『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』






 


          第二十二符『剣士の恋物語A』



「二人はさ、赤星君の誰にでも優しいところと、剣道にひたむきに取り組む姿、そして自分から進んで何かをする赤星君に惚れたんだって。

最初は互いに同じ人を好きになってるなんて知らなくて、最近それを知ってから結構悩んでたみたい。あの二人、双子で本当に仲がいいからさ、

互いのことを思いやりすぎてたのよ。それで私たちにどうすればいいか聞きにきたってわけ。」

 鼎の話を聞いて鳴滝姉妹が自分たちのところに来てした話を鼎に話した。鼎はなるほどと頷いて暫く考え込むと和美に尋ねる。

「で?結局結論は出たのか?」
 
和美はその問に一応は出たけど、後は本人達の問題かなぁと答える。鼎はそりゃまあそうだなと頷いてお茶を飲み干した。

「さて、これで一応互いに両想いだってことはわかったわけだが、案外難しい方向に行きそうだな。」

 鼎は湯呑をテーブルに置くとそのまま寝転がった。和美はそんな鼎を見て立ち上がると鼎の側に座って鼎の頭を膝の上に乗せた。

「難しい方向に行くかな?互いに両想いだったんでしょ?それじゃあ、後はきっかけじゃないの?」

 鼎の頭をなでながら鼎に聞く和美。

「互いに両想いなのは勇吾と風香、史伽の鳴滝シスターズのばらのことだろ?風香と史伽の間は両想いじゃないじゃないか。」

 鼎の答えの意味がわからず何それと聞き返す和美。

「お前、さよのこと好きだろ?さよもお前のこと好きだし。そこんとこの関係が今の鳴滝シスターズにあるとはどうも思えないんだよ。

それに、双子なんだし、お前たちには無い血のつながりっていうのがあるからなぁ。」

 鼎の答えに和美はなるほど、確かにねと納得したように頷いた。鼎は体を起こし、さてと立ち上がる。

「とはいえ、少し動いといたほうがいいな。今のまま勇吾が告白したとしてもうまくいくことはうまくいくだろうけど、

うまくはいかないだろうからな。」

 和美は何のことかわからず動くって何するの?と鼎に聞く。

「とりあえず、鳴滝シスターズに会ってくるわ。何話すかはいってみないことにはなんともいえんな。っと、和美に頼みがあるんだけどよ。

悪いけど恭也にTELして勇吾の足止めるようにいってくれないか?勇吾のやつどうも勇み足過ぎて今にも告白しちゃいそうだったからよ。」

 鼎の言葉に和美は腑に落ちない感じであったが、一応了承した。鼎はそれじゃ頼むよとその足を鳴滝姉妹の部屋に向けた。





「なるほど。そういうわけで俺のところに来たと?」

 勇吾の家の道場。そこに木刀を持った恭也と勇吾の姿があった。こうなった経緯は簡単。

和美の連絡を受けた恭也が稽古がてらに木刀を持って向かったというだけである。

「ああ。お前は俺の大切な友達だ。だからこそ鳴滝姉妹とうまいこといってほしい。だから、こうやって鼎の指示通りここに来た。

ま、お前と久しぶりに剣を交えたかったということもあるんだがな。」

 恭也の言葉に勇吾はなるほどねと頷くと木刀を構えた。

「ってことは恭也が中ボスってことか。」

 勇吾の言葉に恭也はそう考えてもらってもかまわないだろうなと答え、構える。

「それじゃあ、ルールはいつもどおりの『蹴りあり投げなし』でいいな?」

 勇吾の言葉に恭也が頷く。そして二刹那ほど置いて道場に木刀がぶつかる音が響いた。





「で、和美ちゃんから事情を聞いて私たちのところに来たんだ。」

 鳴滝姉妹のところに着いた鼎を迎え入れた二人は事情を聞くと納得したように鼎を部屋に通した。

とはいえ、何を聞けばいいかわからない二人は鼎が何を話してくれるのかを待っている。

「ああ。とりあえずあらかたの事情は和美から聞いたよ。でも、それ以上の情報も持ってきた。」

 鼎は前置きもおざなりに本題に入って話し始めた。

「今日、勇吾から恋愛相談を受けてんだ。好きな人ができた。どうすればいいってね。」

 鼎はそこまでいうと風香と史伽の様子を見た。二人の好きな人が鼎に恋愛相談をしたという事実。やはり、気が気ではないようだ。

それを確認すると鼎は続けた。

「勇吾が好きになったのは鳴滝シスターズ。そう、風香、史伽。二人だよ。」

 鼎のその言葉に信じられないという表情をする二人。しかし、鼎の言葉の意味を理解すると二人の顔に満面の笑みが浮かんだ。

「ほ、本当なの!?」

 風香は鼎の肩を揺さぶりながらわれを忘れたかのように鼎に聞く。

「お、お姉ちゃん、落ち着くですぅ!」

 史伽は姉の風香を止めようとしているが、とはいえ史伽も気が気ではない。

「落ち着けって二人とも。」

 鼎の言葉に何とか落ち着いて風香と史伽は再び座った。しかし、それでも両想いだったということが嬉しかったらしく、

顔が緩みっぱなしである。

「さて、いくらなんでもたったこれだけのことを伝えるために俺がここにきたわけじゃないってことぐらいはわかるだろ?」

 緊張感の無い風香と史伽に鼎が今までに無い真剣な口調でそういった。

二人は顔を見合わせると何がいいたいのかわかったかのように気まずい表情になった。

「心当たりはあるみたいだね。ま、そういうことだよ。勇吾が好きなのは風香と史伽の二人。さて、じゃあ、二人はどうかな?

