第75話「同窓会任務2」






 『聖王教会』中央教堂

『ええ……。片方は無事に確保しているのですが、もう片方は爆発で発掘現場ごとロストしてしまっています。爆発現場は、これ から調査と捜索を行います』
「クロノ提督、現場の方たちはご無事でしょうか……?」
『ええ。現地の発掘員にも、こちらの魔導師たにも被害はありません。今回は、月村すずかも参加していますから』
「そうですか」
 安堵する女性。
「よかった」
『現場発掘員の迅速な避難は、貴女からの指示を頂いていたからこそですね騎士カリム』
「危険なロストロギアの調査と保守は管理局と同じく聖王教会の使命ですから。名前だけとはいえ私は管理局のほうにも在籍させ ていただいていますしね」
 カリムは、管理局にも籍を置いているようだ。
「こちらのデータでは『レリック』は無理矢理な開封や魔力干渉をしない限り暴走や爆発はないと思われますが、現場の皆さんに 十分気をつけてくださるようお伝えいただけますか」
『はい……。それでは』
「……ふぅ……」
 ため息を吐く。

「騎士カリム。やはりご友人が心配でしょうか?」
「シャッハ」
「よろしければ、私が現地までお手伝いにうかがいますよ。非才の身ながら、この身に賭けてお役に立ちます」
 増援に行くと言うシャッハ。
「クロノ提督や騎士はやては、あなたの大切なご友人。万が一のことがあっては大変ですから」
「ありがとうシャッハ。でも平気よ」
 平気というカリム。
「はやては強い子だし、今日は特にリイーンフォースはもちろん、アインとヴォルケンリッターもいっしょで、はやての幼なじみ の本局のエースさんたちもごいっしょだとか」
「私たちのマスターが居るのです。心配ありませんわ」
「アンゼロットさん、いらっしゃったのですか?」
 何故か、アンゼロットが居た。
「騎士すずかが参加しているのならシャッハに出番があると思いますか?」
「それでは、私の出番はなさそうですね。おとなしく貴女のお傍についていましょう。お茶をお入れしましょうね」
「うん」
「わたしにもお願いしますわ」
 当然のように要求するアンゼロット。
 断れば後が怖いのでアンゼロットの分も用意するシャッハ。



「発掘員の方は観測隊が無事に確保しました。待避警報が出た後も発掘物が心配だったそうで……」
「なのはさ……。高町二等空尉たち護送隊は妨害を避けて運搬中です」
 途中で言いかえたシャーリー。


「はい。了解。現場とアースラは、直通通信が通らなくなっているから、シャーリーとグリフィスくんで管理管制をしっかりね」


「はいっ!」
「あっ……。現場の方にヴィータさんたちが到着したようです」



「ひでえな、こりゃ。完全に焼け野原だ。かなりの範囲に渡っているが汚染物質の残留はない。典型的な魔力爆発だな」
「ここまでの話を統合するとー聖王教会からの報告・依頼を受けたクロノ提督がロストロギアの確保と護送を5人に要請」
 状況を確認するシャマル。
「平和な任務と思ってたらロストロギアを狙って行動しているらしい機械兵器が現れて、こちらのロストロギアは謎の爆発…… って流れであってる?」
『はいっ! あっています!』
「聖王教会といえば、主はやてのご友人の……」
 ヴィータは、クレーターを見つめている。
「ヴィータ、どうかしたか」
「ザフィーラ。別になんでもねーよ。相変わらず、こーゆー焼け跡とか好きになれねーだけさ。戦いの跡はいつもこんな風景だ ったし、あんまり思い出したくねえことも思い出すしさ」
 ヴィータには嫌な思い出があるようだ。



「おい……。おいっ! バカヤロー、しっかりしろよ」
「から……だい……じょうぶ……から」
 血まみれのなのはがヴィータに言う。
「医療班っ! なにやってんだよッ!」
 涙を流しながら叫ぶヴィータ。
「早くしてくれよ。コイツ死んじまうよっ!」
 ヴィータは、忘れていた。
 なのはが吸血鬼だということを……。




「ヴィータ、なにを怖い顔をしている」
 ヴィータの肩を叩くシグナム。
「リインが見たら心配するぞ」
 ヴィータの頭をなでる。
「うるせーな。考え事だよ。なでんな」

