Side:スカリエッティ
コアの再生は今の所順調のようだね?
ならば、私は『帰天』の力と性質を、もっと掘り下げて調べてみるとしようかな?――この力を、私の『娘達』に与える事が出来れば、素晴らしい力となるだろうからね。
いや、其れだけじゃない。帰天の力が世に広がれば、魔導師が優遇される今の風潮も根底から破壊する事が出来るだろう!!実に素晴らしい事だ!!!
個人の力に左右され、あまつさえスタンドプレーに走りがちな高ランクの魔導師よりも、帰天した戦闘機人の方が優秀な戦力であるのは既に計算上証明済みだからね。
マッタク持って素晴らしい!!悪魔の力と言うモノは、私の無限の欲望を良い感じに満たしてくれるじゃあないか!!
「ドクター、少し宜しいでしょうか?」
「む?なんだねウーノ……私は、今実に良い気分で居たんだが、其れを邪魔しないで欲しいのだけれどねぇ?」
「其れは失礼しました……ですが、悦に浸るのならば自室で一人でやって下さい、研究室やらなにやらでやられると『只のぶっ壊れた変人』にしか見えませんので。
と言うか、ドクター自身が『ぶっ壊れたマッドサイエンティスト』なのは構わないのですが、少しは私やクアットロの苦労も考えて下さい。てか、掃除くらいしろマッド。」
壊れたマッドサイエンティストとは……この上ない褒め言葉だよウーノ。
私は最高評議会より『アンリミテッド・ディザイア』なるコードネームを与えられた異常者だからね……生まれ落ちたその時から狂っているのだよ。
「まぁ、其れはこの際如何でも良いが、君が態々私の所に来るとは、相応の何かが起こったのだろう?――一体何が有ったのかね?」
「はい、ジェスターが持ち帰った悪魔のコアの1つ――認識名『クレド』が再生の為のエネルギーを送り込んだ瞬間に、活性化して何処かへ飛んで行ってしまいました。
すぐさまクアットロが追跡を試みたモノの、コアの反応はロスト……幸い認識名『アグナス』は無事ですが、如何なさいますか?」
コアが離脱……しかもクレドとは、ある意味で私の危惧が現実になったという訳か。――捨て置いたら、面倒な事になりそうだが、無理に追跡するのも悪手だろうね…
仕方がない、クレドの方は捨て置いて良い。代わりに『アグナス』の再生に全力を注いでくれたまえ。
アグナスを再生できれば、帰天の詳細を知る事も出来るからね――其方の方向で、事を進めてくれるかなウーノ?
「……仰せのままに。」
クレドの離脱がどんな結果を齎すかは分からないが、少なくとも私を退屈させる事態にだけはならないだろう事は確実だ。
聖王の複製も完成しているし、楽しいパーティの幕開けまではあと少しだ――そのパーティを楽しみにしておくと良い、機動六課の精鋭諸君よ―――!!
リリカルなのは×Devil May Cry 黒き騎士と白き魔導師 Mission67
『六課の休日〜Holiday of unit〜』
Side:ダンテ
「それじゃあ、明日は丸一日お休みよ。
機動六課を設立して以降、碌な休みも無かったし、明日は完全非番と言う事で、特別な緊急出動がない限りは完全オフよ――偶にはゆっくり休まないとね。」
一日の訓練を終えて、司令室に集められて何かと思ったが、蓋を開けてみれば『明日はお休み』の連絡ってか。――今のが、六課の元締めのレティか……美人だな。
つーか、六課総司令をはじめ、部隊長陣に部隊員と、機動六課ってのは美人の寄せ集め集団かよ!?……こんだけ華が揃うと、マジでビューティフルだぜ。
ま、俺はこの嬢ちゃん達とお付き合いする訳には行かねぇのが残念だけどな。
にしても、休日か……如何して過ごしたもんだろうな?
何時もなら、昼間まで寝腐って、適当に起きて適当に過ごすんだが、流石にこっちの世界でまでそんな休日を過ごすってのは、味気ねぇ事この上ねぇから何かしたいと
思うんだが、果てさて如何したもんだろうねぇコイツは?
