読んでくれている皆さん、ありがとうございます。
この「Quadrille(カドリール)」ですが、「An unexpected excuse 〜夜明け前より瑠璃色な フィーナ編〜」の
続編として読んでいただけるとうれしいです。

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Quadrille(カドリール)

前編 月への招待状
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はじまりは、一通の招待状だった。


「・・・・?」
見慣れない、とぼけた表情をしている。

「恭也。何回、同じことを言わせるつもりよ?」
さすがにイラついた表情をこちらに向けている桃子は左手に持った白い紙をパタパタと振っていた。

「・・・・・」
その紙の向こうにあるのは、まったく納得がいかないという表情をはりつけた高町恭也の端正な顔だった。


「フィーナの18回目の誕生パーティなのはわかった」

「あんたね、自分の彼女の誕生パーティぐらい出てあげればいいでしょ」

憮然とした表情になった恭也は、腹立ちまぎれにか、目の前の白い紙を桃子の手からひったくった。


白く分厚い、二つに折られた紙。
開いた上部には、スフィア王国の紋章が入っており、そして、最後にはフィーナ・ファム・アーシュライト王女の
直筆のサインが入っていた。

内容を確認すると、18回目の誕生パーティを行うことになったらしい。
パーティはダンスをメインとするダンスパーティになっている。
これはフィーナが言い出したことなのだろう。

そして、招待客の欄に目が行く。
思わず、頭を抱えたくなった。

恭也はもちろんのこと、美由希・フィアッセ・かあさん・なのは・レン・晶。
赤星・藤代さん・忍・ノエル・神咲さん・リスティさん・フィリス先生・ゆうひさん・アイリーンさん。
もちろん、さざなみ寮のメンツやCSSのメンバーも招待されているのだ。

「出るのはいいとしよう。だが、なぜ、俺の友人たちや家族の名前が入っている?」

「そんなの、知らないわよ。本人に聞いてみればいいでしょ」

「それにダンスパーティって、かあさんは踊れるのか?ワルツとか」

「一通りは踊れるわよ。士郎さんから教わったから」

「父さんからか。意外だ。果てしなく意外だ」

恭也は父のことを思い出していた。

いい加減で行き当たりばったりで息子をおもちゃ程度にしか思っていない父が
母さんにダンスを教えていたと聞き、父さんがダンス・・・・・・。どうも、ピンッと来んな。
そもそも、父さんはダンスなんて踊れたのか?
父さんのことだ、踊れたのだろう。

