『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』







          第十一符『前夜祭とそれぞれの夜』



「おわったぁー!!!!」

 誰の声かわからないが、2−Aにそんな声が響いた。麻帆良祭を翌日に控えた夕方、やっとのことでネコミミメイド喫茶の内装、

外装が完成したのだ。ここのところ徹夜続きでクラスの男子のほとんどは、完成と同時にその疲れの所為か、その場でダウンしてしまった。

しかし、そんな中、ほとんど疲れていない男子が二人。恭也と鼎だ。二人はPRIDE〜麻帆良祭り〜の本戦に残ったということで、

作業は時間のあるときだけ手伝ってもらうと決めていたのだ。

「お疲れ様。」

 鼎は教室内の様子を見てそういった。ほとんどの男子生徒はすでに寝息を立て始めている。

寝てないものはほとんど3日近く寝ていないはずだ。限界にもほどがある。

「じゃあ、次は俺ががんばるばんだ。」

 鼎はそういい残すと教室を後にした。とはいえ、向かった先は麻帆良祭の前夜祭で盛り上がる学園。麻帆良祭は前夜祭からすでにかなりの、いや、

ほとんど前夜祭から麻帆良祭が始まっているといってもいいかもしれないというぐらいの賑わいをみせている。

鼎はそれをさよと和美と見て回る約束をしていたのだ。決戦を前にして悠長なものである。いや、決戦の前だからといって鼎の行動が変わるとは思えない。

いつもどおり、といっていいのだろう。





「遅いよー、鼎。」

 約束の時間に5分遅れて到着した鼎に和美が言った。たった五分じゃないかと鼎が言うが、

デートに男が遅刻するのはだめだよと和美に言われてしまった。

「そもそも男の子はデートのとき、30分ぐらい前から待ってるべきなの。」

 和美は至極当然のことようにいったが、しかし、それもどうだろう。とりあえず遅れないように来るのは当たり前として、

30分も前というのは早すぎではないだろうか。せめて15分といったところだろう。

「来てくれたんですからいいじゃないですか。早く行きましょう。」

 さよは子供のようにはしゃいで鼎と和美の手を引っ張って駆けだした。麻帆良祭を見て回れるようになってもう二年がたつ。

それはつまりさよが実体化して二年がたつということだ。それに、さよにとってこの麻帆良祭は忘れられない日でもある。

「で、どこから見て回る?パレードか?それとも露店回りか?」

 さよに手を引っ張られながら鼎がそんな見当はずれなことを言ってきた。いや、わかっていて言っているのだろう。

「なーに言ってんの。っていうか、わかって言ってるんでしょ?」

 鼎のその言葉に和美がそういった。鼎はわかってるよ。というとさよのとっていたリードを自分のものにして前を見たまま言う。

「じゃあ、いくか。世界樹に。」





 世界樹。麻帆良学園に存在する樹齢千年はゆうにあろうかという大木だ。しかし、この世界樹は『神木・蟠桃』といい、強力な魔力を秘めている。

また、22年に一度だけ世界樹を中心とした六ヶ所に魔力溜りをつくりそこでの告白は確実に成就するという神木なのだ。

しかし、鼎たちにとってはそんなことは関係ない。この場所は鼎とさよにとっては始まりの場所。そして鼎と和美にとっても始まりの場所。

さよはここで、二年前のちょうどこの日、鼎によって実体化した。そしてその一ヵ月後、和美がここで鼎に告白した。

三人にとってここは今の三人の関係の始まりの場所なのだ。そしてそれから前夜祭はこの世界樹のある広場で打ち上げられる花火を見るというのが、

三人の前夜祭の過ごし方なのだ。当然、そういった生徒は何人もいて、鼎たちだけではない。

「もう二年もたつんですね。」

 世界樹の真下にたったさよが幹に触れながらしみじみとそういった。

「そうだな。早いもんだ。」

 鼎も感慨深く世界樹を見上げていった。和美もそうだねと鼎と同じように世界樹を見上げる。

「あの時、まさか鼎がOK出すとは思わなかったんだけどね。でも、ま、それがあったから今の私たちがあるんだけど。」

