「よし、高い酒でも買おう!!日本酒だ!!」

 

耕介はそう決意してバイクに乗り、街へと移動した。

 

 

 

 

 

「うーん、何がいいかなあ。」

 

街の酒屋に入ると耕介は純米酒のコーナーをめぐる。一般の日本酒のほとんどはエチルアルコールという醸造アルコールで水増ししてあるのに対し、純米酒は昔ながらの米のみで製法した酒のことである。そうでないものに比べ、値段がかなり高いが、味は雲殿の差である。とはいえ、高給取りの真雪ならともかく、安月給の耕介ではそうそういつもこちらを買うことは出来ず、口にできるのは彼女のおこぼれをもらう時のみ。しかし、今日は違う。自分の金で美味い酒を思いっきり飲める。そう考えて、意気揚々として、酒を見定めていた時一本の酒が目にとまった。

 

「こ、これは!?」

 

それは銘酒“露誉”。一本10万、しかも、滅多に市場に出回る事のない幻の銘酒である。迷うことなく、その酒を買うとそれ以外に色々買い物をすませ、うきうきとしながら、寮へと帰るのだった。

 

 

 

 

そして、その晩、お祝いにとお酒の飲めない寮生の皆にいつもより豪勢な夕食を振舞った。そしてその夜でちょうど原稿が仕上がったばかりの真雪と露誉れで二人晩酌を行なった。

 

 

「くぅぅー、美味い!!いやー、しかし、耕介ついてたなー。こいつは金払ってもなかなか手に入らない代物だぜ。」

 

真雪が一杯飲んで言う。彼女もこの酒を飲むのは初めてで、そして実際に飲んだその味は期待以上だった。

 

「ええ、ついてましたよ。普段なら例えみつけても手がでませんしね。」

 

耕介もその酒を堪能しつつ受け応えする。その表情は満足が浮かんでいる。

 

「しかし、いいのか?こんな高い酒振舞っちまって?滅多に飲めないものだってのによー。」

 

「ええ、一人で飲んだらどんな美味い酒でも魅力半減ですしね。それに真雪さんと一緒に飲んでる時は特に美味いですから。」

 

「おっ、うれしい事言ってくれるねー。それじゃあ、今度はあたしが何か振舞ってやるよ。」

 

「え、ほんとですか?期待してますよ。」

 

と、二人は盛り上がり、結局、二人で一升あけてしまったのだ。そのおかげで完全に二日酔いになり、愛や薫に怒られてしまったのだった。

 

                                  END




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