「――?―――。」
「――?―――♪」
ん?坊主となのは嬢ちゃん、何か楽しそうだな?明日の予定の相談か?って……そうだ、一人で過ごそうとするからダメなんじゃねぇか!
折角なんだ、誰かと過ごすってのも悪かねぇからな?―――そんな訳で、お〜〜い坊主!良かったら、明日俺と出掛けねぇか?
「Wait a moment Dante.(少し待て、ダンテ。)」
――ザクゥ!!
ぐえぇぇ!?……行き成り後からザックリとか、何してくれんだよバージル!!一瞬とは言え、思いっきり息詰まったろうが、殺す気かよアンタ!!
「この程度では死なんだろう、貴様も俺も。――だがダンテ、貴様は少し空気を読め。」
「空気読めって……何だよ、未来の甥っ子と親睦深めちゃいけねぇのか?
確かにアミタ嬢ちゃんからあんまし過去と未来の交錯をしないようにとは言われてるが、どうせ俺とレディは忘れちまうんだから、一緒に出掛けるくらいしても良くね?」
「悪いとは言わん――ネロが独り身であったのならばな。
だが、ネロにはなのはと言う恋人がいるのだぞ?……ならば、偶の休みに何をしたいかは、貴様にも言わずとも分かるだろう?……其れを邪魔してやるな、ダンテ。」
あ〜〜〜……そうか、普段忙しいから、偶の休みとなればデートに繰り出すって事か……そいつは確かに配慮が足りなかったな。
ならよ、アンタが俺に付き合ってくれんのかバージル?考えてみると、大人になってから兄弟水入らずで過ごした事って、あんまし……つーか全然なかったし、如何だ?
「其れも一興だが、悪いが明日は先約が入っていてな、シグナムと出掛ける事になっているのだ。
其れに、兄弟水入らずと言うのも悪くないが、俺と貴様は一卵性の双子だと言うのに、趣味から趣向まで何もかもが違うのだ、何処で食事を摂るか、どんな娯楽施設
に入るのかなどで意見が真っ向から対立し、しかもどちらも絶対に譲らないのは火を見るよりも明らかではないか?」
「……言われてみりゃ、其れもそうだな…。
しかも俺達の兄弟喧嘩となると、下手すりゃ局の武装隊が出て来る様な事態になるかも知れねぇからな……アンタと出掛けるのは絶対的にNGだったぜ……」
しかも俺達の兄弟喧嘩で武装隊が出てきたとなったら、俺達を民間協力者としてるはやて嬢ちゃんにも迷惑が掛かっちまうからなぁ?
つーか、シグナムとお出掛けって、詰まる所はバージルもデートって事か!?何時の間に、そんなにシグナムと親密になりやがったんだお兄ちゃんよぉぉ!?
――ドスゥ!!
「その呼び方は止めろ、刺すぞ?」
「さ、刺してから言うなよバージル……事後承諾ってのは、良くないと思うぜ俺は……!!」
「と言うかね、2人ともあんまりバイオレンスな事は止めて貰えるかしら?幾らその程度じゃ死なないとは言え、六課にはまだ子供も居るんだから流血沙汰はダメよ?
嫌な予感がして、認識障害の結界張ったから気付かれてないけど、こんなモノ見せられたらトラウマになっちゃうかもしれないでしょ!!」
おぉっと、ミス・シャマル!
そう言えば、嬢ちゃん達の悲鳴的なモンが聞こえて来ないと思ったが、アンタがえ〜〜と『認識障害結界』ってのを使ってくれたって訳か!マジで誰も気付いてねぇな。
つか、何時の間にこんなモン張ったんだいミス・シャマル?
「バージルさんが、ダンテさんに声をかけた時に『此れは只事じゃ済まない』ような気がして咄嗟にね……自分の勘の鋭さを褒めてあげたいわ。
加えて言うと、私が声を掛けた所で止まらないだろうし、だからと言ってコア抜きで強制的に止めるって言うのも、其れは其れでショッキングな事に成っちゃうしねぇ?」
「コアって『リンカーコア』?其れをぶっこ抜く技って事かよ!?」
「其れはまた………何とも恐ろしい技だな。」
「褒め言葉と受け取っておきますね?……さ、もう大丈夫そうだから結界は解除するわね。」
結界と言い、コア抜きと言い……若しかしたら、六課最強はミス・シャマルなんじゃねぇのかな?ある意味で六課部隊員の身体を一番知ってんのは、この人な訳だしよ?
