第60話「復活!! 白い悪魔」



「えぇいっ!!」
 何回目か解らない魔法を使うこよみ。

 

 それは、またクロノを直撃する。
 グワァン!!
 いい音がする。
 何度も襲ってくるタライに頭部へのダメージが増えていく。
 タンコブが何段重ねに出来ている。
 是までのダメージと戦闘によるダメージと合わさって動きが鈍い。
 普段ならかわせる攻撃も避けきれない。
 其れほどクロノの機動力は落ちていた。
「貴方、邪魔よ」
 クロノが邪魔というプレシア。
「ここは私一人で十分よ。貴方は、大本を叩きに行きなさい」
 タタリを叩きに行けというプレシア。
 大本のタタリを叩かない限りタタリなのは達は消えないようだ。
 そして、また……。
 グァンッと音を立ててタライがクロノに直撃する。
「フッふっふっふっ……。はっはっはっはっはっ」
 クロノが壊れた。
「どこの誰かは知らんが僕に何度もタライを落としたやつは許さない! 拘置所に送り込んでやる」
 タライによって性格が変わった。

 タライに怒りの炎を燃やしたクロノは、タタリとの主戦場に向かった。
 タライ召喚をした人物をしょっ引く為に……。
 


「ニ゛ァァァッ!!」
 吸血猫軍団は、タタリホアンと戯れていた。


「雑種!! 誰の許しを得て劇を演じている!?」
 タタリに言うシェーンコップ。
「主役に対して言ってはならないセリフ……。言い直したまえ!!」
「貴様、王であるオレの言うこと聞こえなかったのか?」
 シェーンコップの言うことを無視するタタリ。
「私の劇に主役は一人しかいらない。悲劇のヒロインは多い方がいい」
 あくまで悲劇にこだわるタタリ。
 タタリは気付いていない。
 殺したはずの白い悪魔がまだ生きていることに……。



「う゛っ」
 谷底に落ちたなのはの意識が回復した。
「ここは……?」
 真っ暗でよく見えない。
「そう言えば、吸血鬼の眼の使い方をさつきさんに教えてもらっていたんだった」
 教えられたことを思い出す。
 吸血鬼の眼で辺りを見渡す。
 血の匂いもする。
 よく知っている人の匂いだった。
「フェイトちゃん!!」
 なのはの眼に入ったのは血まみれのフェイトだった。
 其処へ血まみれのアリシアが落ちてきた。
 岩に激突し折れた骨が肉を突き破って飛び出る。
「アリシアちゃん!?」
 さらに内臓がはみ出たアリサも落ちてきた。
 岩に何度もあたり内臓を撒きながらである。
 普通の人間なら助からない。
 だが彼女たちは吸血鬼の血が流れている。
 彼女たちに流れる吸血鬼の血は普通の血ではない。
 真祖であるさつき、すずか、忍の血が流れている。
 その血が死なせまいと傷ついた体を復元していく。
 飛び散った肉片も元の体に集まる。
「アリサちゃん!?」
「五月蝿いわね。ちゃんと生きているわよ」
 アリサは、生きていた。
 内臓がはみ出した状態で……。
「吸血鬼の血のおかげで死なずにすんだわ」
 治療に魔力を勝手に持っていかれたので魔法を使うことが出来ない。
 その時点で、アリサは戦線離脱をせざるを得ない。
 フェイトとアリシアも復元呪詛で傷が癒えていく。
 当然魔力を消費してである。
 魔力量が多いアリシアとフェイトでも安くはない量だ。
 その上、血も失っている。
 戦線復帰しても本来の動きは出来ないだろう。





 グワァンッ!!


 また、クロノにタライが直撃した。
 タライの直撃の回数も分からない。
「早く退場したまえ!!」
 クロノの早期退場を要求するワラキア。
 クロノは退場する気はないようだ。
「其処の君!! 消えたまえ」
 こよみを次なるターゲットに定めるワラキア。
 悪性情報をこよみに流す。
 そしてクロノは目撃する。
 自分にタライを落とした犯人を……。
 目の前で悪性情報がタライに変換されクロノ目掛けて落下してきた。
「おっと!」
 クロノは、初めてタライをかわした。
 しかし、落ちてきたタライは一つではなかった。
 よけた場所にもタライは落ちてきて……。


 ゴワァンッ!!

