Side:ネロ
なのは、この珍妙な魚は一体何だ?
「此れ?此れはえ〜〜〜〜と……『サカタザメ』だね。
エイの上半身とサメの下半身を併せ持つ軟骨魚類で、サメって名が付いてるけど、分類上はエイなんだって。」
「これは絶対アレだよな?神様がめんどくさくなってサメとエイを合わせた結果生まれた生物だよな?
そうじゃなければ、神様の部下がデータ入力を間違って、サメのデータとエイのデータを半分ずつ入力した結果生まれた珍妙生物だよな絶対に?」
「言い得て妙ね……アタシだってはじめてこれを見た時は新種の生物かと思ったもの。」
「ホントに面白い形だよね。
見た目のユニークさと、適度な大きさからサカタザメやその類似種を展示してある水族館は意外に多いらしいよ?」
そうなのか?まぁ、確かにこんだけ珍妙な見てくれなら、見た目の面白さで客を呼べるかもしれないけど。
そう言えば、この水族館はやたらとサメの種類が多い気がするんだが、俺の気のせいかな?
「気のせいじゃないわよ?
何を隠そう、この『海鳴海洋博物館』はサメの展示寮と飼育量と飼育種類でギネスに登録されてんのよ?
サメやエイをはじめとした軟骨魚類の種類だって世界一なんだから!!――観光の第一弾として、先ずはこの水族館をた〜〜ぷり堪能して貰うわよ!」
如何にも凄い場所みたいだな此処は。
ま、俺自身『水族館』てのは初めてだし楽しませてもらうさ。てか楽しまないと損だしな。
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission23
『観光と事件〜Resort&Emergency』
Side:なのは
思った以上に、水族館はネロ君の琴線に触れたみたいだね?
普段のクールな感じからは想像も出来ない程に、水族館の彼是を楽しんでるみたい――或はこっちがネロ君の本質なのかもしれないけどね。
『♪』
「ウツボ!?……OK、お前が何を求めてるかは知らないが、取り敢えずこっち見るな。」
『にょろ〜〜ん……』
あのウツボは一体何がしたかったのかな?……一撃の下に沈めるネロ君も大概なんだけどね。
で、如何したのアリサちゃん?私に何かついてる?
「何もないわ……だけどさなのは、アンタってレイジングハート以外には首から何も下げてなかったわよね?」
「ほえ?……言われてみればそうかも。」
「だった敢えて問うわ、アンタが今してるそのネックレスは如何したの!?シンプルなシルバーチェーンに通された2つの指輪って如何言う事よ!?
アタシの知る限り、アンタは其れほど装飾品とかには興味がなかったわよね!?なのにそのセンス抜群のネックレスは一体如何したのよ!?」
え〜〜と、このネックレス自体は私の自前と言うか特注だよ?
但し、2つの指輪はネロ君から貰ったモノだけどね?
「ネロからですってぇ!?」
「ね、ネロ君のデバイスの待機状態が指輪なんだけよ!
元々ネロ君は人差指と薬指に指輪をしてたんだけど、マリーさんが待機状態の指輪の大きさを人差指用と薬指用に設定しちゃってね?
右手はグローブで覆ってるから指輪は出来ないし、左手の中指と小指じゃサイズが合わないでしょ?
捨てるのも忍びないって事で、私にくれたんだよ?………私も大切に使わせて貰ってるんだけど……何か問題あるかなアリサちゃん?」
「問題がないのが逆に問題でしょうが、この馬鹿チン!!
てかアンタはネロに其れを貰って何とも思わなかった訳!?――そんな筈ないわよね!?」
え〜〜と……嬉しかったかな?
この指輪は長年ネロ君が使ってきた物だけど、其れを渡してくれるって言うのは、少なくとも私の事を『託すに値する者』って見てくれた証だからね♪
「………〜〜〜!!」
「アリサちゃん?」
「何でもないわ……まぁ、アンタが嬉しかったなら良いんじゃない?
って、そう言えば気になったんだけど、ネロってば何で右腕の肘から下を革のグローブで覆ってる訳?只のファッションって訳でもないわよね?
何となく本人に聞くのは気が引けるからアンタに聞くんだけど――何か知ってる?」
と、唐突だねアリサちゃん!?
