第88話「王族会議」






 なのは達も参加することになった王族会議。
「改めて言う、余は銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムである」
 改めて名乗るラインハルト。
 しかも一番最初である。
 自分が一番偉いと言わんばかりだ。
「確認しますが貴方の世界には聖王家は存在しないのですね」
「聖王家は存在しない。銀河帝国を統べるのはローエングラム家だけだ」
 ラインハルトの居た世界には聖王家は存在しないようだ。
「次は、その方たちだ!!」
「妾は、アルトルージュ・ブリュンスタッド。吸血鬼の王族だ」
「わたしは、アルクェイド・ブリュンスタッド。真祖の王族だよ♪ 次、さっちん」
「弓塚さつき・ブリュンスタッドです」
「月村すずか。夜を統べる一族の皇帝だ!! そして、この我のものになるがよい!!」
「次は、私たちですわね。セレニティ星王家第7正統皇女グリューエル・セレニティ」
「同じくセレニティ星王家第8正統皇女グリュンヒルデ・セレニティ」
「何故、こうも王族がおるのだ!!」
「はやてちゃんも王だよね?」
 はやても王だ。
「『夜天の王』八神はやて」
「お前まで王なのか!?」
 はやてまで王だと言うことに驚く。
「ラインハルトさま。これは、王の安売りですね」
「安売りがあってたまるか!!」
「やれやれ、こうも王族だらけだとは計算外だ」
「ヤン・ウェンリー、啓でも計算できないことがあるとは初耳だ」
 ロイエンタールも驚く。
「それに、あの紫の髪の子が皇帝とは……」
「ヤンよ、あの小娘のことが気になるのか?」
「いえ。それよりも閣下は、あの子のことをどう思いますか?」
「ふん!! 民衆から搾取した金で生活するような奴、評価するまでもない」
「あんた!! 言うわね、すずかが搾取するわけないわ」
 アリサが吼える。
「どうせ、お前たちも搾取しているのだろう!?」
「陛下、我が雇い主は搾取などしておりません」
「ルッツ、啓はその者の肩を持つか?」
「この書類の山を見れば分かると思います」
 リモコンを操作する。
 すると天井から巨大スクリーンが下りてくる。
 スクリーンには、書類の山に埋もれて処理をするすずかが映る。
「あの書類の山は何だ!?」
「ラインハルトさまは、処理できますか?」
「ヤン・ウェンリー! 敬はあの書類の山、処理できるか?」
 ヤンに話を振るラインハルト。
「私には無理ですよ」
 即行で白旗を揚げるヤン。
 書類の山を見て早々に音を上げた。
「閣下は出来るのですか?」
「余にも出来ない!! 何だ!? いったいどのくらい貯めたのか?」
 ラインハルトには、すずかがサボっているように見えるのだ。
 すずかもサボっているわけではない。
 色々あって時間が割けなかったのだ。
 その理由は、ブラウンシュヴァイク等にあった。
「その理由は、ブラウンシュヴァイク等にあります」
「ブラウンシュヴァイクだと!! 死んだ後も迷惑をかけるか!!」
 ブラウンシュヴァイクに怒るラインハルト。
「余が、再びヴァルハラに送ってくれる」
「ラインハルトさま、そのブラウンシュヴァイクですが、月村すずかによって処刑されたようです」
「月村すずかが処刑しただと!? 余の手でヴァルハラに送ってやりたかったが、居ないのではしかたない」
「それにオフレッサーも処刑されています。どうやら我々の知っている者が幾人か蘇ったようです」
 ラインハルト達は知らない。
 リッテンハイム、フレーゲル、シュターデンも処刑されていることを……。
 すずか、アルトルージュ、アルクェイドの『殺陣舞踏』によって。
「ファーレンハイト、ルッツ! 余は決してあきらめないぞ!! 敬等が余の部下となるまでは……」
 何が何でも部下にしたいようだ。
「以前と違って病によって死ぬこともない。時間はたっぷりある。急ぐことはない」
 ラインハルト達は、焦ることはない。
 年老いて死ぬことはないのだから……。
「だが人材の方は急がねばならない。ちょうど『65年マフィア』なる者達が揃っておる。用兵講座をおこなう!!」
 何故か用兵講座をすると言いだすラインハルト。
「ヤンよ、お前も講師を務めろ!! 之は命令だ!!」
 命令と言われれば反論できない。
 しかも上官ともなれば……。
「私もですか?」
「そうだ! 不満か!?」
「不満はありませんが、何故私なんですか? 私は、最後まで閣下に勝てなかったんですよ」
「それ言うなら余もだ!! 結局、啓は余を勝たせなかった」
 二人は、お互いに勝つことは出来なかった。
「それに此処には元帥がたくさんおる。それぞれの用兵を叩き込むことも出来る」
 すずかの使用人のファーレンハイトとルッツも元帥だ。
 いや。
 元帥だったのだ。
 ロイエンタールの副官だけは元帥ではない。
「時間が惜しい、直ぐに始めるぞ」
 用兵講座が始まる。
「弓塚さつき・ブリュンスタッド、月村すずか、八神はやて! 啓ら3名は余自ら用兵を叩き込んでやるから覚悟しろ!!」
 ラインハルトに用兵を叩き込まれることになったさつき、すずか、はやて。
「では、私は高町教導官に教えます」
 キルヒアイスは、なのはに教えるようだ。
「閣下、私は……」
「ヤンは、好きな歴史の本を見るために司書の資格を取る為の勉強でもしていろ!! どうせ司書の資格を取るのだろう?」
「閣下には適いませんね」
 ヤンは、降伏する。
 どうやら無限書庫の司書資格を取るつもりのようだ。
「ベレー帽の兄ちゃん、司書資格を取るつもりなんか?」
 はやては、ヤンに聞く。
「えぇ。まぁ……」
「そんなら、ここに資格もちがおるで」
「何!? 資格持ちがいるのか?」
 資格持ちが居ることに驚く。
「ラインハルトさま、無限書庫は万年人手不足のようです」
「魔導師だけでなく史書も不足とは、今まで何をしておったのだ!!」
「それを言うのは無茶です。ほんの数年前までは、忘れられた存在だったのです」
「責任者は、誰だ!?」
 キルヒアイスは、携帯端末で調べる。
「現在の責任者は、ユーノ・スクライアのようです」
 無限書庫を使えるような状態にしたのが彼なのだ。
「今まで彼は何をしておったのだ!!」
「いえ、ラインハルトさま。物置だった無限書庫を使えるようにしたのが彼なのです」
「それ以前の責任者は?」
「居ません」
 居ないのも当然だ。
 それ以前の責任者は居ない。
 物置としてしか使っていなかったのだ。
 ただ、置いてあれば良いと言う考えしかなかったのだ。
 その結果……。


