『ネギまちっく・ハート〜Love and War〜』








     第七帖『最強(ちから)を知る為に』



 恭也の眼前に双刃剣が迫る。茶々丸の開始の合図とともに、眞莉紗が何の前触れもなく、ノーモーションで恭也に飛び掛ったのだ。

しかし、既に戦闘体制に入っていた恭也にとっては不意打ちというわけではない。恭也はそれをのけぞってかわし、

そのまま体を捻って眞莉紗の気配にその小太刀を走らせる。眞莉紗はそんな恭也を見ることなく体を回転させ、もう一つの刃で恭也をうつ。

しかし、恭也はその刃を見ることなく、もう一方の小太刀で難なく受け止めた。刹那や真名ですら弾き飛ばした一撃だが、

恭也ははじかれることなくその一撃をしっかりと受け止め、もう一方の小太刀で眞莉紗の首を狙う。

そんな常識的に見ると絶望的な状況の中眞莉紗は剣から手を離し、恭也と向かい合うように体を反転させ、恭也の小太刀を右手で、しかも人差し指一本で受け止めた。

しかし、受け止めたのは炎の小太刀。刀身から炎が迸る。一瞬にして炎に包まれる眞莉紗。

しかし、そんな状況にもかかわらず、まるで炎などないかのように眞莉紗は左足で恭也の胴を蹴り飛ばした。

恭也は簡単に弾き飛ばされたものの、受身を取って再び眞莉紗のほうを向く。

「さすがだねぇ。強い強い。」

 炎に包まれたままの眞莉紗はそういって恭也を迎え撃つように体を向け、軽く脚を踏み鳴らす。それだけで眞莉紗を包んだ炎は一瞬にして消え去った。

服はこげてすらおらず、髪もなんら変わりない。全くの無傷のようだ。恭也はそんな眞莉紗を見て動揺することもなく、一歩脚をにじりだし、

何時でも、どんな状況にも反応できるように構える。そんな恭也を見て眞莉紗がため息をついた。

「うーん・・・・やっぱり、まだまだ人間のときの癖が抜けきれてないんだね。ま、今回で気付いてくれればそれでいいか。」

 眞莉紗の言葉に恭也は首を傾げたが、今はそんなことはどうでもいい。何が足りないのか、それを確かめる戦いなのだから。

「うっし。んじゃ、コテンパンにのしてあげますか。一度ゼロからはじめないと、どうやらダメみたいだし。」

 眞莉紗はそういうと構えることなく右手を前に出してちょいちょいとかかってきなさいとジェスチャーで伝える。

恭也はそれに答えるように踏み込み、一瞬で眞莉紗に接近する。『瞬』だ。眞莉紗は反応していない。

構えてもおらず、そのすべてが隙だらけだ。小太刀が眞莉紗ののど元に迫る。眞莉紗は避けようとする気配もない。

反応しきれていないのか。否。そんなわけがなかった。笑っている。余裕を持って、打ち込んでこいと言わんばかりに。

間髪入れることもなく恭也の小太刀がのどに突き立てられた。しかし、さっきと同様、刃が突き刺さらない。

恭也はしかし動揺することなく小太刀を引き、もう一方の小太刀で横に薙ぐ。しかし、それも刃が通らず、まるで石でも叩いているかのようにはじかれた。

それで終わるわけではない。再び半身捻り、再び薙ぐ。奥義『薙旋』。しかも、ただの薙旋ではない。炎と氷の小太刀による熱と冷が同時に襲うのだ。

さすがにこれを喰らってはたとえ刃が通らないといえども無傷ではすまない。恭也はそう確信していた。

「まだまだ未熟!!!!」

 そんな一撃を受けた直後、眞莉紗の声が響いた。まるで恭也が剣を学び始めた初心者で、そして眞莉紗がその師であるかのような声を上げたのだ。

しかし、人外としては眞莉紗のほうが恭也よりもはるかに上。つまり、眞莉紗は同じ人外として恭也をそう評したのだろう。

それが眞莉紗の攻撃の口火をきった。その双刃剣を振り、まとう炎を振り払うと薙旋でそのままはなれた恭也に一気に接近する。

しかし、恭也は眞莉紗の姿を捉えようと実を翻したそのとき、既に眞莉紗が目の前にいることに単純に驚いた。