二人は互いのことを好きかい?」

 鼎は身を乗り出して二人に問うた。風香と史伽は顔を下げて考える。風香は史伽をどのように思っているのか。史伽は風香をどう思っているのか。

血のつながりを超える関係を気付くことができるのか。

「難しい問題なのはわかってるよ。でも今答えを出してほしい。」

 鼎は悩む二人に追い打ちをかけるようにそういった。二人はいきなり言われてもと困惑したが鼎の雰囲気に圧倒されて再び考え込む。

「時間が無いんだよ。勇吾は多分今日のうちにけりをつける気でいると思う。まだ二人が勇吾のことを好きってことは伝えてないけど、

あいつはおそらく今日中にけりをつける気だろうね。それをこの時間を作るために恭也を足止めに送ったから、

多分うすうすと気がついてるんじゃないかと思う。あいつ、切れ者だからさ。」

 鼎のその言葉に二人は深く考え込んだ。そして暫く考えて二人は同時に顔を上げると鼎の顔をまっすぐにみる。

「赤星君がここに来たら、思い出の場所にいるっていってくれないかな。」

 風香がしっかりとした口調で鼎に言う。その言葉からは答えを出せたという確信が見えていた。

「そこで待ってるから。」

 史伽の言葉からも答えを出すことができたことがはっきりとわかる。鼎はなるほどと頷くとわかったと一言答えると立ち上がった。

「二人の覚悟はしかと見届けさせてもらったよ。それじゃあ、二人・・・いや、三人に幸多き未来のあらんことを。」

 鼎はそういうと鳴滝姉妹の部屋から姿を消した。

「いいんだね?史伽?」

 鼎がいなくなったことを確認して風香が史伽に聞いた。

「お姉ちゃんのほうこそいいんだね?」

 そんな風香に史伽が聞き返す。

「もちろん。私たちは双子だけど、赤星君の前じゃ二人とも恋する乙女だから。だから、やっていけるよ。」

 風香が笑顔で史伽の手を取って答える。史伽は私も同じこと考えてたよと風香の手を握りかえした。

「じゃ、いこっか。思い出の場所に。」

 風香が立ち上がって窓から外をみていった。

「ですね。二人が赤星君を好きだって気がついたあの場所に。」

 史伽のその言葉に風香がうんと頷く。そして二人は部屋を後にする。思い出の場所、『世界樹』に向かって。


「赤星、もしよかったら教えてくれないか?鳴滝姉妹を好きになった理由を。」

 勇吾の家の道場。剣を交え終えた二人は床に座り込んでタオルを片手に一休みをしていた。

勇吾はなるべく早く鳴滝姉妹のところに行きたいのだが、今日の試合は今までで一番激しいものとなり、

さすがの勇吾も少しやすまないと洒落にならないほどになっていたのだ。そんな状況のため、勇吾は恭也の話に付き合うことにした。

「始めてあったのは高校に入ってからかな。最初はクラスメイトの一人って思ってたんだけど、

ある時、二人と話をしてるうちに自分の中で二人と話しているときが一番自分らしくいられるって事に気付いたんだ。

それに気がついたのがちょうど一年前の今日。散歩部の活動に誘われて世界樹を見て回ったときかな。」

 恭也の質問に勇吾がそう答えた。恭也はなるほどと頷くと暫くして口を開いた。

「二人と一緒に付き合うってことはお前が想像している以上に大変なことだ。二人と付き合うんだから単純に労力は二倍になる。」

 恭也は自分の経験から勇吾に言った。エヴァも茶々丸も想像以上に独占欲が強いからその相手はまあ、疲れるのである。

「でも、労力は二倍になっても苦労はしてないだろ?」

 勇吾の指摘に恭也は当たり前だと頷く。

