<アーチャー視点>

 

「ふむ、どうやら今の私とお前の力は互角のようだな。英雄にすら並ぶか、科学の成長、恐ろしきものだな。」

 

目の前で言峰の奴がそう呟いている。

確かに凄い。純粋な科学では神秘を持たず、故にどれほどの力を持とうと英霊には適わない。

しかし、目の前のそれは三つの神秘をその性能に加算する事で装着者に英霊と互角の力を与えている、そう、私は推測した。

 

 

一つは適正の必要性。おそらくは奴が身につけるベルトは限られた資質を持つものにしか使えぬよう作られているのだろう。それは科学技術でありながら、あり方としては魔術に近く、故に神秘となる。

 

二つ目は、それに使われたエネルギー。正体はわからないが、魔術とも、また従来のエネルギー物質とも違う異質な力。

 

そして、最後の一つ。仮面ライダーという伝説。都市伝説として語り継がれる、その謎の存在は存在自体を一種の概念とし、仮面ライダーを模したこの存在もまた、その概念を纏っている、故にある意味で目の前の敵は“生きた英霊”なのだ。

 

 

「確かに見事だ。しかし、互角というのはどうかね?私はまだ、切り札である宝具を使っていないのだぞ?」

 

そう、挑発する。だが、言峰は余裕の笑み――――仮面に隠れ、実際の表情は見えないが――――で答える。

 

「ふむ、この状況で出し惜しみとは思えんな。状況がわからぬ以上少しでも事を早く進めたい筈だ。大方使わないのではなく使えないのだろう。魔力が足りぬか、あるいは使用に隙が多いか、そんなところではないかな?」

 

くっ、私は内心で歯噛みをする。

奴の言っていた事はずばり的を得ていた。

固有結界“無限の剣製”は展開に時間がかかりすぎて使用しにくい。

だが、それを決して表情にだすような愚かな真似はしない。

 

「どうかな。そう思うのならそう思って置くがいい。こっちとしては一向に困らんよ。」

 

「ふむ、そうか。それから、一つ言っておくが、別に切り札と言うものはそちらにだけ、あるとは限らないものだ。」

 

そう言って、言峰はベルトに何かを差し込んだ。

 

Reformation

 

『READY・・・・・・GO』

 

そして、言峰はその次の瞬間、閃光へと変わる。

 

「ぐはっ。」

 

目で捉えるのがやっとな超スピードで突撃した言峰に私は殴り跳ばされる。

常識など遥かに超越してる。それは人間や生物の常識はもとより、魔術の常識すらも含めてすら異常。

 

「ぐっ。」

 

三撃、四撃と次々と攻撃を喰らう。

そのスピードについていく事はサーヴァント最速と言われるランサーですら不可能だろう。ましてや、自分など遠く及ばない。

とはいえ、先ほど閃光と評したのは間違いだったかもしれない。

目に捉えられるものを・・・そして・・・・・・

 

“動きを捉えられるものを閃光等とは呼ばぬからな。”

 

傍目には無造作に繰り出したように見えるであろう一振りの刃、干将が奴のベルトを打ち砕いた。

 

 

 

 

 

「ぐっ、驚いた。まさか、あの速度についてこよう者がいるとはな。一体どのような魔術を使ったのかね?」

 

「魔術など使っていないさ。確かにスピードは凄まじかったがあんな単調な攻撃ではサーヴァントはやれんよ。」

 

ベルトを砕かれ人間の姿に戻った言峰に対し、私はそう言い放つ。

最も、実際は自分自身できたのが不思議な二度はやれぬ奇跡のようなものであったが。

 

「ふむ、衛宮士郎には通用したのだがな。彼はサーヴァントの何人かを倒した程の実力者のだが。」

 

「戦いには相性と言うものがある。サーヴァントに勝った衛宮士郎に通じたからと言って、サーヴァントに通じるとは限らんよ。」

 

恐らくは珍しい事に、意外そうな表情を浮かべる言峰にそう答え、私はベルトを砕いた時に、一緒に壊れてしまった干将の代りの剣を投影する。

相手の切り札を砕いたとて、奴にはまだ獣のような形態への変身が残されている筈である。

そして、こちらは奴の高速での攻撃を何発も受けて、既に満身創痍。

 

「君も教会の人間の端くれらしく、神にお祈りでもしてみるかね?」

 

だが、その程度の苦難など生前から何度も乗り越えてきた。

なにより、マスターの期待を二度と裏切る訳にはいかない。

 

「神父。神への祈りは十分か?」

 

 

 

 

 

<士郎視点>

 

「よかった・・・・・成功だ。」

 

俺達は賭けに勝った。桜は落ち着きを取り戻し、そしてゆっくりと目を開けた。

 