今日のネロ君は『着てると暑い』ってコートを家に置いて来たから、余計に右腕が目立っちゃった訳か……
ん〜〜〜〜〜……如何したモノかなぁ?
まさか本当の事を言う訳にはいかないし、かといって適当な嘘は絶対ばれる。お兄ちゃんに『なのはは嘘が下手だ』って言われた事も有るし。
「タトゥーを入れるのに失敗したんだよ。」
ネロ君?
「少しばかりカッコつけて、右腕に剣とドラゴンの派手なタトゥーを入れようとしたんだけど、モノの見事に失敗してな?
で、あまりにもカッコ悪いが、剥がすには手術必須だし、手術は金が掛かるってんで、革製の特注グローブで右腕を隠してるんだ――納得したか?」
「其れは其れで失敗したタトゥーの柄を見てみたい気もするんだけど……」
「止めといた方が良いと思うぜ?
彫り込もうとした物が物だけに、出来の悪いトカゲと……その、なんだ『男の急所』みたいになっちまったからな。」
「前言撤回、絶対見たくない!!」
「賢明な判断だぜアリサ。」
うわぉ……何と言う鮮やかかつ、ある意味で説得力のある説明をしてくれるねネロ君も。
しかも、逆に見てみたいって言う要望をも退けるだけの理由まで――何だろう、何となくこの辺の口の巧さみたいのは全部ダンテさんが関わってる気が…
「ま、そんな訳だから右腕の事はあんまり気にしないでくれ。其れよりも、そろそろ『イルカショー』の時間だろ?会場に行こうぜ。
早目に行かないと良い席がなくなっちまうからな?ほら、行くぞ!」
「ちょ、ネロ君!?」
「ふ、普通になのはの手を引いてったわねアイツ……」
「なのはちゃんとネロ君……ある意味でお似合いだと思うんだけどなぁ……?」
ちょ、アリサちゃんとすずかちゃんも変な事言ってないで〜〜〜!!
って言うかネロ君、そんなに急がなくてもイルカショーはなくならないからね!?だから少し落ち着こうね!?
「良い席で見たいんだよ俺は!最前列を確保できれば最高だな。」
「最前列は危険だよ!?」
何て言うか、何時もよりも子供っぽいなぁ今日のネロ君は。
だけど、孤児院で生きて来て、更に大きくなってからは悪魔と戦う日々を繰り返してたって言うなら、娯楽を楽しむ暇はなかったのかもしれないね………
だったらとことん楽しまないと損だね♪
行こうかネロ君、最前列を確保しに♪
「こ、今度はなのはが……」
「本当にネロ君は彼氏じゃないのかなぁ?」
違います!!なんで、如何してアリサちゃんもすずかちゃんもそう思うのかなぁ……?
――――――
Side:ネロ
へ〜〜〜……初めて見るがコイツは何ともFantasticだな?
イルカの知能レベルが高いってのは聞いてたが、此処まで多彩な芸を見せてくれるとは正直驚きだぜ――おぉ、スゲェ大回転ジャンプだ!!
――バッシャァァァァァアァッァアッァァン!!!!
「「「きゃぁぁぁぁぁ♪」」」
「のわ!?」
Shit(クソ)……着水の波飛沫が……最前列は危険てこう言う事か――全身ずぶ濡れだぜ。
「人の事言えないけどずぶ濡れじゃないネロ?正に『水も滴るイイ男』って所かしら?」
「知らねぇよ……だが、最前列がこんなに水飛沫が来るものだとは思わなかった………ち、濡れると髪が邪魔だな。」
――スッ……
「……髪の毛掻き上げると随分と印象変わるねネロ君……」
「何て言うか、別人みたいかな?」
其処まで変わるか?
あ〜〜〜……でも俺位の髪の長さで無造作にしてるのとオールバックにしてるのじゃ確かに印象は変わるかもな……え〜〜と、変か?
「変じゃないよ!何時ものネロ君とは違うけど、其れは其れで全然OKなの!!」
「まぁ、此れもアリよね多分……」
「服以上に髪型は人を選ばないのかも……」
そうか?流石に俺に『丸坊主』は似合わないんじゃないか?……試しに想像してみろよ?
