第73話「ミッド対ベルカ」






 5月です。
 闇の書事件からもうじき半年。
 わたしたちも無事4年生になって、はやてちゃんの足も少そずつ良くなってきていて守護騎士の皆さんも元気です。
 そして、お仕事方面では仮配属期間も無事終了。
 正式に時空管理局に入局しました。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん、着替えできたー?」
「「「「「はぁいっ」」」」」
「おー♪ かわいい、かわいい!」
「えへへ」
「「ありがとエイミィ」」
「まだなんだか緊張します」
「すぐ慣れるよ。これからちょくちょく着ることになるかんね」
 なのはは武装隊士官服、フェイトとアリシアは執務官服、アリサは陸士制服を着ている。
 さつきとすずかは、フェイト、アリシアと似た執務官服を着ていた。
「はーいっ。こっちもできましたー!」
 マリーが入ってくる。
「あーどもですー」
 陸士服に着替えたはやてだ。
「はやて」
「はやてちゃんかわいー♪」
「似合ってるわよはやて」
「はやてちゃんは何を着ても似合うよ」
「あははー。5人ともよー似合うてるよー」
「「えへへ」」
「7人で制服そろい踏みだね」
「うん」


 わたしたちは、7人ともこの春からは、それぞれの部署で働き始めます。
 正式にリンディさんの養子になったフェイトちゃんとアリシアちゃんは、基本的にはアースラチームと行動しながら執務官 になるための勉強。
 『蒐集行使』というレアスキルを持っているはやてちゃんは、リインフォースと4人の守護騎士と共にその能力が必要とされる 事件に随時出動する特別捜査官。



 戦闘狂な性格のアリサちゃんは、武装隊員……。



 強大な戦闘力を持つさつきさんは、武装執務官になる為、伝説の三提督の下で任務をしながら執務官の勉強。

 はやてちゃん同様、固有戦力を持ち同じく強大な戦闘力のすずかちゃんも伝説の三提督の下に配属されるそうです。
 すずかちゃんの場合は、事情が複雑みたいで武装執務官になる為の勉強時間が取れないかも……。
 デバイスマイスターの資格を持っているので技術部への出向もあるとか。



 そしてわたし高町なのは。
 武装隊の士官からスタートして目指すのは、最高の戦闘技術を身につけ局員たちにそのスキルを教えて導く『戦技教導隊』入り。


「でもフェイトちゃんとアリシアちゃん、アースラ勤務になれてよかったですね」
「そーだね。艦長、ほんとはなのはちゃん達も欲しかったみたいなんだけど」
 リンディは、なのは達も欲しかったようだ。
「流石にAAA級4人は保持させてもらえないって」
 アリシアは、姉妹ってことで特例が認められたのだ。
「なるほどー」

「おかーさん、おにーちゃんといっしょでよかったなフェイトちゃん、アリシアちゃん」
「「うん」」
「わたしも基本的には、うちのコタチトいっしょやし、管理局は人情人事をしてくれるんやねー」
 はやては人情人事らしい。
「まー。うちの場合はレティ提督が6人まとめて高ランク戦力をゲットしようって計算もあるかもしれへんけど」
「「あー。その計算は間違いなくある」」

「主はやて、こちらでしたか」
「みんな!」


「あれれ? シグナム、ヴィータその制服って……」
「武装隊甲冑のアンダースーツだ。局の女子制服は窮屈でいかん」
「こっちの方がなじむんだよ」

「シャマルさんは制服ですねー」
「医療班白衣もセットですよ」


「そういえばシュベルトクロイツね、バージョン8の奴が届いているはずだよ」
「あー、ほんまですかー?」
「杖は落ち着いてきたから管制デバイスも早く作らないとですね」
 マリーが言う。
「お」
 何か連絡が入ったらしい。
「なのはちゃん! レイジングハートの補強調整、終わったって!」
 なのはのレイジングハートは、すずかが訓練校時に手を加えていた。
「あ、じゃ取りにいきまーすっ」
「わたしも行くね。シュベルトクロイツ受け取ってくる」
「マリーさん、おーきにです!」
「はい!」
「私は無限書庫に行ってくるね」
 無限書庫に行くというすずか。
「相変わらず本のむしね、すずかは」
「本の虫で悪い?」
「悪くはないわよ。本が好きだから司書の資格をとったんでしょ」
「うん」
 すずかは、司書の資格を持っているようだ。