「そういうあんたはどうなの?踊れるの?」

「社交ダンスなら一通りは踊れるけど、それがどうかしたのか?かあさん」

「・・・・・・・。ぇ?踊れるの。意外ね。本当に」

「かあさん。俺を何だとおもっている?」

「ん。無表情で無愛想でそれ以上に鈍感かしらね」

「・・・・・・・・・」

「冗談よ。やーーね。怒んないでよ。恭也」

「別にいい。そんなことより、知らせるのは早いほうがいいな」

「そうね。誰にでも予定があるから」

「明日にでも、集まれる人だけでも、みどり屋に集めて伝えるとしよう」

「そうね。それがいいかしら」

「うむ。了解。じゃあ、さっそく、耕介さんに連絡をとるとしよう」


プルプルプルプル。プルプルプルプル。

「はい。さざなみ寮です」

「耕介さんですか?」

「その声は恭也君だね。今日は何か用事かい?それとも、那美ちゃんかい?」

「耕介さん。明日、19時ぐらいに寮のみんなを連れてみどり屋に来てもらえませんか?」

「・・・・・?ああ、わかったよ。19時にみんなを連れて行くよ」

「はい。よろしくお願いします」



そして、CSSのティオレさんに連絡を取る。

「はい。クリステラソングスクールです」

「イリアさん。お久しぶりです。ティオレさん、お願いしたいですけど・・・」

「恭也くん、お久しぶりです。学園長ですか、しばらく、お待ちください」


「恭也。お久しぶりね。鳴海のコンサート以来になるのかしらね」

「ええ。そうですね。お久しぶりです。ティオレさん」

「今日は何の用事かしら?」

「9月28日から4日間ほど、そちらの予定はどうなっていますか?」

「9月28日からよね。・・・・。何もないわよ」

「俺の友人の誕生パーティにティオレさんたちも呼ばれているので、連絡しました」

「誕生パーティ?」

「はい。そうです」

「場所はどこなのかしら?」

「スフィア王国と言えば、わかってもらえるとおもいます」

「スフィア?・・・・月?」

「はい。月のスフィア王国です」

「パーティの内容はどうなのかしら?」

「ダンスパーティだと書いてありますよ」

「わかりました。みんなには伝えておくわね」

「お願いします。それと、もう一つ、お願いがありまして」

「わかったわ。アイリーンとゆうひに行かせるから」

「ええ。お願いします。近づいたら、連絡入れますので」

「楽しみにしているわ」



翌日の朝、全員がそろったところで

「みんな、ちょっと聞いてくれ」

「何?恭也」

「何?恭ちゃん」

「なあに?お兄ちゃん」

「何でしょう?お師匠」

「何でしょう?師匠」

「今日の19時にみどり屋に集合。なのはは、俺が連れていくから」

「お兄ちゃん。わかったよ」

「みんなも遅れないで来るように」

「「「「「はーーい、わかりました」」」」」



学校に行き、お昼休みに赤星たちにもみどり屋に来るように言う。


そして、時が過ぎ、夕方になった。

「なのは、そろそろ、行こうか」

「はぁい。わかったよ。お兄ちゃん」

「じゃあ、俺は行くけど、みんなも遅れないように」

徐々にメンバーが集まり始める。
19時近くになると全員がそろった。

「みなさん、お忙しい中、わざわざ、お集まりいただいてありがとうございます」

「あいさつなんざはどうでもいいんだよ」

真雪さんが一言。
寝起きなのか、機嫌が悪いみたいだ。

「本日、集まってもらったのは・・・・」

『集まってもらったのは?』

「その前に確認したいことがあります。9月28日から4日間ほどの予定がある方は手を挙げてください」

高町家は全員挙げていない。
赤星・藤代さん・忍・ノエルも挙げていない。
さざなみ寮の人たちも挙げていない。

「恭也。それがどうしたの?」

忍が聞いてくる。
みんなも、うんうんと言う感じに首を動かす。

桃子が招待状のコピーを恭也に渡した。

「9月29日にフィーナの18回目の誕生パーティが行われます。その招待客としてここにいる全員や
CSSのメンバーも入っています。全員で行きたいと思っています」

「お兄ちゃん、場所はどこで行われるのかな?」

なのはが聞いてくる。

「月のスフィア王国だ」

返答にみんなが驚いている。

『つ、月?』

「恭也。冗談もほどほどにしておけよ」

真雪さんが言う。

「信じられないのはわかります。では、今から、招待状のコピーを渡しますので、読んでください」

みんなが招待状を読んでいる。

さすがは恭也の知り合いだけあって、書かれている事を現実として受けて止めていく。

耕介さんが聞いてくる。

「恭也君。ダンスパーティって書いてあるけど、俺たち、踊れないよ」

「踊れない人がいるのは判っていますから、助っ人を用意しています」

真雪さんが聞いてくる。

「助っ人?それより、恭也、お前こそ、踊れるのか?」

「一応、踊れますよ。それが何か?」

美由希・フィアッセ・桃子以外全員が驚く。

『踊れる?本当に?』

「美由希ちゃん。驚かないね」

「はい。私も踊れますから。それに、私と恭ちゃんとフィアッセのダンスは、ティオレさん仕込みだから」

「もう、そろそろ、助っ人が着くはずだが・・・・」

『助っ人?』

カラン。
音ともにドアが開いた。そこには、ゆうひさんとアイリーンさんが立っていた。

「こんばんわ〜」

「恭也くん、きたで〜」

「ゆうひさん、アイリーンさん。お久しぶりです。遠いところ、ありがとうございます」

「ゆうひとアイリーンさんが講師なのかい?アイリーンさんはわかるとしても、ゆうひは・・・」

耕介さんがゆうひさんをけなしている。

「恭也くん。耕介さんが疑ってる。ほんまに踊れるのに・・・」

泣きついてくるゆうひさん。

「ゆうひさんが踊れるところを見せればいいと思います」

「そやな。恭也くん、相手してくれる?」

「いいですよ。それじゃ、今からうちの道場で一度、踊ってみせますから見に来れる人は来て下さい」

『そうだね。一度、恭也の実力を見ておかないと・・・』

返事が帰ってくる。

「出る前に、みなさん、フィーナのパーティに参加ということでいいですか?」

『いいですよ』

全員、参加の意を表したのである。



恭也たちは高町家の道場に集合した。

「美由希。曲のほう、頼む」

「恭ちゃん、わかったよ」

「それじゃ、みなさん、見ててください」


ワルツがかかり、優雅に踊り始める二人。

二人の踊りは、見ている者全てを釘付けにしていく。

「さすがね。恭也」

アイリーンさんが一言。

そして、曲が終わり、二人は互いに礼をしている。

『・・・・・・・』

「みなさん、どうでした?」

「ゆうひ。すごいじゃないか。恭也君も」

耕介さんが言ってくる。

『す、すごい』

「お兄ちゃん。すごかったよ」

なのはが飛び込んできた。

「ありがとう。なのは」

恭也はなのはの頭をなでる。

「皆さん、明日から練習を始めましょうか。少しの時間でもいいので」

次の日から、夕方になると、高町家の道場にはワルツが流れていた。
練習は出発の前日まで続いていた。


そして、出発当日になるのである。


中編に続きます。



あとがき

ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
カドリール前編が書き終わりました。
小鈴「京梧。本当に文才ないねぇ」
ひどっ。
自分でもわかってるけど・・・・。
小鈴「わかってるなら、浩さんを見習いなさい」
うん。わかってるけど、これだけはどうしても直らないの。
小鈴「なんなら、遺伝子組み替えてあげようか?」
・・・・・・・・・。
小鈴様、そんなことが出来るのでしょうか?
小鈴「美姫師匠の力を借りれば出来るよ。やる?」
遠慮しときます。
小鈴「でわ、この辺で。感想は掲示板のほうに」
よろしくね。



おお、もの凄い人数が。
美姫 「しかも、ダンスよ、ダンス」
一体、どうなるのか。
美姫 「うーん、楽しみね〜」
うんうん。次回も楽しみに待ってますよ〜。
美姫 「待ってるわね〜」
ではでは。



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