第17話「それから 前編」






 
 こんにちわ、高町なのはです。
 ユーノくんと出会いから始まった小さな事件。
 遺失世界の遺産、ロストロギア『ジュエルシード』を巡って起きたあの事件が終わりを告げて少し時間が経ちました。
 競い合ったり、戦ったり……いろいろあって、やっと友達になれた私と同い年の魔法使いフェイトちゃんとも今は離れ離れ。
 アレから私の周りで魔法に関する事件が起きることもなく、私はもうすっかり平凡な小学三年生。
 ……のはずだったんですが、いろいろ思うところあって……。


「そう。魔力の収束を制御して! 思いっきり放出しつつ外には逃がさない感じで」
「うぅぅぅ……一寸きついけど……」
「うん。そうだよ。そのまま維持して」
「う、うん」
 なのはは、ユーノに魔法の指導を受けていた。
「上手!! 凄いよ、なのは」
「はぁはぁっ、ふぇ、ありがとう」

 今も、魔法の練習を続けています。
 ユーノくんは、相変わらず私の魔法の先生。
 そして、さつきさんは、格闘の先生です。


「今日の魔法の練習、終了っと……」
「おつかれさま」
「うん」

 今までと少し違うのはレイジングハートに頼りっきりにならないようレイジングハートを起動させずに練習をしていること。


 なのはの携帯が着信音を奏でる。
「はい。もしもし、なのはです」
『はぁい、おはよ、なのはちゃん』
「エイミィさん」
『おはよう、なのは』
「うん、クロノくん」

 あの事件以来、時空管理局の皆さんとお付き合いが続いていること。



「どうだい? 魔法の練習は順調かい」
『作ってもらったテキストが解かりやすいし、ユーノくんが教えてくれてるし』
「何よりだ!!」
「しっかし、愕きだよねぇ。魔法の基礎知識ほとんどゼロであんなに魔法を使いこなしていたなんて」
『にゃはっはっはっはっ。それは、きっと、レイジングハートが優秀だったからですよ』
「そんなことないわよ」
 リンディが話に入る。
『リンディさん』
「すぐれたデバイスは使い手が優れていなければ、その性能を引き出すことが出来ないもの」

「そうだよ、レジングハートはもう、完全になのはが自分のマスターだって認めているし……」
「うん」


「そう。なのはさんには魔導師としての溢れる才能と未来があるわ」
『あっ、はいっ』
「だからね、今の学校を卒業してからでいいし、基本業務の希望も聞くから、やっぱりうちに就職しない? お給料はいいし、福利厚生バッチリだし」
『あのあの……前から申し上げている通り、流石に小卒で就職と言うのは、こちらの世界のこの国的にはちょっと……なんというか』
「あれから調べたんですが、なのはちゃんの国では15歳までは義務教育なんですよ」
「あら、大変。う〜ん、後6年かぁ」
『あはっはっはっ……』
「艦長、あちらは出先ですし、無理な勧誘はその辺で……」
「はぁい……」
「すまないな、何だかんだで管理局も人手不足なんだ。AAAクラスの魔導師は可也レアだから」
『そっかぁ』
「フェイトやキミのような使い魔持ちだったりするるとなお更だな……」
『フェイトちゃんにはアルフさんが居るけど、私使い魔居ないよ』
 使い魔は居ないと言うなのは。
『居るじゃないか、今も肩に乗っている』
「むっ。僕は使い魔じゃない! 一応、人間の魔導師だ!!」
『あぁっ。そうだったか……。忘れてたよ、あまりにその姿が様になっているから』
 カチンとキレるユーノ。
「なんだとぉ!?」
 ユーノが人間形態に戻った。
「へ、変身」
「これなら、どうだ!?」
『うん。人間形態への変身も隙がない。ヤッパリ優秀な使い魔だな』
「別に使い魔だから如何こうってことは無いけど、なんかクロノに悪意を持って言われるとみょうにカチンとくる」
『心外だな〜褒めているじゃないか、優秀だって……』
「嘘をつけ!! 一体、クロノなんで僕に突っかかるんだ?」
『それは、自意識過剰というものだろう? それに、キミは何で僕の事を呼び捨てにするんだ!!』
「呼び捨てで良いと言ったじゃないか。それにクロノだって、なのはに『クロノくん』って言われてポッとなっていたじゃないか」
『はぁ〜誰が? 何時? 何月何日の何時何分!! 証拠はあるのか』
「その反応が証拠じゃないのか?」
『なんだと!?』
「ユーノくんもクロノくんも喧嘩を止めないと血を抜くよ」
 血を抜くって言うなのは。
「先ずはユーノくんね」
「若しかしてなのは……」
「うん。丁度、この子達、お腹をすかせているから……め一杯飲んでいいよ」
 なのはが、使い魔に指令を発する。
『あ゛ぁぁぁぁっ』
 クロノの悲鳴が聞こえた。