「・・先輩?・・・・・!!」

 

だが、彼女はいきなり跳び引いた。俺がその行動に戸惑いながら近づこうとすると、彼女は逆に離れようとする。そして悲鳴のような叫び声をあげた。

 

「駄目です!!来ないでください。」

 

「桜・・どうして?」

 

「先輩はもう知ってるんでしょ? 私がいままでどんな扱いを受けてきたのか。知られたら・・・私みたいな汚れた女は先輩の側にいられないんです・・。」

 

「汚れてるだなんて・・そんなことは無い!! それにそう言う事をいうなら俺だってそんなに綺麗じゃない!!」

 

人でないとは言え、俺は今までにいくつもの命を奪ってきている。

勿論、それなりの理由はある。理由はある・・・が、それでもその事実は、俺の手が血に濡れている事実に変わらない。

 

「違います!! 先輩は、先輩はまぶしいくらい綺麗で・・・・。」

 

だが、桜は俺の言葉を聞こうとしようとしない。

その時、遠坂が桜に近づき、桜の頬を叩いた。

 

「甘えてんじゃないわよ!! 士郎が綺麗? 人に勝手に幻想押し付けて、悲劇のヒロインぶったりするのもいい加減にしなさい!!」

 

「と、遠坂!?」

 

俺は遠坂の予想外な行動に動揺し、叩かれた桜は呆然とした表情をしていたが、やがて怒った表情になり叫び返す。

 

「ね、姉さんに何がわかるって言うんですか!?」

 

「ええ、わからないわ。けど、それはあなたも同じじゃないの? あなたは士郎の事を本当にわかっているっていえる?」

 

「少なくとも姉さんよりはわかってます?」

 

「あらー、どうかしらね?」

 

なにやら、姉妹喧嘩を始めてしまった。

でも、桜も元気になったみたいだし、喧嘩するほど中がいいって言うからいい・・・・・のかな?

 

「っと、こうしちゃいられないわ。士郎、言峰が何をしでかそうとしてるかわからないわ。今のあいつは得体がしれないわ。アーチャーが簡単にやられるとは思わないけど、安心はできない。私達も行くわよ!!」

 

「あ、ああ。」

 

と、そこで遠坂が喧嘩を中断し、俺の方を向いて叫ぶ。

そうだった戦いはまだ、終わっていなかったんだ。

 

「先輩・・・・・。」

 

俺を心配そうな目でみる桜。

今、彼女の中ではきっと色んな不安が入り混じっているのだろう。

かっての桜の苦しみには気付けなかった俺でも、今のそれははっきりとわかった。

 

「桜、俺は必ず帰ってくる。だから、桜も待っていてくれ。」

 

「・・・・はい。」

 

桜は少しの躊躇いを見せた後頷いてくれた。

そして、俺達は最後の戦いの場へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・・・・・・・・・・・・

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺達はたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アーチャー?」

 

「凛、すまんな、私はこれまでのようだ。」

 

たどり着いた先で見たものは体が透き通り崩れ落ちるアーチャー

そして・・・・・・・・・・。

 

「ふむ、どうやら、それは私もなようだな。」

 

灰になって崩れようとしてる言峰の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、衛宮士郎、その槍を持っているという事はランサーを倒したのかね?」

 

アーチャーは俺を見てそういう。

見返すとはっきり、わかるアーチャーはもう助からない。

左腕はなく、脇も半分えぐれている。

如何に英霊と言えど、バーサーカーのような特殊なタイプでもなければこれは助からないだろう。

 

「違う。言峰の奴がランサーに命じてアーチャーを殺させた。俺が攻撃を仕掛けた瞬間にな。そして、この槍は代わりに言峰を倒してくれと譲られた。」

 

「なるほど、つまり奴は無防備な一撃を受けたと言う訳か。」

 

問いかけに対し、簡潔に答えた俺の言葉でアーチャーは理解したよう。

 

「ならば、私も奴に倣ってみるか。衛宮士郎、こいつをくれてやろう。」

 

そう言って、アーチャーは赤い外套を突き出してくる。

 

「えっ、なんでお前が。」

 

俺とアーチャーの仲はお世辞にもいいとは言えない。

いや、はっきり言って険悪だ。

にもかかわらず、そのような言葉を発する意図が読めない。

 

「別に単なる嫌がらせさ。これを背負って君がどこまで歩けるか・・・っと、いう事に興味があってね。」

 

それだけ言い残し、アーチャーは消えた。

奴の最後の言葉の意味はもはや、問いかけることすらできない。

隣で遠坂が“馬鹿”っと小さく呟いた気がする。

そして、俺はその外套を纏い、言峰に向き合った。

 