「よし……調査魔法陣展開! アースラと無限書庫に転送してね」
『はいっ!』



「えーと、もう一度復習するです」
 リインが覚えたことを確認する。
「AMFというのはフィールド防御の一種なわけですよね? フィールド系というのは―――」
「基本魔法防御、4種類のうちのひとつだね。状況に応じて使い分けたり組み合わせたり、わたしたちのバリアジャケットやリイン の騎士甲冑もバリアやフィールドを複合発生させているんだよ」
 なのははリインに説明する。
「AMFはフィールド系ではかなり上位に入るけどね」
「魔力攻撃オンリーのミッド式魔導師は、とっさには手も足も出ないだろうね」
「ベルカ式でも並みの使い手なら威力増強は武器の魔力に頼っている部分が多いし、ただの刃物やとアレつぶすんはキツいよー」
「でも、なのはさんやフェイトさんやアリシアさんやすずかさんはカンタンに……」
「距離があったし向のフィールドが狭かったからね」
 リインに説明するなのは。
「さっきのやり方だと発動地点がフィールド外じゃないとダメなんだ。囲まれたりしてフィールド内に閉じ込められたら結構ピンチ だね。AMF範囲内で魔法を発動するのは厳しいから」
「飛行や基礎防御もかなり妨害されちゃうし、やり方はあるけど高等技術」
「高等技術というとすずかさんが撃ったアレですか?」
「そう」
「リインなんか気をつけないと大変だよー」
「はうぁっ! そーです! リイン魔法がないとなんにもできないです〜」
「それにさつきさんの『枯渇庭園』はAMFの中でも最凶だよ」
「はわっ。それじゃ魔法が使えないのでは」
「魔法もだけど、存在そのものも維持できなくなるから……」
 さつきの『枯渇庭園』についても講義する。
「いい機会だから、そのへんの対処と対策も覚えていこうね」
「はいです!」
「すみません教官。うちのコをおねがいします!」



「そういやシグナム、一緒の任務って結構久しぶりなんだな」
「そうだな。我々みな担当部署が離れてしまったからな」
「あたしとシャマルは本局付きでシグナムはミッドの地上部隊。ザフィーラは、もっぱらはやてかシャマルのボディガード。 アインは、はやての副官……。ま、家に帰れば顔を合わせるし、あんま関係ねーけどな、緊急任務がない限り休暇には皆揃うしな」
 よほどのことがない限り皆家に帰れるようだ。
「しかし来年には引越しか、海鳴のじーちゃん、ばーちゃんともお別れになるなぁ」
「住所が変わるだけだ、別れではなかろう。会いたいと思えば会える」
「ちょっと間が開いたら、もー変身魔法でも使わねーと会えねーな。育たねえから心配される。年齢だけなら、じーちゃん たちより年上なんだけどな」
「違いない」
「あらー。じゃあ私がちゃんと調整してかわいく育った外見に変身させてあげる♪」
「……いい。自分でやる」
「私たちは、服装や髪型程度でごまかせるだろうな」
「ザフィーラはいいよな。犬だから」
「……狼だ」
 その時、ザフィーラが何かを感じた。
「ザフィーラ? どうした」
「森が動いた」
 森が動いたらしい。
「座標を伝える。シャマル、調べてくれ」
「うんっ!」


「こちら観測基地! 先ほどと同系と思われる機械兵器を確認! 地上付近で低空飛行しながら北西に移動中。高々度飛行能力が あるかどうかは不明ですが」


『護送隊の進行方向に向かっているようです! 狙いは……やはりロストロギアなのではないでしょうか』
「そう考えるのが妥当だな」
 シグナムが答える。
「主はやてとテスタロッサ姉妹、なのは、すずかの5人が揃って機械兵器ごときに不覚を取ることは万がひとつもないだろうが」
「運んでいるものがアレだものね……」
 運んでいる物はロストロギアだ。
「こっちで叩きましょう」
「あぁ」
 シグナムたちが迎撃に向かうようだ。
「観測基地! 守護騎士から2名出撃する。シグナムとヴィータが迎え撃つ!」
「あに勝手に決めてんだよ」
「なんだ……将の決定に不服があるのか?」
「……ねーけど」
「こっちは2人で大丈夫」
「危機あらば駆けつける」
「守るべき者を守るのが騎士の務めだ。行くぞ、その勤めを果たしに」
「しゃーねーなっ!」


 なのはたち5人と1機は飛んでいる。
『主はやて、シグナムです……。邪魔者は地上付近で我々が撃墜します』
 シグナムから連絡が入る。
『テスタロッサ姉妹、手出しは無用だぞ』
「はい……。わかっていますシグナム」
『なのは! おめーもだぞ!』
「はぁい。片手塞がってるしね!」
『特にすずか! おめーだけは手を出すんじゃねーぞ』
「任務が終わったらたっぷり可愛がってあげるからね♪」



『2人ともおーきにな……。気ぃつけてー』
「はい」
「うん」


「シグナム……。AMFの話は聞いていると思うけど気をつけてくださいね!」


「テスタロッサ……。貴様、誰に物を言っている。己が信ずる武器を手にあらゆる害悪を貫き敵を打ち砕くのがベルカの騎士だ」
「魔導師どもみてーにゴチャゴチャやんねーでもストレートにブッ叩くだけでブチ抜けんだよ!」
「弓塚と月村は、己が肉体さえあれば武器などなくても足りるがな」
 さつきとすずかは、己が体さえあれば十分らしい。


