『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』






          第七符『PRIDE〜麻帆良祭り〜@』



麻帆良祭まで後三日。広大な学園は異様な雰囲気に包まれていた。学園祭独特の雰囲気というよりも、

何らかの大規模な大会が催されるような雰囲気。その原因は今年度から始まったPRIDE〜麻帆良祭り〜である。

昨年度も似たような大会は行われていたのだが、今年度からその名前を変えたのだ。しかし、変わったのは名前だけではない。

以前までは優勝者に賞金が与えられていたが、今回は優勝者の在籍するクラスに夏休み、沖縄旅行を贈呈し、

優勝者には賞金と各スポンサーからの副賞が贈与されることになっている。優勝者が得る副賞を含める優勝賞金の総額は5000万。

以前まで1000万だったために実にその5倍。おまけに優勝者在籍のクラスに沖縄旅行ということもあって、

今年のこの大会に対する生徒の気の入れようは半端ではない。今までの大会には参加していなかった猛者たちも次々に名乗りを上げた。

クラスにつき参加者は5人まで。それでも膨大な生徒数を誇る麻帆良学園。参加総数は実に200人。

賞金目当てのもの、学園最強の称号を得んとするもの、自らの武を試そうとするもの、学園最強の称号には興味がなく、

さらにその上を目指さんとするものと数限りない、十人十色の思惑を持つものが麻帆良祭当日の本戦に残らんがため、三日前のこの日、

予選の行われるかなりの面積を誇る麻帆良森林公園に一堂に会した。そしてその猛者たちの中に高町恭也、鳳鼎、龍宮真名、桜咲刹那、

ネギ・スプリングフィールドと2−A代表の姿もあった。一回戦はルール無用の総当たり戦。

広大な麻帆良森林公園内で参加者が総当りとなり、本戦に進むことのできる16人になるまで延々と潰しあうというものだ。

「総当りか・・・。なるべく戦わないようにして本戦に進まなければいけないな。」

 優勝候補ではないものの、その戦闘力は麻帆良学園最強。ごくごく一部のものしかその力を知らない、

そしてその力を大切なものを守るためにしか振るうことのない、しかし、エヴァの勧めによって参加した、高町恭也。

「うーん・・・。残ればいいんだから戦わないほうがいいか。戦うのは好きじゃないし。」

 その戦闘力は未知数。クラスからやめたほうがいいという制止を振り切って強行参加。役に立たない魔法しか使えない魔法使い、

そして極度の運動音痴、鳳鼎。

「本戦までが本戦のようなものだな。闇雲には戦うべきではないか・・・。」

 以前までの大会の本戦にも名を連ねた学園きっての武闘派。もちろん、その実力は広く知られ、

今大会においても優勝候補の一角に挙げられる。かつてはミニステル・マギだった、龍宮真名。

「長期戦になるやろうから無駄な戦いはせえへんほうがええな。」

 神鳴流剣士にして真名同様、学園きっての武闘派。その実力は大会屈指で、優勝候補にも名を連ねる、桜咲刹那。

「うう・・・なんか今まで以上に厳しい予選だなぁ・・・。でも、がんばるぞ!!」

 サウザンド・マスターの息子にして以前までの大会でも常に上位に名を連ねた努力を惜しまない魔法使い。

当然ながら優勝候補の子供先生、ネギ・スプリングフィールド。

 それぞれの思惑がある中、予選開始の花火が夜の闇の中に鮮やかに打ち上げられた。

麻帆良最強を決めるためのPRIDE〜麻帆良祭り〜予選のバトルロワイヤルがついに幕をあげた。



「PRIDE〜麻帆良祭り〜?」

 エヴァの別荘で稽古をしていた恭也がエヴァの言ったことを繰り返した。

「ああ。3年前私も参加したことがある。賞金もかなりのものだし、参加したらどうだ?」

 エヴァは稽古をやめて汗を拭きながらエヴァの下にやってくる恭也にそういった。

「いや、遠慮するよ。俺の力はそんなもののためにあるわけじゃない。」

 恭也は当然ながら首を横に振った。恭也が力を求めるのは大切なものを守るため。それ以外に御神の剣を振るう気はない。

「それは知っている。まぁ、賞金云々は実際どうでもいい。だが、参加してみる価値はあると思うぞ。お前が今、

稽古で戦っているのは私の作った人形だ。戦闘能力は際立って高いが、人形には感情というものがない。

バトルマシーンと考えてくれればいい。だが、人間には感情がある。それだけの違いだが、お前ならこの差が如何に大きいかわかるだろう。

はっきり言ってお前の戦闘力、この学園で最強だろう。が、お前は龍宮や、桜咲のような実戦経験が少ない。

やつらはまあ、人外を相手にしているとはいえ、実戦経験はお前よりも遙に多い。別にお前の実戦経験が少ないというわけではないが、

あいつらはお前を凌ぐ場数を踏んでいるだろう。それに、いかなる想い、たとえそれが賞金がほしいとかの安直なものであっても、

それが強ければ実力以上のものを発揮することがあるのが人間だ。これからお前がどんな道を歩くのかはわからないが、

少なからずこの大会、お前に何か教えてくれると思うんだがな。」

 エヴァは恭也の分の紅茶を注ぎながら恭也に参加を進めた意図を告げた。恭也はエヴァの入れてくれた紅茶を口にしながら、考えていた。

参加すべきか、否か。

(エヴァの言っていることは事実だ・・・。確かにエヴァの件のときまで全国を渡り歩いていたとはいえ、

常に実戦をしていたわけではないし、安直であれ、信念の元に力を振るう相手と戦った回数となると少ないな・・・・。)

 恭也の思案はしかし、ひとつの想いによってかき消された。

(これから先は俺がエヴァを守っていくんだ。この時代、何かあるとは考えにくい。

だが、何かあったときに力がないことを悔やみたくはない。だから・・・大切なもののため・・・・愛するエヴァを守るために・・・・強くなる・・・・・!!!)