……取り敢えず、ミス・シャマルは絶対に敵に回さねぇようにしといた方が良さそうだ。
時にミス・シャマル、アンタ明日は暇かい?若し良かったら、俺と出掛けねぇか?
坊主はなのは嬢ちゃんとデートらしいし、バージルの奴もシグナムとデートらしいから、野郎が1人で溢れちまって正直寂しいんだよな?退屈だけはさせないぜ、俺は。
って、バージルの奴、結界が解除された途端に何処か行きやがった。
「其れも良いんだけど、ゴメンナサイ、明日はもう予定が入っちゃってて、はやてちゃんとリインとお出かけなのよ。どうしても3人でって言う事だったから、ね?」
「そいつは残念だが、そう言う事なら仕方ないな。……にしても、ミス・シャマル、アンタ等のリーダーのシグナムってのは、見た目以上に良い女みたいだな?
弟として、こんな事言うのは何だが、あのバージルが真相の方は兎も角として、2人で出掛ける位の気になった訳だから、最上級の極上クラスなのは間違いねぇ!」
「確かにシグナムは美人だけど……其れよりも、私はシグナムの男の趣味の特異さに驚いたわ……悪い人じゃないけど、徹底して表情と反応が乏しいわよねバージルさんて…」
ハハハ……我が兄乍ら、一切否定できんのが悲しい所ですなぁ……ま、色んな意味で頑張れやバージル。
しかしまぁ、ミス・シャマルがダメだとすると……おいレディ!
「残念だけど、明日はドゥーエと出掛ける約束してるからダメよ。他を当たりなさい。」
誘った傍から玉砕かよ!!!ならヴィータ……はダメだな、さっきちらっと『久しぶりに河川敷の方に行って、じ〜ちゃんやば〜ちゃん達とゲートボール』って言ってたし。
ギンガ嬢ちゃんとヴィッツ嬢ちゃんも、何やら明日の予定を話してるみたいだし、フェイト嬢ちゃんは子供2人に休日の過ごし方の注意点なんかを話してるし、
「んじゃあ、明日はアタシとお出かけだ!」
「待て、私はまだ何も言ってないが……」
「気にすんなデカブツ!」
ザフィーラは、アルフに強制連行が確定だからなぁ?……スバル嬢ちゃんとティアナ嬢ちゃんもバイクで出掛けるような事を話してるみたいだし……若しかして、明日は
俺1人で寂しいホリディを過ごす事に成るってのか!?OK、信じちゃないがソイツはあんまりじゃないかカミサマよぉ!?
「おっちゃ〜〜〜ん!もし良かったら、明日アタシ達と一緒に出掛けねぇッスか!!」
「アミタさん達と一緒に出掛けるんだけど、もし良かったらダンテさんも一緒に如何かな……?」
と思ってるところに、ウェンディ嬢ちゃんとディエチ嬢ちゃん!?……まさか、そっちから誘って来てくれるとは思わなかったが……ご一緒しても良いのかい?
「勿論です!大勢の方が楽しいですし、何よりも折角の休日なのですから、楽しまなければ損と言うモノです!!王様だって、そう言っておられます!!」
「そ、そうなのかいアミタ嬢ちゃん!?」
「休日ならば、骨休めを兼ねて思い切り羽を伸ばすが基本であり、正しい過ごし方よ!
よって、明日は無礼講で楽しむ故に、貴様等も気兼ねなく休日を楽しめ――寧ろ楽しまねばならん!!楽しむべきだ、王として、そして六課隊員としてぇ!!!」
「うおぉぉぉ!勿論楽しむ心算っすよ、王様ーーーーーーー!!!」
「テンション高いよな、王様も……」
って、王様がやる気全開とは、コイツは最高だねぇ?1人寂しく過ごす事を覚悟してたんだが、予期せずして楽しいホリディを過ごす事が出来そうだぜ?