恭也ほどの使い手になればその気配だけで、もっと言えばいかにうまく気配を消したところで、相手との距離も体勢もすべて把握することができる。

そんな恭也が気がつかなかったということは。眞莉紗が気配を『無くした』ということになる。しかし、そんなことは今、どうでもいい。

現実に目前に眞莉紗がいるということ、完全に攻撃態勢であるということ。何よりもそれを防がなければならない。そういう現実だ。

しかし、全く間に合わなかった。完全に遅れていた。守りに移ろうとしたそのときには既にその右手刀が深々と突き刺さっていた。

そう、文字通り『突き刺さって』いたのだ。こんな経験は去年鼎と戦ったとき以来である。恭也は動揺というよりも頭が真っ白になった。

眞莉紗はそのまま、頭突きで恭也の額を一撃する。まるで家を解体するときに使うハンマークレーンで一撃されたかのような衝撃。

その衝撃で眞莉紗の手が恭也の体から抜け落ちた。眞莉紗はすぐさまその右腕で恭也の下顎を掌底で打ち上げる。完全に中に浮く形になった恭也。

そんな状況を眞莉紗が逃すわけがない。その双刃剣を両手で振り上げ、剣の腹でどこを叩くもなく、そのまま振り下ろす。

避けることもかなわず、受身を取ることもかなわず、地面に叩きつけられる恭也。一瞬の出来事にエヴァたちも眼を疑うほかなかった。

あの恭也がこうもたやすくあんなふうになるとは想像もできなかったのだろう。しかし、眞莉紗はそれで終わらなかった。

まだ立ち上がってもいない恭也の襟首をつかみあげると、そのまま地を蹴り宙に舞い上がる。

「燃えな!!!」

 普段の眞莉紗からは聞けない口調で、そのまま恭也を地に向かって投げつけた。しかも、ただ投げつけたのではない。

恭也がその手から離れた瞬間、爆発したのだ。爆炎とその煙により視界がはっきりとしない。だんだんと煙が晴れるにつれて二人の状況がはっきりとしだす。

眞莉紗は余裕すら感じさせる中に確かな鬼気を放ちたたずみ、恭也はなんとかたっている。そんな中、動いたのは恭也だった。

顔を上げると同時に眞莉紗に向かって疾走ったのだ。眞莉紗はそんな恭也を迎え撃つかのように疾走った。恭也の小太刀が眞莉紗に向かって奔る。

しかし、眞莉紗はそれを余裕を持ってよけた。簡単に。まるで遠距離から投げられたボールを避けるかのようにたやすく。

眞莉紗はそのまま肩を恭也の懐に入れて恭也に当身を打ち込み、その距離を開けた。

眞莉紗のような巨大剣を扱うことにおいて重要なのは至近距離をどのように戦うかである。本来なら牽制から距離をとるのが基本だが、

眞莉紗はそれを無手で戦うことで至近距離でも戦えるように仕上げているのだ。そのまま距離を開けられた恭也に巨大な刃が迫る。

しかし、受けられない速度ではない。その重さ、自身の現状をかんがみ、両の小太刀でそれをしっかりと受け止めた。

巨大剣はその一撃に重きが置かれ、それを防がれれば、それすなわち死を意味する。しかし、眞莉紗にそんな常識は通用しない。

これは戦いであって試合ではない。剣だけで戦うというルールはない。そう。眞莉紗は始めから巨大剣で一撃を入れることに重点を置いていなかったのだ。

眞莉紗はあっさりと両の手を双刃剣から離し、恭也が反応できないまでの速度で接近する。

そして右拳を恭也の腹に叩き込み、そのまま体を起こしながらのショートアッパーを顎に打ち込んだ。恭也の脚がぐらつく。

そもそも、眞莉紗の一撃はどれもこれも規格外の破壊力を秘めている。最初の一撃で本来なら終わってもおかしくないのだ。

さしもの恭也もそう何度も耐えられるものではない。

「甘い!脆い!!ぬるい!!!遅い!!!!」

 眞莉紗はそういって右半身から左足を踏み込みながら左正拳を叩き込む。同時に爆発。その一撃で恭也は簡単に吹き飛ばされ、そして遂に動かなくなった。

