Side:ネロ


ソロソロ桜が芽吹き始める季節な、3月下旬……1年間の実験的部隊だった『機動六課』が解散する時が来た――分かってた事とは言え、六課での思いでは沢山
あるから、ガラにもなく感傷に浸っちまうな。

そんな事を感じるくらいには、俺も六課を気に入ってったことなんだろうな――まぁ、確かに六課での日々は、武装隊に居た時よりも刺激的だったから、忘れろって
いうのが無理ってモンだけどよ……マジで滅茶苦茶濃い1年だったからな今年は!!

なのはだってそう思うだろ?



「其れは、勿論そう思うよ?
 だけど、六課の解散は、終わりじゃなくて『始まり』なんじゃないかって思ってるんだ、私は――或は、はやてちゃんも同じ事を考えて居るかも知れないけどね。」

「始まり?」

「うん。六課での経験を己の力として、夫々が自分の進むべき道に進むためのスタートライン……それが、六課の解散式なんじゃないかって思ってるの。」

「言われてみりゃ、それもそうかもな。」

実際に俺も、機動六課に配属された事で、武装隊に居た時よりも強くなれたし、なのはだって同じだ。
もっと言うなら、機動六課に所属してたから、俺と名のはヴィヴィオと出会う事が出来た訳だからな……確かに、機動六課は、夫々のスタートラインとなる特殊部隊
だったのかも知れないぜ。

そしてきっと、スタートを切った俺達の道には、終わりなんてもんは存在しねぇんだろうな。



「私達の道にゴールはないよネロ?……だから、生涯走り続けるんだよ♪」

「Ha!上等だぜ!!」

ゴールなき道……上等だぜ!!
なら、その道を走り続けてやろうじゃねぇか?――俺1人だったら無理かもしれないが、生憎と俺は1人じゃなくて、なのはって言う最高のパートナーがいるんでね。
俺となのはの命の火が燃え尽きるその時まで、走り続けてやるさ!!










リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Last Mission
『魔剣士と魔導師〜Devil May Cry〜』











Side:なのは


六課解散式は、滞りなく進んで行ったんだけど――何でこうなったのかな?
部隊長と、小隊長の挨拶が終わって……其の後で、六課を『スターズ』と『ライトニング』に分けての模擬戦って、どうしてそうなるの!?いや、模擬戦自体は大歓迎
だから、良いんだけどね!?



「愚問やでなのはちゃん……私が部隊長を務めとった機動六課の解散式が、そんじょそこらの無頼が解散する時みたいな平凡なもんで済むって思っとるんか?」

「言っちゃ悪いけど、思ってないよはやてちゃん。」

「アンタが、普通に部隊の解散式をやるはずがねぇって思ってたからな……此れ位の展開は予想済みだぜ?
 其れにだ、スターズとライトニングで分けた以上は、俺となのはは同チームだ……ライトニングにはシグナムとバージルが居るけど、負ける気はしねぇよ。」

「よく言ったで2人ともぉ!!てか、やる気満々やなネロ君もなのはちゃんも!!――まぁ、其れでこそ、こんなトンでも企画を考えた甲斐があったちゅうもんやで。
 ぶっちゃけて言うなら、この模擬戦は六課の最後を飾る為の『お祭りバトル』やさかい、各員手加減なんてしないで、自分の力を思い切り発揮したってや!!
 六課もきっと、派手に解散してくれることを願ってるやろうからな!!」



やっぱり何か意図があったんだね?
でも、そう言う事なら大歓迎だよ――六課の終わりを飾る模擬戦なら、派手なのが良いのは当然だし、私とネロが一緒のチームである以上は、勝敗を度外視して
何処までも派手に出来ると思うから、期待してくれていいよはやてちゃん!



「さよか……なら、始めるとしよか!六課の最後を飾る、最強の模擬戦ちゅうもんをな!!」

「…始めるのは決定事項の様だから、もう何も言わないが――スターズとライトニングが模擬戦を行ったら、この演習場など一堪りもないのではないかはやて?」

「大丈夫やでクレドさん……どうせ上の方かて『六課が本気で模擬戦を行う?あ、演習場逝ったな此れは。』とか思ってるやろうから。」

「それは、全然大丈夫とは思えないのは私だけなのか?……其れとも或いは、この感覚が六課の普通なのか、正直に言って判断に迷う所だな。」



六課と言うか、はやてちゃん特有のものだと思いますよクレドさん?
って言うか、始末書出すの面倒だから、あらかじめ部隊長であり特務二佐って言う立場をフル活用して、演習場が壊れる事前提での使用許可を無理矢理押し通し
たんだろうなぁ……10年前の薄幸系美少女も、今やすっかり策士になっちゃったね。

さてと、向こうにはバージルさんが居るけど、こっちにもく〜ちゃんが居るから、人数的には五分!
はやてちゃんとクレドさんとアインスさん、アギトとツヴァイは審判役だしね。(って言うか、アインスさんが加わったら、アインスさんの居る方が絶対に勝っちゃうし。)

始めようか、六課の最後を飾る、最高に派手で激しい模擬戦を!――Are you Ready?Let's rock!!(弩派手に行こうか!!)








