第9話「5人目の魔法使いなの!?」






 
 なのはとフェイトは、お互いにジュエルシードから距離をとる。
 なのはは、地面に着地しフェイトは飛行しながらバルディッシュを見た。
 バルディッシュの宝石部分には無数のひびが入り明滅していた。
「大丈夫!? 戻ってバルディッシュ!!」
≪Yes sir.≫
 バルディッシュが待機状態に戻る。
 すぐさまフェイトはジュエルシードの確保に向かう。
 フェイトが両手でジュエルシードを掴む。
 掴んだ両手から青い光が漏れ出る。
「止まれ!!」
 漏れ出る光は止まらない。
 グローブが耐え切れずに破れフェイトの手から血しぶきが飛ぶ。
「止まれ」
 止まれと念じ続けるフェイト。
 フェイトに答えるかのように暴走が止まるジュエルシード。
 ジュエルシードの暴走を止めたフェイトが深呼吸する。
 ゆっくり立ち上がるがフラフラする。
「フェイト!!」
 ふらつくフェイトを心配するアルフ。
 アルフは、狼モードから人型に変わってフェイトに駆け寄る。
 フェイトが意識を失って倒れる。
 倒れるフェイトを抱きかかえるとアルフがなのはを睨んだ。 
 フェイトを抱きかかえたアルフは何も言わずに立ち去った。
 なのはとユーノは見ている事しか出来ない。



 同日 PM9:15 海鳴市 住宅街 高町家
 赤い宝石状態のレイジングハートにはひびが入り明滅している。
(レイジングハートは、可也の大出力にも耐えうるデバイスなのに、其れを一撃で此処まで破損させるなんて……あの子となのはの魔力の衝突……それじゃあ説明がつかない)
 ユーノが考え込む。
(あれはジュエルシードの……)
 ドアがノックされる音がする。
 なのはが部屋に入ってくる。
「ユーノくん。レイジングハート大丈夫!?」
 なのはが心配そうに聞く。
「うん。可也破損は大きいけど……」
 なのはが椅子に座る。
「きっと大丈夫。今、自動修復機能をフル稼働させているから、明日には回復すると思う」
「うん」
 なのはは心配そうにレイジングハートを見つめる。
「なのはは、大丈夫!?」
 なのはを心配するユーノ。
「うん。レイジングハートが守ってくれたから……ごめんねレイジングハート!!」
 なのはは、窓の外を見つめる。
 何処にいるかわからないフェイトの事を考えながら……。


 同日 同時刻 遠見市 住宅街
 フェイトの手を治療するアルフ。
「っつ」
 一瞬痛がるフェイト。
 傷が痛んだようだ。
「ご、ごめんよフェイト。一寸我慢して」
「平気だよ。ありがとうアルフ。明日は、母さんに報告に戻らないといけないから、速く治さないとね……傷だらけで帰ったら、きっと心配させちゃうから」
「心配、するかぁ!? あの人が……」
「かあさんは、少し不器用なだけだよ」
 母が不器用だと言うフェイト。
「わたしにはちゃんと判っている」
「報告だけなら私が行ってこれればいいのだけど」
「母さん。アルフの言う事、あまり聞いてくれないものね」
 フェイトの母親は、アルフの言う事を聞かないらしい。
「アルフは、こんなに優しくていい子なのに」
「まあぁ。明日は大丈夫さ」
 アルフはテレならが言う。
「短期間でロストロギア、ジュエルシードを4つもゲットしたんだし、褒められこそすれ叱られるようなことはまずないものね」
「うん。そうだね」


 同日 PM9:30 海鳴市 高級住宅地 月村邸
「やっぱりなのはちゃんと同じ杖が必要よね。こっちにもって来た荷物の中にあればいいけど……」
 そう言って、こっちの世界にもって来た荷物を探す。
「之でもない!!」
 巨大なリュックの中を引っ掻き回す。
「之かな!?」
 其れらしい物を手に取るさつき。
「何で二つあるのだろう?」
 謎の物体は二つあった。
「月のペンダントの方は、すずかちゃん向きかな」
 さつきは、謎の物体を手に寝室を出る。

「さつき様、如何なさったのですか?」
 ノエルがさつきに聞く。
「すずかちゃんは?」
「すずかお嬢様でしたら湯浴みにいっておいでです」
「すずかちゃんがお風呂から上がった私の部屋にきてっと伝えて置いてください」
「畏まりました。すずかお嬢様に伝えておきます」