「うーん、やっぱりだね。どうやらまだまだ赤子同然、人外の戦いかたっていうのが全くできてないなぁ。」

 眞莉紗はそういうと双刃剣を持ち上げ指輪に戻し、恭也に近づく。

「おい、しっかりしろ恭也!」

 いいようにやられた恭也の元に駆け寄ったエヴァはつたない治癒魔法をかけながら恭也に声をかける。しかし、恭也は反応すらせず、ぐったりとしたままだ。

「大丈夫だよ。気を失ってるだけだから。そんなにひどくしたわけじゃないし。ちゃーちゃん、背負って家まで連れて行ってくれない?

すぐに目を覚ますだろうし、恭也くんにお話もあるしね。」

 眞莉紗はそういって茶々丸に恭也を背負わせてエヴァのログハウスに案内させることにした。

「いいだろう。私もいろいろと話がある。茶々丸、恭也を。」

 エヴァも眞莉紗を見上げてそういい、茶々丸に恭也を背負わせて4人でエヴァのログハウスに向かった。眞莉紗の話を聞く為に。

眞莉紗に恭也のことを聞く為に。



「さて、恭也くんが目を覚ますまではエヴァちゃんの聞きたいことについて答えようかな。」

 エヴァのログハウスに着いた眞莉紗たちは恭也をベッドに横にするとリビングルームで恭也が目を覚ますまで待つついでに、エヴァの話を聞くことにした。

「姫神。まず聞きたい。おまえは『鬼』なのか?」

 エヴァは茶々丸の入れた紅茶に口をつけ、そういって話を切り出した。

「うん。正真正銘の『鬼』だよ。」

 眞莉紗はなんの迷いもなくエヴァの問いにそう答える。

「そういう意味で聞いているんじゃない。私もこうなって長い。今まで何度か『鬼』とであったことはある。しかし、おまえのようなやつは一人もいなかった。」

 エヴァのその言葉に眞莉紗がそれは当たり前だよと答える。

「だって、私は『鬼』であって『鬼族』じゃないから。」

 眞莉紗の答えはしかし意味のわからないものであった。エヴァは意味がわからんと眞莉紗に詳しい説明を求める。

「うーんと・・・詳しく説明するとね、『鬼族』って言うのはここ、地球の鬼のことなの。

んで、私たち『鬼』って言うのは地球上の『鬼』が信奉した『月の鬼』のこと。つまり、私は『月の鬼』ってことなのよ。

こんな風に分かれちゃったのは、まぁ、いろいろあってね。決定的なのは北欧神話に見られる『神々の黄昏(ラグナロク)』のせいかな。

アレのおかげで月と地球が完全に断絶しちゃって、地球に残らざるをえなかった『月の鬼』が生きていくために『鬼族』になったんだ。

私も残らざるをえなかったクチなんだけど、さすがにプライドが『鬼族』になることを許さなくって意地張って『月の鬼』として生きてたの。

だから、私は『月の鬼』。」

 眞莉紗の説明に納得いったのかエヴァは頷いてなるほど、だからアレほどまでのとなった納得したようにつぶやいた。

「で、どうだ?魔神スルトとして、恭也の強さは。」

 エヴァの言葉に眞莉紗は目を丸くして驚いた。

「ふえ?よくわかったね。私がスルトだって。」

 眞莉紗は本当に驚いたように目をぱちぱちさせている。

「『神々の黄昏(ラグナロク)』、『炎』、『焔剣レーヴァティン』。この三つがあればおまえの話が嘘でないとすると該当するのは一人、炎の魔神スルトだけだ。」

 エヴァはそうだろう?と眞莉紗に言う。眞莉紗はさすがエヴァたんだねと感心したようにエヴァを賞賛し、恭也くんはねと話を始めた。

「恭也くんは『人間』としては極まった存在だと思うよ。多分、これ以上成長しようが無いってくらいにね。」

 眞莉紗はそういうと紅茶をすべて飲み干して話を再開した。

「ただ、『人外』として、『吸血鬼』としてはまだまだスタートラインにたったばかりだね。多分さっきのでよくわかったんじゃない?