 時空管理局本局……。
 〜無限書庫〜
「司書長」
「なに!?」
「クロノ提督から催促が来ています」
「また? 依頼された資料は送った筈だが……」
「それが、届いていないそうです」
 クロノに資料は、届いていなかったようだ。
 まるで、何者かに止められているように……。
 その様子はすずかに見られていた。



「くすっ」
 困り果てたユーノの姿を盗み見て笑うすずか。
 それは、すずかがだけに出来る行為だ。
 司書資格が無ければ出来ないのだ。
 すずか謹製のステルス監視カメラが仕掛けられていた。
 そして、すずかはそ知らぬ顔で用兵の話を聞いている。
 何故なら隠し部屋にて録画しているからだ。
 当然、なのはにも教えていない。
「先ず、啓らには100名の部下が居たとする。その戦力を持って敵を粉砕せよ!! 但し、敵は啓らの倍の戦力で篭城している。尚且つ3日以内に解決せよと命じられたとする。どうやって解決するか答えてみよ」
 難問を出すラインハルト。
 この場に居るキルヒアイスもヤンも答えが分かる。
 それは、幾多の戦場を潜り抜けてきたから分かるのである。
「2倍の戦力差か……」
 悩むはやて。
 指揮官研修でもこんな課題は出ない。
「相談するのは禁止だ!! 一人で答えを出せ!! 優秀な副官にめぐり合えるとも限らないのだぞ」
 相談を禁じるラインハルト。


 閣下も最初から難問を出すな……。
 それに相談も禁止……。
 正解が出るかどうか……。


「最初から……」
「指揮官は、前線に出ることは禁止だ!! 部下達を動かして解決せよ」
 指揮官は、自ら前線に出ることは許されないようだ。
 部下を使って解決せよとのことだ。
 用兵講座なのだから当然だ。