――――――








No Side


始まった解散式の模擬戦は、其れはもう初っ端から物凄いモノとなっていた。
魔力弾が飛び交い、砲撃が煌めき、クロスレンジのぶつかり合う音が響いて、怒号が飛び交う……場所が演習場ではなくて、その辺の荒野とかだったら、模擬戦
ではなく、実戦の現場なのではないかと勘違いしそうなレベルの戦いだ。


「仕事は兎も角、こういう戦いだったら負けねーぞスバル!」

「だろうけど、一応双子とは言え、アタシもお姉ちゃんとしての意地があるから……」


「「負けない!!」ねー!!」」



「むぅ……矢張りお前はやり辛い相手だな、ドゥーエよ……」

「褒め言葉として受け取っておくわザフィーラ。
 私の本領は、正面切っての戦いじゃなくて『暗殺』だから、搦め手や裏技はお手の物よ?……まぁ、其れも貴方が相手だと半減してしまうわ…流石守護獣ね。」



特に、クロスレンジ戦闘がメインである面子は、マンツーマンの状況になっているが故に、その激しさは半端なものではない。――尤も、夫々の相手もまた、目まぐ
るしく変わる戦況に合わせて変わっていくのではあるが。

それでも、その中で、開始直後から一度も相手を変えずに戦っているのが、ネロとバージルの魔人親子だ。
この戦いで、ネロは刀での戦いでは分が悪いと思ったのか、閻魔刀ではなくレッドクイーンを使ってバージルと戦っている――40kgもあるレッドクイーンを使ってい
るにも拘らず、バージルと互角の斬り合いが出来ると言う辺りに、ネロのパワーの凄まじさが見て取れるだろう。


「その大剣を片手で軽々と操るとは大したものだが、それでも重量武器故の隙の大きさを完全に消す事は出来んらしいな。」


だが、如何にネロが強いとは言え、ネロとバージルでは戦いの経験が圧倒的に違うのだ。
ネロもフォルトゥナとミッドチルダで、神を倒した猛者だが、バージルは結果だけ見れば敗北したとは言え、何の躊躇もなく魔帝に戦いを挑んだ程の猛者であり、更
には、魔帝が配下にしていたほどの実力の持ち主である。

その差が現れ、ストリーク後の隙を突かれて、ネロはバージルの旋風脚で吹き飛ばされる。――が、やられっぱなしではなく、吹き飛ばされながらも、ネロはブルー
ローズを連射してバージルを攻撃!
普通に考えれば、カウンターの射撃は必中だが、バージルほどの使い手ともなれば、銃口や目線の角度から、弾道を読む事など造作もない事であり、飛んで来た
弾丸を、村正を一閃して一刀両断!正に神業の剣技だ。

しかそ、それこそがネロの狙いだった。


Catch this!!(取ったぜ!!)


弾丸を斬りおとした際のわずかな隙を逃さずに、スナッチでバージルを引き寄せると……


「オラァ!!!」

「!!!!」


胸倉をつかんで、ヘッドバット一閃!!
如何にバージルと言えど、カウンター気味にブチかまされた強烈なヘッドバットの衝撃を耐えきることは不可能だったのか、僅かに動きが止まり……


Final Atomic Buster!!(ファイナルアトミックバスター!!!)


それをネロが見事にとらえて、ジャーマンスープレックス×2からの、ジャンピングパイルドライバー→スクリューパイルドライバーに繋ぐ連続技『ファイナルアトミック
バスター』が炸裂!!
更に掴んだ足は其のまま離さずに、今度はジャイアントスウィングで振り回した上で投げつけた!……高速移動中のフェイトに!!

流石に人間ミサイルが飛んで来たとなれば、其れを回避する為にフェイトは止まるか、飛行軌道を変えるしかないだろうが、投げ飛ばされたのがバージルであるの
ならばその限りではない。


――シュン!


フェイトに激突する前にエアトリックを使い、ネロの背後に移動し、村正での居合を仕掛ける。
ネロは背後に移動された事に気付いていないのか、全く動こうとはせず、このままだと居合が直撃して大ダメージは確実――


クロスファイヤーシュート!!