 恭也は紅茶を飲み干すと再び木刀を持ってエヴァに背を向けた。

「暫く本格的に実戦に向けての稽古がしたい。参加の手続き、しておいてくれないだろうか?」

 恭也のその背をみてエヴァはわかった、しておこうと声をかけた。PRIDE〜麻帆良祭り〜まであと一ヶ月。

 小太刀二刀御神流、高町恭也。参戦。





「PRIDE〜麻帆良祭り〜?」

 鼎のマンションに来ていた和美がそうかかれたパンフレット鼎に見せた。

「そうそう。優勝賞金、副賞含めて5000万円!!すごくない!?」

 興奮気味に話す和美と対照的にさよは冷静にそれはすごいですねと反応する。

「おまけに、優勝者の在籍するクラスには夏休み、沖縄旅行を贈呈するんだって。滅茶苦茶豪華じゃない。」

 確かにその通りだ。学園の大会にしては豪華とかいう領域を超えている。

「そりゃすごいね。で?いったい俺にどうしろと?」

 賞品、賞金の豪華さを強調する和美に鼎が聞いた。なにやら裏がありそうだ。

「それでね、それでね。この副賞のデジカメって言うのがすごいんだよぉ〜。800万画素で手振れ補正もついてるし、

普通のビデオカメラ以上の画質でムービーも取れて、1ギガのメモリースティックが三個も内臓されてて、

ズームも一眼レフの一番いいのと同じぐらいっていうものすごいデジカメなんだよ〜。」

 その機能からして並みのデジカメでないことは確かだ。しかし、それを強調する意図が読み取れない。

いや、意図は簡単に読み取れるのだが、なるべく信じたくないのだ。

「で?だから俺にどうしろと?」

 再び鼎が和美にそう聞く。しかし、和美から返ってきた答えは、想定の範囲内のものだった。

「優勝して♪」

 やっぱり・・・という表情の鼎を尻目に、和美がおねがいとねだってくる。

「あ、このDVDレコーダーいいですね。HDが450ギカもあればものすごい量の録画もできますし、

W録もできるってことは見たい番組がかぶっても大丈夫ですね。」

 副賞を見ていたさよもその豪華な賞品に目を奪われていた。それもそうだ。地縛霊だったころは学校近辺しか出歩けず、

実体化してからまだ3年と少し。さよの知らないものやことがまだまだ現代にはある。

「ほらほら。さよもああ言ってるんだし、がんばろうよぉ〜。」

 和美はさよも引き合いに出して鼎に迫る。

「おまえ、俺の運動音痴具合知ってて言ってるのか?」

 鼎は半ばあきれ気味に和美に言った。鼎の運動音痴振りから考えると優勝はおろか予選通過すらできる可能性はない。

「でもさぁ、それって本気でやってるのかなぁ?どうもそんな風には見えないんだよねぇ・・・。

極度の運動音痴にしては体育で怪我したこともないみたいだしねー。」

 和美はあの手この手で鼎を大会に引きずり出そうとしている。しかし、鼎も簡単に首を縦に振るはずがない。

「そもそも、俺は殴ったり殴られたりするのが嫌いなの。第一、大会なんか一度も出たことないし・・・。」

 そういわれてしまえば仕方がない。戦いを嫌う人はどんなに説得してもその場にたつことはないといってもいい。

しかし、和美はなぜここまでして鼎を大会に出したいのだろうか。まあ、デジカメ目当てなのは目に見えているが。

それでも、鼎をよく知る一人として鼎が優勝できないことはわかりそうなものだ。