型にとらわれない戦いかたって言うのがさ。恭也くんの剣術を否定する気はないし、寧ろあそこまで極まった剣は生まれてこのかた見たことないね。

でも、私の戦い方みてわかるように『こう』なっちゃうと、もう技だの構えだの型だのは意味を成さない。単純に一撃必殺。避けて殴る。受けて殴る。

これが究極なのよ。エヴァたんにもわかるんじゃない?魔法使いに言い換えればどれだけ早く最高威力の呪文を詠唱することが究極でしょ?

相手を『倒す』、もっと言えば『殺す』ということに限定すればだけど。」

 眞莉紗の言葉にエヴァは何も言わず耳を傾けているだけだ。眞莉紗は少し笑うと話を再開する。

「まぁ、これから先、そういうことはないと思うけどね。でも、私たちのレベル・・・いや、『この段階』のレベルになると、

はっきりいって、戦いって言うのは『命のやり取り』じゃない?しかも、吸血鬼とか、不死者(ノーライフ)とかはただでさえ自己再生能力がある。

腕一本、脚の一本犠牲にしても相手をしとめることは可能でしょ?そういった相手と恭也くんが戦うことになったら、はっきりいって恭也くんの剣は通用しないね。

今回の私見たく、刃が通らないやつだっているかもしれない。そういう相手の戦い方がまるでなってない。まぁ、そんな連中と戦ったことないから当然だけど。

でも、誰だって始めはそんなもんだし。結論から言うと、恭也くんはまだまだ強くなれるね。」

 眞莉紗はま、そういうところ。と話を打ち切る。

「と、言うことだそうだ。恭也。」

 エヴァは眞莉紗の話が終わったことを確認するとどこにでもなく恭也に向かってその言葉を告げた。

と、ドアの向こうから恭也が姿を現したのだ。どうやら、始めから聞いていたらしい。

「ありがとう、姫神。今日はいい勉強になった。」

 恭也は開口一番眞莉紗にそういって礼をした。眞莉紗はそんなことないよと笑いながらそれに答える。そして、親切心ながらと恭也に言葉を向けた。

「わかったと思うけど、恭也くんはまだまだ『人間』としての戦い方しかできてない。技術の面ははっきりいって極まってる。

剣術、体術ともに申し分ない。でも、『吸血鬼』なんだから。もっと早く動ける。もっと無理な動きができる。

そういった方面に考えを向けるのも忘れちゃいけない。できないことはないのと同じなんだから。それともう一つ。

剣を使うならその技術もさることながら、『斬る』ということを極めないと。私に刃は通らなかったでしょ?それはまだ『斬る』ということが未熟だから。

致命的でしょ?剣を使ってるのに斬れないって言うのは。あと、せっかくエヴァちゃんと契約してるんだから、魔法だって使えないことはないと思う。

それも極めよう。先天的なものじゃないから限界は簡単に来るだろうけど、それでも極めよう。

恭也くんの戦い方は私のように『力でねじ伏せる』って言うより『華麗に舞う』って感じだから、選択肢は広いほうがいい。OK?」

 眞莉紗のアドバイスを真剣に一つずつ頷きながら聞いていた恭也はまだまだ未熟だなと頭をかいた。

「うん。未熟だね。でも、だから上達できる。やることは多いけど、与えられた時間は無限だから。極められないものでもないって。」

 眞莉紗はそういうと恭也くんも座りなよ、と促した。恭也はそれに応じて席に着く。

「さて、聞いてたなら私の話のほとんどは終わったも同然。最後のお話が残ってるだけ。」

 眞莉紗はそういうと茶々丸が再び入れてくれた紅茶に口をつける。

「最後の話?」

 恭也は何のことかわからず首をかしげた。

「そう、最後の話。恭也くんには教えときたいからね。この世界にどんな『人外』がいるのかを。」

 眞莉紗はそういうとエヴァたんも聞きたくない?とエヴァのほうに答えを求める。

「興味がない、というわけではない。」