 すずかがお風呂から上がって数分後……
「さつきさん。わたしに用があるってノエルが言っていたけど」
「すずかちゃん。なのはちゃんを助ける事ができる力が欲しくない!?」
 なのはの助けが出来る力がいるかと聞いた。
「なのはちゃんの手助けが出来る力が欲しいです」
 即決するすずか。
 すずかの答えは決まっていたようだ。
「このペンダントはあげる。其れでなのはちゃんの手助けが出来るはずだよ」
 すずかに三日月のペンダントを手渡すさつき。
「之は?」
「其れで、なのはちゃんと同じ土俵に上がれるよ」
「わたしが之を受け取ったら、さつきさんは……」
「わたしのは、ちゃんとあるから……」
 そう言って日本刀のミニチュアみたいな物を見せる。
「ゴールデンバウム!!」
≪Ja.≫
 日本刀のミニチュアが本物の日本刀に変わる。
「其れって、本物ですよね」
「本物みたいだけど違うよ。之は、異世界の技術で作られた物だから」
「私もやってみていいですか?」
「実際にやってみてもいいよ。まだ名前付けてないから、付けてあげて」
 すずかは、付ける名前を考える。
「じゃあ、あなたの名前はブリュンヒルト」
「次は、防護服のイメージをして。自分の身を守る衣服の姿を」
 すずかは、バリアジャケットをイメージする。
「バリアジャケットのイメージは出来た!?」
「は、はい」
「起動してもいいよ」
「ブリュンヒルト!!」
≪stand by ready. set up.≫
 西洋の王侯貴族が着るような服にマントのバリアジャケットを見につけたすずか。
 三日月だったペンダントは、三日月のオブジェに枝がつた物になっていた。
 柄の部分はすずかの身長よりも長い。
「之が、私の杖とバリアジャケット?」
 自分の身なりを確認するすずか。
「之で、なのはちゃんの手助けが出来る」
「同じ土俵に上がるには、飛び方を覚えないといけないよ」
 飛行魔法の練習が必要と言うさつき。
「私、空が飛べるんですか?」
「今日は遅いから明日飛び方を教えてあげるね。後、吸血鬼の力の使い方も……」
 吸血鬼の力の使い方も教えると言う。
「此間、ドッチボールで女の子のお腹にボールを当てて吐かせちゃったんでしょ」
 さつきはドッチボールの一件を知っているようだ。
「うん。体育のあともお腹が痛いって苦しんでいました」
 お腹にボールが当たった女の子は体育の後も苦しんでいたらしい。
「其れよりも何で知っているのですか?」
「貴女に血を飲ませた責任もあるから使い魔で様子を見させてもらっていたから」
「今日、なのはちゃんと喧嘩した事も知っているんですよね」
「すずかちゃんが秘密を明かした事もね」
 使い魔を通じてすべて見ていたさつき。
「秘密を話した後、如何だった!?」
「アリサちゃんに嫌われると思ったけど受け入れてくれて嬉しかった」
「すずかちゃんはどっちで戦いたい!? 接近戦? 其れとも中長距離? 其れによって教え方も変わってくるんだけど」
 すずかにどんな戦い方をしたいか聞くさつき。
「両方と言うのはいけないんですか?」
「いけないという事はないよ」
「吸血鬼の力を使えば接近戦も出来るですよね」
「吸血鬼の力を使って接近戦をすれば、幾ら非殺傷設定でも相手を殺しかねないんだよ」
「かまいません。其れでなのはちゃんの助けになるなら何でも背負います」
「明日から戦い方を叩き込んであげるから血を吐く覚悟はしていてね」
「はい」


 4月27日 AM6:15 高町家
『(なのは!? 如何したの? こんな朝早く)』
「(一寸、目が覚めちゃったから)」
 念話で話すなのはとユーノ。
「(それでね、ユーノくん。私考えたんだけど)」
『(ん?)』
「(わたし、やっぱりあの子のこと、フェイトちゃんのことが気になるの)」
『(気になる?)』
「すごく強くて、冷たい感じもするのに……だけど、綺麗で優しい目をしてて、なのに、なんだかすごく悲しそうなの」
『(………………)』
「(きっと理由があると思うんだ!! ジュエルシードを集めている理由……だからわたし、あの子と話をしたい。だから、その為に……)」


 同日 AM8:17 遠見市 住宅街 マンション屋上
「お土産は、コレでよし」
「甘いお菓子か……こんな物、あの人喜ぶのかね?」
 フェイトからお菓子が入った箱を受け取るアルフ。
「わかんないけど、こういうのは気持ちだから……」
「ふ〜ん」
 フェイトが次元転移の呪文を唱え始める。
 それは、長い数字だった。
「開け、誘いの扉、時の庭園、テスタロッサの主の元へ」
 転移魔法で何処かへ転移していくフェイトとアルフ。

 その気配をなのはとすずかとさつきが気づいて居る事を知らない。


 同日 同時刻 次元空間内
 次元空間内を一隻の次元航行艦が航行している。


 時空管理局次元航行艦船『アースラ』
「皆、どう!? 今回の旅は順調?」
 緑の髪の女性が聞く。
「はい。現在、第三船速にて航行中です。目標次元には今からおよそ160ベクタ後の到着の予定です」
「前回の小規模次元震以来とくに目だった動きはないようですが、二組の捜索者が再度衝突する可能性が高いですね」
「そう……」
「失礼します。リンディ艦長」
 そう言ってティーカップを出す。
「ありがとうエイミィ」
 リンディが茶を飲む。
「小規模とはいえ次元震の発生は……ちょっと厄介だものね。危なくなったら急いで現に向かって、ね、クロノ」
「大丈夫。わかっていますよ艦長。ぼくは、その為に居るんですから……」