 またクロノに命中した。
 今度のタライは、純銀だった為フラフラして戦っている弓子の胸を思いっきり揉んでしまった。
 それも途轍もないぐらいの柔らかさだった。
 いきなり胸を揉まれた弓子は固まった。
「やめてくださいまし」
 胸を揉むのを止めてという弓子。
 クロノは、タライの直撃で目を回している。
 自分が弓子の胸を揉んでいることすら分からない。
「クロノ! 遊んでいる時じゃないだろう!!」
 ユーノがクロノに言う。
「いい加減にしてくださいまし!!」
 弓子はキレてクロノにビンタをくらわせる。
 ビンタされたクロノはやっと我に返る。
 見たのは弓子の胸を揉んでいた自分の手だ。
「うわぁぁぁっ」
 慌てて弓子の胸から手を放す。
「目は覚めまして!?」


「クロノくん。後でO・HA・NA・SHしてくれるよね」
 クロノに掛けられる声。
「(なのは、無事だったんだね)」
「(復活に少し時間が掛かったけど……)」
「それは、こっちのセリフだ!!」
 クロノは、見分けがつかないようだ。
「後でたっぷり絞ってやる!!」
 クロノは、相当恨みを持っている。
「皆して僕を集中攻撃して……」
 不満を言うクロノ。
「それは、その方の自業自得であろう?」
 自業自得と言うさつき。
「あれほど不安を抱くなと、言っておいたであろう?」
「じゃあ僕を攻撃したなのは達は……」
「その方の悪夢が具現化したものだ」
 タタリなのは達が現れたのは、クロノが犯人だった。
「僕だけではないぞ!! そこのフェレットもだろう!?」
「フェレットって言うな!!」
「悪ふざけするなら退場してもらうぞ」
 殺気をクロノとユーノへぶつけるさつき。

「ひぃっ!!」
 まったく関係のない筈のこよみは殺気に当てられて動けなくなる。

「其処のエロガキは、其の小娘と一緒にさがっておれ!!」
「僕は、執務官だぞ!!」
「黙っているがよい!!」
 今までにない殺気を向けられ黙るしかないクロノ。
 いや、エロノと言ったほうがいいかも知れない。
「ユーノ!」
「なに!?」
「お前は、結界でその者達を守ってやれ!!」
「いいけど……。もしかして一人で戦うつもりじゃ……」
「此処からは吸血鬼どおしの戦いだ!! 守りながら戦うことは出来ぬ! 死にたいのなら構わぬが……」
 ゴールデンバウムを手に握るさつき。
「行くぞゴールデンバウム!!」
≪Ja.≫
「ユーノくん、また後でね♪」
「う、うん」


 タタリの前にはタタリホアンとタタリギバルテスが立ちはだかっている。
「マドモワゼル。道を開けろ!!」
「タタリの分際で妾に命令するでない」
 さつきは、ゴールデンバウムを一戦した。
 それだけでタタリホアンとタタリギバルテスは、消滅した。
 何度も復活したが、今度は復活しなかった。


「一度、退場した者が再び舞台に上がるとは、どう言う事かね?」
 一度退場したなのはに言うタタリ。
「今度は、貴方が退場する番だよ」
「では、もう一度退場したまえ」
 再退場を要求するタタリ。
「いや、次に退場するのはその方だ!!」
「殺した筈の者が何故生き返っている!?」
「まだ気付かぬか!」
「そうか、そういう事だったのか」
 気付いたようだ。
「貴様も吸血鬼だったか……」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
 白い悪魔モードに入っているなのは。
「如何してこんな劇をするの? O・HA・NA・SH聞かせてくれるかな?」
「カット!!」
「如何してカットなの?」
「黙りたまえ!! この劇は、悲劇でなくてはならない」
「ならば、その方を悲劇にしてやろう……」
「カットカットカットカットカットカットカットカットカット!!!!」
 話を強制中断させるタタリ。
 どうしても悲劇にしたいようだ。
「じゃあ、今度は私が採点してあげる。命をとして!」
「くっくっくっくっくっ、良かろう。採点をしてもらおうか」
 採点を求める。
「私の劇に点をつけることはできんだろうがな……」
「汝の劇は0点だ! 点などありはせぬことを知るが良い」
 ゴールデンバウムを振り下ろす。
 だがタタリには当たらなかった。
「何故、斬り捨てない」
「簡単なことだ!! その方に本当の悪夢を見せる為だ!!」
 今度はタタリが悪夢を見る番だ。
「いいや、悪夢を見るのはお前たちだ!!」



「おい、ユーノ! 大丈夫か!?」
「何とか大丈夫だけど……」
 凄まじい殺気の嵐に何とか耐えているクロノとユーノ。
「これが、吸血鬼の殺気?」
「僕に聞かれても」
 二人とも殺気に当てられないようにするだけで精一杯だ。
 それほど凄まじい殺気だ。


 そして、弓子たちは……。
「こよみ! 何時まで気絶しているのです!?」
 こよみは殺気に当てられ気絶していた。
「無理よ弓子!! 私でも気絶しそうなんだから……」
 美鎖でも気絶しそうな殺気だった。
「こよみ!! 起きなさい!!」
 だがこよみは起きない。
「早く起きて、タライをかましやりなさい!!」
 クロノは聞き逃さなかった。
「そうか、君が犯人だったのか……」
 こよみにドス黒いオーラーを向けるクロノ。
 ガチャッとS2Uを向ける。
「君を逮捕する!!」
「クロノ、其の娘が何をしたんだ!?」
「五月蝿い!! こいつのせいで僕は……」
 クロノは、相当頭にきているようだ。
 気絶しているこよみに復讐しようとしている。
「クロノ、悪者になっているよ」
「悪者でも構わない。僕は、恨みを晴らすだけだ!!」
 タライを何度も落とされた恨みは大きい。
 公人よりも私怨を選んだ。
 その選択が、クロノ運命を決めることになった。
「クロノ!?」
「僕は……僕にタライを何度も落とした奴を同じ目にあわせてやる」
 だが、クロノには召喚魔法は使えない。
 同じ目に遭わせてやりたいが出来ないのだ。
 そもそもタライ召喚コードを知らないのである。
 知らない為、同じ目にあわせる事は出来ない。
 逆に最凶のタライが振ってくるとはこのとき思っていないのである。