 エヴァのその答えにつまりは聞きたいんだねと眞莉紗は肯定の意でとった。

「それに、恭也くんの場合、聞いといたほうがいいと思ってね。多分これから私たちのような人外は別の人外たちとぶつかることが多々あると思う。

私の場合は真っ向ぶつかってもなんとでもなるけど、恭也くんとエヴァたんの場合は正直手に負えないやつがこの世界にはわんさかいると思うんだ。

エヴァたんだって世界最強の魔法使いを自負してるみたいだけど、そんなに世界が狭いわけじゃない。

恭也くんの剣だって、私が今まで生きてきた中で見た最高の剣だけど、多分、上には上がいると思う。」

 眞莉紗はそういうとそれにエヴァが口を挟む。

「なら、おまえにも同じことが言えるんじゃないか?」

 エヴァのその問いに眞莉紗はさすがにそれはないねと肩をすくめる。

「私は『月の鬼』。そもそも、この地球上の存在じゃないから。

別に地球のほうがすべて劣ってるってわけじゃないけど、私は地球の古神との大戦で数少ない生存者の一人にして、その中でも最強の存在。

だから、私より上はいない。私はいわゆる、食物連鎖の頂点。これには絶対の自信を持ってるから。」

 眞莉紗は自信満々に答えると話がそれたねと話を戻した。

「だから、とりあえずどんな人外が、種族がいるのか、その中でもやばい連中の名前くらいは教えとこうかなってね。

恭也くんの性格上、何かあったら絶対に剣を取ると思う。でも、さすがにやりあうとまずい相手もいるし、

せっかくこうやって結ばれたのに再会はあの世でってのはイヤでしょ?麻帆良は世界樹があって力を引き寄せる傾向にあるから。

そいつらのこと知っておけば傾向と対策になるでしょ。」

 眞莉紗はそういうと何もないところから大きなホワイトボードを取り出し、そこに黒いペンで所狭しといろいろ書いていく。

たっぷり10分はかかっただろうか、なにやらごちゃごちゃと書かれたホワイトボードが完成した。

「さて、ま、みてくれればわかるだろうけど、とりあえず説明していこうかな。」

 眞莉紗はそういうとやはり何もないところから指示棒を取り出して説明を始める。

「まずはこの世界で一番多い人外であるところの『魔法使い』。これは人外って括るのもアレかもしれないけど、とりあえず人外の方面で括っとくね。

詳しい説明はエヴァたんもいるからいらないと思うから、この括りの中でヤバイ連中を教えとくよ。」

 眞莉紗はそういうとホワイトボードに4人の名前を書き込む。

「一人目は『東の魔女(ハイソサエティ・ウイッチ)』の通り名を持つ「藤原仄之霞(ふじわらのほのか)」。藤原道長の息女で東洋きっての魔法使い。

魔力こそサウザンドマスターに劣れど、多岐にわたる東洋魔術と体術を習得してて、いろんなとこで吹っ飛んでる人だからヤバさじゃ凌いでるかもね。

あ、この人は麻帆良森林公園の奥に住んでるし、私の知り合いでもあるから、とりあえずは安牌。

んで二人目は『光輪の従者(セント・クルセイダーズ)』こと「アリア・T・エカテリーナ」。ロシアの魔法使いでホムンクルス技術は世界歴代最強。

一千万のホムンクルス部隊、『マトリョーシカ』はこっちの世界じゃ有名よ。まぁ、本土からろくに出ないらしいから安牌といえば安牌だけど、

風のうわさじゃ世界樹に興味あるらしいからヤバいっちゃあヤバイね。んで、三人目。『迷獄麗華(ヘル・ソング)』こと「リグル・ドロイヤー」。

世界をまたに駆ける悪の魔法使いで、『裏のサウザンドマスター』とまで言われるほど正反対の存在。趣味は魔法使い狩り。

こいつ、今日本にいるみたいだから、ことと次第によっちゃやばいことになるかも。

も一人挙げて、四人目。『鉄鎖処刑(アイアンメイデン)』こと「レティ・J・ホーリィ」。こいつが一番の安牌だろうね。

こいつは力の行使を犯罪者に限定してる。つまり、犯罪者に対する最後の断罪者のような感じ。犯罪者じゃない私たちには関係ないことだけど。」