「「「………うん、此れはない。」」」
だろ?案外髪型ってのも人を選ぶもん―――
――バッシャァァァァァァァアァァッァァァァァァァァァァァァァン!!!
………OK、まさか間髪入れずにもう一発とは思わなかった――今の一撃で、文字通りの全身ずぶ濡れ……こりゃ下着まで到達してるかも知れないな。
まぁ、こんだけのモノを喰らう可能性があった席に座った方が悪いわけだから文句はないが、何とも弩派手な一発だぜ。
尤も、始めてみる『イルカショー』って言うのは思いっきり楽しませて貰ったけどな。
そう言えば、こんな風に娯楽施設で楽しむ何て言うのは、若しかしたら生まれて初めてかもしれないな………
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さてと、水族館をたっぷり楽しませて貰って、今度案内されたのは『海鳴海浜公園』――海が一望できる自然公園とは、何ともWonderfulだぜ。
見晴らしは最高だし、派手さはないが此処も案外『観光スポット』だったりするんじゃないか?
「ネロ君大正解♪
海鳴海浜公園は派手さはないけど、街中にありながらも自然と調和した公園て言う事で、県外からの観光客は必ずと言っていいほど訪れる場所だよ?」
分かる気がするな。
此処の空気は澄んでるからな――此れを吸い込むだけでも気持ちが良いぜ!――で、何で此処に?
「そろそろ良い時間だから、此処でお昼にしようと思ってね?お弁当は作って来たからね♪」
ランチは用意されてたのか!
そのランチは若しかして、なのはの手作りだったりするのか?
「勿論♪
お母さんやはやてちゃんには負けるかも知れないけど、一生懸命作ったんだよ?」
Ha-ha!OK、Great!!(ハッハー!良いな、そいつは最高だ!)
今日の朝飯から桃子の料理の腕は大体分かったが、だとしたらなのはだってそいつを受け継いでる筈――このランチに期待するなってのが無理な話だ。
因みにメニューは?
「えっと……メインはサンドイッチで、おかずに白身魚のフライとポテトのグラタン風マヨネーズ焼きと椎茸の海老真薯詰め焼きだね
フライと椎茸用に醤油も持って来てるから♪」
何とも最高だなそいつは――特に魚のフライってのは有り難いぜ。
魚のフライ……フィッシュ&チップスはイギリスの最もポピュラーな料理で俺の大好物でもあるからな――欲を言えば、ビネガーが欲しかったところだけど。
だけどジャパンの醤油ってのも中々如何して馬鹿に出来ない美味さだから、案外魚のフライともあうのかもな。
「弁当を用意して来てるとは思わなかったわ流石に。だけど、弁当は兎も角として、飲み物は用意してるの?
アタシの見間違いじゃなきゃ、アンタが取り出して来たランチボックスの何処にも水筒か、或は其れに準ずる物が見えないんだけど――忘れたわね?」
「あ〜〜〜〜〜!?お弁当にかまけて飲み物の事すっかり忘れてた〜〜!!!」
「やっぱり……その辺がある意味でなのはちゃんらしいけどね♪」
うっかりか……まぁ、つい忘れるって事は誰にでもあるからな。
「しょーがないわね……自販機で何か買ってくるわ。注文はある?」
「じゃあ午後ティーのアップルティーで♪」
「私も午後ティーで……有れば『クールペシェ』でお願いできるかな?」
「OK任せときなさい!!」
なら俺は――
「アンタはアタシと一緒に来なさいネロ?まさか、女の子に荷物持ちさせるとか言わないわよね?」
「………如何考えても拒否権は無さそうだし、付き合うよ。」
そう言う事だから、なのはとすずかは少し待っていてくれ。――多分、アリサが俺をつり出したのは別の目的があるだろうからな………
で、随分なのは達とは距離が開いたが、そろそろ教えてくれるかアリサ?……何で俺をあの場から引き剥がした?