 なのはは、鼻歌を歌っている。
「なのはちゃん、ごきげんだねぇ」
「はい! 楽しいですから!」




「891号次元の一般魔法史歴と、その進化記録。それからさっき送った暫定ロストロギア指定物品の鑑定用資料。これは遺失物 管理班とうまく連携して資料抽出してくれ」
 クロノは、どこかへ依頼をしている。


『それと裁判記録で探してほしいデータがある。いま一覧を送るから』
「ちょ……ちょっと待った!」
 待ったを掛けるユーノ。
「まさかそれ全部今週中にやるのかっ!?」
『そうだが何か』
「無茶言わないでくれ! こっちは長年放置されてた書庫内の整理だけでいっぱいいっぱいなんだから!」
『そう言うな。忙しいのはどこもいっしょだ』



『もとはといえば局が怠慢だったからでっ!』
「それはそれ。これはこれだ」


『司書としての権限はあるんだ。人を使え。指示をしろ』
「うう……」



「なんなら、依頼料を申請してスクライアの身内に頼んでもいい」
『……当たってはみるけど……』


『そういった部分も含めて君には期待しているんだ。じゃあ、今週中に頼んだぞ』
「いちおう了解……。検索ヒット率の一覧を送るから優先順位決めを」
『了解』


「ユーノくん! お仕事忙しい?」
「あれ? なのは? いやまあボチボチと……」
 ユーノの仕事は、捗っていないようだ。
「制服届いたんだ。やっぱり白ジャケ似合ってるね」
「えへへ。ありがと」
 見せびらかすなのは。
「何かの途中?」
「レイジングハートのフレーム再強化と微調整が済んだから受け取ってきたの」
 なのはは、レイジングハートを受け取った帰りのようだ。
「ピーキーだし機能が独特だし、すずかちゃんの改造も加わっているから調整が一苦労なんだって」
「カートリッジシステム入っているもんねって、すずかちゃんが改造したの? 司書の資格だけじゃなく、デバイスマイスター の資格まで……」
「すずかちゃんが司書の資格を持っているの?」
「うん。時々手伝って貰っているんだ」
「お昼一緒に食べよう。お昼休み取れるようにわたしも手伝うよ」
「あ、ありがとう。正直助かる……」
「なのはちゃんが手伝うならわたしも手伝ってあげるよ」
「すずかちゃん!?」
 すずかが現れた。
 三人は、書庫の整理をする。
「なのはも今じゃ立派な魔導師だけど、時々少し考えるんだよ」
 ねのはは寝っ転がって本を見ている。
「去年の春。あの時、僕がなのはと会っていなかったら、なのはが魔法と出会うこともなくって、そしたらなのははどんな風に 暮らしてたのかなって」
 ユーノがなのはとの出会いを語る。
「なのはが助けてくれなかったら、僕も危なかっただろうし、いろんな『もしも』を考えると少し怖くなるんだけど」
「そうだね。でもわたしはユーノくんとレイジングハートと魔法に出会えて本当によかったと思っているよ」
 なのはも思い出を語る。
「ユーノくんを助けられる力が自分にあって、フェイトちゃんと正面から戦って心を交わし合うことが出来た。闇の書事件の 解決のお手伝いが出来て、はやてちゃんとも友達になれて本当によかったと思ってるの」
 なのはは、話しながら本の整理をし始める。
「みんああの日、ユーノくんと会えたんだもんね。ユーノくんにはまだ教えて欲しいこととかたくさんあるし、いまも一緒に いられるのすごく嬉しいから、『会わなかったら』はあんまり考えたくないなぁ」
「……うん」
「なのはちゃん、手が止まっているよ」
「ごめん、すずかちゃん。これは、こっちでいいのかな」
「うん。ありがとう」
 その時、ユーノの電話が鳴る。
「はい。ユーノですけど」
『シグナムだ。済まないが少し手を借りたい』
「はぁ。少しならかまいませんが。……訓練用の結界ですか?」