「ふむ、そうだな。私ももう消える。餞別代りに最後に教えてやろう。私はオルフェノクというものだ。」

 

「オルフェノク?」

 

聞きなれない遠坂が問い返す。言峰は笑って答えた。

 

「そう、人類の進化形態。これについて最も詳しいものはそう言っていたな。ちなみにあのベルトもその男から貰ったものだ。魔術の知識」

 

「お前や言峰が人類の進化形態だっていうのか!?」

 

予想外な言葉に俺は驚く。遠坂も驚愕の表情だ。魔力を感じとれなかったとはいえ、いままでそれは一種の魔術か、あるいは人狼と言った元から存在する亜人種の一種だと俺は考えていた。

 

「そう、停滞した人類が生み出した新たなるステップ。あるいは科学が発達しすぎた世の中にあって、神秘への対抗力を失った事に対して行なわれた自然回帰かもしれん。一ついえる事はこれに関して人類の約1割がそれになる資質を持っていて、その資質を開花させるものが増え続けているという事だ。いずれ、歴史上幾度と無く繰り返されてきたように新人類と旧人類の戦いれおこるだろう。」

 

「そ、そんな事あるもんか!!オルフェノクが元は人間だっていうならきっと共存だってできる筈だ!!」

 

「そうかね?ならば示してみるがいい。奥にいるイリヤスフィールを止めて見せる事でな。」

 

「イリヤ!? どういうことだ!?」

 

予想外なタイミングで出てきた名前に俺が驚くと、奴はそれを面白そうに見た。

 

「オルフェノクは力が強いが代わりに寿命が短いという欠点がある。それを補う存在として“王”が存在するが、“王”は同じオルフェノクを食うし、単独で救える命には限りがある。そこで、オルフェノク達は求めたのだ。より優秀な人工的な“王”をな。」

 

「つまり、イリヤがその人工的な“王”って訳?」

 

言峰の言葉に対し、遠坂が問い返す。奴はそれを受けて満足そうに頷いた。

 

「その通りだ。オルフェノクの種子を埋め込み、願望増幅機である聖杯の機能と融合させる事で、彼女はオルフェノクの“女王”として生まれ変わったのだよ。」

 

「何でそんな事をしたんだ!!」

 

宣言するように言う奴に対し、俺は激昂し叫ぶ。

すると、奴は意外そうな顔をする。

 

「おや、おかしな事を聞くではないか。生物として、生きたいという欲求は極、自然なものではないのかね? オルフェノクとして、同じ生物を生かす為に、違う生物を犠牲にした。捕食と同じ、極当然の行為であろう。」

 

詭弁だ。

その答えを聞いた瞬間、俺は直感的にそう思った。確かに奴の言ってる事は正論かもしれない。だが、奴はそんな事は欠片も思っていない。ただ、その状況を楽しんでいる。そう、感じられた。

だが、それがわかたところでいまさらどうにもならない。それが現実だった。

 

「彼女が目覚めれば、オルフェノクの勢力は増大し、人類は滅びる。さて、どうする“正義の味方”?いや、“可能性の味方”だったかね?」

 

「くっ。」

 

嘲るように言う言峰の言葉に対し、俺は歯噛みをする事しかできない。

答えられない・・・答えをすぐに決められない。

 

「ふふ、お前の恩人はかって同じような状況で敵を全て殺した。君がどうするか、あの世とやらがあるのならそこから見物させてもらおう」

 

そして、その言葉を最後に言峰は灰になって消えた。

 

「くそっ・・・・・。」

 

言峰は言っていた。自分は他人の不幸になりよりの幸福を感じるのだと。奴は最後まで楽しんで逝ったという事だろう。

そして、それを見送った後、遠坂は言った。

 

「それで、衛宮君はどうするの? 私は・・・・イリヤを殺すわ。言峰の言葉を信じるなら彼女は人間にとって害悪でしかないもの。」

 

「俺は・・・・・・。」

 

遠坂の言葉に対し、俺は決意の言葉を述べた。

 

「俺はイリヤを助ける!!」

 

 

 


(後書き)

凛と桜の姉妹喧嘩が上手くいかなくて、それにさらにスランプとかが重なって時間がかかってしまいました。

 

パラダイム・ロストを最近見たのですが、あれにひとつ疑問。確率的にいえば、オルフェノクになった人って大抵オルフェノクに親しい人を殺されてますよね?何であんなに平和なんでしょう?

 

あ、ところで、次で最終回の予定でしたがもしかして後、1話延びるかもしれません。




遂に倒れた言峰。
美姫 「しかし、次に待っていたのは、何とイリアが敵!?」
果たして、士郎はどうやってイリアを助けるつもりなのか。
美姫 「そして、凛はどう動くのか」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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