「遠坂、このままじゃ桜を巻き込む。外へ移るんだ!!」

 

「わかったわ!!」

 

俺達は戦いながら屋外へ移る。その移動はあっさりと上手くいった。臓硯にしても桜を傷つける訳にはいかないからだろう。最も奴らは桜を人間としてではなく道具としてみているのだろうが。

 

「しまった!!」

 

だが、同じ目的に向かって行動していても、戦いの駆け引きに関しては相手の方が上手だった。俺と遠坂は分断され、一対一の状況に追い込まれてしまう。俺の目の前に立ちふさがるアサシンのサーヴァント。

 

「くそっ!!」

 

あの“蛆”は“ぬえ”に似ていた。力もほぼ同じだとすれば、遠坂が優秀な魔術師だとしても苦しいだろう。一気に攻めようとする俺。しかし、アサシンは距離を置きながら素早く動きまわり、俺に捕らえさせない

 

「投影開始(トレース・オン)!!」

 

俺はシャインセイバーを投影し、それまで以上に果敢に攻める。しかし、アサシンはナイフを何本も投げて牽制してくる

 

「時間稼ぎのつもりかっ。」

 

俺は舌打ちをする。アサシンは元々真正面から戦うタイプのサーヴァントではない。先に遠坂を倒し、2対1で戦うつもりなのだろう。

 

「お前達の思い通りになってたまるか!!」

 

俺はナイフを切り払い前に進む。そこでさらに多くのナイフを投げてくるアサシン。俺は流石に速度を落とすもののそのまま突き進み、そして剣を大きく振り上げ切り裂こうとした。

 

ゾクッツ

 

その瞬間、俺は殺気を感じた。

 

「妄想・・・・・(バー・・・)」

 

アサシンが本郷さんを殺した宝具を発動させようとしている。その時、全てに気付いた。俺が足止めだと思い込んでいたアサシンの行動は俺がそう考える事まで計算に入れた、俺をあせらせて決定的な隙を作る為の罠だった事に。だが、それに気付いても既に剣を止め、他の動作に移る事ができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――ガルドボルクU―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、アサシンはその宝具を発動させるよりも早く巨大な矢に貫かれた。実質的には矢というより弓に近い形状のそれに貫かれたアサシンはそのまま消えていく。

 

「未熟だな、衛宮士郎。冷静さを失いこうも容易く罠にかかるとは。」

 

その弓を放ったのは赤い外套を着た男、アーチャーだった。傷ついた体を引きずり、皮肉気な笑みを浮かべている。

 

「そんな事で正義の味方になどなれるのか?」

 

「・・・・・余計なお世話・・・・っと、言いたいとこだが助かった。ありがとよ・・。」

 

俺は礼をする。しかし、それに対し、アーチャーは皮肉気な表情笑みを浮かべてまま答えた。

 

「先ほどは屈辱にも見逃されたからな。お前のような未熟者に借りを作ったままでいる等、我慢ならない。」

 

「嫌な奴だなお前。いい、じゃあ、俺も礼は言わない。これでお互い貸し借りは無し、って事でいいな?」

 

その態度に俺はむかっとして答える。アーチャーは小さく頷く。

 

「それでかまわんよ。それより、凛が危険なのではないかね?争う気配を感じるのだが。」

 

その言葉で俺は失念していた遠坂の事を思い出す。

 

「そうだ!!早く助けに行かないと!!」

 

「そうだな。まあ、彼女の事だ。そう簡単にはやられはしまいが急ぐに越した事はないだろう。」

 

そして、傷ついた身体にも関わらず走り出すアーチャー。俺もついで走り出した。

 

 

 

 

 

 

「ふぉっふぉっふぉ、どうした?お主の実力はその程度かな?」

 

「冗談、そのあまりに醜悪な姿にちょっと近づきたくなかっただけよ。まったく、中身の醜悪さがここまで外見に比例してる奴も珍しいわね。」

 

