第102話「流血の月村邸」






 月村城の作戦室では、不平派の対策が話し合われていた。
 その場になのは達もいた。
「私とグリュンヒルデ、カーテローゼが集めた情報ですとクーデターに参加しているのは、20家で総戦力は1000から3000人ほどです」
「うち、9割は領民たちです」
 集めた情報をすずかに言うグリューエル。
「クーデター派は、既にここに向かって来ているとの事です」
 クーデター派は、既に兵を動かしているようだ。
 其れも真っ直ぐに月村家を目指して……。
「陛下……」
 心配そうにすずかを見るカーテローゼ。
「それで、すずかちゃん。どうするんや?」
「そうだね。クーデターを起した人たちには……」
 すずかの表情が変わる。
「血を持って支払ってもらう」
「うち等に向けられて居ないとわかる殺気でもキツイわ」
 自分達に向けられる殺気でなくてもキツイらしい。
「はやてちゃんも血祭りにして欲しい?」
「得慮するわ」
 話をそらそうと考えるはやて。
「其れよりも、うちは……」
 獲物を探すはやて。
「はやてちゃん!?」
「わかったから、その眼で睨まんといて」
「それじゃあ、皆は指定した配置について」
「「「「了解」」」」
「はやてちゃん。復唱は?」
「了解や」
 すずかには、勝てないはやて。
「警備システムを撤収させよ」
「警備システムをメンテナンスルームへ収容します」
 警備すステムへ指令を出す。
 邸内から警備メカがメンテルームへ撤収を始めた。
 無論、敵を誘い込む為に監視カメラも停止させる。
 監視カメラなどなくてもすずかには分かるのだ。
 知覚範囲は、海鳴市を全て軽くカーバーできる。
 よって、刺客が今どこに居るかもわかっているのだ。
 あとどのくらい体制を整える時間があるかも……。
「少しは、混乱している演技をした方が良いよね。戦闘開始したら……」
 襲撃され混乱しているそぶりを見せる必要もある。
「グリューエルは、どう思う?」
 グリューエルに意見を聞くすずか。
「私でしたら、遠距離から狙撃したり、一か所に誘い込んで殲滅しますわ」
「遠距離狙撃は、なのはちゃんやね」
 狙撃は、なのはが向いていると言うはやて。
「そうね。なのはは、砲撃魔導師だもんね」
「なのはちゃんには、威力を抑えつつも殺傷設定で撃ってもらうよ」
 なのはに殺傷設定での攻撃を命じる。
「全力全壊は?」
「なのはちゃんの全力全壊で終わらせたのじゃ、地獄の苦しみを味わせられないじゃない」
 すずかの言う地獄の苦しみとは、内臓を破壊して全身の骨を粉砕するのだ。
「すずかちゃんが本気で殴ったら内臓破裂飛び越えて肉片も残らんのとちゃうか?」
「じゃあ、はやてちゃんに殴らせてあげる」
「うちが、殴ってもえぇん?」
「殴っていいよ。なんだった、吸血鬼の力を解放しても……」
「その前にスキーンシップでエネルギー充填や!!」
 エネルギー充填する相手を考える。
 この非常事態にも関わらず、誰かの胸を揉もうとしているのだ。
「今日のターゲットは……」
 音も立てずに獲物の背後に回りこむはやて。
「アリシアちゃんや!!」
 はやては、アリシアの胸を背後から揉み始めてた。
「ひっ」
「おっ。アリシアちゃんも成長してますな」
 アリシアの胸を揉んだ感想を言うはやて。
「それに柔らかいですな」
 アリシアの胸を揉み続けるはやて。
 服の中まで手を入れ直接揉み始める。
「手に吸い付くこの柔らかさ、堪らんわ」
 強弱を付けつつアリシアの胸を揉みこむはやて。
「フェイトちゃんのお姉ちゃんが、この大きさじゃあかんで!! うちが大きくしたるで」
 アリシアの胸が大きくなるよう揉み続けるはやて。
 だが黙って揉まれるアリシアでは無かった。
 胸を揉むことに夢中のはやての腹に肘打ちを手加減なしに入れた。
「ぐぇっ!!」
 抉りこむようにはやての腹にアリシアの肘打ちがめり込んだ。
 アリシアの胸を揉むことに夢中だったはやてには、完全な不意打ちだった。
「な、何するんや……」
 苦しそうなはやて。
 何度もはやての腹に肘打ちを続ける。
 あまりの苦しさにアリシアの胸を揉むの止めお腹を両手で抱え苦しむはやて。
「アリシアちゃん、うちのお腹が壊れて子供が産めなくなったらどうしてくれるんや!! って、なんてことを言わせるんや!!」
 自分にツッコむはやて。
「じゃあ、死ぬ手前まで殴ってあげようか?」
「すずかちゃんに本気でお腹殴られたら、完全に子供が産めなくなってまう」
「殴って欲しいんだね。なのはちゃん、アリサちゃん!! はやてちゃんが動けないように両腕を掴んで」
「「了解!!」」
 両腕を掴まれ逃げられないはやて。
「アリシアちゃんは、はやてちゃんの揉んであげて♪」
 揉まれたお返しとばかりにはやての胸を揉むアリシア。
「如何!? はやて、気持ちいい?」
 胸を揉みながらはやてに聞くアリシア。