『リインもあたしの活躍をしっかり見てろよー』
「はいです。ヴィータちゃん!」


「「出撃」」



「機械兵器移動ルートかわらず」
「あまり賢くはないようですね」
「特定の反応を追尾して攻撃範囲にいるものを攻撃すのみのようです」


『ですが対航空戦能力は未確認です。お気をつけて!』
「未確認なのはいつものことだ。問題ない」




 あの日のアレも未確認だったな。
 あたしもアイツもいつも通りのはずだった。
 問題なんて何もないはずだった。
 誰もが認める無敵のエースがいつも通りに笑ってたから、だから気づかなかった。
 一緒に出撃してたあたしは、誰より早く気づかなきゃいけなかったのに。

「ごめん。ちょっと失敗した……。ヴィータちゃんは大丈夫……?」


 あんなのは、あんな思いは、もう二度と。
 だから。

「まとめてブッ潰すッ」


 シグナムとヴィータが戦闘を開始する。



「シグナムとヴィータは、やっぱり凄いね。未確認でもモノともしない」
 クロノは腕組みをして映像を見ている。
「合流地点までもうすぐだし、そろそろアースラも回収の準備をしとこうか」
 回収の準備を始めるようだ。
「どうしたのクロノくん。難しい顔して」
 クロノは難しい顔をしている。
「この後のことを考えていた」
「あと?」



「シグナムたちは大丈夫そやね」
「うん」
「シグナムもヴィータちゃんもかっこいーです!」
「だね」
「はやて、特別捜査官としてはどう見る?」
「んん?」
 フェイトがはやてに聞く。
「あのサイズのAMF発生兵器が多数存在してるゆーんが一番怖いなー。今回、この世界に出現してるんが全部であって欲しいけど、 そうでないなら規模の大きな事件に発展する可能性もある。特に量産が可能だったりするとなー。執務官と教導官と武装執務官は どないやろ」
「私はあの未確認がロストロギアを狙うように設定されてるのが気になるよ。猟犬がいるってことは、その後ろに狩人がいるって ことだもんね」
「……ロストロギアを狙う犯罪者か……」
「そう。技術者型の広域犯罪者は一番危険だから」
「後、技術者型と計画型が合わさった超広域犯罪者もね」
 すずかは、名前を出さなかったがモリアーティ一味のことだ。


「そういった事件になると管理局でも対応できる部隊はどれくらいあるか。人や機材が揃ったとして動き出せるまでどれぐらい かかるのか、そんな状況を想像すると苦しい顔にもなるさ」
「なるほど。指揮官の頭の痛いところだね」
「はやても指揮官研修の最中だからな、一緒に頭を悩ませることになる」
「指揮官研修というとすずかちゃんもだね」
「あぁ。緊急任務ではやてほど進んでいないが」
「ランクがランクだらね。そのせいで、手に負えなくなった事件を押し付けられているもんね」
「押し付けられた任務の解決率は100%っていうのが恐ろしい」
「押しつけのせいで、本来の任務が殆ど出来ていないんだよね」
「本来の任務?」
「クロノくんも聞いたことあるでしょう。モリアーティ一味の名前は」
「モリアーティ一味……。超広域指名手配犯」
「まぁ、捜査自体はホームズ提督が指揮を執っているんだけど」





「シグナムさん、ヴィータさん、未確認撃破! 護送隊と合流です!」



「まぁ、今回の事件資料と残骸サンプルは、そのテの準備の貴重な交渉材料でしょ。事件がどう転ぶかわかんないのなんて、いつも のことだし」
「それはそうなんだがな」
「なんとかなるよ。『P・T事件』も『闇の書事件』も『吸血鬼事件』もその後の色々な事件や事故もみんな、なんとかしてきてるん だもの」
 之までなんとか危機をくぐり抜けてきたようだ。
「今日はきっちり任務を済ませて予定通りに同窓会! 笑顔で迎えてあげようよ」


 次回予告

 なのは「任務を終えた私たち」
 アルフ「肉肉、肉はあるのか?」
 すずか「騎士の皆も呼ばないと」
 アンゼロット「これからする私のお願いに‘はい’か‘イエス’でおこたえください」
 はやて「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第76話『同窓会任務3』」



ロストロギアを狙う未確認の敵か。
美姫 「まあ、無事に今回は任務も終えれたみたいだし良かったじゃない」
だな。特に問題もなかった事だし。
美姫 「この後は同窓会で皆と会うみたいね」
それは次回かな。
美姫 「それではこの辺で」
ではでは。



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