 和美はふられるために告白したのだが、その予想に反して鼎は和美を受け入れた。当初、和美は戸惑っていたが、

今から考えればそれもいい思い出だ。

「あのさ・・・今回俺がPRIDE〜麻帆良祭り〜に出場した理由なんだけど・・・。」

 夜の帳が垂れ込めて鼎たちの周りはすでに街頭の光と月の光以外の灯りはない。鼎たちは世界樹に背を預ける形で座っていた。

暫く他愛もない話を続けていたが、鼎は突然口調を変えてそんなことを言い出した。

「で?私たちは何をすればいいの?」

 和美は鼎が優勝すると思い込んで早くもそんなことを聞いてきだした。

「あー・・・それは忘れてくれ。実際、そんなことどうでもいいんだ。」

 鼎のその言葉にさよも和美も驚いた。まさか、それ以外に理由があるとは思わなかったのだ。

「言いにくいんだけど、俺、お前たちに過去のこと話してないよな。」

 鼎が真剣な口調になって二人に話し始めた。二人はその口調に真剣な表情で聞き入る。

「今までは隠してたけど、それじゃあいけないと思うんだ。俺は二人のことをもっと好きになりたい。

そして二人に俺のことをもっと好きになってもらいたい。だから、俺は過去のことを二人に打ち明けることを決めたんだ。

でも、実際、かなり重たいって言うか・・・人としては最悪な過去だから、言葉だけじゃわかんないと思う。

だから、実際にそのころの俺を見てもらいたいんだ。あと・・・お前たちの彼氏としてお前たちが胸張って俺のことを誇れるような俺になりたい。

事実、勉強ができるとはいえ、『天才』超鈴音にはかなわないし、運動じゃあ、みてのとおりの運動音痴。

そう考えると俺の長所って、俺の誇れるところって何よ?本当武術っていうのがあったんだけど、俺はそれを使うことを嫌ってた。

なぜならそれはとりもなおさず俺の過去につながるから。俺は過去の自分を好きじゃない。最悪とさえ思ってる。

でも、嫌いなままでもいけないだろ?だから、いい加減それを受け入れようかと思う。そうすれば俺にも誇れるものができるから・・・。」

 鼎の話を聞いて二人は暫くだまっていたが、その重い雰囲気を打ち消したのは和美だった。

「つまり、かっこいいところを私たちに見せたいんだ。」

 和美はわざと軽いことを言ってその場の雰囲気を変えた。

「また・・・・極端なこと言うな・・・・。」

 和美のあまりにもあっけらかんとした言葉に鼎は話の腰を折られてあきれてしまった。

「鼎は今のままでも十分かっこいいですよ。私たちのことをいつも気遣ってくれますし、素直でまじめで・・・。」

 さよが鼎にはっきりといった。しかし、鼎は首を縦に振らなかった。

「自分で言うのも何だけど、そこのところはわかってるつもりだ。でも、もう一歩先の関係になるには、やっぱり過去のことを知ってもらわないといけない。」

 鼎の言葉に二人は?という感じだ。

「もう一歩先の関係?」

 さよがそれが何なのか鼎に聞いた。それに対して鼎がはっきりと、今まで二人が見た中で一番まじめな顔で言った。

「もしも、この大会が終わって、二人が俺を受け入れてくれるなら・・・。過去の俺を、もうひとつの俺を受け入れてくれるなら・・・・。

そのときは俺と結婚してくれ。」

 鼎の言葉に二人は一瞬フリーズし、そして真っ赤になった。

「そ、そそそ・・・・それって・・・・ぷろぽーず・・・・?」

 和美がどもって鼎に聞く。鼎は首を縦に振った。

「うん。とはいっても、俺はまだ高校生だから、今すぐってわけじゃない。でも、俺は二人と一緒にいたい。これからもずっと。」

 鼎のまっすぐな言葉に二人は真っ赤になったまま黙り込んでしまった。しかし、和美はなるべくいつものようにと振舞って、

「わ、私は別にそんなことしなくっても、鼎さえよければ・・・・。」

 と、言ったが、さよがその先を一歩前に出てさえぎった。

「わかりました。鼎がそういうならこの大会が終わった後、私たちが鼎を受け入れられたなら、そのときは結婚しましょう。」

 さよが鼎に向かっていった。鼎はありがとうと一言言うと、ちょうどそのとき花火が打ち上げられた。