「お楽しみの所、すみません。敵が来たようです」
 はやてへのお仕置きをしている間に敵が来たようだ。
 敵襲によって、はやては解放された。
 服の前は、はだけ胸が露わになっている。
 その為、服を着なおすはやて。
「うっ。まだ、すごく苦しいわ。すずかちゃんのせいで幻想郷で飲んだの全部吐いてしもうたやんか」
 涙目のはやて。
「其れに、胸もヒリヒリするわ」
 アリシアに揉まれた胸も痛いようだ。
「爪をたててまで揉むことはないやろ? アリシアちゃん!?」
「でも、気持ちよかったんでしょ?」
「気持ちいいわけ有るか!!」
「でも、身体は正直だったよ」
「はやてちゃん。後でO・HA・NA・SHしてあげるから配置について」
「りょ、了解や……」

 指定された配置に就くなのは達。
「手加減する必要ないから、血祭りにしていいよ」
「では、私も戦うとしよう。襲撃者には奈落の底に退場して貰うとしよう」
 ズェピアも戦うようだ。
「もう一度言うけど、手加減無用だから……。殺しちゃっても私が処理してあげるから」
 襲撃者に死者が出てもすずかがもみ消すようだ。


「早く撃ちたいな」
 持ち場で、衝動に駆られるなのは。
「撃ちたいよ」
 砲撃魔導師の血が騒ぐ。
 撃ちたい衝動を抑えつつ獲物が来るのを待つ。
 僅かな殺気でも気付かれるからだ。
 なのはの撃ちたい病は、完治は難しい。
 撃ちたい病を抑えないと訓練相手をも病院送りにしかねないのだ。
「早く襲撃してきてくれないかな〜」
 身を隠しながら、レイジングハートを構える。


 アリサ、フェイト、アリシアも木々に身を隠している。
 三人は、接近戦担当だ。
 三人は、年話で情報をやり取りする。
 電波通信だと傍受される可能性があるからだ。
『フェイト、そっちは?』
『こっちは、異常ないよ。アリサ』
『アリシアは?』
『こっちも異常……』
『どうしたの?』
『お客さんが到着したわ』
『それじゃ、戦闘開始!!』

 アリシアが、お客さんを捉えた。


「いいな!! ヒト一人残さず皆殺しにしろ」
 指令を出す首謀者の男。
「あの城から全世界を我が意のままに動かす姿が目に浮かぶぞ」
 月村城から世界を意のままに操るつもりのようだ。
「さぁ、血祭りの始まりだ!!」
 月村邸の敷地に侵入を開始するクーデター派たち。
 これから待ち受けていることも知らずに……。

 月村城の屋上からは、なのはが侵入者に狙いを定めている。
 狙っているのは、戦闘にいる者だ。
「レイジングハート、るよ!!」
≪All right.≫
 レイジングハートも、る気満々のようだ。
 レイジングハートの先に殺傷設定の小さな光の球が出来る。
 それを先頭の敵に目がけて撃った。


 なのはの撃ったシューターは、先頭を歩いていた男に命中し大爆発した。
「なんだ!?」
 周囲を見渡す侵入者たち。
 だが、敵の姿はない。
 爆発が晴れると消し炭になった男が現れた。
 消し炭になった男は、その場に倒れた。
 男からは、煙が燻っていた。
「ラファエル!!」
 煙が燻っている男は、ラファエルと言うらしい。
「何処かに狙撃手が居るぞ!!」
 リーダーを護衛する兵士達に緊張が走る。
 狙撃手の姿が見えないからだ。


 そんな襲撃者達を他所になのはは、次弾の準備をする。
「次、逝くよ」
≪All right.≫
 再び形成されるスフィア。
 其れを襲撃者に命中させる。
 今度のは、さっきより威力を高めたのか、肉片が飛び散るのが見えた。



「アルーシャ!!」
 アルーシャは、ラファエルほど幸運ではなかった。
 彼は、何も判らないまま肉片になったのだ。
 混乱している所にフェイトとアリシアが、急接近してザンバーフォルムで斬り刻む。
 胴体を斬られ地面に転がる。
 一瞬で肉塊になる襲撃者たち。