「まぁ、やんちゃ坊主達はおいておいて、実は今回の通信は何時ものご連絡なのですよ」
 何時もの連絡というエイミィ。
「なのはちゃんの気になっているあの子のこと」
『あっ、はい』
「おととい二度目の公判が終わって今は判決まち。その間も審問とか色々あるけど……まぁ、順調に進んでいるかな? 詳細は、ほれクロノくん」
「……あ、あぁっ」
 クロノは、め一杯血を吸われてよろよろだ。
「キミの友人フェイト・テスタロッサには事件の重大性から実刑を求める声も出ているが、なにしろ管理局提督と執務官と執務官研修生が証言者だ。徹底して無罪申告! 最悪でも執行猶予で収まる範囲で進めている」
『うん』
「フェイトの受け答えもしっかりし、ちゃんとデータも揃っている。前にも言ったが大丈夫だよ」
『うん。ありがとう』
「お待ちかねのアレは昨日、送っておいたから……今日当たり届いているんじゃないかな?」
『本当ですか?』
「あぁ。返事を作ったら通信をくれ、責任を持って彼女に手渡すから」
『うん。ありがとう』


『じゃあ、こっちからまた連絡するね。後、今日の夕方ぐらいに例の通信を入れるから……』
「はい。待っています」
『女の子同士の内緒話だよ』
『じゃあ、ユーノ、引き続きなのはに魔法を教えるんだぞ』
「心配しなくてもちゃんとやるよ!!」
「あはっはっはっ、それじゃあまた……」
 電話を切るなのは。
「若しかして、もう届いているかな?」
「あぁ、届いているかも……」
「じゃあ、帰ろう」
 朝食を食べに家路に急ぐなのは。


「おはよう〜」
「なのはちゃん」
「おはよう、なのは」
「アリサちゃん、すずかちゃん、おっはよう〜」
「うん?」
「なのはちゃん、どうしたの? なんだか、嬉しそう」
「えへへへへっ」
 嬉しそうに笑うなのは。
 なのはは、カバンから何かを取り出した。
「ほら、コレ……」
「あっ、それ」
「フェイトからのビデオメール?」
「うん。DVDで今朝到着♪」
「お返事来たんだ。よかったねなのはちゃん」
「うん!!」 
「もう、見た?」
「うう〜んうん。皆で見ようと思って……」
「そっかぁ。じゃあ学校が終わったら、あたしんちで見よ」
「「うん」」


 フェイトちゃんは重大事件の関係者で、その調査と裁判の真っ最中だから別世界の人間とリアルタイムで接触するわけにもいかなくて……。
 でも、ビデオメールなら顔も見て声も聞けるからってリンディさんがやり取りしてくれて……だから私とフェイトちゃんは今遠くはなれてビデオメールで文通中。
 一通目の返事で私の友達や家族を紹介したいって書いて、2通目からは皆で見られるように魔法の事やあの事件の事の内緒のディスクと私とユーノ君用の2枚組みで届くようになって、今日届いたのがその三通目……。
 すずかちゃんちにも内緒のディスクが届いているはずです。


「あら?」
「あっ、艦長! 用事は済んだのですか?」
「うん。ちょっとしたことだったから……。クロノは?」
「トレーニングルームへ……夕方にはフェイトが戻るので準備をしておこうかと……」
「そうかぁ……調査審問は今日で終わりなんだっけ?」
「はい。アースラ艦内でなら、フェイトたちも殆ど自由行動ですからね……彼女との魔法戦の訓練はなかなか役に立ちます」
「そうね。あぁ〜ぁ、それにしても本当、フェイトさんもなのはさんもすずかさんもさつきさんもウチに来てくれないかしら? 素敵じゃない? AAAクラス3人と SSとSSSを乗せている船なんてないし……5人とも特性が綺麗に分かれているし……それに、アリシアさんも加えたら……」
「強制は出来ませんよ。彼女達の未来を決めるのは、彼女達ですから……」
「まぁ、それはそうなんだけど」
「あぁ、それから艦長も僕達と夕食の時間をあわせて貰えますか? フェイトの帰還にあわせてエイミィが腕を振るってくれるそうです」
「あら? 本当?」
「食事は、皆でするほうがいい物ですし……」
「そうね、その通りだわ」