そう、私は挑発する。しかし、実際は完全にやせ我慢だった。相手の身体能力は完全にこちらを上回り、シングルアクションでの宝石魔術すら使う暇すらなかなか得られない。正直、ここまで持った事、事態奇跡に近い。

 

「ほほ、そうかい。なら、これでどうじゃ?」

 

蔵硯はこちらの胸の内を完全に見透かしたように言うと奴の身体からぞろぞろと蟲が這い出してきた。そしてそれは更にこちらに向かって這いよってくる。

 

「っ!!」

 

目の前の光景に対して感じる嫌悪感。同時にそれ以上の悲惨な環境の中に桜が何年も置かれ続けたのだと思うと、胸に暗い気持ちが走る。

 

「けど・・・・。」

 

小さく呟く。けど、だからこそ自分はこんな所で死ぬ訳には行かない。桜を助けるまで。彼女に恨み辛みをぶちまけられるまで自分は死ぬ訳には行かないのだ。

 

「バースト!!」

 

宝石を投げて、蟲を焼き払う。そして次の宝石、切り札の一つを取り出し、それを臓硯に向かって投げ付ける。起こる大爆発。

 

「ほほほ、甘いのお。」

 

だが、爆音の後に鳴り響いたのは上空からの笑い声。信じられない事に臓硯は一瞬で10メートル以上高く飛び上がっていた。そして、たくさんの蟲が足元からのぼり身体を這いずり回る。何とかそれを払い落とそうとするが数が多すぎて対処しきれない。

 

「う、動けない。」

 

そして何処からか蟲が体内に侵入したらしく身体が動かなくなる。そして全身に走る嫌悪感を前に、蔵硯は嫌な笑みを浮かべ近寄ってくる。

 

「いいざまじゃのお、遠坂の小娘。しかし、お主は見た目、麗しい。このまま殺すのも少々惜しい気がするわい。玩具として飼ってやろうかのお?全身に蟲を満たし、子宮や小腸を食い尽くす。ほほほ、考えただけでも楽しそうじゃわい。」

 

「・・・・・・。」

 

正直、歯が震えそうになるのを何とかこらえる。臓硯の笑みは、言葉は、私の魔術師としての心の防御壁を剥ぎ取っていった。だが、その時、臓硯の顔色が変わった。

 

「むっ、アサシンが敗れたか!?」

 

その言葉に私は希望を見出す。それはつまり士郎が勝ったという事。ならば、彼は救援にくるだろう。魔術師として本来あるまじきことかもしれないが、現状、何の対処もできない以上、一応の味方である彼に頼るのもやむなしだろう。だが、蔵硯は笑みを崩さない。

 

「助けが来ると思っているようじゃがのお。忘れたか?お主の身体に大量の蟲が救って折る。それも桜に住まわせておるのより致死性の高い毒蟲をな。お主は人質じゃよ。」

 

そこで私は臓硯が私を殺さなかった本当の意味に気付く。おそらくは先ほど言っていた事も事実なのだろうが、主目的は士郎に対する抑止。それに気付いた時、私は自らが足手まといになっている屈辱と絶望に包まれた・・・・・。

 

 

 


(後書き)

何か今回仮面ライダーらしくないですねえ。まあ、毎回、毎回、士郎最強!!みたいなのもなんだと思うのでこういうのもたまにはありかと思うのですがどうでしょうか?ところで9話以降、宝具などの漢字表記とつづりの記入し方が逆になっている事に気付きました?これからはこれで通します。その前についてはその辺も含めていずれ修正版を書くかもしれません。

PS.凛の呪文は本来ドイツ語だそうですが、ドイツ語を私は知らず、また原作にしてもデタラメらしいので英語で勘弁してください。


ああー! 凛がピンチ!
美姫 「士郎に対する人質となってしまった凛」
士郎は、この局面をどう切り抜けるのか!?
ドキドキして次回を待ってます。
美姫 「待ってま〜す」



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