 すずかから手加減無用と言われている為、フェイトとアリシアは、襲撃者を血と肉の塊にしていく。
 敬愛する主のために、デバイスたちも我慢する。


「遮那、あたし達もるよ」
≪Ja.≫
 アリサは、遮那を構え斬りかかる。
 アリサは、フェイトとアリシアにスピードこそ劣るものの鋭い剣げきで斬り刻む。
 切れ味をコントロールしている為、斬られた相手は痛いでは済まない。
 アリサは、敵を焼きながら斬っていた。
 敵は、斬られた敵は、痛いでは済まされない。
 アリサに焼き斬られた腕からは血が出ている。
 斬られた腕は、地面に落ちている。
「うぎゃぁぁぁ!! 腕がぁ!!」
「ぎゃあぎゃあ五月蠅い!!」
 腕を斬られた男に吼えるアリサ。
「腕が……腕がぁ。俺の左腕がぁ」
 腕を斬られて相当痛いようだ。
「腕を斬っただけで五月蠅い!! ポルカミゼーリア!!」
 腕を斬り落とされた男は、叫ぶのを止めない。
「耳障りな叫び声を出すのを止めなさい!!」
 五月蠅い悲鳴にアリサがキレた。
 叫び続ける男の股間を蹴り上げ黙らせた。
 股間を蹴られた男は、口から泡を吹いて気絶した。
「貴様!!」
「よくも王子を……」
 地面に転がっているのが反乱軍の王子らしい。
「くそ尼が!! 王子が受けた苦痛をお前の身体に教えてくれる」
 アリサの両腕を掴む男たち。
「放しなさいよ、変態!!」
 王子の親衛隊長と思われる男が指を鳴らす。
 これからアリサを痛めつけるようだ。
「貴様のせいで王子は、お子を御造りできなくなった。貴様は子供を生めない体にしてくれる」
 そう言ってアリサの鳩尾に拳を叩き込んだ。
「ごはっ」
「苦しいか!? 王子の苦しみはこんなものではないぞ!!」
 親衛隊長は、アリサの腹部を何度も殴り続ける。
 容赦なくアリサの鳩尾に叩き込まれる親衛隊長の拳。
 再生能力にも限界がある。
 復元呪詛が、切れた瞬間……。
「ごふっ」
 アリサの鳩尾に激しくめり込み血を吐いた。
 度重なる攻撃でアリサの腹部は、真っ黒く変色していた。
 当然ながら上半身は服が全くない。
「げへへっ。この女、いい具合に育っているじゃないか……」
 そう言って、アリサの胸を鷲掴みにして乱暴に揉む。
 痛めつけられたアリサに反抗する力はない。
 地面は、アリサが吐いた血で真っ赤な海が出来ている。
 乱暴に胸を揉まれ、更には腹部を痛めつけ続けられる。
 腹部を殴られるたびに血を吐き、胸が揺れるアリサ。
 既にアリサの内臓はグチャグチャになっているようだ。
 吐いた血に肉片が混ざっているからだ。

「カットカット!!」
 ズェピアが現れた。
「その少女が退場するシナリオはない。直ちに止めたまえ!!」
「黙れ!! 之は、処刑だ!! 口出しはするな」
「しかたない。実力を持ってシナリオを元に戻すとしよう」
 実力でシナリオを修正するズェピア。
「わたしがしなくても諸君らの勝敗は、決している」
「五月蝿い!! 貴様も処刑してやる」
「では、我が主に登場していただこう……」
 ズェピアが言う。
 痛めつけられたアリサは、何故か笑っていた。
 苦痛に顔を歪めながら……。
「!?」
 周囲の空気が一変したのがわかる。
 重く圧し掛かり、息苦しさを感じる。
 あまりに凄まじい殺気に呼吸が出来ずに気絶する者が出る。
「その方らは、許さぬ。クーデターを起したのみならず、妾の友をも傷つけた……」
 すずかの殺気が更に強くなる。
 すずかは、右人差し指をこの場のリーダー格に向ける。
 次の瞬間、すずかの人差し指が一瞬光る。

 ボーン!!