 なのは達は考える。
 犠牲を出さずに倍の敵を粉砕する方法を……。


 ラインハルト達の前には人数分の空間モニターが開かれている。
 そのモニターには、それぞれの用兵が映し出される。
 映像ではなく文字情報だ。
 文字だけではない。
 人型のマークも地図上にある。
 それが動く。
 敵方は、ラインハルト達が動かしているようだ。
 なのは達に勝たせるつもりはないようだ。
「その程度の用兵、私には通用せんぞ!!」
 ラインハルト達はなのは達を撃破していく。
 用兵の素人と用兵のプロ、結果は明らかだ。
 次々、兵を失うなのは達に対してラインハルト達は損害らしい損害は出していない。
 突出して戦線を押し上げ、後退して誘い込んで撃破していた。
「ほう。誘いに乗るのを止めたか……」
 あるモニターを見つめる。
 他のモニターは、誘い込まれて兵を失っていた。
 戦力差は、開くばかりだ。
 損耗率も3割を超えようとしていた。
 3割が戦闘継続可能な数値だ。
 それを超えると戦闘継続は不可能になる。
 そして、突撃思考のアリサは……。
「あぁぁっ、全滅……」
 突撃しすぎて全滅した。
「後一寸で、突破できたのに……」
 アリサは、敵の策に引っ掛かり誘い込まれ全滅したのだ。
 なのは、フェイト、アリシアも苦戦していた。

「用兵の事を掴み始めているようだが、勝たせはせぬぞ」
 勝たせたくはないラインハルト。
「夜間の攻撃……やるな」
 夜の攻撃は兵士たちの疲労を大きくする。
 敵がどこにいるか分からない為、疲労度は大きくなる。
 兵士の混乱を抑えにかかる。
 指揮官が優秀だと混乱の収集は早い。


「夜営に乗じた奇襲もダメか……」
 奇襲は失敗に終わったようだ。
「穴を掘るのも時間が掛かる……」
 時間的に穴を掘るのは不可能だ。

 守り手は、圧倒的に優位な条件なのだ。
 見晴らしも良い場所なのだから……。


「このままじゃ、あかん! 何とかせな……」
 はやても手詰まりだ。


 シュミレーション内の時間だけが無駄に過ぎていく。



「こまった……」
 ヤンは困っていた。
 不敗の名将も白兵戦は苦手のようだ。
「誘い込むつもりが、いつの間にか追い込まれていたとは……」
 地形を見て戦っていたヤン。
 当然、退路の確保もしていたはずだった。
 気づいたら逃げ道の無い方に追い込まれていた。
 人数が多い分、狭い場所では動きが制限される。
 逃げこんだ場所が渓谷だった。
 魔導師が砲撃して崩れた岩が降ってくる。
 そして渓谷の上からも砲撃を見舞う。
 それは、決定的だった。
 頭上からの砲撃は、逃げ舞う敵に次々命中する。
 ヤンは、収拾を試みる。
 もはや、混乱を収拾できない。
 次々、倒されていくヤンの部下達。
 混乱した兵たちは部隊では無く個だ。
 個になった集団は脆かった。
 為す統べなく全員捕縛された。

 する事が無くなったヤンは、観戦する。
 さつきの作戦に敗れたのだった。
 ヤンは、こうなる事を恐れていたのだ。
 いくら数があっても混乱した部隊を立て直すのは簡単ではない。



「ん!?」
 ラインハルトは違和感を感じる。
「しまった!!」
 罠だと気付く。
 そして直ぐに対応を取る。
 兵の混乱を直ぐに収める。
 傷口が広がる前に塞ぐ。



「あぁぁん、負けた」
 なのはが負けた様だ。
「なのはも?」
「フェイトちゃんも?」
「うん」
 フェイトも負けていた。
「なのはとフェイトも負けたの!?」
 アリシアが聞く。
「じゃあ残っているのは、さつきさんとすずかちゃんとはやてちゃんとアリサちゃん?」
「あたしは負けたわよ」
 アリサが言う。
「アイツら、何者!? 強いってもんじゃないわよ」
「うん。凄く強かったよね」
「わたしは、勝ったけど……」
「「「「……………………」」」」
 さつきの言葉に固まる。
「さつきさん、勝ったの!?」
「何とかね」
「現在の勝敗は、1勝4敗……」
「残っているのは、すずかとはやてだけね」
 残っているのは、すずかとはやてだけだ。
 その相手が、ラインハルトとキルヒアイスなのだ。
「二人とも粘っているね」
「うん」
 すかとはやては、粘っていた。
 そして、片方で決着がついた。
「負けてしもうた……」
 はやてが負けたようだ。
「赤毛の兄ちゃん、強いわ」
「後は、すずかだけか……」
 すずかは、あれからラインハルトと互角の勝負をしていた。
「すずか、頑張っているね」
「金髪の兄ちゃんから余裕の表情が消えたで」
 すずかは、ラインハルトを本気にさせた様だ。