「む!?」

「流石、視野が広いなティアナは。」


だったのだが、居合を放つよりも速く、ティアナのクロスファイヤーがバージルに放たれ、そのせいでバージルは攻撃の手を途中で止め、強制的に回避行動を執ら
される事になったのだ。
早い話、ネロは動かなかったのではなく、ティアナがバージルの動きを見ていた事を知っていて動く必要がないと思っていただけの事だったのである。


「そいつが俺に対処すると言う事を信じていたという訳か……此れが仲間との信頼と言うやつか、面白い。
 ダンテに負けるまでは、背中を任せられる仲間など必要ないと、そんなモノはイザという時に足手纏いになると思っていたが、六課で過ごすうちに其れは間違いだ
 ったと思い知らされた――まして、シグナムと言うパートナーを見つけた今は尚更な。」

「そうかい、ソイツは良かったぜ!!」

「ダンテさん風に言うなら、此処から先のライブはR指定って言う所ですね?
 なのははさんと比べたら全然劣るかも知れないですけど、サポートしますよネロさん!!」

「Ha!なのははセラフィムだ、比較する事自体が間違ってるぜティアナ。
 それにだ、魔力や戦闘力は兎も角として、お前の状況判断能力は、指揮官としての能力はなのはにだって引けを取ってないぜ?だから、後ろは任せたぜ!!」

「了解!!」


任務の際に、常にスターズの前衛として先陣を切っていたのはネロとスバルであり、ティアナはなのはの補佐として『副司令官』の立場になる事も少なくなかったの
で、このコンビは非常に珍しいが、アリなのだ。
此れも、複数人で行う模擬戦故に起こる混戦があるからの事ではあるが。







その一方で………


「こうしてオマエとサシで戦うのは初めてかも知れんな高町?」

「言われてみればそうですねシグナムさん?」


クロスレンジ最強のシグナムと、ミドル〜アウトレンジ最強のなのはが対峙していた。
共に若干バトルジャンキーが入って居る2人だが、意外な事に管理局に入局してから、今の今まで一対一で戦った事はなかったのである。
と言うのも、シグナムは己の戦闘スタイルから、模擬戦にはもっぱらフェイトを誘っていたし、なのはもなのはで、模擬戦にはヴィータばかりを誘っていたので、互い
に直接対決の機会はなかったのだ。


「10年前、魔法と関わって僅かであるにも拘らず、テスタロッサを倒し、更には闇の書の闇すら砕いた最強の魔導師の力、見せて貰おうか?」

「言われなくとも全力全壊です!!
 だけど、お手柔らか意にお願いしますね……シグナムお母さん♪」

「その呼び方は止めろぉぉぉ!!」

「じゃあ、シグナムお母様?」

「其れもやめろ!!」

「母上!」

「貴族階級か!」

「シグナムママ!!」

「其れは絶対に許可しない!魔力構造レベルで拒否する!と言うか、私がお前の母だという思考から離れろぉ!!!」

「だって、私の夫のネロの親であるバージルさんのパートナーなんだから、義理の義理だけど私のお母さんでしょ?…もっと言うならヴィヴィオのお婆ちゃんだし。」

「言うなぁ!!」


しかしながら、六課最強クラスの2人の戦いは、激しさとは裏腹な会話のせいで、どことなく締りがなかった。
それでも、なのはが矢継ぎ早に無数のアクセルシューターを放ち、シグナムが其れをレヴァンティンで弾き飛ばす光景は、凄まじい物があったのは否定できない。



と、こんな具合で、演習場では『この模擬戦の模様をDVDにしたら、可也売れるんじゃないか』と言うレベルの戦いが繰り広げられていた。
だが、その戦いは、唐突に、そしてある意味でお約束的な結末を迎える事になる。



「今だ!ブチかませ、なのは!ティアナ!!!」


混戦の中で、再びバージルをスナッチで引き寄せたネロは、其のまま卍固めでバージルの動きを拘束すると、上空のなのはとティアナにフィニッシュを託す。


「全力全壊!!」

「此れ位なら撃ち抜ける!」



『『Starlight Breaker.』』


なのはとティアナのデバイスには、既にすさまじいまでの魔力が収束しており、桜色と橙色の極大の魔力球は、この模擬戦の終焉の合図そのものズバリであった。


「「スターライトォ……ブレイカァァァ!!!」」



――キュイィィィィィィン……ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!