「ただいま〜」
「「おじゃますます」」
「ワンッワンッワン!」
「ジョンソン、ただいまぁ〜」
「ジョンソン! 元気?」
「ワオンッ」
「あはっはっはっ」

「ねぇ、すずか、テレビつけて」
「うん」
 テレビの電源を入れるすずか。
「失礼します」
「お嬢様方、お飲み物ですよ」
「あっ、すみません。ありがとうございます」
「ありがとう。其処においておいてね」
「はいっ。それでは……」
「さて、DVDを入れてと……」
 DVDをデッキに入れるアリサ。
「おいで、ジョンソン」
「ワオン」
「では、いい? 再生開始!」
 DVDが再生される。


『こんにちわ、お返事ありがとう。フェイトです。なのは、久しぶり』
「うん」
『元気な顔をも見られて声も聞けて嬉しかった。ありがとう、なのは』
「うん」
『アリサ、はじめまして、こんにちわ。映画のディスク沢山貸してくれてありがとう。まだ、全部見れてないけど、空いた時間に部屋で少しずつ見ているよ』
「うんっ」
『私、映画って殆ど見たことなかったから、凄く新鮮……楽しいよ』
「ふんふんっ!!」
『すずか? こんにちわ』
「こんにちわ」
『みんなの写真と、それから本をありがとう。写真は私とアリシアの部屋に飾っているよ。さつきさんも加えた4人で写っているのが一番のお気に入り』
「どれだろう?」
「連休の時にお姉ちゃんが撮ってくれた……」
「アレかぁ」
『全部読んでいないけど、優しい本ばかりでね、なんだか心が暖かくなるね』
「うん」
『なにかお返しの贈り物をしようと思うのだけど……ごめんね、なかなか気の利いた物がなくて……』

 
 フェイトちゃんの声は、とても静かで優しくて、ずっと競い合ったり戦ったりしたあの日々とは、なんだかもう別人みたいだけど……。

『こっちは、やっぱり相変わらず忙しいような、退屈なような……そんな毎日です』

 だけど、こっちがきっと本当のフェイトちゃん。
 悲しい事があったばかりだけど……笑ってくれる。
 優しい言葉を掛けてくれる……。
 そうすると私は何時も胸が一杯になって、いろんなことを思い出して……。


『皆からのビデオメール何度も見直しているよ。見るたびに優しい気持ちになる……。ありがとう……なのは、アリサ、すずか』
「泣く様な話じゃないでしょ?」
「そ、そうだよね。そうなんだけど……」
「えっと……一時停止と」
 DVDを一時停止するすずか。
「ねえ、なのはは、この子と色々あったんだよね。この子のことで色々迷ったり、悩んだり、喧嘩したりもしたんだっけ?」
「うん。結構本気でね……」
「でも、今ではちゃんと友達になれて、私たちにも紹介してくれている。フェイトもニコニコ笑っている」
「うん」
「なのはちゃん、フェイトちゃんに笑われちゃうよ? 悲しいことなんてないのに、なのは変だねって……」
「あははっ。そうだよね。きっと笑われちゃう」
 泣くのを止めるなのは。
「もう、平気……」
「じゃあ、またはじめるよ」
「少し巻き戻そうか?」
「うん」


 そうだね。きっと嬉しいんだ。ずっと伝え合いたかった気持ちをやっと今伝え合えているから……。
 おんなじ気持ちを分け合えているから……。


「では、これで本日の調査はすべて終了です。おつかれさま」
「はい。ありがとうございました」 
「どうも」
「次回の日程はおって管理局艦船の方へお伝えしましょう。8番艦アースラでしたけ?」
「はい。よろしくお願いします」


「あ゛っ疲れた」
「お疲れ様、アルフ」
「あぁ、裁判ってのは、色々面倒で疲れるね」
「うん……色々とね」
「あぁ、肩がこるし、お腹も減ったし……」
「エイミィが夕食作ってくれているって……寄り道しないで帰ろうか?」
「そうだね」
 寄り道せずに帰ると言うフェイトとアルフ。
「フェイトはさぁ」
「ん?」
「裁判が終わったらどうするの? やっぱりリンディの誘いを受けて管理局はいる?」
「そうだね……まだ決めてないよ。暫くは自由なままで居たいなとも思うし……なのはたちに逢いに行きたいなとも思うし」
「まあね」
「アルフはどこか行きたい所とかある?」
「あたしは、べつに……。どんな時だってフェイトの隣があたしの居場所だから……。笑っているフェイトと美味しい食事とフカフカタオルがあれば、あとはいらないよ」
「ありがとう……アルフ」