「キルヒアイス、敬も勝ったか!?」
「えぇ。ロイエンタール提督、貴方は?」
「勝ったさ。俺は……」
「では、私たちは全勝ですね」
「全勝ではない」
 ファーレンハイトが言う。
「ヤンが負けた」
「あの魔術師が負けたか」
 ヤンが負けたことに驚くロイエンタール。
「ヤンが負けて相手は?」
「弓塚さつき・ブリュンスタッド……。自称、王族だ」
 さつきの事を自称王族と言うロイエンタール。
「さっちんは、自称王族じゃないよ。れっきとした王族だから」
「そんなのは関係ない。王は我が皇帝カイザーだけだ」
「その金髪の孺子、すずかに負けそうだぞ」
「なに!?」
 モニターに視線を向ける。
 そこには、いつの間にか包囲されているラインハルトの姿があった。
 前後左右か間断なく攻撃を仕掛けられていく。
「我が皇帝カイザーが苦戦をするのはヤン・ウェンリーだけかと思っていたが、月村すずか、ここまでやるとは」


「あれ!? 之ってシオンの……」
 さつきは、何かに気付いた。
「さっちんも気が付いた!?」
「はい」
「すずかちゃん、シオンの能力使ってない?」
「シオンのって、何とか思考ですか?」
「そう。それ!!」
 すずかは、分割思考を使っていた。


 相手の考えが分かるようになってきたし、決着を付けようかな?


 すずかは、決着を付けようとする。
 ラインハルトも決着をつけたいようだ。


 こんな高揚感、ヤンとの戦い以来だ!


 ラインハルトは、高揚感に浸っていた。
 久しぶりに楽しい時間なのだから……。
「やるじゃないか、月村すずか! 王族とか抜かしただけはあるではないか」
「そうですか? そう言う貴方も楽しんでいるのではないですか?」
「確かに楽しい。ここまで高揚感に浸ったのは久しぶりだ!! だが、それも終わりだ!!」
「そうですね。お遊びは、ここまでにしましょう」
 今まで本気ではなかったようだ。


「お遊びだと!? 我が皇帝マイン・カイザーは、本気ではなかったのか?」
 ロイエンタールが言う。
「どうやらそのようですね。彼女も……」
 直後、空気が変わる。


 モニター上では、双方の用兵が繰り広げられる。
 それを見る者たち。



「これならどうだ!!」
 ますます熱くなるラインハルト。
「では、これならどうですか?」
「何を……」
 すずかに新たな手を打つ。
 負けじとすずかも対抗策を打つ。
 分割思考もフル活用しラインハルトの次の手を読む。

 そして、尚且つ凄いのが、同時に書類整理をしていたのだ。
 そんなすずかに激怒するラインハルト。
「貴様は、やる気があるのか!? それとも余をナメておるのか!!」
「やる気はありますよ。唯、時間が勿体無いから」
 すずかには、時間が幾らあっても足りない。
 送られてくる書類や陳情も増え続ける一方で減る気配すらない。
 すずかが出来る長なので、全部丸投げされているのだ。
「そんなの余との用兵戦の後にしろ!! 貴様が負ければ、する時間も無いほど課題を課すがな」
 ラインハルトは、既に地獄の用兵プランを用意しているようだ。
「そんな心配はしていません。後、数ターンで決着がつきますから」
「既に余の勝利は確定したこの状況から勝てると言うか!!」
「勝てますよ。既に仕込みは終わっていますから」
 仕込みを終えているすずか。
「なら、その仕込とやらを噛み砕いてやる」
 すずかの用兵を噛み砕くと言うラインハルト。



 それから数十分後……。
「何故だ!! 何故、あそこから逆転できるのだ!?」
 負けを認めたくないラインハルト。
「余は、負けを認めないぞ!!」


「ローエングラム公が負けるとは……。啓らは、どう思う?」
 元帥軍団に聞くロイエンタール。
「ローエングラム公が負けるとは信じられませんね。私でも勝てなかったのですから」
「そうだったな。私とミッターマイヤーが、ハイネセンを直撃して停戦命令を出させたからな」
 その時が、ヤンが勝つことが出来た最初で最後の機会だったのだ。
「あの娘も容赦ないよな」
 最後の頃、すずかは容赦なかった。
 圧倒的な戦力差があったのに一方的な戦いになった。
 幻術で増えた部隊に振り回され疲労し、一瞬の隙を突かれ本隊に侵入を許してしまったのだ。



 そして、すずかは……。
 書類決済を続けていた。
 書類決済をしながらラインハルトに勝ってしまったようだ。
 平然と書類の整理を続けている。
 書類がダンボールに入れられる。
 処理が終わった書類の発送手続きがとられる。