と、いうことは話のネタにしていると考えたほうがいいのだろう。

「そっかぁ・・・もし優勝したら鼎の言うことひとつだけ何でも聞いてあげるのになぁ・・・・」

 和美はどうやら話のネタとしてこの話題を持ち出したのは間違いないようだ。鼎にしだれかかるようにして上目遣いに言った。

さよもそうですねと和美が本気でないことに気づきながらも話をあわせた。しかし、それが不味かった。その一言が不味かった。

「何でも言うことを聞く・・・・?」

 鼎が確認の意味をこめてか和美の言葉を繰り返す。

「うん。何でも聞いちゃうよ。」

 色っぽい声で答える和美。これが鼎の最後のたがをはずした。

「・・・・・・・でる。」

 鼎のいきなりの一言に和美もさよもは?という表情をした。

「PRIDE〜麻帆良祭り〜が何ぼのもんじゃあ!!軽くひねりあげて優勝してやらぁ!!!」

 何でも言うことを聞くという言葉が鼎の闘争本能に火をつけた。いきなりのことに和美もさよもあっけにとられて鼎をみている。

「優勝したら副賞、賞金すべてお前たちにやるよ。何でも言うことを聞くっていうんだな?じゃあ、制服を着たままさせてくれよ。」

 そういう鼎の目はすでにイってしまっている。いまだかつて見たことのない鼎に和美もさよも驚きを隠しきれない。

しかも、ネタとして和美たちは言っていたのだが、鼎はどうやら本気にしてしまったようだ。

「で、でも、鼎は格闘技なんか・・・・。」

 あわててさよが鼎に聞く。それもそうだ。付き合いだしてこのかた、格闘技ができるなんていう話、聞いたことがないし、

その姿を見たこともない。それにいつもの体育の授業からしてできるとは思わない。

「俺はできないといった覚えはないけど?さっきも大会に出たことないとはいったけど、格闘技ができないとは言ってないしね。」

 ただいわなかっただけらしい。まあ、いったところで特別どうなるというわけでもないのでいわなかっただけなのだろうが、

今回の件に関しては和美たちがそのことを知っているのと知っていないのでは大きな違いがある。

「ガキの頃にじいちゃんに叩き込まれた棒術がこんなところで役に立つとはねぇ・・・。いやいや人生何があるかわかんないよ。」

 立ち上がると押入れの中から自分の身長ほどの棍を引きずり出して慣れた手つきで振り回す。

狭い部屋で振り回しているにもかかわらず部屋の中のものを壊してもいない。

「うっしゃ。それならそれで、ぼちぼち体を動かし始めるか。」

 完全にあっけにとられた二人を尻目にタンスの中からサンドバッグやらダンベルやらを次々と引きずり出す。

完全に乗り気の鼎をみながら、二人は今更ながら事の重大性に気づいた。

その上、止めるにもこんな風に乗り気になった鼎を止められないのは二人がよく知っている。

「これって・・・やばい・・・?」

 和美が顔を青ざめさせてさよに聞く。

「かも知れませんね・・・。」

 さよも苦笑いを浮かべて和美に答えた。このとき麻帆良祭まであと一ヶ月。鼎がどれぐらい棒術からはなれていたのかわからない。

しかし、一ヶ月もあれば勘を取り戻すには十分だろう。

 鳳流棒術、鳳鼎。参戦。





「刹那、今度も出るのか?」