 眞莉紗は一通り説明すると魔法使いについてはこんなところかなと話を区切る。

「藤原仄之霞は聞いたことあるが他は初耳だな。」

 エヴァは感心したように聞いたことのない名前に頷き、恭也は無言のまま頭に刻み付けるようにしっかりと耳を傾けている。

「んじゃ、次いこうかな。その次に多い人外、吸血鬼。これも説明は要らないかな。

やばい連中・・・・っていうか、このカテゴリー、ヤバイの多すぎて私も把握できてないんだよね。そっち系のつながりは少ないし。

ま、とりあえず、わかる範囲でね。まずは『大時計(ビッグ・ベン)』って言われる死徒の集団。名前の通り24人のグループ。

詳しいことはわかんないけど、やばいって有名どころ。次に『十三死王』って言う死徒集団。これも名前どおり13人。

ただ、最近一人やられたらしく、12人みたい。とりあえず、知ってる範囲の吸血鬼でやばいのはこの26人かな。」

 と、眞莉紗の話を恭也が挙手をし、さえぎる。

「名前から感じた印象だが・・・・危険なのは死徒だけなのか?」

 恭也の質問に眞莉紗は首を捻る。

「うーん・・・・どうなんだろ?私が知らないだけかも・・・・。あ、一人真祖でもいかれたって言うか、危険なのがいるわ。

たしか・・・・『奈落の底(ヘブン・オブ・ヘブンズ)』って言われてるのが。通りなしか知らないけど、かなり危険らしいね。

吸血鬼というか、人外全部を殺しまわってるって聞いたことあるよ。」

 眞莉紗は詳しくわからないのよとお手上げのジェスチャーをする。

「さて、次は『不死者(アンデッド)』のお話。想像の通り、ゾンビっていわれてる連中よ。一度死んじゃってるんだから、当然死なないし、再生能力も持ってる。

能力としては吸血鬼と同じと思ってくれていいね。」

 眞莉紗の話に次はエヴァが口を挟んだ。

「おい、そのカテゴリーは大したことないんじゃないのか?名の通ったやつなど聞いたことが無いぞ。」

 エヴァのその言葉に眞莉紗はその通りと首を縦に振った。

「エヴァちゃんの言うとおり、このカテゴリーは大したこと無い連中が多い。っていうか、そもそも、この連中、自我を失って見境なくなってるから、

討滅対象になってて、数自体いないもんね。でも、一人だけいるの。『神聖なる屍(グレイトフル・デッド)』こと「ヴィレーヌ・深綴」。

こっち側じゃ新顔のほうでつい最近現れた不死者よ。でも、性格はいいし、人格もきっちりしてるから危険ってわけじゃない。

なんと言っても、同じ学校にいるわけだし。」

 眞莉紗はなんともなしにそういったが、同じ学校にいるということに、当然恭也たちは驚いた。

「ま、驚くのも仕方ないと思うけど、仕方ないじゃない。ここは世界樹があるのよ?そんな連中がごろごろいてもなんら不思議じゃないわ。

なんといっても、『世界』樹なんだから。」

 眞莉紗はこともなげにそういうが、どうも人外があつまり過ぎなきもする。眞莉紗はとりあえず、こんなところかなと不死者の話を打ち切った。

「次に、『討ち手』って呼ばれるカテゴリー。何の討ち手かって聞かれると、神の討ち手。ラグナロクのことをどれだけ知ってるかわからないけど、

このとき古神の中には巨神族についた連中もいたのよ。そういった連中が、今後、神が道を誤った時、

それを討ち滅ぼせるようにと当時、神に肩入れをしなかった数少ない人類に授けた能力。『討ち手』はそれを、今もなお引き継いでいる人のこと。」

 眞莉紗はそういうと再びホワイトボードに名前を書き込む。

「でも、それはもう昔の話。今じゃ、名の通ったワルになってるやつらもいる。そいつらを上げると、まず一人目。

『緑皇神(りょくおうしん)』の力を継ぐ「アメル・C・ユリーシア」。能力は名前の通り、『緑』つまり、植物を操ることができる。