ノーヴェ嬢ちゃん達と、アミタ嬢ちゃん、其れに王様達が一緒ってんなら、ソイツは何とも楽しい事になりそうだからかな?――OK、明日がマジで楽しみになって来たぜ。
――――――
Side:なのは
それじゃあ、明日は如何しようかネロ?
取り敢えず、レイジングハートとくーちゃんも一緒にお出掛けをするとして、何て言うかこう……休日プラン的な物は有るかなネロ?有ったら是非ともプリーズです。
「そう言われると、其れらしいプランてのは実は無いんだよなぁ?
偶の休みだし、なのはと一緒に久遠も交えて、適当にミッド市街をぶらつくのも悪くねぇって思ってたし、なのはと一緒ならどんな事でも楽しめると思ってたからな。」
「〜〜〜///!!素でそう言う事を言うのは反則だよネロ!……まぁ、私もネロと一緒ならどんな事でも楽しめるとは思ったけどね?」
「そうか?なら悪かったが……オッサンが本気出したときゃこの比じゃねぇぞ?
前に仕事手伝った時の事なんだが、仕事後に一杯やってテンション上がってたのか、トリッシュがドン引きする程の歯の浮くような気障なセリフ吐きまくってたぜ……」
……ダンテさんて、色んな意味で色々と最強なんだね。――と言う事は、六課のフォワード陣が、今の若ダンテさんの手に落ちる可能性も……無いか、其れだけは。
少なくともドゥーエちゃん以外のナカジマ姉妹は、マダマダ色恋沙汰には疎そうだし、キャロは子供でフェイトちゃんが付いてるし、シュテル達はそもそも対象外だしね?
唯一の危険牌はアミタさんだけど、アミタさんもあの性格だから口説き落とされる事は、先ず無いと見て良いだろうからねぇ……まぁ、心配するだけ徒労って感じかな。
じゃあ改めて明日の予定だけど、ウィンドウショッピング的な感じで市街を散策しながらマッタリのんびり過ごすって言う事で良いかな?
「異論なし。久遠とレイジングハートは?」
「異論ないよ?」
『Without objections.As hoped of all master.(異論ありません。全てはマスターの望みのままに。)』
其れじゃあ明日のお休みは、皆でマッタリ過ごすって言う事で♪
「ま、偶の休みだからな。アレ?でもその予定だと、飯は如何する?
何処か行く場所を決めてるなら兎も角、街をぶらつくのにランチボックスを持ってってのは、手荷物が増えちまうような気がすんだが……適当な店で済ますとするか?」
「其れはダメ。明日のお出かけのお弁当に、お稲荷さん作ってあげるってくーちゃんと約束したし、もし荷物になりそうな時には、ネロが持ってくれるでしょ?」
「そりゃあ、まぁな。荷物持ちは、男の仕事みたいなもんだし、俺としてもなのはお手製のランチボックスってのは嬉しい限りだからさ。」
なら問題なしだよ♪
あ、そうだ。ネロは、お弁当のメニューに関して何かリクエストは有る?有れば言ってくれると助かるんだけど、あれば遠慮なく言ってほしいの♪
「リクエストするなら、やっぱりチキンの唐揚げだな。ぶっちゃけ、あんなに美味いチキン料理は初めてだったから強烈に印象に残ってるんだよ。特に柚子胡椒のやつ。
それから、外せないのは絶妙な甘さの卵焼きだよな。出汁巻き卵って言ったか?アレも、凄く美味かったから入れてくれると嬉しいぜ。」
「唐揚げと出汁巻き卵ね?うん、了解なの♪
腕によりをかけて作るから、期待しててね!」
「期待してるぜ?なのはの料理は、誇張抜きでマジで美味いからな。アンだけ美味いモンなら、毎日食いたいって思っちまうぜ。」
そう?
でも、そう言って貰えるのは、素直に嬉しいよ?――文字通り『作り甲斐が有る』ってとこだしね!!よし、明日のお弁当は気合を入れて、最高のモノを作ってやるの!