「労力は二倍になるけど、楽しいことも嬉しいことも二倍になるからな。」

 恭也はそういって腰を上げる。

「俺が言いたいのは、赤星。お前が風香さん、史伽さんのことをどこまで思っているのかわからない。

だが、もし、恋人関係のその先のことも考えているのなら、そのときは誰よりもつらいことになると覚悟しといたほうがいい。」

 恭也の言葉に勇吾はそうだなと頷く。

「でも、それはお前や鼎にもいえたことじゃないか?」

 勇吾の聞き返しに、しかし恭也は首を振った。

「エヴァにはもう両親はいないし、茶々丸はロボットだ。鼎は、朝倉さんと相坂さんの指輪を見てわかると思うが、結婚する気だろう。

でも、相坂さんはもう60年も前に一度亡くなってる。婚姻届を出すなら朝倉さんとだろう。でも、お前の相手には両親がいる。それも双子だ。」

 恭也の言葉に勇吾ははっと気がついた。そういった意味では自分が最初であることに。

「そういうことだ。赤星の相手は俺たちのように特殊な相手じゃない。極普通の人なんだ。

だから、正直お前がこれからどんな困難にぶち当たるか想像できない。だが、忘れないでくれ。俺は、俺たちはお前の友達だ。

だから、なにかあったらすぐに相談してくれ。」

 恭也はそういい残すと勇吾を一人残し道場を後にした。勇吾は独りだけになった道場で恭也にありがとうと一言つぶやいた。

そして決意する。二人に自分の気持ちを伝えようと。勇吾は立ち上がると自分の家に入った。そしてシャワーを浴びて汗を流し、

服を着替えてその足を風香と史伽の住む女子寮に歩を進める。たとえどんな結末が待っていようとも、自分の気持ちを伝えるために。





 麻帆良学園高等部女子寮。その広さは自宅から通う生徒以外の女子高生のすべてが住んでいるため、相当なものだ。

これとは別に男子寮もそれと同じ規模のものがある。当然、女子寮近辺になると男子の姿は無い。しかし、勇吾はその足を止めることは無かった。

そして女子寮の入り口。そこで勇吾はある人の姿を見つけた。鼎だ。入り口の柱に身を預けるようにして誰かを待っているようだった。

しかし、勇吾には誰を待っているかはっきりとわかった。自分だ。

「『思い出の場所』・・・。」

 鼎は勇吾のほうを向くことも無くそうつぶやくと勇吾に背を向けた。

「恭也も似たことをいっただろうけど俺も言わせてもらうよ。おまえがこれから先進むのは俺や恭也のものとは全く違う道だ。

でも、何かあったら相談してくれ最大限、力を貸すから。」

 鼎はそういうと女子寮の中に姿を消した。勇吾は改めて二人の親友に感謝をして『思い出の場所』に向かう。

「って・・・・あの二人の思い出の場所ってどこ・・・・?」

 勇吾はふとそんなことを思った。勇吾は少し考えたが思い当たる節が無い。しかし、一つの場所に思い至る。

勇吾が二人を好きであることに気付いた『世界樹』。もしあのときのことを鳴滝姉妹が想っているなら。

ならば思い出の場所はそこに違いない。勇吾は足を運ぶ。『世界樹』にむかって。





 『世界樹』。麻帆良学園都市のほぼ中心にあるそこには他とは一風違った雰囲気をかもし出しいている。そして、多くの生徒たちにとって、

そこで告白することは憧れでもある。しかし、今はそんなことはどうでもよいことだった。

今、世界樹は勇吾と風香、史伽にとっての思い出の場所以外の何物でもない。勇吾はその思い出の場所に到着する。

そこに、いた。世界樹に背を預けるように風香と史伽がいた。二人は勇吾を見つけるとゆっくりと勇吾の元に足を進めた。