「ラインハルトさま、お気をお静めください」
 ラインハルトの怒りを静めようとするキルヒアイス。
「これが静まらずに居られるか!!」
 ラインハルトの怒りは収まらない。
 それもその筈。
 用兵のイロハも知らない小娘……。
 それに他の事をしながらでだ。
 まじめにしての敗北ならまだしも、他の事をしながらでは……。
「再戦なさればいいではありませんか。実戦ではないのですから、何度敗北しても良いではありませんか」
 そう之は、実戦ではない。
 コンピュータ上のシュミレーションだ。
 戦死することは無かった。



「さて、講座も終わったようですし、お茶会を再開しましょう」
 お茶会を再開しようというグリューエル。
「用兵の講義はまだ終わっておらぬ」
「そんな状態で続けても意味はありませんわ。また、すずかさんに負けるだけです」


 キルヒアイスの考えもグリューエルと同じだった。
 冷静さを失った状態では、勝てる勝負も勝てない。

「我侭な、金髪さんは無視してお茶会にしましょう」
 ラインハルトを無視してお茶会を再開する。
 頭を使って消費したカロリーを補給する。
 なのは達は用兵を学ぶためにカロリーを消費していた。
 そして、吸血鬼だ。
 要求するカロリーの量も多い。


「ラインハルトさまもお茶を飲んで落ち着いてください」
 ラインハルトをなだめるキルヒアイス。
「そうですよ。閣下は熱くなって、さらに熱を求めては……」
「ローエングラム公、新たな好敵手を得られたご感想は?」
「余が好敵手と認めるのは、ヤン・ウェンリーのみだ! あんな小娘を好敵手と認めるわけにはいかん」
「それより、評価をしましょう。今後の用兵指導の資料にしませんと」
 なのは達の評価をしなければならない。
「不満もおありでしょうが、はじめた事は最後までしてください」
 用兵講座を始めたのは、ラインハルトだ。
「時間さえあれば、あんな小娘に負けなどしない!!」
 時間さえあれば負けないというラインハルト。
「閣下、復讐戦よりも評価をしてください」
 ヤンにも仕事をするように言われる始末……。
「ヤン・ウェンリー! ならば、啓が月村すずかと戦うが良い」
「私がですか!?」
「そうだ!! もしかして勝つ自信がないのか?」
「無いわけではありません。給料分の仕事はしますよ」
「給料分以外は、働かぬと申すか?」
「はい」
「お話は済みましたか?」
 すずかが、ラインハルト達に聞く。
「話は済んでおらぬ」
「では、敗者に言う。我のものになれ」
 すずかの口撃。
「断る!!」
 ラインハルトの口撃。
「余は、誰にも従わぬ」
「ヤンさん。貴方はどうしますか!?」
「どうしようかな?」
 ヤンは、迷っている。
「毎日、ブランデを一本支給しても良いですよ」
 すずかの口撃。
 ヤンは、ダメージを受けた。
 ヤンの心は揺れている。
「ブランデも欲しいんだけど……」
 ヤンは、ブランデが欲しいようだ。
 そんなヤンにすずかの口撃は続く。
「ブランデの飲み放題券」
 すずかの会心の一撃。
 ヤンは、死んでしまった。
 さらにすずかの口撃は続く。
「将来の個人用戦艦……」
 個人用戦艦に釣られる。
「建造から運用費、全額負担」
「船で余を釣るつもりか!?」
「戦艦ブリュンヒルト」
 ブリュンヒルトの名前にラインハルトは揺れる。
「個人用戦艦が欲しくば、我のものになれ!!」
 すずかの口撃。
 ラインハルトは、ダメージを受けた。
「断れば、戦艦は未来永劫手に入らぬぞ」
 すずかの会心の一撃。
「完成後は、戦艦ブリュンヒルトは、そなたの物だ」


 ブュリュンヒルト……。
 ブリュンヒルトが余の下に帰ってくる。


「もう一度言う。戦艦ブリュンヒルトが欲しくば、我のものになれ!! ローエングラム!!」
 すずかの最凶の口撃。
 ラインハルトは、大ダメージを受けた。
 ラインハルトは、死んでしまった。


 次回予告

 キルヒアイス「月村すずかの口撃で死んでしまったラインハルトさま」
 はやて「その程度の口撃で死んでしまうとは情けない」
 キルヒアイス「起きて下さいラインハルトさま」
 ラインハルト「今度は、艦隊戦で勝負だ!!」
 ヤン「ローエングラム公の憂さ晴らしの対象にされる提督」




 はやて「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第89話『なんで僕が』」

 すずか「この我のものとなれ!!」



会議のはずが。
美姫 「会議というよりも戦術を競い合ってたわね」
ラインハルトは負けた上に配下にされそうだしな。
美姫 「果たしてどうなるのかしらね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る