 クロノがこよみに復讐の炎を燃やしているころ……。
 吸血鬼どうしの戦いは凄まじかった。
 技の掛け合いは、未来予測の出来るワラキアが優位に進めていた。
 未来予測が出来ても完全には防げない。
 魔法も使える真祖相手では分が悪い。
「リ……リテイク!!」
「その台詞は聞き飽きた」
「メインキャストに向かって言ってはならないことを……」
 ワラキアの魔力が膨れ上がる。
「私の劇は、悲劇……全員、永遠の退場していただこう」
 ワラキアは、攻撃の手数を増やしていく。
「幾ら手数を増やそうが無駄だ!!」
 そう言うとさつきは、ワラキアをなのはの前へ投げ飛ばした。

「おっきいの逝きます」
≪Starlight Breaker≫
 なのはは、最凶最悪の主砲を撃った。
 今まで通じなかったワラキアに初めて通じた。
 スターライトブレイカーの直撃を受け爆発する。
 直撃を受けたワラキアは落下してくる。
 しかも、すずか達の待ち構えるところに……。
 そして、すずかとさつきの殺陣舞踏が始まる。
 避けることも出来ず一方的な攻撃が続く。
 すずかとさつきの重いパンチがワラキアの体にめり込む。
 ワラキアのダメージが急激に増えていく。
「如何したワラキア!? その程度か?」
 既に戯れられている。
「二十七祖の座を返上するがよい」
 そう言われても返上するつもりはないワラキア。
「私は、ワラキア……」
 すずかとさつきの攻撃でボロボロになりつつあるワラキア。
「私も混ぜてよ」
 なのはも加わりたいようだ。
「その方も戯れるがよい」
 さつきの許可が出た。
「ワラキアさん! 覚悟はいいですか?」
「何の覚悟だ!? 一度退場した者が私に勝てるとでも思っているのかな?」
 ワラキアは、気づいていない。
 目の前に居るの後に『白い悪魔』と呼ばれるようになるという事を……。
 そして自分が『白い悪魔』の怖さを身に刻んだ最初の人物になる。
「カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカト!!」
「カットカット五月蠅いよ」
 なのはがキレる。
 なのはは、ワラキアに攻撃を始める。
 やられた時と違って吸血鬼モードでの戦闘だ。
 受けたダメージも端から回復していく。
 まさしく悪魔である。
 吸血鬼の力の使い方に慣れてきた証拠だ。
 谷底で双金の死神とアリサが復活しつつあった。
 悪夢を見せる側のタタリが本当の悪夢を見るのはこれからだ。
「これは、私の劇だ! キャストなら私のシナリオどおりに演じたまえ!!」
「それ以上、喋ると吹き飛ばすよ」
 完全に白い悪魔モードに入っているなのは。
 一寸でも変な動きをしたら全力全壊の攻撃をするつもりのようだ。
「劇の幕を下ろすのは今が最後のチャンスだよ」
 自ら幕を下ろせと言うなのは。
 いや、白い悪魔だ。
「私の劇は、まだ終幕ではない。終幕を迎えるのはお前たちだ!!」
「戯言をほざくな!!」
 すずかは、ワラキアを地面に殴りつけた。
 殴られたワラキアを中心にクレーターが出来る。
 普通の人間なら即死である。
 だが、ワラキアは吸血鬼だ。
 吸血鬼であるため死なない。
「なんというパワー……。まさに化け物……」
 だが最後までいう事は出来なかった。

 ズドーン!!

 クレーターが更に大きくなる。
 ワラキアの口から血が溢れる。
 そこへ白い悪魔の砲撃が直撃する。
 体が地面にめり込んでいる為、逃げることが出来ずもろに喰らった。
 物理ダメージではなく魔力ダメージだ。
 ワラキアの魔力がごっそり抉られた。
「ふっふっふっふっふ、悪魔じみた砲撃……」
「悪魔でもいいよ」


 次回予告

 すずか「終幕を迎えるタタリの劇」
 さつき「チリ一つ残さず消えるがよい」
 なのは「全力全壊!!」
 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第61話『タタリの終幕』」
 すずか「讃えよ紅き月よ」



なのはの本領発揮。
美姫 「哀れなのワラキアよね」
一度に相手するにはちょっと相手が悪すぎたな。
美姫 「で、激戦を繰り広げる横でクロノは」
あー、私怨を晴らすべくか。
美姫 「クロノのお仕置きを含めてどうなるのかしらね」
それではこの辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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