泥棒、殺人、何でもござれの闇の何でも屋をやってる。そして二人目。『雷燕神(らいえんしん)』の力を継ぐ「柊・H・ティベリウス。」

雷の能力者で、日英ハーフ、若干15歳の暗殺者。金さえ積まれればなんでもやるっていう、歳にしては腐った奴よ。とりあえず、この二人は要注意かな。」
 
 エヴァははじめて聞く連中だなと頷きながらその名前を頭に刻み込んだ。一方恭也は、そういう風にしか力を使えない者たちもいるのかと少し悲しげな目を見せる。

「まぁ、自覚無しにそういう能力持っちゃうと、そういう風に使う子だって出てくるよ。人間なんて、千差万別十人十色。性善説なんて、通じるわけ無いじゃん。」

 眞莉紗もそういう面では少し悲しくもあるねと恭也の言葉を肯定し、少しの沈黙の後、それじゃ続けようかと口を開いた。 

「次にあげるのは『神罰者』。名のとおり、神罰の地上代行者。彼らの目的はいかなる人外であっても、その存在を許さないこと。

その多くはバチカン直属の裏機関に所属していて、キリスト教の狂信者。もうひとつおまけに、対人外とのために人外の能力を身につけた人間。

まぁ、ラグナロクから生きる私のような巨神族から言えば、イエスだっけ、ヤハウェだっけは十二分な討滅対象だけどね。

とりあえず、そういう連中がいて、こいつらは掛け値なしでやばいのよ。どいつもこいつもいかれてるし、何よりなまじ強いから性質が悪い。

おそらくこいつらは私の存在を知れば当然討伐隊を送るだろうし、エヴァたんの存在を知っても討伐隊を送ると思う。こいつらとはなるべくかかわらないようにしたほうがいい。

名前を挙げるまでも無い、全員やばい。」

 眞莉紗は珍しく真剣な口調で恭也にそう伝えた。恭也はその口調から『神罰者』と呼ばれるもの達への危険性をしっかりと認識できた。

エヴァも姫神の言うとおりだなと頷く。

「さて、それじゃラストを飾るは『龍族』。この分類はもともと少数鋭精でそんなに悪い連中はいない。あくまでそんなにだから、ワルだっている。

『龍族』っていうのは、別に龍人ってわけじゃなくて、龍を宿す人間のことよ。とりあえず、やばいのは一人。

『光紅龍(こうこうりゅう)』を宿す『不破真理奈』。」

 と、その言葉を聴いた恭也はとっさに口を挟んだ。当然である。眞莉紗の口が継げたのは自らの実家でもある不破の名だったのだから。

「不破といったな?不破の血筋は・・・・。」
 
 恭也は話を続けようとするが、それを眞莉紗がさえぎった。

「テロによって絶えたはず。でしょ?でも、鼎くんのお母さんだって不破の一族。つまり、例外がいてもおかしくないってことよ。

さて、彼女は恭也くんの想像通り、御神不破流の使い手。でも、今やその面影なんてまるで無いみたい。使ってるのは大剣らしいし。

彼女も裏の何でも屋みたいなのやってて、お金勝負で動いてるって感じね。あと、もう一人。これは危険だってわけじゃないよ。

ただ、詳しくはいえないけど、その子は私の本気とやりあうだけの実力を持ってるし、何より、恭也くんのそばにいたりするんだな、これが。」

 眞莉紗の言葉に恭也は鋭く反応した。不破の生き残りがいるというだけでなく、眞莉紗の本気と渡り合える者が自分の身近にいるというのだから。

「どういうことだ?俺の近くに、姫神が本気を出すほどの、しかも『龍族』がいるというのか?」

 恭也の質問に、眞莉紗はうんと一切否定することなくそのすべてを認めた。

「あ、でも、誰かは教えられないんだー。本人から恭也くんにだけは言わないでくれって言われてるから。」

 眞莉紗の話に恭也はさらに頭を悩ませる。全く持って誰なのか検討がつかない。

「心当たりは無いのか?恭也?」

 エヴァの問いかけに恭也は首を振る。

「無いな・・・・。それほどの使い手なら、それほどの存在なら気付かないわけないと思うんだが・・・・。」