「レヴァンティンも中身はだいぶ新式だ。怪我をさせないように気をつけるからなテスタロッサ姉妹」
≪Ja.≫
「おかまいなく。バルディッシュザンバーも元気いっぱいですから」
≪Yes Sir.≫
「わたしのヴァルディッシュもです」
≪Yes Sir.≫


「え。あれれ、なにあれ?」
 ユーノは頭を抑えている。
「どーゆー状況?」
 状況がつかめないなのは。
「なのはちゃん、ユーノくん、すずかちゃん。デバイスの調整後慣らしのはずが、なんだかまた模擬戦って流れなの」
「なるほどー」
「うちのリーダーもテスタロッサ姉妹もバニングスもまったく呆れたバトルマニアだ」
「フェイトちゃんもアリシアちゃんもアリサちゃんもまた嫌いじゃないから……」
「なのはちゃんのエクセリオン戻ってきてんねんやろ? 参加するかー?」
「そうだね。なのはとすずかとヴィータも一緒にどう?」
「わ、わたしは今日は遠慮を」
「あたしもパス。無駄な戦いはハラが減るだけだしな」
「わたしが参加したら戦力バランスが崩れちゃうから……」
「なんだ、つまらん。このレベルの団体戦ができる機会は貴重なんだがな」
「あはは。それは勤務訓練の時にでもー」
「なのはって、シグナムさんとやるの苦手なんだよね」
「やりづらいタイプってのもあるけど、シグナムさんのは訓練じゃなくてほとんど真剣勝負だから……」

「ヴィータもまざらない?」
 フェイトがヴィータを誘う。
「くどいぞテスタロッサ。あたしは、はやてのため以外で無駄に戦う気はねー。おまえらみたいなバトルマニアと一緒にすんな」
「あーひどーい」
「と言って主の前で敗北するのが嫌なだけだったりはしないか?」
 シグナムの言葉にキレるヴィータ。
「なんだとてめェッ!!」
「わたしにッ!?」
 なのはに喰ってかかる。
「いいぞこのヤローやったろううじゃねえか! 準備しろなのはッ!」
「えええええっ」



「えーとゆーわけで久しぶりの集団戦です」
 何故か仕切っているはやて。
「ベルカ式騎士対ミッド式魔導師、8対8のチームバトル〜!」
 何故か参加することになったアリサ、さつき、すずか。
「ルールは、局の戦闘訓練準拠で攻撃の非殺傷設定は言うに及ばず、武器持ちの子は相手のバリアジャケットを抜かないよう ちゃんと威力設定してなー」
 ルールを説明する。
「リーダーはミッドチーム、クロノくん。ベルカチーム、八神はやて!」
 人数合わせのため、さつきとすずかもはやての指揮下に入ることに……。
「ヴィータとザフィーラが前衛。シグナムは遊撃」
「はい」
「おうっ」
「シャマルはわやしの後ろや。さつきさんとすずかちゃんは、自由に動いてくれてもかまわん」
 作戦を練る。
「マッチアップは入れ替え早め! 主砲4人の大きいのとクロノくんのバインドのチャージタイムを取らせたらあかんで!」
「じゃあ、エロノくんの相手は私がしてあげる」
「ほんまか!?」


 一方、ミッドチームは……。
「クロスレンジは、引きつける程度であまり付き合うな。フォワード組は、はやてとシャマルの捕獲か撃墜を最優先」
 ミッドチームも作戦を立てる。
「なのはは、ユーノをうまく壁にして火砲支援を頼む」
「うん!」
「管理局指揮官5名とその使い魔3名! 高度な連携戦を教えに行くぞ!」
「おーっ!」
「クロノ! ちょ……! また……!!」