放たれた二色の集束砲は、ライトニング分隊を吹き飛ばして、文字通りの鎧袖一触!!
ネロに卍固めを極められていたバージルだけは難を逃れたが、1人だけ生き残った所で、スターズの残存メンバーが相手では多勢が無勢故に、自ら降参を宣言。
結果、この模擬戦はスターズの勝利となり、同時にこの模擬戦は、伝説の模擬戦として管理局で語り継がれていく事になるのだった。

戦闘内容の凄まじさと、そしてこの模擬戦で発生した途轍もない被害額と共に――








――――――








こうして六課は解散した訳だが、その後は六課メンバーがどうなったのかを少し見て行こう。



はやては、六課解散後は特務二佐の地位を生かして、管理局の特務隊全般を取り仕切る役割についている。
多忙な日々だが、その傍らには、常に補佐でありパートナーであるクレドの姿があり、忙しいながらも充実した日々を送っているようだ。


フェイトは六課解散後には、嘗てと同じように執務官としての日々を送っている。
スカリエッティ一味は壊滅したとは言え、ミッドチルダから犯罪そのものがなくなった訳ではないので、はやて以上に多忙な日々を送っているが、其れでもフェイト自
身は己の力がミッドの平和のために役に立っていると思って頑張っているようだ。


バージルは、嘱託の契約期限が切れると同時に、管理局と放れ、ミッドの一角で喫茶店を開店し、士郎仕込みのコーヒーを目玉にして、意外と繁盛している模様。
とは言え、悪魔が現れたその時は、ネロと共にそれを狩りに行くあたり、戦う者としての血は健在らしい。
六課解散から半年後に、シグナムと籍を入れて目出度く夫婦となっている。


そのシグナムは、六課解散後は、何と嘱託魔導師となり、有事の際に管理局に協力する存在となっていた。
なので、平時の際は、バージルが経営する喫茶店でウェイトレスを務めているのだが……これが中々どうして似合っており、シグナム目当てで来店する客が少な
からず居るようだ。
因みに、数年の後に、双子を出産して母となるが、己が母となる事以上に自分が子を産める体質だった事に驚いたのは、まぁ仕方のない事だろう。


ティアナは、六課解散後に、念願の執務官の資格を取得し、若き敏腕執務官としてその力を揮う事になる。
補佐官にウェンディを備えたティアナは、ともすればフェイト以上の執務官であるのかも知れなかった――同時にそれは、彼女の兄が決して『無能』ではなかったと
言う事の証明にもなっていた。


そして、他の面々も、夫々が夫々の場所で、確かな活躍をしている。
機動六課は解散されたが、しかしその隊員たちの力は、管理局で絶対に必要な力となっているのだった。








――――――








そうして平和になった世界だが……ミッドチルダの一画には少し不思議な店が出来ていた。
営業時間は日が沈み切ってからであり、『合言葉』が無いと仕事を受けてくれないトンデモナイ便利屋――『Devil May Cry』が、其処には存在していた。



――ジリリリリリリリリリ!!!



「Devil Never Cry.Yes.Okay, great. Where's the place?We'll be right there.(デビルメイクライ……悪魔が?了解、直ぐに行くよ。)」


けたたましくなる電話を取ったのは栗毛をサイドテールにした女性――最強の魔導師と謳われるなのはだ。


「合言葉の客だよ、ヤバそうだね?」

「Okay, let's get it over with in ten minutes. can't let a single one of those suckers live. (上等だ、クソ共は生かしておかねぇ、10分で片を付けるぞ。)」


そして、なのはは店主であるネロにそれを告げる。
六課解散後、ネロとなのはは古巣の武装隊に戻ったが、其れとは別に、夜は悪魔退治を専門にする店を立ち上げていたのだ。

スカリエッティが起こした事件以降、件数は減ってるとは言え悪魔が現れる事が無くなった訳ではないので、こう言った戦力と言うのは絶対に必要になるのである。


「10分?…冗談でしょ、5分だよ。」

「Ha-ha……More than enough. (上等だぜ。)」


だが、ミッドの街に悪魔が溢れ出る事は二度とないだろう。
黒き騎士と白き魔導師が存在する限り、この地に悪魔が栄える事は絶対にないのだ――それを示すかのように、ネロとなのはの左手の薬指に嵌められた指輪が
月明りを受けて、少しだけ煌めいていた










 Fin




黒き騎士と白き魔導師

原作:魔法少女リリカルなのはシリーズ、Devil May Cryシリーズ

STAFF



企画・原案:吉良飛鳥&神の電波



ストーリー構成:吉良飛鳥&kou



文章更生:kou



オリジナルデバイス設定:吉良飛鳥&kou



オリジナル魔法設定:吉良飛鳥



Specialthanks:読んでくださった読者の方々。



Thank you For Reading



Presented By 自由気侭



あとがきへ

遂に最終回か。
美姫 「少し寂しいわね」
だな。しかし、仕方ないがな。
美姫 「まあね。最後は六課の解散とその後ね」
解散式は派手にやったな。
美姫 「本当にね。で、その後の皆の様子も元気そうで良かったわね」
吉良飛鳥さん、投稿ありがとうございました。
美姫 「お疲れさまでした」



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