 リーダー格の男が肉片と化した。



 その様子を遠くで見ていたなのはは……。
「すずかちゃん。すごく怒っているの!!」
 遠くから狙撃中のなのはも恐怖を感じる。
 そんななのはにすずかから念話が入る。
『(なのはちゃん!?)』
「はひっ!!」
 なのはは、すずかに返事をする。
『(そこからでもアリサちゃんの様子が見ていたんでしょ? 何で狙撃しなかったのか後でO・HA・NA・SHしてくれるよね)』
 念話越しとは言え、ガクガク、ブルブル震えているなのは。
「すずかちゃん、怖いの」
『(なのはちゃん。その場から、残りの敵を狙撃してくれるよね)』
「りょ、了解なの!!」
 すずかが怖い為、襲撃者を狙撃する。
 そのせいか、何時もの精密さはない。
 だが、それはそれで効果が出た。
 襲撃者の足を吹き飛ばしもした。
 その上、なのはらしくないミスも犯した。
 上半身裸で血の海に倒れているアリサにも当ててしまっていた。


 そして、お怒りのすずかからなのはに、念話が入る。
『(な・の・はちゃん!?)』
「す、す、す、す、すずかちゃん……」
『(なんで、アリサちゃんも撃つのかな? アリサちゃんが死んだらなのはちゃんの責任だよ)』
「ごめんなさいなの」
『(アリサちゃん、もう持たないかも……)』
「直ぐにアリサちゃんのところに逝くの!!」
 持ち場を放棄しようとするなのは。
『(なのはちゃん!! どんなことがあっても持ち場を放棄したら厳罰に処すよ? 友達でも……)』
 すずか、個人の作戦である今回の戦い……。
 それに参加している以上、なのはでも持ち場を勝手に離れたら処断すると言うすずか。
『(なのはちゃんは、その場から可能な限り敵を無力化して! 判っていると思うけど、次に味方に当てたら24時間耐久O・HA・NA・SHだよ)』
 次、ミスをしたらなのはには恐ろしい罰が待っているようだ。



 そして、すずかは……。
「ズェピア! 庭に転がっている叛乱分子を一箇所に集めておいて」
「私が戦闘に加わらなくても良いのかね?」
「えぇ。本当は、私一人でも十分だったのよ」
「ふむ。流石は、この世界の紅い月だな。主がそう言うのならゴミを運ぶとしよう……」
 ゴミといわれる叛乱分子たち。
「その前に、その娘を屋敷に運ぼう」
 上半身裸のアリサを血の海から抱きかかえる。
 ズェピアは、その場から消えた。


 アリサが、運び込まれた医務室は、大慌てだった。
 アリサの状態は、緊急を要するものだ。
 特に腹部のダメージは、尋常ではなかった。
 生きているのが不思議なくらいである。
 吸血鬼でなかったら、死んでいてもおかしくないほどのダメージだ。
「では、わたしは主命を果たしに行くとしよう」

 月村邸内では、まだ激しい戦闘が続いているのだ。
 そして邸内には敵の負傷兵であふれている。
 その殆どが反乱を起こした者達の領内に住んでいた者達だ。
 言わば、領主たちの奴隷である。
 彼らは、無理やり戦いに駆り出されたのだ。


 そして、叛乱軍の主力本隊は……。
「閣下!! 先行部隊は、殆ど壊滅した物と思われます」
「我が息子は!?」
「敵の手に掛かった模様です」
「どいつもこいつも役立たず共が!!」
 役立たずと言う男。
「急報!!」
「王子は、敵にゴミとして一か所に集められたようです」
「ゴミだと!!」
 怒鳴る叛乱軍の盟主。
「誰だ!? 我が息子をゴミ扱いしたのは?」
「はっ。貴族風の男でして……」
「おのれ、月村すずか! 鷲の退位勧告も無視したのみならず我が息子をゴミ扱いしおって!!」
「如何されますか?」
「玉座を簒奪しただけでは、許さん!!」
 すずかから玉座を簒奪しようとする男。
 この男が叛乱軍の盟主のようだ。
「閣下!! いや、陛下!! ご命令を……」
「全員、皆殺しにせよ!!」
 叛乱軍の本営が動き始めた。
 本営に居る兵たちは、今までの兵たちとは違う。
「陛下、王子は!?」
「救出次第、城に運び手当てせよ」
「はっ」
「月村すずかの治世も、まもなく終わる。そしてワシの治世が始まる……。恐怖に満ちたな……」
 だが、彼は知らない。
 自分達が、すずかの掌で踊らされていることを……。
 彼らは、すずかの本当の怖さを知らない。
 本当の怖さを知った時、後悔する事になる。


 次回予告

 はやて「月村邸に侵入を開始した叛乱軍本隊」
 フェイト「各所で破壊を始める叛乱軍本隊」
 アリシア「庭から煙が立ち上る」
 なのは「そして、月村城に突入する叛乱軍」





 ズェピア「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第103話『月村城は血を欲す』」



襲撃犯の方を気の毒に思ってしまうな。
美姫 「確かにね」
と言うか、よく反乱を起こしたもんだな。
美姫 「すずかの力を知らないんでしょうね」
反乱軍が突入するみたいだけれど。
美姫 「果たしてどうなる事やら」
それではこの辺で。
美姫 「まったね〜」



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