「よっしゃ! 魔導士のみんなに騎士の戦闘を見せたろ!」
「おうっ!」



「まー、なんというか若い子たちは元気ねぇ」
「そうねえ」
「仕事でもトレーニングはしているでしょうに」
「技術向上が楽しいんでしょうねー」
 さつきとすずかにはトレーニング相手がいない。
 大人数での集団戦闘は期待でいない。
「それにしても闇の書事件ってさ、第一級ロストロギア関連事件なのに終わってみれば死者0名。同時発生の別事件で重傷者は 出たみたいだけど……」
 その重傷者とはクロノのことだ。
「おまけにレア能力つきの魔導騎士と即戦力レベルの配下5名までゲットして、リンディ提督はいったいどんな奇跡を使ったん だってウワサになっているわよ」
「あらまぁ」
 リンディとレティは模擬戦を見ながら話している。
「奇跡かどうかはわからないけど、あの子たちはなんとも頼もしいわ。あの子たちがもっと大きくなって、部下とか教え子を 引き連れて一緒に事件や捜査に向かっていくようになったら、世界はきっともう少し平和で安全になるかもね」
「それはいいけど、今現在の訓練室がちょっと危なくない?」
 訓練室は、危険な状態だった。
 熱を帯びすぎて周囲の被害のことなどに気が回っていない。



≪stand by ready. charge set.≫
「い……」
「フィールド形成! 発動準備完了ッ!」
 なのはの目は据わっている。
「お待たせしました、おっきいのいきますっ!」
 なのはは、大きいのを準備していたようだ。
「N&F&A&A、中距離殲滅コンビネーション空間攻撃ブラストカラミティッ!」
 なのは、フェイト、アリシア、アリサがチャージを完了した。
「どっこい、こっちも詠唱完了や! 広域攻撃Sランクの維持があるッ!」
 はやても詠唱が完了しているようだ。
「ユーノ」
「結界展開完了。大丈夫、訓練室は壊れない」


「このままじゃ不味いかな?」
 すずかは、懐から封印の鍵を取り出す。
「月の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ、契約の下すずかが命じる。封印解除レリーズ!!」
 ペンダントが月のオブジェを付けた長杖になる。
 そして一枚のカードを取り出した。

「全力全壊」
「「疾風迅雷!」」
「爆炎劫火」
「「「「ブラスト・シュートッッ!!」」」
 凄まじい魔砲に訓練室の結界は崩壊した。
 ボロボロな人たちを他所に無傷な人がいた。
 さつきとすずかだ。
 すずかは、なのはたちが魔砲を撃つ直前にシールドを使って身を守ったのだった。

「なんで、さつきさんとすずかちゃんだけ無傷なんや!?」
 はやてが言う。
 さつきとすずかが生き残ったので模擬戦は、ベルカチームの勝利に終わった。
「すずかちゃんのカード、反則だよ」
 反則だと言うなのは。
 まさしく反則なカードである。
「反則でもいいよ。でも、これも私の力なんだから……」
 自分の力というすずか。


『非常事態発生!』
 局内に警報が鳴り響く。
『A訓練室崩壊!!』
『外壁破損個所から次元空間に大気流出中!』
『修理班は大気流出を防止せよ!!』
 緊急放送が事態の深刻さを物語っていた。
『繰り返す。手空きの局員は、救助活動及び大気流出を防止せよ』
「若しかしてやり過ぎちゃった?」
「そうみたい」
 なのは達は熱くなると回りが見えなくなるようだ。
 全員がバトルマニアだから手におえない。
 ブレーキ役が居ないからだ。
「こらぁ、修理大変そうや」
 訓練室の壁は結界を破壊され大きな穴が開いていた。
 この訓練室は、当面使用できないだろう。
 その後、クロノ達はタップリ上層部から説教されたのは言うまでもない。





 未来はこれから、はじまってゆきます。
 目の前にあるのは新しい夢、大人になっても忘れない巡りあいと願いを胸に抱いて、私たちは笑顔でいます。
 元気です。



 A's篇終了
 次回よりA's to StrikerS篇に進みます。


 次回予告

 なのは「中学生になった私たち」
 フェイト「久々に行う同窓会任務」
 はやて「同窓会任務の内容とは?」
 すずか「今回はわたしも参加しようかな?」
 アリシア「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第74話『同窓会任務1』」


模擬戦だったけれど。
美姫 「ちょっと所か、結構やっちゃったわね」
まあ、ある意味仕方ないのか?
美姫 「どうなのかしら。ともあれ、今回でA's編も終了みたいね」
次からはStsまでの期間か。
美姫 「どんな話になるかしらね」
それではこの辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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