天上の黒薔薇

 

3話「日常の始まり」

 

 

 

「・・・・・・・さま、サマエルさま!」

 

とある高級マンションの一室にまばゆい光の柱が降り注ぎ、

一点にそれが集まり始める、その光の中から一人の天使が舞い降りた

その姿は神々しく、かつて「神を描いてはいけない」と、伝えられていたのが解かるほど

人では表現できないほどの、神秘性を秘めていた

 

「ふぁ〜〜・・・・・・・・・・よぉレミエル、どうかしたのか?こんなに朝早く?」

 

まだ半分寝ぼけ眼で、シオンは天使様の方を向いた、

 

「勘弁してくださいよ・・・・・・・、サマエル様が調べてくれと仰ったのでしょう?

いくら私が情報伝達能力に優れているからって・・・・」

 

そう言って肩をすくめるレミエルと呼ばれた天使、

 

「そうか、そうだったな、それは悪かった・・・それと俺はサマエルではなく今の俺の名は

シオンだ、俺はもうお前らと一緒じゃない、力をすべて失った、ただの人間だよ・・・。」

 

そう言って遠くを見るシオン、でも天使に命令口調の人間って・・・・・・

 

「自分を責めないで下さい!少なくとも私は、貴方がしたことを間違いだとは

思いません、それに、あなたにはまた、守るべき人ができたのでしょう?」

 

「ああ、そうか・・・・・・そうだったな、ところで頼んでいた彼女の事は?」

 

一瞬意外そうな顔をしてレミエルの方を見たシオンは、小さく笑みを浮かべて

本題に入ろうと顔を引き締めた。

レミエルは、昔と同じ、意思のこもったシオンの眼を見て話し始める

 

 

 

 

「調べてくれと頼まれた女性の名前は佐藤聖、私立の名門リリアン女学園

の高等部三年生で、山百合会という生徒会の長である三薔薇の一人であり、

白薔薇様(ロサ・ギガンティア)と呼ばれているようです、さらにリリアンには

姉妹(スール)制というものがあって・・・・・・・」

 

その後も家族構成やら、趣味やら、好きな食べ物やら、ひどくプライバシーに関わることまで話し始めるレミエル。

 

「・・・・・おい、なんでそんな突っ込んだとこまで、お前が知ってる!」

 

「私は【真の幻視を統括する】天使ですから、何なら彼女のスリーサイズも知りたいですか?」

 

レミエルは天使の笑顔・・・・・・・・ 失礼人をからかうのが大好き♪みたいな

最高の笑顔をした。

 

「いや、さすがにそれはマズいだろう・・・・・、」

 

シオンは、あまりに人間的な天使様の姿に、苦笑して

 

「そうか、キリストの学園に入ったのか・・・・・・これも主のいたずらか?

しかし、夜は別として、昼に守るとなるとリリアン女学園か、男の俺が行くには

・・・・・・ちときついな。」

 

(いや、貴方なら十分いけますって!そりゃもう確実に新宿の女王になれますっ!)

 

心の中で激しく突っ込みを入れるレミエル

 

「ほう、どういうことかな?レミエル?」

 

何か青筋通ってますシオン君、レミエルの顔も真っ青に・・・・・・・・

 

            〜しばらくお待ちください〜

 

数分後、意識が朦朧として、視点が定まっていないレミエルに

 

「・・・・・・・とりあえず、どういった形でも入る方法はないのか?」

 

と聞くシオン、いつの間にか復活していたレミエルはシオンにつぶやく

 

「それなら問題ありません、そこの学園長は・・・・・・」

 

それからまた、2,3つぶやいてレミエルは帰っていった、。

 

舞台開幕まであとわずか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    リリアン女学園

「どうしよう、また大勢いらっしゃるわ」

 

西洋人形のような美少女、藤堂志摩子はその光景を見てうんざりしていた。

つい数日前に、白薔薇様である佐藤聖の妹となり、白薔薇のつぼみになった

志摩子には、写真部や新聞部、その他大勢の方々が志摩子に質問をしようと

マリア像の前で待ち構えている。

 

(あれではお祈りが出来ないわ)

 

一瞬、躊躇した志摩子だったが意を決してマリア様の前へと歩いていった、しかし

 

「きゃあ!白薔薇のつぼみよ!」

 

「やっぱり綺麗ね。」

 

「白薔薇様に選ばれるだけあるわ」

 

そのような言葉と共に囲まれてしまう。

 

(何故私だけこんなに珍しがられるの?やっぱりわたしがここに相応しくないから?)

 

全員が、志摩子のことを魅力的だと思い集まっているのに、志摩子は家に負い目

を持っているのか、どんどん悪い方向に考えを持ってしまう傾向があるようだ

 

(私がこんな事では、お姉さまにご迷惑をかけてしまう、やはり・・・・・・)

 

そんな事を思っていると、不意に人ごみの一箇所が別れ、一人の女性が

志摩子の方へ歩いてくる。

 

「ごきげんよう」

 

優雅に挨拶をする美女は、深紅の眼と漆黒の黒髪を持っていた

今はその髪をポニーテールにしている

 

「すいませんが、良かったら職員室まで案内してもらえませんか?」

 

その瞬間、多くの人が彼女に見惚れ、言葉を失って居た

 

「どうしました?」

 

小首をかしげ、志摩子に再度職員室への道を聞く女性

 

「あっ、いえ!はい!わかりました、」

 

志摩子は、彼女に見惚れていたことで、真っ赤になった顔を隠しながら

急いでお祈りを終え、女性と共に歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       廊下

(それにしても綺麗な人ですね、薔薇様方より綺麗な方は、早々居ないと思っていたのですけど・・・・・・。)