「その気合はえぇんやけど、もう少し自重してやなのはちゃん、ネロ君……」
「はやて?如何したんだ、随分グロッキーみたいだが……?」
「如何したの、はやてちゃん?」
「ぶっちゃけなのはちゃんとネロ君の『ラブラブカップル激甘オーラ』に中てられて、砂吐く寸前なんや……私以外にフォワード陣もな。平気なんは、バージルさんとダンテさんとレディさん位や…
仲良き事は、美しきかなとは言うけど、なのはちゃんとネロ君の場合は少しばかり自重してください。ぶっちゃけて言うと、甘すぎて私もからかう事が出来へんので。」
「そう言われても、そんなにイチャついてる心算はないんだけどな?つーか、此れ位は普通の会話だろ?」
「かも知れへんけど、なんちゅーか2人から発せられる雰囲気から、普通に話してる筈にも拘らずメッチャ凝縮された『ラブオーラ』を感じ取ってしまうんや!!
なんちゅーか、同室にしてから更に仲良くなったような気がすんねんけど、私の気のせいやろか?」
ラブオーラって……そんなモノ感知されてグロッキーになられても、私もネロも一切責任負えないよはやてちゃん?って言うか、此れ位の会話は何時もの事だからね。
まぁ、同室で同棲生活になってからからこそ、お互いに見えて来たモノが有って、更にお互いを知り合う事が出来てより相手を好きになる事が出来たのは事実だから。
勿論、時には軽い口論になる事も有るけど、其れが逆に言いたい事言ってスッキリして、更に絆が深くなるって言うか……愛に限界量は無いんだよはやてちゃん!!
「おうふぅ!まさか、其処までキッパリハッキリ言われるとは思わへんかったわ!……なんちゅーか、あん時同部屋にする事を思いついた自分を殴りたい気分や。
てか、レイジングハートとくーちゃんは、如何してこの2人と一緒に生活してて平気なんや!!」
「なのはが嬉しいと、私も嬉しいからだよ?」
『I don't sense the thing which is its state.(私は、そもそもそう言うモノを感知しませんので。)』
「そう来たか!聞いた私がアホやったわ!!……此れはもう、私等の方が慣れるしかないんやろな……
ま、ラブラブカップルに無粋な事は言いっこなしやな――偶のお休みやし、明日は思い切り羽伸ばすと良いわ。」
うん、勿論その心算だよはやてちゃん♪
「けど、何ぼ私等がお休みや言うても、スカリエッティや悪魔にはそないな事関係あらへんから、何時何が起きても良いように用心だけはしといてや?」
「Even if it isn't called, it's understood Boss.(言われるまでもねぇよ、隊長。)てか、人の休み邪魔するクソッ垂れはぶっ殺してなんぼだからな?」
それは、分かってるよはやてちゃん。
私達がお休みだからって、相手にはそんな事は関係ないからね――何時何が起きても良いように用心だけはしておく、此れは戦いの場に身を置く者の基本中の基本
でしょう?だからこそ、私もレイジングハートを持って行く訳だし。
フォワードの皆も、多分無意識にその辺りを自覚はしてると思うよ?全員、自分のデバイスは肌身離さず持ってるしね。
尤も、本音を言うなら、そんな事を気にしないで明日は休日を楽しんでほしいとは思っているんだけど――まぁ、仮に何が有っても如何にかなると思うよ?
六課のフォワード陣は、はやてちゃんが選出して、そして私が色々教えたんだから♪
「それもそやな?確かに、六課の面子やったら何が起きても大丈夫やろね。
なら、明日は私も思いっきり羽根伸ばさせて貰おかな〜〜〜〜?こう言っちゃなんやけど、隊長職ってのは、面倒な書類とか有って肩凝りまくりやったからな〜〜。」
「隊長さんてのも大変だな?……ま、アンタも明日は普段の疲れを癒すと良いさ――隊長さんがだらけてたら、部隊に示しが使えねぇからな。」
「ま、そうさせて貰うわ。なのはちゃんとネロ君も、明日はバッチリ楽しんでや〜〜♪」
うん、勿論だよはやてちゃん♪
折角の偶の休みだもん、どんな事態が起きても良いように用心しておくとは言え、其れを楽しまないなんて言うのは思いっきり損な事だから、久々に思いっきりだよ♪
ふふ、今から明日が楽しみで仕方ないの♪
――――――
――翌日
Side:バージル
翌日、ミッドチルダ市街をシグナムと共に散策して居る訳だが……ふむ、偶にはこうして心穏やかに過ごすのも悪くはないな?以前の俺では、到底考えられん事だが。
今日は、ネロは高町なのはとデート、ダンテはノーヴェ・ナカジマ達と出掛け、レディはドゥーエと出掛けているようだが――休日を共に過ごす相手に俺を選ぶとは、お前
も中々に酔狂だなシグナムよ?俺を誘ったところで、面白みなどなかろうに……
「少なくとも、私はそうは思わんな?