「ねえ、別に受け入れる受け入れないとかじゃなくて、結婚してもいいんじゃない?」

 そのまま花火に見入っていたさよに和美が耳打ちした。花火の大きな音でまともにしゃべっても聞こえないからだ。

「それじゃあ、鼎が納得しませんよ。鼎はああ見えて古風なところがありますし、鼎がそこまで言うんですから、それなりの過去が、

それなりの私たちの知らない事実があるはずです。鼎はそれを受け入れてもらいたいんです。私たちに。

ですから、私たちはそれを最後まで見届けましょう。結論が決まっていても、それを見届けることが鼎にとって必要なんですから。」

 さよは和美に耳打ちでそう答えた。和美はそうだねとつぶやくと、花火に目をやる。三人の前には次々と打ち上げられる花火。

それは三人を祝福する花火になるのだろうか、それとも・・・・。それは誰にもわからない。

「じゃあ、鼎、がんばりなよ。かっこいいとこ見せないと、許さないからね!」

 花火の音が鳴り響く中、和美は鼎の前に立って大きな声で言った。鼎は少しあっけにとられたがすぐに笑顔になってわかってるよと明るく答えた。

この花火が終わると麻帆良祭が遂に始まる。時刻は11時59分。鼎にとっての戦いが、今まで生きてきた中で始めて欲したものへの挑戦が、

いま、まさに幕を開けようとしている。





「明日か。早いものだな。」

 エヴァの家に来ていた恭也が紅茶を口につぶやいた。恭也、エヴァ、茶々丸は前夜祭には行かず、

その喧騒からはなれたエヴァの家で明日に備えて体を休めている。

「そうだな。まあ、出る以上は優勝しろ。そうすれば、また違った世界が見えるはずだ。」

 エヴァも紅茶をすすりながら言った。

「まあ、やれるだけやってみるさ。俺より強いやつもいるかもしれないしな。」

 恭也はそういうと窓の外に目をやった。そこからは前夜祭の灯りが見える。いや、灯りだけではない、

その活気がそのまま伝わってきそうである。

「しかし、この刀、まるで本物そっくりだな。だが、いくら本気で突いても斬っても刺さらない、斬れないと性能はまさしく木刀だ。」

 恭也は窓からソファに立てかけていた小太刀に目をやってそういった。

「超製だからな。あいつはほとんど魔導師といってもいいだろう。この大会に使われる武器にはあらかじめそこそこなクラスの回復魔法がかけられているから、

いくら本気で叩こうともダメージはあっても傷一つつかんよ。まあ、お前が本気になれば、骨を折るぐらいは可能だろうがな。」

 エヴァは嘆息してそういった。魔導とはすなわち魔法と科学の融合。未来の超高度技術なのだ。

「すごいな。」

 恭也は感心してそういった。当然だ。死なない武器なのだから。

「恭也。お前にひとつだけいっておきたいことがある。」

 小太刀を眺めている恭也にエヴァが突然そんなことを言い出した。恭也はどうしたとエヴァのほうを向く。

「今回の大会、一番注意すべきは鳳だ。」

 エヴァの口から出た言葉は恭也を少し驚かせた。恭也は鼎の戦う姿を見ていない。そして、エヴァをしてそこまで言わせる

ということは鼎の力、油断ならないということだ。

「実際、鳳が映ったのは一瞬だから、正確なところに実力はわからない。だが、鳳が悪種(バッドカインド)の孫という時点で、

やつの力、何かあってもおかしくない。」

 恭也は何も言わずにエヴァの言葉に聞き入った。それは恭也なりの続けてくれという意思表示でもある。

「鳳の祖父は悪種(バッドカインド)と呼ばれる大魔導師だ。やつは自らの魔力をマテリアル・ボールと呼ばれる特殊機械に移すことで

自らの魔力タンクを大量に準備し、その力を使ってほとんどすべての古代禁断魔法を使いこなしていた。古代禁断魔法は特性上、

ラテン語詠唱ですら詠唱するのに相当な時間がかかるが、やつは英語詠唱で、しかもものの数秒で発動させることができた。

それを可能にしたのは桁外れの集中力と精神力だ。それらは私や恭也を遙に凌ぐほどのな。鳳はその孫。

基本的に魔導師のもつすべては遺伝する。そう考えると鳳もその桁外れの集中力、精神力を持っていることになる。