 お稽古にでかけたアリサちゃんたちと分かれて私はお家へ……。
 うちでもう一枚……こっちは魔法戦のディスクをユーノくんと二人で見ます。
 すずかちゃんは、お稽古が終わってから見るそうです。

 魔法戦のディスクが再生される。

『じゃあ続き……先にアルフに代わるね』
『よいしょっと』
 カメラに向くアルフ。
『おっす! 元気か? チビッ子共! こっちは、超元気でやっているよ』
 アルフは超元気らしい。
『最近は、容疑者扱いも大分緩くなって来てさ……私等の素行も良いから、もう殆ど自由行動だね。食事とかも勝手に食べに行ったりしているし……』
 既に殆ど自由行動が許されているらしい。
『あっ、ご飯といえばエイミィが意外と上手くてさ、一寸ビックリなんだよ』
「へぇ〜」
「そうなんだ」
 感心するなのはとユーノ。
『あっ、そう言えばユーノ見ている? お互い相棒同士が友達になったんだからさ、あたし等もまぁ、仲良くやろうや。自由の身になったら、一緒に散歩でも行こうか?』
「いいかも……」
『皆で行こう……楽しいぞ? あ……え〜と……後はまぁ、こんなところかな? 以上、お終い!!』
『もう、いいの?』
『うん』
『じゃあ、交代! さて、何から話そうかな?』
 話すことに悩むフェイト。
「うん」
『そうだ! 本局の話……』


 なのはは、フェイトと言葉や想いを交わせるのは本当に嬉しいみたいだ。
 ずっと気にしてて友達になりたかった子で……。

『建物かなと思ったら船だったと言う話は前にしたと思うけど、本局の中の施設はすごいんだ! スポーツ用のグラウンドまであるんだよ? どれだけ広いだろうって、もうビックリ!』
「あはっはっはっ」
『他にもデパートはあるし、レストランなんか、もう何軒あるかわからないし……あれは、船と言うよりもう街……なのはもそのうち見に来る機会とかあるのかな?』
「どうだろう?」
『スポーツは……』

 今は……僕は故郷に帰れないから、なのはの好意で此処にいさせて貰っているけど……ずっとここに……こっちの世界に居られるわけじゃない。
 何時か僕もなのはと分かれる日が来て……そして、その日はきっとそんなに遠い日じゃない。
 そんな日が来たら、なのはは僕にも……フェイトにするみたいに泣いたり笑ったり……して、くれるのかな?

『ねえ、ユーノ! ユーノは今もなのはの肩に乗ったりしてる?』
「どうしたの? ユーノくん、ビックリして……」
「何でも……」
『魔法の先生なんだよね? 逢えるようになったら、私にも色々教えてくれるかな? 防御とか補助系の魔法はどうも苦手なんだ』
『あはっはっはっはっ。それは、私のだ……攻撃と機動力ばっかだもんねわたしたち……』
「頼りにされているよユーノくん」
「う、うん」
「私もずっと頼りにしているけど……」
『一緒に魔法の練習とか出来たらいいね。今はクロノとアリシアと良くやっているんだけどクロノには完全に子ども扱い。強いんだクロノ……。なのはもクロノとやったら苦戦するかも……』
『あの小坊主容赦ないから……』
『なのはにはクロノより強い人が直ぐ近くに3人も居るんだったね』
 その3人とは、さつき、忍、すずかの事だ。
『自由の身になったらちゃんとした形式で戦ってみようかな?』
『止めておきなよフェイト』
『私との力の差を知りたいから……』
 実力差を知りたいというフェイト。
『あぁ、なのは? 死にたくなかった戦わない方がいいぞ? さつきって奴のパンチを受けたら死ぬほど苦しいぞ!? 2〜3日はマトモにご飯が食べられなくなるからな』
「あはっはっはっ……」
 冷や汗が垂れるなのは。
 

 さつきさんと戦うときは、お腹を殴られないようにしないと……。
 あの時みたいに血を吐くのもイヤだから……。


 次回予告

 なのは「聴取を終えてアースラに戻ったフェイトちゃんとアルフさん」

 フェイト「エイミィが夕食の用意をしていました」

 すずか「なのはちゃんがフェイトちゃんにしたプレゼントとは?」

 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第18話『それから 後編』」


後日のお話として、フェイトの状況。
美姫 「それとなのはが今どうしているか、だったわね」
この辺りは大きな違いはないかな。
美姫 「さつきがなのはに格闘を教えている部分ぐらいかしらね」
なのはの格闘技術が上がるのかどうか。
美姫 「そして、後編はこの後すぐ」



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