「聞かれたくなったからよ、特になのはにはね。
……単刀直入に聞くわネロ――アンタ、なのはの事をどう思ってるの?」
確かに単刀直入だな……。
だが『どう思うか』と問われれば、頼りになる上官であり、気兼ねなく色々話せるダチ公ってのが一番しっくりくるかもな。
「つまり嫌っては居ない訳ね?」
「嫌う要素がないからな。
――正気な事言うと、今の俺があるのはなのはのおかげだ……なのはが居なかったら、俺は野垂れ死にしてた可能性のが高いからな。
最高のタイミングでなのはが現れてくれたから、俺は死なずに済んだ訳だし……なのはには感謝してもしきれねぇしよ。
そんな訳で、好きか嫌いかで言えばなのはは間違いなく好きな方に入るが――そいつがLikeなのかLoveかは俺にも分からないって感じだけどな。」
「……其処まで分かってれば上出来――アンタには頼んでも良いかもしれないわ。」
頼み?なんだよ?
「アンタの出来る範囲で良いからなのはの支えになって欲しいのよ。
なのはは他人の事は気に掛けるクセに自分の事には無頓着で、限界以上の無茶をする事が多々あるのよ――そのせいで7年前も………
だから、アンタにはなのはの心の拠り所になって欲しいのよ?……幸いなのはの方もアンタの事を嫌ってる訳じゃないみたいだしね。」
なのはの心の拠り所って……そいつは何ともハードな依頼だな?
だが、そいつは俺よりもアンタ達の方が適任じゃないか?アンタ達となのはの付き合いは俺よりもずっと長いんだろ?
「確かにそうなんだけど、だからこそなのははアタシ達には重要な事は隠したがるのよ――心配を掛けたくないってね。
だけどネロ、アンタなら私達以上になのはの心の奥底に入り込めるはず――アイツの親友としてお願いするわ……なのはの事を護ってあげて――!」
……OK、受けたぜその依頼。
何よりも、アンタの友達を思う真摯な態度がハートに響いた――この依頼は無料で受けてやるよ。
「何よ、金取る心算だったの?」
「……なのはと出会う前は便利屋を営んでたからその癖だ――悪く思わないでくれ。」
其れよりも飲み物は買ったんだろ?
俺も自分用にジンジャーエール(英国風辛口)を買ったし、そろそろなのは達の所に戻らないか?
「其れもそうね……待たせるのは好きじゃないしね。」
「なら戻るか。」
で、戻って来たんだが、なのはとすずかの姿がない?
用を足しにでも行ったか?……いや、仮にそうだとしても、2人揃ってのは考え辛い――少なくともなのはは俺とアリサが戻って来た時の為に残ってる筈。
「おら、早く積み込め!!月村の小娘は当然だが、こっちの女も上玉だ……高く売れるぜ?」
「きひひ……夜の一族も眠らせちまえば怖くない……此れで俺等も億万長者だぜ!!」
!!?
なんだアイツ等………って、アレはなのはとすずか!?――おい、待ちやがれ!!!
「!?き、気付かれた!?……エンジン全開、離脱するぞ!!!」
「了解!!!」
――ブロロロロロロロロロロロオロオロロロロロロロロロ〜〜〜〜〜〜!!!
コイツは……白昼堂々の誘拐劇か!?
ったく、トンでもない奴等が居たもんだな………!!
どう贔屓目に見ても無視出来る事じゃねぇ――追いかけるぞ!!
「追いかけるって、如何するのよネロ!?」
「決まってんだろ?……この辺の放置バイクを拝借するんだよ、こうやってな!……Eat this!!(喰らえ!!)」
――ベリィィ!!
表面剥がせば構造は単純だから、キーがなくても此処を直結させれば………
――ブオォォォォォォオン!
動いてくれたか!!此れなら追う事も出来るだろ?
「鮮やかですこと……ならさっさと行くわよネロ!!
アタシの親友を白昼堂々誘拐するとはいい度胸じゃない……その愚行を骨身に染み渡るまで後悔させてやるわ!!」
It's so!(その通りだ!)……舐めた真似をしてくれた奴等にたっぷりと鉄槌を喰らわせてやらないと締まらないからな。
ったく、喧嘩売る相手も見極められない三流が………精々悪魔に喧嘩売った事を後悔させてやるぜ――この『悪魔の右腕』でな……覚悟しやがれ!!
To Be Continued…
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