恭也、お前の『神速』という技は極限を超える集中力により、人間の持つ力の120%を引き出すものだ。

これは正確にはわからないが、もし、鳳がその集中力、精神力を魔法以外にも適応させることができるとしたら、

同じことができてもなんら不思議ではない。寧ろ、それ以上のことができるという可能性も否定できない。」

 エヴァの淡々と語る推測はそれだけでも十分に脅威だった。最悪の場合、鼎は神速を超えることが可能だというのだから。

「まあ、あくまで最悪の場合だ。鳳の戦っているところがTVで流れたのはものの五分。それだけではやはり情報不足だ。

しかし、もし、すべてが最悪の方向に転んだ場合、龍宮や桜咲、無論お前の妹ですら相手になるまい。」

 エヴァは目を閉じて淡々と語った。しかし、恭也はその最悪こそが鼎の力、鼎の実力であると見抜いた。

いや、見抜いたというよりも気がついたのだ。龍宮が自分に言った鼎を倒せるのは自分だけだといったことが、それを気づかせたのだ。

「・・・・神速を超える神速・・・・。いや・・・・最悪、閃すらも越える・・・・可能性はある・・・・。」

 恭也のつぶやきに似た言葉をエヴァは聞き漏らさなかった。やはりそうかとため息をついた。

「ならば最早、やつに勝てるのはお前を除いて他におるまい。私も見届けよう。想いと想いがぶつかるその先にいったい何があるのかを。

お前がそこから何を得るのかを。」

 エヴァは目を閉じて静かにそういった。その姿は決勝で出会うであろう鼎との戦いの先に

恭也が見つけるであろうことを考えているようでもあった。

「ああ。もし、俺に足りないものがあるならば、鼎との戦いではっきりするだろう。」

 恭也はすでにわかっていたのかもしれない。鼎との戦いにその答えがあることを。





 前夜祭もひと段落し、遂に迎えた決戦当日。日の出とともに戦士たちは各々、戦地に向かって進軍を始める。

最強を証明せんがために。自らの押し隠してきたものをさらけ出さんがために。何かを見つけ出さんがために。

そして、それぞれの想いの交差する、PRIDE〜麻帆良祭り〜が、これまでの戦いで、もっとも過酷な、もっとも過激な、もっとも危険な、

命すらかけた戦いが、遂に。幕を開けた。








あとがき



えぐえぐ・・・。

(フィーネ)なによ、いきなりないちゃって。

イヤね。アニメのネギま!の19話があまりにもいい話だったから。

(フィーラ)あー・・・リアルにないてたもんね。朝っぱらから。しかも朝食食べながら。

仕方ないじゃん。ああいうのは弱いんだよ。

(フィーリア)まあ、確かにいい話だったね。

さて、気を取り直して。遂に始まります。PRIDE〜麻帆良祭り〜本戦。

(フィーネ)わくわく。

わくわくしてもここで暴れるなよ。

(フィーラ)で?内容は?

それを言っちゃあ面白くないでしょ。

(フィーリア)それもそうね。

さて。それでは次回予告。次回、ネギまちっく・ハート第十二符『決戦開始!!明かされた鼎の過去!!!』

(フィーネ)チョイ待ち。鼎の過去、重すぎるじゃない。っていうか、この鼎、恭也でも勝てないんじゃない?

さあ、どうでしょう。

(フィーラ)でも、運動音痴で格闘技ができるもんなの?

不可能じゃないよ。小さいときに叩き込まれたものはいつになっても体が覚えてるもんだし。

(フィーリア)そんなもん?

それだけじゃないって。鼎は・・・・っと、これ以上言ったら十二符の話にすこしふれちゃうか。

(フィーネ)じゃあ、さっさと十二符を書きなさい。

はーい。

(フィーネ&フィーラ&フィーリア)じゃあねぇ〜〜〜〜♪♪♪♪♪♪♪♪♪


今回は決戦前の一時〜。
美姫 「ちょっと休憩〜」
そして、次回はいよいよ…。
美姫 「果たして、鼎の過去とは。そして、対決の行方は!?」
次回も非常に楽しみにしてます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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