勇吾も二人に向かって歩を進める。そして三人は再び世界中の前で出会った。

「勇吾君なら来てくれると思ったよ。」

 風香が勇吾を見上げていった。二人の身長差は約30センチ。見上げることになるのは当然だろう。

「ここは・・・・俺が二人を好きだってことに気がついた場所だから。だから、おれにとっても思い出の場所なんだ。」

 勇吾はそういって世界中を見上げる。夕暮れの明かりに映える世界樹。それはいつも以上に美しく見えた。

「私たちもそうなんだよ。ここで、あの時、勇吾君のことが好きだってきがついたの。」

 史伽が一歩前に出てそういった。勇吾は二人を再び見る。そして、しばしの沈黙の後、勇吾は口を開いた。

「俺は二人のことが好きです。付き合ってください。」

 勇吾はまっすぐに自分の気持ちを伝えた。風香と史伽は一度互いの顔を見合わせて、そして口を開いた。

「「私たちも勇吾君のことが好きでした。よろしくお願いします。」」

 風香と史伽は頭を上げた勇吾に近づいて自分たちの気持ちを伝えた。勇吾は顔をほころばせて二人の肩に手を伸ばす。

しかし、本当にいいのか少し迷った。そんな勇吾を見て風香と史伽は笑って勇吾に抱きつく。

「えへへ♪温かい♪」

 勇吾の胸に顔をうずめてほころんだ笑顔を見せる風香。

「やさしい温かさです♪」

 風香と同じように勇吾の胸に顔をうずめて笑う史伽。勇吾はそんな二人を見て自分がふっと落ち着いていることに気がついた。

そう、勇吾が二人に引かれたのは一番自分らしくいられる存在だから。心休まる存在だから。

勇吾はそのことを再確認すると、二人の肩にそっと手を添えた。

「二人も温かいよ。すごく優しい温かさだ。」

 そういって勇吾も抱き返す。三人はしばらく抱き合った。そして、夜の帳の下りる中、三人で仲良く手をつないで世界樹を後にする。

これから先、何があっても乗り越えていける。そんな後姿を月明かりに照らされながら。





「とりあえずこの件は一件落着かな。」

 世界樹の頂に一組の男女の姿があった。一人の男は赤髪。眞莉亜だった。しかし、眞莉亜であって眞莉亜ではない。

その証拠にその頭にはガゼルのような二本の角があった。

「な、何はともあれ、早くここから下りませんこと?ちょ・・・落ち・・・・。」

 眞莉亜であろう男性にしがみついたあやかが声を震わせてそういった。

「いやぁ、まさか人が来るとはねぇ。私の人払いの結界もまだまだだなぁ。やっぱり、眞莉慧に任せるべきだったね。」

 男はそういいながら頭をぶっきらぼうにかいた。

「そんなことは下に下りてからにしましょう、眞莉紗・・・。」

 あやかの懇願にふとわれに返った眞莉紗といわれた男性(?)はそうだねとあやかを抱き上げて世界樹の頂から飛び降りた。

あやかは特別驚きもせずに身を任せて地面に着地した。

「いやーいいもの見せてもらったね。」

 眞莉紗はからからと笑いながら世界樹を見上げる。あやかは見るべきじゃなかったと思うんですけどとつぶやいた。

「いいんじゃない?っていうか、仕方ないよ。これを見せるわけにはいかないじゃない。」

 眞莉紗はそういうと頭に生えた角を触る。まるで鬼のようなその角。しかし、それを除いては眞莉亜の生き写しのような容姿。

「それなら、眞莉慧か眞莉亜に変わればよかっただけじゃないですの?」

 あやかはそういって不満を示したが、眞莉紗は首を横に振った。

「だって私がこういうデートのときに出られるのってそんなに機会あるわけじゃないし。」

 眞莉紗はそういうとあやかの手をとって歩き出した。