お前は確かに不愛想で口数も少ないが、感情が無い訳ではないし雑学的な知識が豊富で話していても飽きる事が無い――お前とならば退屈しないと思ってな?
其れに、私も剣士としてお前には何か感じるモノがあるんだ――故に、ともに休日を過ごしてみたいと思ったのだが、若しかして迷惑だったかバージル?」
「迷惑ではないが、本気で酔狂な女が居たモノだと思ってな……だが、俺も貴様と過ごすのは悪い気分ではない。」
美人で切れ者、更には剣の腕も最高と言う騎士と休日を過ごすと言うのも、中々出来る事ではないからな?――まぁ、精々偶の休日を満喫させて貰うとするとしよう。
「ならば決まりだな。
とは言っても、取り立ててプランを用意して居た訳ではないのだが――どこか行きたい所は有るかバージル?」
「任せる。自慢ではないが、此処の土地勘など、俺には皆無なのでな……正直何処に何が有るかすら分からん――故に、何処に行くかは貴様に一任だシグナムよ。」
「任された――では、折角の休日だ、心行くまで楽しむとしようかバージル?」
フン……異論はない。
尤も、此の休日が平穏無事に終わると言う事は、恐らくあり得んのだろうが――まぁ、そうなったらそうなったで、出て来た雑魚を殲滅するだけの事だ。
何れにせよ、何年かぶりとなる平穏な日常を楽しむとしよう、今はな。
だが、俺の中に有るスパーダの血が教えてくれている――此の休日で何かが起こるとな。
其れが何であるかは分からないが、スパーダの血が警鐘を鳴らす以上、ただ事ではないのだろうが――まぁ、六課の精鋭ならば、どんな事態に直面しても対処は出来
るだろうから、心配する事もあるまい。
「では、休日を楽しむかシグナム?」
「あぁ、思い切り楽しむとしようバージル。」
だが今は、思い切り楽しませて貰うとしよう――此れもまた、俺が新たな生を得たが故に満喫できる事であるのかも知れないからな。
――――――
No Side
同刻、ミッドチルダの地下水道において……
「はぁ、はぁ………」
1人の少女が、見るからに重そうな箱を引き摺って、息も絶え絶えに地下水道を裸足で歩いていた……其れこそ、一歩歩み出すのが精一杯の状態でだ。
正直な事を言うならば、よくぞ今まで持ってくれたと言う所だろう――それ程までに少女は衰弱していたのだ。
「あ………」
――ドシャァァァァァァァァァァァァァ!!
だが、肉体の疲労を精神力で誤魔化すのには、その限界が存在するのは道理であると言えるだろう。
現実に、少女は精根尽き果てて、その場に倒れ伏してしまったのだから。
『………』
だから、倒れ伏した少女のすぐ傍に、一つの魔力光の塊が現れた事について少女が気が付く事はなかった――まして、其れが嘗て『帰天』した騎士の魂であったという
事など、其れこそ知る由もない事である。
しかし乍ら、此の少女と、嘗て帰天した騎士の魂が、機動六課に大きな影響を与えると言う事は、この時は恐らく機動六課の誰もが予想すらしていない事だろう。
特にネロにとっては、予想外の再会が待っている等と言う事は其れこそ予期して居ない事だ――尤も、再会はもう数時間先の話になるのだが……
いずれにせよ、寧ろ予想していた方が不思議だろう――この少女が、かの『聖王』であったなどと言う事と、此の魂が『誇り高き騎士団長』だったのだという事は。
ともあれ、そんな事は誰にも知られる事は無いまま、六課の休日は其の幕を開けたのだった――
To Be Continued…
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