 高次空間内『時の庭園』
 フェイトが打たれる悲鳴が聞こえる。
「たったの4つ……」
 冷たい目で言う女。
 ファイトが鎖で吊るられている。
 フェイトの身体には鞭で打たれたような傷が無数にある。
「これは、あまりにもひどいわ」
「ごめんなさい、かあさん」
 なぜか謝るフェイト。
「……フェイト……貴女は……わたしの娘……大魔導師プレシア・テスタロッサの一人娘。不可能なことなどあってはダメ。どんな、どんなことがあっても成し遂げなければならない」
「はいっ」
「こんなに待たせておいて、あがってきた成果がコレだけでは、かあさんは笑顔であなたを迎えるわけにはいかないの。わかるわねフェイト」
「はい。わかります」
「だからよ。だから、覚えて欲しいの。二度と母さんを失望させないように」
 そう言ってプレシアは杖を鞭に変えフェイトを打ち始めた。



 4月27日 PM5:05 海鳴市 住宅街 
「レイジングハート、直ったんだね? よかったぁ?」
≪Condition green.≫
「……また、一緒にがんばってくれる?」
≪All right, my master!≫
 なのはの問いに答えるレイジングハート。
「ありがとう……」


 4月27日 PM6:24 海鳴市 海鳴臨海公園
 海鳴臨海公園にあったジュエルシードが発動した。
 ジュエルシードは木に取り込まれ取り込んだ木が巨大化する。
「封時結界、展開!!」
 結界を張るユーノ。
 ジュエルシードを取り込んだ木がお化けみたいになる。
 お化けみたいな木にレイジングハートを向けるなのは。
 お化けみたいな木にフェイトが攻撃をする。
「うぉう。生意気にバリアまで張るのかい」
「今までのより強いね。それにあの子もいる」
 化け物の根が地面から現れる。
「ユーノくん、逃げて!!」
 茂みに逃げるユーノ。
≪Flier fin.≫
 飛行魔法で飛ぶなのは。
「飛んで、レイジングハート。もっと高く!!」
≪All,right!≫
 更に高く飛び上がるなのは。
「アークセイバー……いくよ、バルディッシュ」
≪Arc saber.≫
≪Shooting mode.≫
「いくよ、レイジングハート!」
 なのはより先に攻撃をするフェイト。
「撃ち抜いて……」
 レイジングハートの先に魔力が集まる。
「ディバイン」
≪Buster!≫
 一気に魔力が撃ちだされる。
「貫け轟雷!」
≪Thunder smasher!≫
 真上からの攻撃と正面からの攻撃で木の化け物からジュエルシードが出てくる。
≪Sealing mode? Set up!≫
≪Sealing form, set up≫
 レイジングハートとバルディッシュが封印モードになる。
「ジュエルシード、シリアルZ!!」
「封印!!」
 同時に封印しようとする。
「早く封印しないと私たちが封印するよ」
 突如掛けられる声。
「何でさつきさんが此処に!? それにすずかちゃんまで」
 その場に現れたのはさつきとすずかだった。
「ジュエルシードには衝撃を与えてはいけないみたいだ」
「うん。夕べみたいなことになったら私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも可愛そうだね」
「だけど譲れないから」
≪Device form.≫
「わたしは……フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」  
≪Device mode.≫
「私が勝ったら……タダの甘ったれた子じゃないってわかったら……お話、聞いてくれる?」
 なのはとフェイトのバトルが始まろうとした時、ソイツは現れた。  
「スットプだ!!」
 介入してきたそいつの手は二人のある部分を掴んでいた。
「此処での戦闘は危険すぎる」
 ソイツは、なのはとフェイトのある部分を掴んだまま話を続ける。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!」
 クロノは、なのはとフェイトの胸を掴んだまま話す。
「詳しい事情を聞かせてもらおうか?」


 次回予告

 なのは「突如介入してきた5人目の魔法使いクロノくん」

 さつき「女の子の胸を触った代償は身体で払って貰わないと」

 すずか「海に沈めないと」

 ユーノ「海鳴の海上上空でリンチを受ける執務官」

 ユーノ「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第10話『クロノ・ハラオウン、海鳴の地で死すなの?』」


五人目の魔導士よりもすずかの参戦の方が気にかかるな。
美姫 「そうよね。まさか、すずかまで加わってくるなんてね」
いつになるのかはまだ分からないけれどな。
美姫 「どうなるのかしらね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る