言うのなら仕方あるまい……リッゾやフィナは何時呼ぶのだ!?」 
「次回以降や!! 黒姫さんもこのコナーの司会やらへん?」
「わらわに司会をやれと申すか?」
「したくなければしたくないでええんで!?」
「われわにヌイグルミと一緒に話せと言うのか?」
「もういっぺん言うてみい!! 誰がヌイグルミや!!」
「そなたではないのか?」
「ワイは、封印の獣ケルベロスや!!」
「それはどうでも良い。次回、わらわがゲストを呼べばよいのであろう」
「頼むで、姫さん」
「わかった。呼んでやろう」
「今回は、この辺でお開きや!!」
「次回は、アルトルージュがゲストを呼ぶで」
「必ず読むが良い」
「ほなな」



凛たちに与えられた罰って、何なんだろう。
美姫 「人探しは後でやるみたいだし、掃除もとりあえずの罰だろうしね」
何かを企んでいるみたいだったけれどな。
美姫 「もしくは、罰掃除している所を見られるというのが罰ってことなのかも」
どうなのかな。しかし、無事に事件が終わったかと思ったんだが。
美姫 「まだ三咲町で何かあるみたいね」
何が起こるのかな。
美姫 「それじゃあ、この辺で」
ではでは。



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