 恭也は腕を組んで頭を捻る。しかし、誰なのかさっぱり見当がつかない。

「ま、いずれ・・・いや、今年の麻帆良祭の麻帆良武道大会でわかると思うから、それまでは考えてみるのもいいとおもうよ。」

 眞莉紗はそういうとさてといって席を立つ。

「それじゃ、そろそろお暇するね。この後、あやかの小言を聞かないといけないし。」

 眞莉紗のその言葉に恭也がもう一度問いかける。眞莉紗が本気を出すほどの相手は誰なのかと。しかし、眞莉紗はそれは秘密だよ〜と軽く答える。

眞莉紗はそれじゃあねと茶々丸の案内の元、エヴァの家を後にした。

「どうだった、恭也?」

 眞莉紗がいなくなったことを確認し、エヴァが恭也に問いかける。

「いろいろ学ばせてもらったよ。本当にいろいろな。」

 言葉で言い尽くせないほどのものを学んださと恭也はいうと、エヴァに新たな決意を口にした。

「俺はまだ強くなれる。強くなりたい。だから・・・・俺に魔法を教えてくれ。」

 恭也の決意。強くなるために、魔法を身につけること、極めること。そして、自らをさらに高めること。

「ふっ・・・・おまえならそういうと思ったよ。が、あえて聞かせて貰う。何のために強くなりたいんだ?」

 エヴァはわかっていながらも恭也に問う。何のために強くなりたいのかと。

「エヴァの為。茶々丸の為。そして何より自分の為。」

 恭也の答えにエヴァは軽く首を縦に振ってだろうなとつぶやく。

「さすがは私の旦那様だ。いいだろう。一から教えてやる。」

 エヴァはそういうと微笑みながら恭也の手をとって立ち上がらせた。

「茶々丸、今から魔法空間に行く。お前も行くだろう?」

 エヴァはそういってちょうど戻ってきた茶々丸にそういって、3人で魔法空間に姿を消した。恭也の戦いはこれから始まるのだ。人外として、人外の戦い方を習得する為の戦いが。






あとがき



ということで、第七帖『最強を知る為に』でした。

(フィーネ)返す返すも最強主人公好きねぇ・・・。

コンセプトだからな。でも、恭也も強くなる可能性があるんだ。

(フィーラ)それが本編が伝えたかった未熟だからこそ強くなるって言うことなのかな?

そう。最強というものは既に競うもののない存在。未熟だからこそ、強くなれる。上を目指せる。真理じゃない?

(フィーリア)哲学的すぎるって。でも、一つの考えとしてはそうだね。

そういってくれるとありがたいな。

(フィーネ)ところで、眞莉紗ちゃんの本気とやりあえる子って誰?

それは秘密だ。ヒントとしては、その子はとらハのなかで俺が一番好きなキャラだってことだね。

(フィーラ)え?あの子が・・・?

うん。

(フィーリア)な、なんでまた・・・?

俺が好きだから。それで白羽の矢が立ったわけ。

(フィーネ)それをいわれるとこっちとしては追求のしようが無いわね・・・・。

ふふふ。とりあえず、それじゃ次回予告お願いな。

(フィーラ)OK.再び生を受けた明日菜。そして立て続けのイベントもひと段落した、ある昼下がり。

(フィーリア)予想を超える戦火が近づくことを誰一人知らず緩やかにすぎていく日々。

(フィーネ)ただすぎていく日々、しかし、かけがえの無い時間。

(フィーネ&フィーラ&フィーリア)次回、ネギまちっく・ハート第八帖『DAYS OF PEACE』!!

数少ない日常的話だけど、うまくいくかな・・・・。



とらハキャラという事は分かったな
美姫 「一体、誰なのかしらね」
うーん。と、それはそうと、強いな眞莉紗。
美姫 「本当よね〜」
次回は日常のお話みたいだけれど。
美姫 「どんなお話なのかしらね」
次回も楽しみにしてますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