 

チラッと後ろを見ると、女性は凛とした顔で、志摩子の数歩後ろを歩いている

その姿にまたも見惚れていた志摩子は、先ほどのマリア像前での出来事を思い出し

 

(やはり私はここに相応しくない・・・・・)

 

志摩子は苦しんでいた、出口の見えない迷路に、一人取り残されていた

誰よりも信心深く、敬虔な志摩子も、実家が寺だということで・・・

 

「ちょっといいかしら?」

 

声がかけられた方向へ振り返ってみると、彼女が立ち止まり、こちらを見ている

 

「貴方は神様を信じる?」

 

彼女が声をかけた

 

「もちろんです、リリアンに神を信じないものは居ません!」

 

あたりまえではないか、志摩子は、即答した、確かにカトリック系の学校に通ってる以上、

神を信じぬ不届き者hが、この学校には居ないだろう。

 

「それでは、貴方の信じる神は誰?」

 

「・・・・・え?」

 

「・・・・・・神様はただ一人しか居ないわ、イスラム教の神も、ユダヤ教の神も、

そしてキリスト教の神も、神は貴方たちの中に居るのよ、邪教だと言われた人たちの中にも、罪人の中にも神様はいらっしゃる・・・・・」

 

その女性は、志摩子の方に歩いていき、耳元で。

 

「それがたとえ東洋のそれであったとしてもね。」

 

「!!!!!!」

 

志摩子は、眼を見開いて女性の方を向く、

かわいく口元に人差し指をつける女性

 

「用は、貴方が信じてあげなくてどうするってことよ!ってわわわ!何泣いてるの?

私悪い事言った?」

 

志摩子は、とめどなく流れる大粒の涙を止めようとせず、女性の前に

立ち尽くしていた、今まで、いくどとなく悩み志摩子を苦しめていた闇が

スッと晴れていく、

 

「すいません・・・・眼に・・・ゴミが・はいっ・・て・・しまって・・・」

 

眼を真っ赤にしながら、バレバレの嘘をつく、しかし彼女の顔は晴れやかだった

 

(・・・・・・彼女はもう大丈夫だな)

 

女性はそう思い、最高の笑顔を浮かべ、親指をピンと立てグーサインを作って見せた

 

「そういえば、名前聞いてもいいかな?あなたの?」

 

ふと思い出したように聞く女性

 

「!!!失礼しました!!私は藤堂志摩子と申します、皆様からは

『白薔薇のつぼみ』と呼ばれています、どうぞお見知りおきを」

 

女性の顔に見惚れていて、まだ自分の名を名乗っていないという大失態に、

やっと赤みの引いた顔をまた赤くし、急いで自己紹介をした

 

「白薔薇の・・・・と言う事はあなた、聖さんの?」

 

「はい、妹です、お姉さまをご存知なんですか?」

 

かなり驚いた顔で居る女性に対して、満面の笑みの志摩子

 

「ええ・・・・まぁ」

 

「それならぜひ、お姉さま方に紹介したいです、昼休みは薔薇の館で食べませんか?」

 

「ええと・・私は・・・・」

 

苦笑しながら言葉を濁す女性、その仕草を承知と受け取った志摩子

 

「では、昼休みに・・・・どうぞ、ここが職員室です」

 

何か強引に話しまとまっている間に職員室に着いたようで、そのまま立ち去ろうとする志摩子

 

「・・・・・ちょっと待って!」

 

疲れたような声で志摩子を呼び止める女性

 

「あなたは私の名前も学年も知らないのよ、それなのに昼休みに探しに来ることが出来るの?」

 

「あっ!」

 

赤くなる志摩子

 

「・・・・・・・私はシオン、高等部二年に転校してきたの、よろしくね。」

 

と言って今度は本当に「ごきげんよう」と言って分かれた、志摩子と別れた後

彼(彼女?)シオンは

 

(それにしても主よ、何故あなたは私にこんな試練を・・・・・)

 

と心の中で苦笑した、しかしその顔はどちらかというと、いたずらに巻き込まれた被害者

のそれだったという・・・・・・・・

 

そのころ学園長室では

 

「やっぱり志摩子と会ったわね、しかもこれで彼女にもまた会う羽目になった、

面白くなってきたわね♪」

 

といって、いたずら成功よっ!と言って笑っている学園長の姿があったという

      

      


あとがき

    学園編導入部です、長くなりそうなので分けました、

    良ければ次もお読みください、ケイロンでした

    




……学園長って一体、何者。
美姫 「それは、次回明らかになるわ」
本当かよ!?
美姫 「わっかんな〜〜い。それは、ケイロンさんに聞いて〜」
だったら、言うなよな、お前は。
この口か! この口が悪いのか!?
どうして、お前は、そう、人様を、混乱、させたがる、ん・だ!!
美姫 「痛い、痛い。ちょっと、話なさいよね」
ゴツン!!
げにょっ! ぴよぴよぴよ……。
美姫 「全く、何するかな〜」
そ、そ、そ、それはこっちの台詞じゃぁぁーー!
美姫 「もう、五月蝿いわね」
うぐっ!
も、もろにみ、鳩尾に……。あ、だめ、こ、呼吸が……。
美姫 「さて……。仕切り直しよ。ケイロンさん、投稿ありがとうね。
女生徒として転校してきたシオン。果たして、聖との再会はどうなるのかしら。
聖はシオンが男だと知っている事だし、その辺が楽しみ♪
それじゃあ、また次回でね〜」



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