 とある日の放課後、廊下で刹那を呼び止めた真名が尋ねた。二人の隣にはPRIDE〜麻帆良祭り〜のポスター。

おそらく真名はこれに出るのかどうかを聞いているのだろう。

「もちろん出るよ。この大会は自分の今の実力を知るええ指標になるからな。」

 刹那はそういうと、真名にも出るのかどうか尋ねた。しかし、二の返事でもちろんというのはわかりきっていたが。

「私も出るよ。去年は優勝できなかったからな。ぜひとも優勝してみたい。」

 真名はそういうと刹那とともに歩き始める。これから暫くの間二人で稽古を続けるのであろう。

 神鳴流剣士、桜咲刹那、総合格闘技、龍宮真名。参戦。





「ネギ先生、今回の大会、出るんですか?」

 麻帆良学園高等部職員室。学級日誌を持ってきたのどかがそれを受け取ったネギに聞いた。

「はい。まだまだ父さんには遠く及びませんから。僕はできることをして、一歩でも近づきたいんです。」

 そういうネギは引き出しの中からPRIDE〜麻帆良祭り〜の参加応募用紙を出した。

「気をつけてくださいね、ネギ先生。怪我しないようにがんばってください。」

 のどかはネギを心配しながらも、その挑戦を続け、成長を続けるネギに感心していた。まあ、ここまでしっかりした13歳、

全国広しといえどもネギぐらいなものだろう。

 八極拳、ネギ・スプリングフィールド参戦。





かくして2−A代表の五人がくしくも同じ日に参加を決めた。そして時は過ぎ麻帆良祭まであと二週間。

学園の雰囲気も、麻帆良祭に向けての高揚感とPRIDE〜麻帆良祭り〜への緊張感が徐々に高まりつつあった。








あとがき



今回はPRIDE〜麻帆良祭り〜予選への過程みたいな感じですね。次回もまだ予選は始まりません。あしからず。

え?あの三姉妹?今日は温泉旅行とかぬかして草津にいっております。やれやれ・・・よくそんなお金があるな・・・・。

ん・・・・?もしかして・・・・。あーっ!!!!俺の貯金勝手に使ってやがる!!!!ぬあー!!!ふざけるなー!!!

まだまだ書きたいことはありますが、あいつらにことに真意を問い詰めに言ってくるので、今回はこれにて。

ではでは、次回ネギまちっく・ハート第八符『PRIDE〜麻帆良祭り〜A』!!!でお会いしましょう。

ぬあー!!!俺の金ぇー!!!


2-A代表がこうして参加を決めた頃……。
美姫 「三姉妹は優雅な温泉旅行へと」
そして、お留守番を任された怪盗Xさんだったが…。
美姫 「悲惨! 『初めてのお留守番、怪盗Xちゃん、一人で出来るもん!』 
     エンディングNo.08 BAD END 『貯金底を付く』でした〜」
って、こらこらこら。
勝手な事を言ってるんじゃない。
怪盗Xさん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
美姫 「それにしても、どうなるのか楽しみよね〜」
うわ〜、強引に話を戻したな、おい。
美姫 「何よ、楽しみじゃないの?」
いや、滅茶苦茶、楽しみだぞ。
一体、どんな事が待っているのか!?
美姫 「次回も楽しみに待ってますね〜」
ではでは。



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