「多重人格も大変ですわね。」

 あやかが笑いながらいう。

「ま、役割分担ができてるし、記憶の共有もしてるから、結構役に立ってるけど♪」

 眞莉紗はそういってつないだ手を振りながら、あやかとともに夜の闇に消えていった。




「うまくいったみたいだな。」

 朝のホームルームの後、勇吾に恭也が話しかけた。勇吾は恭也を見上げておかげさまでと笑顔で返事をする。

勇吾は今日、風香と史伽、三人で仲良く登校した。そして運悪くその姿を忍に見つかってしまい、警察顔負けの尋問の結果、

というよりもあっさりと風香と史伽がみんなの前でばらしてしまった。その結果、お祭り好きの2-Aの面々は早くもどこで騒ごうかと考え始め、

即日予約を取れるパーティー会場を探している始末である。

「でも、みんながこんなに祝ってくれて、正直うれしいよ。」

 勇吾はそんなあわただしい教室の中をみて恭也に言った。恭也はそうだなと勇吾のように教室を見回して答える。

と、そんな二人に鼎が後ろから姿を現した。

「単に騒ぎ好きだってとこが大部分なんだろーけどねー。」

 いきなり現れた鼎は教室中に聞こえるような声でわざとそんな風に言った。と、そういわれたとたん、多くの生徒が一瞬動きを止めた。

どうやら図星だったようだ。

「でも、うれしいことじゃない。友達同士が恋人同士になったんだから。」

 忍はそういって自分たちが勇吾たちを心から祝福していることを勇吾にわかるように口にした。

「でも、騒ぎ好きって言うのは否定しないんだ。」

 勇吾の的確な突っ込みに、忍はもちろんと開き直って私宴会好きだからと胸を張って答えた。

そんな忍を見てあいも変わらずだなと恭也がため息をつく。

「ま、いいじゃん。さてと、俺、勇吾ときたら次は恭也の番だよな?」

 鼎は恭也のほうを見て少し笑いながら言った。恭也はそうなるのか?目を点にしてあえてとぼけて返事をする。

「そういえばそうだな。エヴァちゃんとはもうかれこれ5,6年になるんだし、お前の場合、まじめに考えてるんじゃないのか?」

 そんな恭也に勇吾がまじめな話と聞いてきた。ちなみに、今日、エヴァはよくあることだがおサボりである。

当然茶々丸もエヴァと一緒に今は家にいる。恭也はそこまで言っても言葉を濁した。煮え切らない態度の恭也に鼎は目を細めてわざと少し声を大きめに言った。

「でもさぁ、最近恭也、麻帆良商店街の通称『アクセサリー街道』の一等高い店で『指輪』を探してる姿見たんだけど、あれってなんだったの?」

 鼎の仰天発言に勇吾のパーティーを手配していた生徒の手が止まった。恭也はあわてて鼎の口をふさいだが時すでに遅し。

一気に囲まれて質問攻めの津波に飲み込まれた。勇吾と鼎はそうなることを恭也よりも少し早く察知してその人の波から逃れている。

「さて・・・と。」

 鼎は助けを求める恭也を尻目に勇吾のかばんを手に取るとそれを勇吾に投げて渡した。勇吾は意味がわからず首をかしげる。

「今日はいい天気だ。ネギ先生には俺が何とか言っとくから。三人で外に出てこいよ。」

 鼎はそういってあごで廊下のほうを指す。するとそこには風香と史伽が勇吾を待っていた。

「主役が堂々と消えるわけにもいかないだろ?恭也には悪いが、生贄になってもらっただけさ。」

 鼎はからからと笑いながら勇吾の背をたたく。勇吾はいろいろありがとなと鼎に礼を言うと二人の下に足を運び、そのまま教室を後にした。





教室を抜け出した三人はどこに行こうか決めるでもなく話しながらある場所に向かった。そして、いくばくもせずに到着する。

世界樹に。勇吾たちは世界樹のある広場のベンチの一つに腰をかけた。空は雲ひとつない抜けるような晴天。

三人はその空を見上げてしばらく黙っていた。

「次は高町君の番だね。」

 風香はベンチから立ち上がると勇吾のほうを向いてそういった。勇吾は遅かれ早かれそうなるだろうねと答える。

「うまくいくといいね、エヴァちゃんと茶々丸ちゃんと恭也君。」

 史伽はベンチに座ったまま、風香のほうを向いていった。

「うまくいくんじゃない?なんだかんだいってあの三人ってラブラブだし。」

 風香は笑いながらそう答えると勇吾の手をとって少し顔を赤らめる。

「私たちはまだ早いだろうけど、期待・・・しててもいいんだよね?」

 風香のその言葉に史伽がそうですねと顔を赤らめてうなづく。

「期待、してるからね、『ゆーくん』。」

 勇吾は二人の言葉に二人以上に顔を赤らめて少しどもった。しかし、すぐに笑顔に戻って赤い顔のまま返事をした。

「ああ。期待してていいよ、『風香』、『史伽』。時間はかかるかもしれないけど、絶対に約束は守って見せるから。」

 勇吾は三人の未来をそういった。これから先もずっと一緒にいようと。

「ゆーくん、約束破っちゃだめだからね♪」

「期待、してるですよ、ゆーくん♪」

 風香と史伽はそういって勇吾の頬にそろってキスをした。

勇吾は顔を赤らめながら大丈夫、絶対に約束は守るよともう一度いって二人の手をとり世界樹を後にした。

始まったばかりの三人の未来への第一歩。しかし、それはしっかりと、『幸福(しあわせ)』に向かって足を進めていた。







あとがき



ということでめでたく勇吾と鳴滝姉妹は結ばれました。めでたしめでたし。

(フィーネ)そこ!勝手にしめない!!!

でもめでたしじゃん。

(フィーラ)そうね。うまくいってよかったわ。

さて、それじゃあ、遂にネギまちっく・ハートも完結に向けて動き出すぞ。

(フィーリア)うごきだすって、もう書き終わってるじゃない。

おわぁ!!!言うな!!!!

(フィーネ)へぇ。出し惜しみ?

そういうわけじゃない。一気に全部掲載してもらっても、ゆっくり読んでもらえないだろ?

(フィーラ)ゆっくり読むようなものでもない気がするけどね。

それをいわないでくれ・・・・。

(フィーリア)ところで、途中で出てきたあやかちゃんの恋人っぽい人って誰?

さあ?

(フィーネ)PRIDE編にも出てたよね。

そだっけ?

(フィーラ)とりあえず、それは後で拷問して吐かせるとして。次回予告しましょ。

おう。頼んだぜ・・・・って、ええ!!!??

(フィーリア)次回、ネギまちっく・ハート第二十三符『決意の沖縄旅行』!!!

(フィーネ)ついにエヴァちゃんと恭也くんの関係に進展が!!!

(フィーラ)恭也が下した決意とは一体!!??

(フィーネ&フィーラ&フィーリア)乞うご期待!!!

まてっ!!!はなせっ!!!!どこにつれてく気だ!!!!そこ!!!カメラ回してないで助けろ!!!!(ぶつん・・・・・)


いよいよ最終回へと向けて動き出す…。
美姫 「寂しいけれど、続きが早く見たい。でも、その分終わりに近づく…」
むむむ。二律背反…。
美姫 「でもでも、やっぱり見たい〜」
うんうん。次回も楽しみに待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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